ISーそれでも僕は諦めないー IS×テラフォーマーズ 作:おひつじ
〜プロローグ〜
20xx年2月、某有名ホテルの一室にてある男と少年が会合していた。男は初老とも言ってよい年齢では有るが、スーツをしっかりと着こなし肩を張って椅子に座り煙草を吸う姿はとても若々しく見えて姿見だけでは年齢を測りにくい。そんな彼は今や先進国の中でも有数の国力を持つ日本を裏で取り仕切っている男である。
ではそんな彼と向かい合っている少年はというと、歳は15,6といったところか。背は年齢からしたら高めで、身体つきはその学生服越しにもわかるほど筋肉質で鍛え上げられている。顔つきは彫りが濃いがまだ何処かあどけなさを残している。そんな彼は虚ろな、まるで遠いとこを見ているかのような瞳で煙草を吸う男を見つめている。
「……ふぅ、いきなり呼び出してすまなかったね」
煙草を吸い終えた男が吸い殻を灰皿へと運びながらゆっくりと話を切り出す。
「今日君を呼んだ理由は他でもない。昨日この国で君を除けば初となる男性IS適性者が現れた。名前は織斑一夏といいあのブリュンヒルデの弟だ。歳は15で君と同い年となるな」
男は一息つきはなしを続ける。
「今回の件はかなりイレギュラーな自体となったが安心して欲しい。君の公表は予定通り明日行う。ーーまぁまて、むしろ今回の件で君にとってもメリットが有る。イレギュラーが一人か二人かでは当然ながら世界の反応も変わってくるだろう。前例ができた以上今後も適性者が現れる可能性があると捉えるはずだ。これのおかげで君にかかる負担もだいぶ減らせるだろう」
「……だといいんですが」
出鼻を挫かれた少年は平坦な口調で一言返す。
「それで、だが先程も言ったが今後の事は安心して欲しい。予定どうり明日、日本政府により織斑一夏より先に発見されていた男性IS適性者、そして日本代表候補生として君のことを公表し明後日に記者会見。そして4月からIS学園へと通うことになる」
「むしろ最後のは安心できませんけどね」
「その通りだな。IS学園という一種の独立国家に入ることで君は確かに「外」からに関しては安全だろう。ただそれは同時に我々もあまり手出しはできないということだ。もちろんできるだけ手助けはするがな。本来一番君が気をつけるべきことは君の命についてなんだが……そこは問題ないだろう?君には力があるのだから。気をつけることはむしろ……」
ハニートラップ?と少年はやや躊躇いがちに呟く。
「そうだ。君の遺伝子が外に漏れるということは一番危惧しなければいけないことだ。なにせ世界をひっくり返しえないことだからな」
「はい、そのことは十分理解しています。それはもう痛いほどに」
「うむ、そうだろな。後はまぁ問題ないだろう。今日話すことは以上だ。明日以降ハードなスケジュールになるのだから今日はもう戻ってかまわない」
少年の皮肉を混じらせた言葉も流石にその世界を歩み続けてきた男には通じない。そのことに苛立ったのか、少年は先ほどよりも強く、ただ平坦な口調のまま話を切り出した。
「ねぇ、御手洗さん。どうせなら記者会見で面白いことしません?僕も考えがあるんです」
「ふむ、なんだね?」
「例えば僕が記者会見で『k国は個人的に昔から嫌いなので絶対に情報提供はしません』とか言うじゃないですか?そうすると向こうも困るでしょう?向こうのお偉いさんがへこへこと頭を下げに来るのとか見たくありません?後は最近中が良くないI国とかにーー」
「もういい、私が悪かったからやめてくれ。君の言葉しだいでは今や戦争にまで発展しかねないのだよ。シャレになっとらん」
「別にシャレにするつもりは無かったんですけど……」
世界どころかリアルにも喧嘩を売りかねない危ないセリフを吐く少年に男、御手洗は両手を挙げて降参のポーズを取りながら話す。
「まぁ君が我々を恨んでいることは十分理解している。この償いは必ず然るべき形ですると約束しよう」
「べつに恨んではいませんよ。自分が逆の立場の時を考えると世界の均衡を守るためには仕方ないことだというのも理解しています」
「そう言ってくれると嬉しいが勘違いしないで欲しい。君は歳以上に聡明だからな、私達は決して君を不幸にするつもりはない。君にここまでの仕打ちをしてきて言える言葉ではないかもしれないが君も一人の人間だ。君が幸せになるのを奪う権利を持つものはこの世界に存在しない」
少し間をおいて少年はありがとうございますとだけ言うとホテルの部屋から出て行った。残された男は新しい煙草に火をつけながら呟く。
「……ありがとう、か。我々には彼に感謝を受ける権利などもうないのだがな」
男は少年にならたとえ命を奪われようとも構わないと考える。彼の未来を奪いつづけるということはそこまでされようとも文句は言えないと。
男は煙草の吸い殻を灰皿にすてると何処かに電話をかけ、間も無くして自分もその部屋を後にした。
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