十二月から今日まで何かと忙しかったり、ひと段落着いたと思ったら体調崩したり、を繰り返しているうちに気付けば4か月近く間が空いてしまいました!
これからはもう少し余裕ができると思うのでまた投稿を再開します!
と言うわけで最新話です!
「そん…な……」
以前に半ば事故のように見てしまった楓子の裸体、その白いシミのない肌には確かになかったはずの肩から首に広がる痣に輝利哉は息を飲む。
「じゃ、じゃあ楓子さんも、25歳までしか生きられないんですか……?」
頷きながら楓子は緩めていた湯浴み着を着直す。
「私は今16…もうそれも半ば折り返したので、残された時間は8年ほどでしょうか」
「8年……」
その具体的な数字に輝利哉は愕然とする。8年などきっとあっという間に過ぎてしまうだろう。
「私はいいです、伊黒様はその半分ですから。つまり、蜜璃さんとの時間もあとそれだけなんです」
「ッ!」
「伊黒様に『蜜璃さんを泣かせたらただじゃおかない』なんて言っておいて、私が二人が過ごすはずだった時間を奪う結果になって蜜璃さんを泣かせることになってしまいました。これじゃあ伊黒様に怒られてしまいますね」
「なに…言ってるんですか……?」
楓子が自嘲気味に微笑んで言った言葉に呆然と呟くように輝利哉は言う。
「甘露寺様も、伊黒様も、怒るわけがないじゃないですか。そのことを僕以上にあなたが知っているはずじゃないですか?」
「ええ、そうですね……おっしゃる通り、あの人達は怒らない――怒ってくれないでしょう。いっそ罵って罰してくれた方が気が晴れるのに……」
「なんでなんですか?なんでそんなに背負い込むんですか?なんでそんなに――」
「……背負い込むに、決まってるじゃないですか…!だって、だって…私は蜜璃さんに救われた、蜜璃さんがいなければこの世にいなかったんですよ?」
楓子は顔を歪ませて絞り出すように言う。
「蜜璃さんに救われて、少しでも恩返ししたかったのに、蜜璃さんの夢を知っていたのに、そんな私が、蜜璃さんの幸せを奪ったんですよ?蜜璃さんが歩むはずだった幸せな未来を、私が奪ってしまった。そんなのって、ないじゃないですか……」
歯を食いしばり肩を震わせる楓子に
「……楓子さんの気持ちは、わかります」
輝利哉は言葉を選びながら言う。
「でも、じゃあ楓子さんは?」
「え……?」
「楓子さんだって、手に入れるはずだった幸せを失ったんじゃないですか?」
「わ、私は……」
輝利哉の言葉に一瞬瞳を揺らしたがすぐに顔を逸らし
「私は、いいんです。私は――」
「いいわけないじゃないですか!!」
楓子の言葉に輝利哉は叫ぶ。
「楓子さん言ってたじゃないですか!やりたいことがたくさんあるって!食べたいものも、見たい風景も挙げだしたらキリがないほどにあるって!」
「そ、それは……」
「楓子さんだって出したくて痣を出したわけじゃないでしょう?あなたが最初の一人だからって、どうしてそれ以降の痣を発現させた人の責任まで背負い込むんですか?楓子さんだって…本来歩むはずだった未来を失くしたのに、あなただって辛いはずなのに!」
「辛くなんて……私は鬼殺隊の人間ですよ?死ぬ覚悟くらいできて――」
「覚悟ができてるからって死ぬのが怖くないわけないじゃないですか!」
「それは……」
「……僕は怖いです」
言い淀む楓子に輝利哉は言う。
「僕は産屋敷家の長男です。父上に何かあれば、次のお館様は僕が引き継ぐことになります。そして、産屋敷家の長男には『呪い』があります。僕の身にいつか『呪い』が発現すれば、きっと僕も長くは生きられません」
「ッ!」
「そのことを僕はもちろん受け入れています。でも、日に日に『呪い』に蝕まれていく父上を見ていると、いつか来る『呪い』が、『死』が、どうしようもなく恐ろしくなります」
「輝利哉君……」
楓子は改めて目の前にいる齢8歳の少年の初めて聞く悲痛な言葉に息を飲む。
「こんなこと、父上にも母上にも言えませんでした。もちろん姉や妹達にも……本当なら誰にも言うつもりもありませんでした。でも、あなたならきっと、わかってくれるはずです……」
そう言って輝利哉は微笑む。
「楓子さんはどうですか?」
「え?」
「楓子さんいつも言ってるじゃないですか。『痛いときにどこがどう痛いのか言ってくれないと医者はどうすることもできない』って。辛いなら、辛いって言ってください。怖いなら、怖いって言ってください。でないと誰もあなたの力になれません」
言いながら輝利哉はそっと楓子の手を握る。その手はかすかに震えていた。
「わ、私は……」
「辛いならちゃんと教えてください。僕なんて頼りないでしょうし、できることなんて多くはありません。でも、一緒にいて話を聞くくらいはできます。あなたが雨に濡れていたら傘を持ってくるくらいはできます。だから――」
輝利哉は楓子の目を見つめ
「僕に力にならせてくれませんか?」
「輝利哉君……」
輝利哉の言葉に楓子は一瞬目を伏せ
「ごめん……ごめんね……」
少しずつ堰を切ったように嗚咽を漏らし輝利哉に縋りつくように泣き始めたのだった。
〇
その後、楓子が落ち着き泣き止むころには少しのぼせ始めていたこともあり、いったん風呂から上がった二人はそのまま天音に促され夕食を食べる。その間、風呂場での会話の続きはされないまま食べ終えた二人は楓子のために用意された客間に移動する。
もうすでに敷かれていた布団の上に腰を下ろした楓子は対面に座る輝利哉に口を開いた。
「ごめんなさい、輝利哉君。君だって辛いのに、怖いのに、君よりも年上の私がこんな醜態さらして……」
「そんなことないです」
楓子の言葉に輝利哉は微笑む。
「輝利哉君の言う通りです。覚悟できてるからって怖くないわけじゃない、わかってたはずだったのになぁ……」
輝利哉の微笑みに笑って返しながら楓子は言う。
「……このお屋敷に保管されていた資料で見ていたから、この〝痣〟を見たとき、すぐにそれだって可能性が頭を掠めました。でも、信じたくなくてずっと否定し続けて……それなのに、鍛錬するたびに、鬼と戦うたびに、少しずつ〝痣〟が濃くなっていって、否定し続けられなくなって目を逸らせなくなって……」
ぽつぽつと少しずつ言葉を吐き出していく楓子に輝利哉は黙って耳を傾ける。
「〝痣〟があの伝承のものだってもうこれ以上否定できなくなった時、私は目の前が真っ暗になりました」
楓子は震える手を押さえつけ続ける。
「鬼殺隊にいるんだから、いつか戦いの中で死ぬ覚悟はしていました。それでも、いつか鬼舞辻無惨を倒した時、戦いが終わった時に、って夢見ていた〝いつかの明日〟がありました。でも、この〝痣〟によって、そんな〝いつかの明日〟が私にはなくなった……」
痛いほど自身の腕を握りしめながら楓子は涙をこらえて言う。
「だったらせめて私じゃない誰かの〝明日〟を守るために戦おうって決めたのに、今度は伊黒様に〝痣〟が現れて……私が一番守りたかった二人の――蜜璃さんと伊黒様の迎えるはずの幸せな未来を、私は守ることができなかった…!」
とうとうこらえていた涙が溢れ出す。
「輝利哉君は私が背負いすぎちゃいけないって言ってくれましたが、それでも、考えずにはいられないんです。私と言う〝一人目〟がいなければ、伊黒様が〝二人目〟にならなかったのにって……」
「楓子さん……」
震える楓子の手を優しく握った輝利哉は口を開く。
「僕はあなたが一人目になってしまったからと言ってそれ以降に現れる〝痣〟を発現させた人のことを必要以上に背負い込む必要はないと思っています。それでも、あなたが背負い込んでしまうなら、その重さに潰れてしまう前にちゃんと話すべきです」
「それは……」
「話さないとお二人には伝わらないと思うから…だから……すみません、上手く言えませんが……」
「……いえ」
申し訳なさそうに言う輝利哉に楓子は首を振って応える。
「その通りだと思います。正直今日まで一人で考えすぎて頭の中グチャグチャになって堂々巡りしてました。ちゃんとお二人と話します」
「そ、そうですか……」
「はい」
頷く楓子に輝利哉は申し訳なさそうに俯き
「すみません、力になりたいって言ったのに結局話を聞くことしかできなくて……助言らしいこともできずに……」
「そんなことないです。こうして手を握ってくれていて、話を聞いてくれるだけでも救われることもあるんです」
楓子は言いながら輝利哉の手を握り返す。
「そ、そうですか……な、ならよかったです……」
「ええ、ありがとうございます」
「………」
「………」
今更ながら手を握っている照れを感じた様子で頬を赤らめ、そんな輝利哉を微笑んで見つめる楓子。
「……え、えっと」
そんな楓子の視線に耐え切れなくなったのか輝利哉はキョドリながら口を開く。
「ふ、楓子さん、お疲れではないですか?雨にも濡れてしまいましたし今日は早めにお休みになった方がいいのではないかと思うのですが……」
「そうですね…身体っていうより頭が疲れてる気がしますし、今日はもう横になろうかと思います」
「そ、そうですか……」
楓子の言葉に頷いた輝利哉は頷き
「じゃ、じゃあ僕はこの辺で……」
握っていた楓子の手を放して立ち上がろうとして
「え?」
「え?」
一切握った手を離すことなく首を傾げる楓子に輝利哉は呆ける。
「今日は一緒にいてくれるんじゃないんですか?」
「え……はい?」
「だって、お風呂で『一緒にいて話を聞くことはできる』って……」
「た、確かに言いましたけど……」
「今日は人恋しいといいますか…一人でいたくないといいますか…ダメ、ですかね?」
「んぐッ……」
少し照れた様子で言う楓子の様子に輝利哉は
「わ、わかりました……」
ゆっくりと頷いた。
「ありがとうございます。じゃあ――」
「はい――」
やっと手を放してくれた楓子にホッと安堵しながら「もう一組布団を持ってきますね」と言おうとする輝利哉の目の前で布団にもぐりこんだ楓子はガバリと掛け布団をめくる。
「はい、どうぞ」
「…………へッ?」
その予想外の光景に一瞬思考が止まった輝利哉は遅れて呆けた声を出す。
「え~っと…一緒の布団で寝るんですか?」
「??? ダメですか?」
「ぎゃ、逆にダメじゃないんですか?」
「ええ……この布団の大きさなら私と輝利哉君くらいなら十分だと思いますけど……」
「で、でも…ほら!男女七歳にして席を同じうせずって言いますし!」
「以前泊まった時には今日のように同じ部屋で寝たことありましたけど?」
「で、でもその時は布団は別でしたから!」
「……ダメ、ですか?」
「ぐッ……」
位置的に上目遣いになる楓子の視線に輝利哉の頭の中で数秒間葛藤が続き
「わ…わかりました……」
いろいろと諦め部屋の隅の明かりを消し楓子の捲る布団の中に潜り込む。
「………」
間近に、それこそ互いの吐息もかかるほどの距離にドギマギする輝利哉に、そんな内心を気付かない楓子は――
「すみません、もう少し寄ってもらわないと寝てる間に布団から出てしまいますよ」
「~~~~~ッ!!!?」
言いながらグイッと抱き寄せられ輝利哉は声にならない悲鳴を上げる。
抱き寄せられたことで全身を包み込むような柔らかな感触や呼吸をすれば否が応にも鼻腔をくすぐるいい匂いに心臓が早鐘のように打つ。
そんな輝利哉の発狂を他所に
「では、おやすみなさい」
言いながらそっと瞼を閉じる。もちろん輝利哉を抱き枕にしたままである。
(いや、こんなの寝られるわけがないんですが!?)
と心の中で叫びながら、同時に雨の中や風呂場で泣いていた楓子の姿を思い出し叫びを飲み込み、自身も恐る恐る楓子の身体に手をまわし、そっと背中を撫でる。
数十秒ほど続けたところで頭の上あたりから「スゥ…スゥ…」と穏やかな寝息が聞こえてくる。
そっと視線を向ければ障子越しに部屋を照らす月の光の中に浮かび上がる楓子の寝顔が見える。その穏やかな寝顔に輝利哉は少し安堵する。
少なくともその顔には少し前に見られた悲痛さはなかった。
安堵すると同時に
「ふぁ……」
輝利哉の口から欠伸がこぼれる。
数秒楓子の寝顔を眺めた後、輝利哉は
「おやすみなさい、楓子さん……」
自身もそっと瞼を閉じた。
と言うわけで輝利哉君による楓子のメンタルケアでした!
書いているうちに「あれ?輝利哉君って8歳だよね?」と、思いましたが次期お館様と言う責任で精神的に早熟だった、と言うことでここは一つ……(;^ω^)
ま、まあ十三歳で縁談の席で「貴女が嫌なら私からこの話は断ります」なんて言える人の息子ですから……ねぇ?
さてさて、改めまして前回の投稿から期間が空いてしまい申し訳ありません!
年末から今日まで何かと慌ただしかったので気付けば4か月も空いてしまいすみませんでした!
一応はひと段落着いたのでこれからは投稿を再開していく予定です!
本当は新年やイベントごとのイラストも用意していたのですが投稿期間が空いてしまったのですがもったいないので時季外れですが一緒に投稿します!
辰年祝い「燃えよ楓子」
【挿絵表示】
バレンタインの楓子(キメツ学園ver)
【挿絵表示】
※「燃えよ楓子」と言いつつ「死亡遊戯」なのは元ネタの「燃えよドラゴン」ではトップレスになってしまうからです。
そんなところで今回の質問コーナーです!
今回はガッツYY(ジャラランガ同好会)さんから頂きました!
――ドキドキ文芸部って言うゲームを知ってますか?知らないならどうぞやって下さい。(Switchとソフトを投げた!)そして感想を聞かせてください!おなしゃす!
楓子「やったことはないけど大筋と最大の魅力部分は知ってますよ。と言うわけでレッツプレイ!
~少女プレイ中~
とりあえず、あれですね。知らない人に配慮してネタバレを避けて言うなら、例のシーンで知っててもゾワッとしますね。似た系統のゲームで『君と彼女と彼女の恋』ってゲームはやったことありますけど、あのゲームでも感じた〝視られてる〟って感覚が面白くもあり背筋が凍りますよね」
と言うことでした!
そんなわけで今回はこの辺で!
次回でいったん話の区切りをつけようと思っているのでそのあとに以前から予定していた番外編を投稿します!
全部、という選択肢が一番になっていますが、さすがに四本番外編が続くのはアレなので他で上位二つの話をとりあえず投稿し残りのふたつはそれ以降折を見て投稿しますのでお楽しみに!
集計結果は次回までの集計を反映させますのでまだアンケートに参加していない方がいればぜひご協力を!
それではまた次回お会いしましょう!
~大正コソコソ噂話~
――翌日の様子――
輝利哉「え?楓子さんもう発たれたんですか?」
天音「ええ、今朝早くに」
輝利哉「そう…ですか……」
ひなき「ふふ、昨夜はずっと一緒だったのに、まだ名残惜しいの?」
輝利哉「そ、それは……」
にちか「あら?その首元……」
くいな「お兄様、首元が赤くなっていますよ?」
かなた「虫にでも刺されたのですか?」
輝利哉「え?なんだろう?覚えはないし、痒みも痛みもないけど……」
天音「ッ!?(あ、あれはまさかッ!?そういえば今回客間には布団は一組だけですし同じ部屋で一晩過ごしたなら当然二人は……し、しかし、輝利哉はまだ8歳ですし…楓子さんだってその辺りの分別は……)」
お気に入り件数3600件記念番外編の内容は?
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増えた大好楓子
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蜜璃と楓子の入れ替わり
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大好楓子の事件簿
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続々キメツ学園
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関係ない、(全部)書け