アンケートの結果……四つとも描くことになりました!!
いやいや、まさかまさかですよ(;^ω^)
本編が四話ほど遅れますがアンケートの結果なので許してくださいね!
と言うわけで同じくアンケートの結果から一個目は『増えた大好楓子』となりました!
どうぞ!!
月明かりの下、とある町の通りで――
「はぁぁぁッ!!」
炭治郎の気合の一閃。しかし、寸でのところで相手の鬼に避けられる。
しかし、完全には避けきれなかったようで鬼の肩から鮮血が飛ぶ。
「ちぃッ!!」
鬼は憎々しげに舌打ちしながら大きく飛び退き下がる。
「待て!!炭治郎君!そいつはまだ血鬼術を使ってない!奥の手を隠しているかも!」
「ッ!はい!」
炭治郎はなおも追撃を加えようと鬼を追うが楓子の言葉に踏みとどまる。
「きひひッ!なんだ、来ねぇのか?」
そんな炭治郎に鬼は不敵な笑みを浮かべ
「だったら、こっちからだ!!」
右手を前に突き出して構える。と、鬼の右手に禍々しい光の玉が現れ
「血鬼術『多情分恨』!!」
「ッ!?」
「危ない!!」
炭治郎は驚き一瞬動くのが遅れる。そんな炭治郎を庇って楓子が彼を突き飛ばし
「カハッ!?」
放たれた光弾の直撃を受け側の建物の壁を突き破って吹き飛ばされる。
「楓子さんッ!?」
「チッ!だがまあいい!こいつよりあの女の方が厄介だ!」
心配して駆け寄ろうとする炭治郎だったがその進路を塞ぐように鬼が立ちはだかる。
「くッ!」
「キヒッキヒヒッ!!」
鬼は獰猛な笑みを浮かべながら炭治郎に一歩、また一歩と歩み寄り
「雷の呼吸――壱の型」
「ッ!?」
「――霹靂一閃!!」
どこからか聞こえた声に鬼が反応し逃げるが一瞬早く善逸の日輪刀が鬼の右腕を斬り飛ばす。
「善逸!!」
「悪い炭治郎!合流が遅れた!」
炭治郎の隣に並んだ善逸は日輪刀を構えながら言う。
「もうすぐ伊之助と真菰さんも着く!足の速い俺だけ先に来たんだ!」
「チィッ!!増援かッ!こいつは分が悪そうだ!」
善逸の言葉に鬼は憎々しげに舌打ちし、大きく跳んで民家の屋根に乗る。
「待て!!」
追いかけようとする二人だったが鬼はニヤリと笑みを浮かべ民家の向こうに跳んで去って行く。
「くそッ!逃げられた!」
「とにかく真菰さん達と合流しよう――って、そういえば楓子さんは?」
「ッ!!そうだった!――楓子さん!!」
悔しそうに顔を顰める炭治郎だったが善逸の言葉に慌てて楓子が吹き飛ばされた建物に駆ける。
大穴の開いた壁を覗き込み中に呼びかける。
「楓子さん!!大丈夫ですか!?」
建物は幸い倉庫か何かだったようで人はいなかったようだが真っ暗で見通しが悪い。
「楓子さん!?」
「――うぅ…なんとか、ぶじ……」
「うぅ頭痛い…目ぇまわった~…」
「よかった!あの鬼の血鬼術は!?」
「痛みがないわけじゃない。でも、不思議と問題らしい問題がない」
「たく…なんだったんだか…」
「でも、実害がない血鬼術なんてありえない。何か影響が出てるはず」
「ふ、楓子さん……?」
聞こえる声は特に問題なさそうに聞こえる。しかし、どこか違和感を覚える炭治郎。
「炭治郎君、あの鬼は?」
「そ、それが逃げられてしまって……」
「ぷふー…最悪。うちのせいで取り逃がしたとか、マジ萎え……」
「い、いや、楓子さんのせいじゃ……」
「とにかく、すぐに鬼を追わないと……」
「ここで逃がしたせいで被害が出たら笑えない」
「おに、たおさないときけんがあぶない!」
「な、なあ炭治郎?」
「な、なんだ善逸?」
違和感を覚え首を傾げている炭治郎だったが、善逸に声を掛けられ振り返ると唖然とした様子の善逸の顔が目に入る。
「あ、あそこにいるの楓子さんだけなんだよな?」
「そ、そのはずだけど……」
「じゃ、じゃあ…なんで五人分の〝音〟がするんだよ……?」
「……は?」
善逸の言葉に炭治郎が呆けた時
「うしッ、ソッコー片付けたる」
「痕跡探して早めに見つけないと被害が出てからじゃ遅い」
「汚名挽回!楓子さんやったるから!」
「一応血鬼術の影響が出てないか十分に気を付けないと」
「がんばるます!」
楓子が暗闇の奥から姿を見せる。姿を見せたのだが――
「「は?」」
そのあまりに予想外の様子に炭治郎と善逸が呆け
「「「「「え?……えぇぇぇぇぇぇッ!?」」」」」
現れた楓子達はお互いの顔を見合わせ唖然とするのだった。
〇
「――と、言う感じで、このような状態に……」
『…………』
ここまでの経緯を語った炭治郎の言葉に小芭内、蜜璃、カナエが唖然とする。
「……おい、嘘だと言ってくれ。あの大好が増えた?五人に?控えめに言って地獄ではないか」
「ちょ、伊黒様それガチめに失礼なんだけど」
痛そうに頭を抱えながら言う小芭内に楓子の一人が言う。
「ていうか最悪なのはうちらの方だし」
「どういうことなの?」
楓子の言葉に蜜璃が訊く。
「ただ分裂したってわけじゃないみたいなんですよ」
「いつもの本調子の二割ってところか」
「しっかり能力も五等分って感じ。どこの花嫁だよってね」
「あれ、そういうはなしちがう」
「とりまうちらが戦うのがムリめな以上、マコちゃん達が上手くやってくれるように祈るしかないわな」
と、楓子達が話し合ってる様子を集まった面々は何とも言えない顔で見る。
「なんだか変な感じですね、同じ顔の人間が話し合ってるのって」
「若干一名同じとは言い難い奴が混じっているが……」
言いながら小芭内は五人の楓子のうち、ひとりだけ明らかに小さく幼い楓子に視線を向ける。
「なんであいつだけ?他の四人は瓜二つなのに……」
「あの楓子は置いておいても、これじゃあ見分けがつかなくてややこしいわね」
小芭内、カナエが言い合うのを聞き
「ふむ…確かにそれは問題だ」
楓子の一人が考える。
「……よし、こうしよう」
言いながらその楓子はみつあみにしていた髪を解く。
「こうやって髪型を変えればとりあえずは見分けられるでしょ」
「なるほど」
「それが一番手っ取り早そうだ」
「じゃあ私から~!」
言いながら楓子の一人が先に一人に倣って髪を解き左側にサイドテールで結ぶ。
「どうよ?」
「フツー」
「ちょぉ!?超絶美少女の楓子ちゃんの新たな魅力発見!って場面でしょ!!」
「うちら同じ顔してんだけど?」
「超絶美少女とか恥ずかしい」
「じゃあアンタらはどんな髪型にするのよ!?」
髪型をいじっていない二人にギロっと睨みながらサイドテールの楓子が言う。
「ん~?ま、別になんでもいいけどさ。とりまシンプルに――」
言いながらその楓子は自身の髪型をツインテールにする。
「こんなんでどう?」
「ツインテールとかあざとッ」
「はっ倒すぞ」
サイドテールの言葉にツインテールが睨む。
「たく……で?アンタはどうすんの?」
「髪型とかどうでもいいじゃん」
「まあまあイメチェンってことでさぁ~」
「たくッ……」
ツイン&サイドの二人の楓子から言われ考えたもう一人の楓子は
「シンプルに変えるならこうすりゃ手っ取り早いでしょ」
言いながら腰の日輪刀を抜いて自身の三つ編みをバッサリ斬り落とす。
「どう?」
日輪刀を鞘に納め切った部分を触って確かめてから短髪になった楓子は二人に視線を向ける。二人は唖然としながら
「おまッ!アホかッ!?もうちょいためらいとかないわけッ!?」
「髪は乙女の命でしょうがッ!?」
「別に髪くらいでそんなに言わなくても――」
「「言うに決まってんでしょ!!」」
「何その圧……アンタらも同意見?」
「私も髪型は頓着しない方だけど……さすがにそこまで思い切りよく断髪は無理だわ」
「ここまでのばすのたいへん」
「私の方が少数派かよ……」
短髪の楓子がため息交じりに言う。
「あの思い切りの良さは確かに大好だな」
「楓子さん変に思い切りがいいときありますもんね」
そんな様子に小芭内と炭治郎が言い、他の面々も頷く。
「じゃあつぎはフーコのばん!」
そんな短髪をよそに小さい楓子が名乗りを上げる。が――
「いや、アンタは必要ないでしょ」
「髪型変えなくても見分けつくし」
「サイズが違うし」
「ガーン!!!」
ツインとサイド、短髪の楓子の言葉に小さい楓子はショックを受けた様子であんぐり口を開ける。そのまま今にも泣きそうな顔でカナエ達の方に視線を向ける。が――
「まぁ…あなたは他の楓子とはまぎれない、かな?」
「差別化できているというか……」
「違うというか、完全に別物だろ。他と違ってお前だけちんちくりんだしな」
「ちんちくッ!?」
カナエと炭治郎はフォローしようと言うが小芭内の言葉に小さい楓子は
「うわぁぁぁぁッ!!フーコちんちくりんじゃないもん!!」
泣き出した。
「あぁ~あ」
「泣~かせた~」
「いくら真実でも言っていいことと悪いことがあるんじゃない?」
「さすがは伊黒様。人の心とかないんですか?」
「うぐッ」
四人の楓子の言葉に小芭内は言い淀む。
「ま、まあまあ……」
と、そんな面々を宥めながら蜜璃が泣いている楓子に歩み寄る。
「えっと…フウちゃん?」
「ぐすッ…なに……?」
涙をぬぐいながら蜜璃に顔を向ける。
「私は小さいフウちゃんも可愛くていいと思うわよ」
「……ホント?」
「ええ。それに、三つ編みのフウちゃんも一人はいないと私とのお揃いがいなくなっちゃうし……」
「「「「ッ!?」」」」
「フーコ、このままにする!」
蜜璃の言葉に四人の楓子達が目を見張り、そんな四人を尻目に小さい楓子は満面の笑みで答える。そんな二人を見ながら――
「あぁ……やっぱ私も三つ編みにもどそうかなぁ~?」
「新しい魅力発見するんじゃなかったのかよ。というかあざといとか言われたし、うちが三つ編みに――」
「あぁ!ズルッ!」
「ねぇ、この髪なんだけどどうにか元通りくっついたり――」
「するわけないでしょ?だからもっと考えろって言われてたんじゃない。と言うか私もやっぱり髪解いただけってのはシンプルすぎた気がするしここは私が三つ編みに戻す方向で――」
「アンタ言い出しっぺでしょ!何ならさっきからちょっと頭良さげだし眼鏡でもかけて差別化すりゃいいじゃん!」
と、四人はそれぞれ口々に言いあう。そんな四人に幼い楓子は顔を向け
「フッ」
「……はぁ?」
「お前、なに笑ろてんねん?」
「喧嘩売ってんの?」
「いくら自分でもしていいことと悪いことがあるからね」
嘲笑の笑みを浮かべる小さい楓子に他四人の額に青筋を立てる。
「貴様等、やっぱ全員大好だな」
そんな四人の様子に小芭内はため息をつき
「だが同時に、やはり少しずつ違うのが気になるな」
「あぁ、伊黒様も気付きましたか。その差異がこの血鬼術の内容を紐解く要因になりそうですね」
「これ、いったいどういう能力なんですか?」
ストレートの楓子に炭治郎が訊く。
「うん、皆さんもうお気づきだと思いますけど、私達五人は同じ〝大好楓子〟から分裂してるわけだけど、〝
「構成する要素?」
ストレートの楓子の言葉にカナエが首を傾げる。
「例えば恐らく私は〝大好楓子の頭脳面〟を担っているんでしょう」
「ちょっとちょっと待ってよ。それじゃあ私らがアンタよりバカみたいじゃん」
と、ストレートの言葉にサイドテールがツッコむ。が――
「いや、少なくともアンタはバカでしょ。アンタ、うちらが初顔合わせした時『汚名挽回』つってたでしょ?うち知ってっから」
「はぁ?それのどこが――」
「汚名は返上するものだ」
ツインの言葉にサイドが怪訝そうに言うのを小芭内がため息交じりに言う。
「……ワザとだし!!」
「嘘つけ馬鹿」
「バカっていうなバーカ!!」
と、サイドテールの楓子と小芭内がやいやいと言い争いをし
「よぉぉく分かった。さっきの話が本当なら、こいつは〝大好楓子の騒がしさ〟を担っているな」
「はぁ!?それを言うなら〝大好楓子の愛らしさ〟の間違いでしょ!?」
「おっと、俺としたことが読み違えたな。〝過剰な自意識〟の間違いだったな」
「誰が自意識過剰じゃァァァ!!」
「いや、うるせぇし」
なおも言い争うサイドテールの楓子と小芭内の様子にツインテールの楓子はため息交じりに言う。
「それで言えば、あなたはさしずめ〝大好楓子の毒舌〟かしら?」
「はぁ?うちが?どこが?」
「いや、さっきから要所要所で口の悪さ出てるからね?」
カナエの言葉に納得できない様子で言うがストレートの楓子に言われ頭を掻き
「ぷー……まあ自分じゃわからんし、人から見ればそういうもんなンかもね。知んないけど」
言いながらツインテールの楓子は肩をすくめる。
「それでいやこいつは一番わかりやすいでしょ」
言いながらツインテールの楓子は小さい楓子を指さす。
「こいつは〝無邪気〟とか〝幼稚さ〟っしょ。と言うかこの見た目と言動でそうじゃなきゃなんなのつー話だし」
「???」
指された小さい楓子はキョトンと首を傾げる。
「〝むじゃじ〟?〝よーち〟?」
「えっと…なんていうか、幼い、とか子どもっぽいって意味だよ」
「ほうほう、フーコおぼえた。でも、それちがう」
炭治郎の解説に頷いた小さい楓子はチッチッチッと指を振って否定し
「フーコおとなのしゅしゅじょ。こどもじゃない」
「しゅしゅ…え?」
「あー、たぶん『淑女』って言いたいんちゃう?」
舌ったらずの小さい楓子の言葉に首を傾げる炭治郎にツインテールの楓子が補足する。
「お?そのナリで『淑女』名乗るとは生意気だぞ~ウリウリ~」
「んあぁぁぁ!な、なでるな~!」
サイドテールの楓子に雑に撫で回され小さい楓子が抗議の声を上げる。
「まあ、それはさておき、あとは――」
言いながらストレートの楓子は残りの一人――短髪の楓子に視線を向ける。
「お前は何の大好なんだ?」
「…………」
伊黒の問いに短髪の楓子は考え
「……一つ考えられるとしたら、たぶん私は」
言いながら短髪の楓子は自嘲する様に笑みを浮かべ
「私は、〝大好楓子の後悔〟や〝罪悪感〟ってところだろうね」
「それは……」
「アンタらはわかるでしょ?」
「そりゃ……」
「まあ……」
「〝大好楓子〟にそういう感情があるってのは自覚してたしね」
頷く自分と同じ顔の少女たちの様子に頷き
「正直私の存在は今後〝大好楓子〟の邪魔になって来るんじゃないかって思ったけど――」
「はぁッ!?何バカ言ってんのッ!?」
言いかけた短髪の言葉はサイドテールに遮られる。
「言いたい気持ちは一緒だけど、このバカにバカって言われちゃ世話ないね」
「誰がバカだ、バァカ!!」
「お前に決まってんだろバァカ」
ツインテールとサイドテールが言い合ってるのを尻目にストレートが肩を竦め
「まあ、アンタの言わんとすることはわかるよ。罪悪感や後悔があれば、今後の激化する鬼との戦いで不利になることもあるかもしれない。でも、〝アンタ〟がいなくなれば〝大好楓子〟は鬼舞辻無惨と同じバケモノに成り下がる。本当にそれでいいと思う?」
「……まあ、同感だね」
ストレートの言葉に短髪が肩を竦める。
「と言うか、全員話を最後まで聞きなよ。私は初めからそのつもりだったんだから」
「「「え?」」」
「そもそも、どうやったら戻れるかもわからないのに、器用に私だけ元に戻らない、なんてことができるわけないだろ?」
「「「あぁ……」」」
「さんにんとも、はやとちち」
申し訳なさそうに目を逸らす三人に幼い楓子がジト目で見る。
「う、うるさいなぁ……!」
「お前だってそう勘違いしたんだろ……!?」
「してない、フーコこいつのきもちわかってた。こいついうとおりじぶんのことじゃまだとおもってた。でも、ちゃんとじぶんがいないとだめってわかってる」
「ちょ、なんで?」
「なんでそんなこと分かるのよ?」
「フーコ、おまえらのかんがえてることきこえる」
「「「「はぁ!?」」」」
幼い楓子の言葉に四人の楓子は怪訝そうに眉を顰める。
「フーコ、エスパー。おまえらのかんがえおみとおし」
「「「「…………」」」」
自信満々に胸を張る幼い楓子の様子に四人は顔を見合わせ
「なんだ、子どもの妄言か」
「ビックリして損した」
「〝
「子どもは時々真理をつくことを言うし、今のもそういうことか」
「ちがう!フーコほんとに!!」
「はいはい、わかったわかった」
「お前がそう思うんだらそうなんじゃね?知らんけど」
プンプン怒りながら言う幼い楓子をおざなりに応える様子に
「うぇぇぇん!!!」
「あらら……」
幼い楓子は蜜璃に泣きつく。
「たく、小さいことをいいことに蜜璃さんに甘えて……」
「うちよりよっぽどこいつの方があざといだろ……」
「同じ自分にこういう側面があるっていうのを見るの、なんか変な気分だわ」
そんな様子に短髪とツインテールとストレートがジト目で言うが
「何言ってんの?甘えたいなら甘えりゃいいのに。こうやって」
と言いながらサイドテールは
「蜜璃さん私も~!」
「あらら?こっちのフウちゃんも?えへへ~、ギュ~!」
「「「ッ!?」」」
抱き着くサイドテールに三人が目を見張る。
「いや、貴様らもともとはあのくらい普通にやってただろ?」
「たぶんそういう甘え上手な部分があの娘に分かれちゃったから他の子は上手く甘えられないんじゃないかしら?」
歯噛みする楓子達の様子に小芭内とカナエが言い
「なるほど、納得だわ」
「元の私がなんであんな風にできてたかわからない……」
「あんな恥も外聞もなく甘えるとか無理だわ」
悔しそうに言う三人にサイドテールがやれやれと肩を竦める。
「ちょっとちょっと、同じ私として情けないぞ~」
「いや、だからそれが出来たら苦労は――」
「や~いや~い、ヘタレ~!悔しかったらお前らも甘えてみろ~。あ、ごめ~ん、できないからそうやって指くわえてるんだったね~」
「(ブチッ)てめぇ同じ自分だからって何言ってもいいと思ってんなよ」
「へ?」
サイドテールの煽りにツインテールの堪忍袋の緒が切れたのか腰の日輪刀を引き抜く。
「やろう、ぶっ殺してやる!」
「きゃあ、自分殺し~!!」
「あの私、意外とこらえ性が無いんだな」
「もうちょい冷静になりなよ」
「じぶんどうしのあらそい、みにくい……」
サイドテールとツインテールの自分が追いかけっこするのを他三人がやれやれと眺め、そんな五人をさらに小芭内たちが苦笑いで見ている。と――
「し、失礼します!!」
突如慌てた様子の声が聞こえ、部屋に輝利哉が飛び込んでくる。
「そ、その、楓子さんが鬼の血鬼術で大変なことになったと聞いてきたんですが――」
そうして肩で息をしながら部屋を見渡し
「え?」
その光景に固まる。
「あれ?輝利哉くんじゃ~ん!」
「ふ、楓子さん……?」
そんな輝利哉にサイドテールが歩み寄り
「何?うちのこと心配して来てくれたん?」
「ふ、楓子さん!?」
落ち着いたらしいツインテールも歩み寄り
「わざわざご足労いただいて申し訳ありません」
「こ、こっちにも楓子さん!」
ストレートも歩み寄り
「まあ…こんな感じだけど、私達はとりあえず大丈夫だから……」
「うわぁ!楓子さんがいっぱいだぁ!」
歩み寄る短髪を見て他の三人を見比べながら興奮した様子で輝利哉が言う。
「きりやくん、まことにいちゃんみたいになってる」
「こっちにも楓子さん…楓子さん?」
「なんでぎもんけい?」
一人だけ様子の違う楓子に首を傾げる輝利哉に幼い楓子はムッとするのだった。
その後、真菰達の活躍により原因の鬼が討伐され、楓子は元の一人に戻ったのでしたが――
「伊黒様、私今回のことで思い知りました。自分にできるからって他人に強いるのは酷ですね。伊黒様には今後とも頑張ってほしいですが、無理のない範囲で蜜璃さんとの仲を深めてください」
「おい、なんだそれは。その生温かい目をやめろ」
分裂していた五人分の記憶を引き継いでいる楓子は少しだけ小芭内に優しくなりましたとさ。
と言うわけで番外編でした!
いかがだったでしょうか?
五人に増えてしまった楓子ちゃんによるドタバタでした。
ちなみにこの増えた楓子五人はそれぞれ楓子のイメージCV.の種崎敦美さんが声を充てていたキャラを元ネタにしています。
頑張って寄せてみましたが私の拙い文章力ではうまく描写しきれなかったと思います。一応イメージイラストを描いてみましたので参考にしてください。
答え合わせは次回に!
【挿絵表示】
そんなわけで今回はこの辺で!
次回のお話でまたお会いしましょう!
~大正コソコソ噂話~
今回の鬼の血鬼術はストレートの楓子のほぼ予想通り受けた相手を構成する要素に分裂させる能力でした。その被術者の力や技能なども同じく分裂する上に性格もその構成する要素それぞれに顕著になるので、性格の不一致などで同じ自分とはいえすぐには連携が取れなくなるというものでした。
以下、分裂した楓子それぞれの詳細です。
〇ストレートの楓子
論理的要素が顕現した楓子。冷静沈着で頭の回りの良さが一番引き継がれている。
〇サイドテールの楓子
明るさが顕現した楓子。距離感も近く騒がしいので人によってはウザく感じる。一番バカっぽい。この楓子がいる影響で他の楓子は比較的ダウナー寄りになっている。
〇ツインテールの楓子
世話焼き要素の顕現した楓子、が、同時に口の悪い部分も引き継いでいるのでそちらの方が認識されやすい。沸点は他の楓子より低め。
〇短髪の楓子
悩み部分が顕現した楓子。他よりも思い切りがいいが、他より病みやすい。前世からのトータルの年齢に一番精神年齢が近い楓子。
〇幼い楓子
大好楓子のコア部分。大好楓子を構成する要素が分裂したことで残った要素のため他に比べて思考が幼くなっている。コア部分のため他の自分と繋がりがあり思考が読める。