更新遅くなり申し訳ありません!
今回は以前にアンケートでも告知していた蜜璃と楓子の入れ替わりネタです!
入れ替わった二人はどうなるのかお楽しみ下さい!
「甘露寺ッ!!」
萌柱邸、その一室に小芭内は慌てて飛び込む。
「ッ!?」
部屋の中、ベッドの上に座っていた蜜璃は驚いた様子で小芭内を見つめ
「伊黒さ――ん、どうしたの突然?」
「どうしたじゃないだろう!?詳しくは知らんが、血鬼術の攻撃を受けたと聞いて慌てて!」
「あぁ~……大丈夫!ほら、この通りピンピンしてるから!」
「そ、それならいいが……」
笑顔で力こぶを作って見せる蜜璃に小芭内はホッと安心した様子で頷く。
「……フフ」
「ん?どうかしたか?」
微笑んだ蜜璃に小芭内が訊く。
「ううん、なんていうか……愛されてるなぁ~って」
「ッ!?――そ、それはまあ…う、うむ、当たり前だろう」
蜜璃の言葉に小芭内は息を飲むが、すぐに照れながらも頷く。
「当たり前って?」
「え?」
「ちゃんと、言葉にしてほしいなぁ~」
「ッ!?」
蜜璃の上目遣いの言葉に小芭内は息を飲み
「……どうしても、か?」
「うん、聞きたいなぁ~」
「~~~~~ッ!」
蜜璃の言葉に小芭内はモゴモゴと言い淀みながら
「そ、その…だな……」
「うんうん?」
「あ、愛しているぞ、甘露寺」
顔を耳まで真っ赤に染め照れて顔をそむける小芭内の言葉に蜜璃は人知れずニンマリと不敵な笑みを浮かべ
「ありがとう、ちゃんと言ってくれて嬉しいわ」
「あ、ああ」
すぐにいつものふんわりとした笑みに変えた蜜璃の言葉に小芭内はホッと息をつくが
「でも……」
「ま、まだ何かあるのか!?」
さらに蜜璃の言葉に小芭内は訊き返す。
「その……こういう時は、名前で呼んでほしいなぁ~って……」
「ッ!?」
「わ、私達婚約してるんだし、そのうち結婚したら私は『甘露寺』じゃなくなるんだから……」
「そ、それはそうだが……」
「それに、ちゃんと名前で呼んでもらった方が気持ちが伝わるかなぁって……」
「うぐッ……」
蜜璃の二度目の上目遣いによるおねだりに小芭内は言い淀み
「ダメ…かしら?二人きり時だけでも……ねぇ、小芭内さん?」
「ッ!?」
おずおずと自身の名前を呼ぶ蜜璃に小芭内は息を飲み
「わ、分かった。そのかわり、二人きりの時だけで勘弁してくれ――蜜璃」
「ええ!ありがとう、小芭内さん!」
頬を掻きながら照れた様子で言う小芭内に蜜璃は嬉しそうに微笑み
「――と、このようにすれば伊黒様との仲も深めることができるんですよ、蜜璃さん」
「……は?」
一瞬で別人の様な雰囲気に変わった蜜璃の予想外の言葉に呆けた小芭内だったが
「なるほどッ!参考になるわ!」
「はッ!?」
ベッドの下からひょっこりと現れた楓子の姿にさらに唖然とする。
「お、大好ッ!?き、貴様いつからそこに!?」
「あぁ、違いますよ、伊黒様」
「はぁッ!?みつ――甘露寺、何を言って!?」
驚く小芭内だったが蜜璃の言いようにさらに驚かされるが
「私が、大好楓子で――」
「私が、甘露寺蜜璃なの」
「………は?」
その荒唐無稽な言葉に小芭内は意味が分からず呆ける。
「伊黒様は詳細を知らなかったようですが、実は昨晩私と蜜璃さんで出向いた任務で――」
〇
鬱蒼とした森の中、月の光も差し込まない夜の闇。二人の人物がその闇を駆け抜け眼前を逃げる鬼を追う。
「くッ!あの巨体でよくこうも俊敏にッ!」
「焦っちゃだめよフウちゃん!落ち着いて追い込むわ!」
「はいッ!」
蜜璃の言葉に楓子は頷きながら木の幹を蹴り大きく跳躍する。
突然の楓子の軌道変更で進行方向を塞がれた鬼は飛び退くように避ける。
しかし、その先にもすでに蜜璃は回り込んでおり
「恋の呼吸――」
蜜璃はまるでリボンのような特殊な日輪刀を振るい、しかし、その瞬間対する鬼はニヤリと獰猛な笑みを浮かべ
「血鬼術――」
「ッ!?危ない蜜璃さん!!」
蜜璃に向けて伸ばされた右手に楓子は慌てて鬼に向けて駆け
「ッ!?」
それが、罠であったと気付いた時には遅かった。
鬼は獰猛な笑みを浮かべたまま左手を向かってくる楓子に向け
「――心身転変」
瞬間鬼の両手が眩く爆ぜ
「「かはッ!?」」
同時に楓子と蜜璃は弾き飛ばされ地面を転がる。
「キヒヒッ!」
鬼はそんな二人を見て短く笑みを漏らし、闇の中へと消えていく。
「く…待て……ッ!」
そんな鬼を追って蜜璃がヨロヨロと立ち上がるが、鬼は去った後だった。
「くッ…逃げられたッ!」
蜜璃は悔し気に顔を顰めて頭を掻く。
「フウ…ちゃん……?」
「すいません、蜜璃さん。あそこで焦らず――」
呼びかける声に蜜璃は申し訳なさそうに振り返り
「……え?」
目の前の光景に唖然とする。
「フウちゃん…なのよね?」
蜜璃の視線の先で同じく唖然とする楓子が恐る恐る訊く。
「蜜璃さん……?」
蜜璃もまた、楓子に向けて訊く。
「「…………」」
二人は唖然としたまま見つめ合い、次いで自身の身体を確かめるように見渡す。
両手、両足、着ているものや自身の髪の毛を探るように触り――最後にもう一度お互いに視線を向ける。
「私…だ……」
「私がいる……」
二人は揃って呆然と呟き
「私達ッ!」
「血鬼術の影響でッ!」
「「入れ替わってる~ッ!?」」
〇
「――と、まあそんなわけで、私は身体は蜜璃さんなんですが中身は大好楓子で――」
「私は、身体はフウちゃんで中身は甘露寺蜜璃になってるの」
「な、なるほど……」
蜜璃――中身は楓子――と楓子――中身は蜜璃――の言葉に小芭内は納得した様子で頷くがその顔は何とも奥歯にものが挟まったようななんとも形容しにくい顔をしている。
「どうかしましたか、伊黒様?」
「いや、事情は分かったんだが……」
「どうしたの?体調でも悪いの?」
「いや……なんというか違和感がすごくてなぁ……」
「見た目は完全に甘露寺なのにしゃべると口調や雰囲気は完全に大好になるし、こっちの大好はしゃべると完全に甘露寺の口調と雰囲気になるのが…なんとも言えない違和感でなぁ……」
「あぁ~……」
「なるほど……」
小芭内の言葉に二人は納得した様子で頷く。
「と言うか、逆にさっきまでのお前はどうしてああも甘露寺になり切れていたんだ?」
「いやいや、私を誰だと思っているんですか?」
小芭内の言葉に
「私は蜜璃さんの継子として四年間寝食を共にしていたんですよ?蜜璃さんの雰囲気を模倣するくらい――簡単にできるわ」
「「ッ!?」」
言葉の途中で急に雰囲気を変える
「す、すごい!一瞬で雰囲気が変わった!」
「表情や口調までそっくりそのまま甘露寺になった!」
「どう?すごいでしょ?全然気づかなかったものね、小芭内さん♡」
「ッ!そ、それは……って、ちょっと待て。そう言えばそもそもなんでお前は甘露寺のふりをしていた?何故甘露寺は隠れていたんだ?」
「そ、それは……」
「蜜璃さんから相談されたのよ。小芭内さんとの仲を深めたいって」
「ちょ、フウちゃんッ!?」
「だから、現状を利用して実際にやってみたの。小芭内さんって奥手だからこっちから積極的にいいと思って~」
「だ、誰が奥手だッ!?」
「でも、普段言わない『愛してる』って言葉も引き出せたし、名前呼びもしてもらえたもん。十分大成功じゃないかなぁ?ねぇ、蜜璃さん?」
「そ、それは…うん……/////」
「ぐッ……」
「と言うか、お前はいつまで甘露寺の真似をしているつもりだッ?」
「あ、話題逸らした」
小芭内の指摘に一瞬元の雰囲気に戻った
「私、気付いちゃったの。このままでいれば小芭内さんは怒り辛いから私に強く言えないって。だから入れ替わっている間はこの感じのままでいようかなぁって思ってるわ」
「ッ!?き、貴様!!」
「――ッ」
「~~~~ッ!」
そんな小芭内の睨みに怯えるそぶりを見せる
そんな小芭内の様子に
「まあまあ、騙しちゃったお詫びに小芭内さんにもご褒美あげるから」
「ご褒美、だと?」
小芭内は不審そうにジト目を向けるが、そんな視線を受けながら
「私の残り香、嗅いでいいよ~」
「…………」
「ちょ、待ってフウちゃん!流石に体臭を嗅がれるのは恥ずかしいわ!」
「まあまあ、身体接触を伴ったご褒美をすると蜜璃さんに悪いかと思ったので。それに伊黒様も喜んでるみたいだし」
「なッ!?そんなことは――」
「とぼけてもダメっすよ。私が髪を搔き上げたとき、いつもより呼吸が深くなったの気付いてるんですから。ね、蜜璃さん?」
「え?」
「そ、それは……/////」
「~~~~~ッ!?」
顔を赤く染める
「やれやれ、私達は呼吸で戦う剣士、その中でも上位に位置する実力を持ってるんですから相手の呼吸の細かな様子だってわかるでしょ」
「んぐッ」
肩を竦める
「そんなことも咄嗟に分からなくなるなって小芭内さん可愛い~」
「ぐぬぬ……」
ニマニマ笑う
「……その、ごめんね、伊黒さん」
「甘露寺?」
そんな二人の様子に
「その、私がお願いしちゃったから騙すようなことしちゃって……」
「そんなこと……」
「で、でもね!フウちゃんに相談したことは本気、と言うか……もちろん、伊黒さんが私を大事にしてくれようとしてることはわかってたけど、せっかく婚約したんだからもっと伊黒さんと仲良くなりたい…と言うか……だから……」
「甘露寺……」
ワタワタと焦った様子で言う
「謝るのは俺の方だ。すまない、甘露寺。君のことを思うあまりに物足りなく感じさせてしまったようだ」
「伊黒さん……」
「そ、そうだな、まずは大好に誘導されたことではあるが、二人きりの時には名前で呼び合っても、いいだろうか?」
「ッ!も、もちろんよ!」
小芭内の提案に
「そ、そうか…!じゃ、じゃあ改めてよろしく頼む、み、蜜璃」
「ええ、お、小芭内さん!」
「「////////」」
見つめ合い二人の世界を作り上げていく小芭内と
そんな光景を見ながら
「お――オロロロロロロ~~~~ッ!!」
ベッド脇の屑籠に向けて盛大に吐いた。
「ふ、フウちゃんッ!?」
「い、いきなりどうしたッ!?」
「ず、ずびばぜん…た、耐えられなくて……」
口元を手拭いで拭いながら涙目で頷く
「伊黒様が蜜璃さん意外と…と言うか、〝私〟とイチャついてる光景が解釈違い過ぎて吐き気を催してしまいました……」
「よくわからんが、難儀な体質だな」
「と言うか、私ここに来てようやく恐ろしい可能性に気付きました」
そんな小芭内の憐みの視線を流しながら
「も、もしも、もしも仮にこの件の鬼が倒されなかったら?倒せても、元通りに戻れなかったら?――私は一生、伊黒様とイチャつく〝私〟と言う光景を見せ続けられるんじゃないですか?もっと言えば、いつか伊黒様と結婚する〝私〟!果ては伊黒様と〝私〟との間に生まれる子どもを見る羽目になるのでは!?しかも、その場合は〝痣〟が発現している伊黒様と〝私の肉体〟によって残されるお二人の忘れ形見を私が引き取ることになるのでは!?そうなったら私は大事な二人の忘れ形見であり解釈違いの結晶という二律背反を育て続けなければならなくなるんですよ!!なんて恐ろしい!!」
「お前そこまで思考が回るのすごいな!」
「逆に聞きますけど伊黒様!本当にあなたは〝私〟の見た目した蜜璃さんを愛せますか!?」
「それは……」
「無理でしょ!!愛があっても絶対無理でしょ!!無理だと言ってください!!できるとか言われたらいろんな意味で複雑です!!」
「………」
「……すまん、無理かもしれん!」
「いいんですよ、当然です」
小芭内の申し訳なさそうな言葉に
「と言うわけで伊黒様!この原因になった鬼、倒すの手伝ってください!!」
「ああ、任せろ!」
力強く頷きあった蜜璃と小芭内は力強く握手する。握手するのだが――
「……/////」
「見た目蜜璃さんだからって手握って照れないでください。私と握手して照れる伊黒様ッ…とかッ……お――オロロロロロロッ!!」
協力体制の二人は前途多難だった。
その後、紆余曲折の後
「も、戻った!!」
「やったわね!!」
「本当に…本当によかった……」
無事に元の肉体に戻ることができたのでした。
と言うわけで番外編でした!
入れ替わっているので表記分かりづらい描き方になってしまいすみません!
楽しんでいただけたでしょうか!?
楓子ちゃんの悪乗り&難儀な性格によるしっぺがいしな話となりました!
ホント、元に戻れてよかったですね(笑)
さてさて、今回は少遅れてしまったのでお詫びもかねて以前に描いた他の作品に転生した楓子のイラストです。
【挿絵表示】
そんなわけで今回はこの辺で!
次回の番外編は『大好楓子の事件簿』を予定しています!
次回もお楽しみに!
~大正コソコソ噂話~
今回の鬼の血鬼術は複数の人間の精神をシャッフルする能力でした。元に戻るために共闘した楓子と小芭内は倒しても元に戻れない可能性を考慮し鬼にもう一度血鬼術を使わせるように誘導しました。結果その作戦は成功。楓子と蜜璃は元に戻ることができました。