グランサイファーに乗ったミレイユに名もなき復讐者が迫る。
グラブルのイベント「アルケミスト・デザイア」とミレイユ&リゼットのフェイトエピソードがモニョったので、その後の話を妄想してみました。
イベント閲覧後推奨。フェイト閲覧後推奨です。
書いた人間はイベントに否よりの人間です。

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錬金術師と名もなき復讐者

 空が暗くなったころ、騎空艇グランサイファー内の一室、男女が緊張した面持ちで向かい合っている。

 

「……で、なんの話よ? リゼットを外に出してまで二人で話したいだなんて」

 

 いつもミレイユと一緒にいる家族のリゼットすら追い出して二人で話をしたいなどと言い出した男に期待を寄せつつ、金髪の少女ミレイユは男に問いかける。

 男は、黙ったままミレイユを見つめたままだ。

 

「ねぇ、なんとか言いなさいよ」

 

 ミレイユがさらに問い詰めたところで、男は一つ大きな息を吐く。

 

「……いや、すまない。少し騎空団の世話になったころを思い出しててね」

 

 男は、昔を懐かしむように遠い目をしながらそう答えた。

 その目の下のはいつものようにクマができている。

 

「ああ、当時のあなた寝るたびに悪夢にうなされてたのだったわね。いつだったか、私たちとあなたで依頼に行ったとき、寝ぼけたあなたに武器を向けられて大変だったわ」

 

 喋った内容と裏腹に、少女の顔には笑顔が浮かんでいた。

 

「……それを言ってくれるなよ。自分だって反省はしてるんだ」

 

 男は下を向き、しばらく片手で顔を隠した後、ミレイユを見て、また喋りだす。

 

「団長のことを思い出してね。よくあの当時の自分を拾ってくれたなと……。おかげで君と会えた」

 

「私も団長には感謝しているわ。あの時、私たちを誘ってもらえなければ、……あなたと出会うこともなかったからね」

 

 ミレイユは顔を赤くし、そっぽを向きながらそう答えた。

 

「……そうか。本題に入ろうか」

 

 男は懐から小さな箱を取り出し蓋を開ける。

 そこには、白い2つの指輪が納められていた。

 

「まぁ……なんだ……そういうわけだ」

 

「ちょっと、そういうセリフはキチンと言ってほしいんだけど!」

 

 金髪の少女は立ち上がりながらそう叫ぶ。

 ほほが吊り上がらんとするのを必死に抑えながら。

 

「……自分とペアの指輪を付けてくれ。……これくらいで勘弁してくれ。」

 

 男は片手で顔を隠しつつ、下を向きながらそう答える。

 

「あなたが私に指輪を嵌めるくらいはしてくれるのかしら?」

 

「わかったが、少し待ってくれ」

 

 そういいながら男はナイフを取り出し、自分の指を浅く切る。

 

「ちょ、ちょっと何してるのよ!」

 

 慌てるミレイユを無視して、男は片方の指輪に血を付ける。

 白かった指輪は、徐々に黒く染まってゆく。

 

「この指輪は血を付けることで魂の色に染まるのだとか。それを互いに持ちあうことで……まぁ……そういうことだ。……しかし、あまり綺麗な色とは言いにくいな」

 

 男は途中で言葉を濁しつつも、話題を変えるように色について触れる。

 

「光沢のある黒、私は嫌いじゃないわよ」

 

 ミレイユもナイフを借り、指輪に血を付ける。徐々に金色に染まってゆく。

 

「金色だけど、ちょっとくすんでないかしら。もう少し輝きがあったほうがいいのだけど」

 

「あまり派手なのはちょっとね。これくらいがいいんじゃないか。……ほら、指を」

 

 男は黒い指輪を女の左手の薬指に無言で嵌める。

 

「なにか、ロマンチックなセリフでも言いながら嵌めてほしかったのだけど……。まぁいいわ」

 

 少女は口ではそういいつつも、目を輝かせながら、白い指にはまった黒い指輪を見る。

 

「……っと、ほら。あなたも指出して」

 

 数秒間、指を見つめていたミレイユは思い出したように男に催促する。

 

「私は、罪深い人間だし決して許されない人間なのかもしれないけど……、あなたのこと好きよ。あなたと一緒に生きていきたいと思ってるわ」

 

「ああ」

 

 ミレイユは想いを口にしながら、指輪を嵌めた。

 女がそうしたように、男も自身の左手の指輪を見つめる。

 

「ようやく終わったか……」

 

 男はそういうと、大きく息をついた。

 

「気恥ずかしいのはわかるけど、そう息ばかりつかないでよ。それに、終わりじゃなくてこれから始まるんじゃない」

 

「ああ、そうだな。……これから始まりだな」

 

 男は不要になった机の上のナイフに手にとり……

 

 

 

 自身の首を切り裂いた。

 

 

 

「えっ……」

 

 血を浴びながら、何が起こったのかわからないと数秒呆けた顔でいたミレイユだが、腰に下げた回復薬を男にかけたのち、扉を開け放ち、助けを呼んだ。

 

 

***

 

 

 まずは、急にこんなことをしてしまい、迷惑をかけた団員の皆に謝りたい。

 すまなかった。

 この手紙は遺書というやつだ。色々と説明すべきことがあるが、死んだ後でないと説明できないからな。

 

 今回の事柄に関して理由を語るには、まず自分の経歴を明かさなければならない。

 自分は、ミレイユとリゼットが滅ぼした街の出身であり、傭兵として出稼ぎに出ていた。

 帰ってきて街が滅んでいたことに驚きつつ探索したところ、姉のような女性の日記に街を滅ぼした原因とミレイユ・リゼットの名前が書かれていたが、ミレイユとリゼットの姿形がわからなかった。

 迷った末、自身に街に漂う怨念の一部を降ろすことにした。

 愛してくれた父や母、一緒に遊んだ幼馴染、よく面倒を見てくれた姉のような女性、内緒で形が崩れたものをおまけとしてくれた近所のお菓子屋、街のみんなの無念をそのままにしておけなかった。

 知っての通り、自分は土地や物に残された強固な感情から力を引き出し、弾として放ったり、武具の強化したりなどして戦う。

 それらの感情を自身の強化に用いなかったのは、単純に危険ということもあるが、すでに怨念を降ろしていたため、重ねられなかったからだ。

 怨念を降ろした術式は能力向上よりも記憶の再生を目的としている。

 皆には、過去のトラウマとなった魔物に街を破壊された出来事をいまでも毎日のように夢見ると嘘をついていたが、正しくは、街の皆の殺害された場面を夢として追体験していた。

 おかげで、復讐すべきカタキの顔は毎日見ることができた。

 

 ミレイユとリゼットを探して旅している最中、魔物に殺されたかけた自分を助けてくれた団長には本当に感謝している。その上、眠る度にトラウマを見てうなされると言ったにも関わらず、自分のような男を団にまで誘ってもらえるとは思わなかった。一番、驚いたのはもちろん、その団にカタキがいたことだが。

 すぐに殺そうとも思ったが、団員のレベルが高すぎた。錬金術の開祖、カリオストロなんて特に反則だ。錬金術はさっぱりわからないから実際にできるかはわからないが、殺したところで予備の体を弄って、ハイ、蘇生完了などと言い出しかねない。

 

 ある時、ミレイユとリゼット、自分で依頼をこなすという絶好の機会が来た。自身の体に降ろした怨念の力が一番強まるのは記憶の再生直後だ。そのタイミングで怨念の後押しを受け、獣のような叫びをあげながら全力で殺しにかかったが、二人に少々の手傷を与えた程度ですぐにリゼットに抑えられた。

 復讐できぬまま終わるのかと思ったが、意味ある言葉ではなく、獣のように叫んでいたためか、トラウマで寝ぼけて暴れたで済まされた。

 さらに、知っている通りに、ミレイユとリゼットが気にしていないなどと言い出して、再び彼女たちと組むことになった。眠っている際の記憶の再現中に、下手にミレイユやコゼットの名を呼ぶと台無しだと自分を抑えることを試みなければならなかった。寝ている際の様子は流石に自分ではわからないが、周りの話を聞く限り、うなされるのがマシにはなっていたようで一安心だ。

 失敗の一件だったが、ミレイユとリゼットは、村のカタキではあるが、襲い掛かった自分を許した上また一緒に依頼をこなすなど、比較的善性な人物なのだと思った。とはいえ、復讐は止められなかった。

 

 直接殺せないならと次に考えたのが、今、ミレイユがつけているだろう指輪だ。

 その指輪には、自分に降ろした怨念と自分の思念を込めている。眠る度に、殺された街の人々の記憶を体験できるはずだ。恐らく、普通に外せるはずだし、それ以外の力は持たないと思う。

 カタキが善性だと思ったからこそ、とれた手段だ。

 

 本来は、片方が死んだ際にもう一方の指輪に記憶の一部を込めることができる魔法具だ。近距離しか発動せず、たいていは普通に話せばいいやら、交換した本人した確認できないということでほぼ使い道のなかった魔法具だが、それを一部改造して使用した。術式などは自室の鍵のかかった棚にまとめているので確認してくれ。ただ、この手の怨念などは予想外に力を持つことも多い。手数をかけるが、団員の識者にでも預けて調査してほしい。

 

 元ホムンクルスでカリオストロが人間にしたというリゼットは通常のヒューマンと違いがあるかもしれず、術式に不安を覚えたために、対象はミレイユとした。

 手順に、指輪にお互いの血をつけ、それぞれに指に嵌めさせるという飛ばせない工程があるため、それが可能な恋人関係を目指した。 

 復讐のため、ミレイユに近づいたが、精神的に幼く意外と純粋であるという印象を受けた。自分のような男を簡単に身近に置くのだから。

 よく顔を隠していたが、恥ずかしいのではなく、表情をとりつくろえているか不安だったからだ。何も知らない子供をだましているような感覚があり、自身への嫌悪感がすさまじかった。

 

 まとめると、復讐のためにミレイユに近づき、殺害場面を追体験できる指輪を残すために自分は死んだわけだ。

 馬鹿らしいと思うだろうか?

 自分は、それなりに満足している。

 ミレイユとリゼットを能力的に殺すことができなかったが、無駄死にというわけでなく、遺すべきものを遺すことはできたはずだ。

 街の人々の怨念を背負うことにもいささか疲れた。

 不出来な自分としては上出来ではないかと思う。

 

 ミレイユへ

 騙してすまなかった。このような手段しかとれなかった自分を恨んでくれていい。

 恐らく、君はこの指輪を常につけようとするだろうが、体調が悪い時などは外してほしい。自分のクマを考えればわかると思うが、それなりに厳しいはずだ。

 これを書いている今現在、ミレイユ、君は罪人ではあるが悪人ではないと思っている。君の善性を信じている。少なくとも、君がすぐ死ぬべきとは思っていない。

 指輪のせいで体調が悪化することは避けてほしい。

 ただ、街の人の無念を知ってほしい。それだけだ。

 

 リゼットへ

 君にミレイユと同じ指輪を残せないことを謝罪する。

 指輪は本来、君にこそ残したかった。

 ミレイユは指輪をつけて寝た際に、君に殺される体験をする。

 寝起きに君に怯えるかもしれないし、関係がギクシャクするかもしれない。

 本来ならこういったことは避けたかったのだが、君に指輪が通用すると確信をもてなかった自分のせいだ。すまない。

 

 最後に、手間をかけるが、自分がつけているだろう指輪と遺骨は可能ならあの街に埋めてほしい。難しいようなら、空に撒いてほしい。

 

 ミレイユ、リゼット、君たちが贖罪と幸せの両立した人生を送れるか、あの世から見せてもらう。幸運を。

 

 

***

 

「彼ね、甘いものが好きでね。ケーキとか持っていくと、ニコって笑った後、顔を手で隠すのよ。それがとても可愛くてね。それにね、すごく優しい目でじっとこっちを見てきて、私が問い詰めると視線をそらして顔を隠すのよ。あの目も好きだったわ。……私ね、彼は何かに苦しんでて、自分が幸せになってはいけないと考えてると思っていたの。だから、いっつも表情を隠すようにしてると思ってた」

 

 男の生きていた頃、よくミレイユからリゼットへ、嬉しそうに語られた話だが、今のミレイユからは悲哀が感じられる。

 

「一緒の指輪をつけようって言ってくれてすごく嬉しかった。彼の荷物を私にも分けてくれて、一緒に幸せになっていこうって思ってくれたんだ、って……」

 

 ぽろぽろとミレイユの目から涙があふれる。

 

「全部……全部、うそだったのかな」

 

「全て嘘というわけではないと思います。思い出せば、最初はもっと棘があったものでした。比べれば、最近はずいぶんと落ち着いたものになっているように感じました」

 

 リゼットはミレイユの涙を拭きながらもそう答える。

 

「彼も復讐とミレイユへの想いで迷ったのだと思います。彼の指輪はすでに何も効果がないものになっているそうです。そんな指輪を一緒に埋めてくれなんて書き残したのですから……」

 

 全てが演技であり、ミレイユの今後の結婚を鈍らせるための罠との意見もあったが、ミレイユの笑顔と彼の笑顔を思えば、リゼットはそう考えたくはなかった。

 

「……贖罪と幸せの両立した人生を送れるか見せてもらう、か。彼は私の幸せを許してくれるのかな」

 

「幸せを許さないではなく、贖罪と幸せを見せてもらうなので、そうかと思います」

 

 指輪を付けて幸せなんて送れるわけがない、指輪を捨て贖罪も捨て幸せだけを追い求めるのか、指輪をつけて苦しめられるのかの選択を与えた、あの文面はある種の皮肉なのだろうと考えるものもいた。

 リゼットは家族であるミレイユにそういった言葉をかけられなかった。

 

「私は、たぶん、結婚はしないと思う。彼は私のこと恨んでるかもしれないけど、いまでも彼のこと好きよ」

 

 その言葉にリゼットは悲しげな表情を浮かべる。

 

「でもね、結婚しないことは不幸せではないと思うの。リゼットという家族もいるし、養子で子供だって持てる」

 

 リゼットに笑いかけながらミレイユは言葉を続ける。

 

「指輪の記憶は、……正直、かなりキツイわね。でも、ちょっと嬉しいと思う自分もいるの。罰してほしいという思いがあったのかしら。けど、リゼットには迷惑かけるわね。自分でもまさか嘔吐するとは思ってなかったわ」

 

「それは構いませんが、大丈夫なのですか? 昨日はロクに眠れなかったうえ、この状態です。今日は外して体力を回復させてたほうがいいのでは?」

 

 ミレイユを気遣いリゼットはそう言ったが、ミレイユは首を横に振る。

 

「もう少し、つけたままでいさせて。彼が書き残したように指輪はもうちょっと体調が悪くなったら外すから。……彼が遺した指輪だもの。できるだけ一緒にいたいの」

 

 そういいながら、ミレイユは自身の指輪を見つめた。

 その視線は、すがったようにも、決意を込めたようにも、リゼットには見えた。




フェイトの「死んでも許さない、末代まで呪ってやる」ってセリフがあるので、呪わせてみました。とはいえ、普通に呪わせたら、そこらの団員に解呪されそうなので、重荷を背負わせる感じで。

男がミレイユを愛していたのか、見せかけなのか。
ミレイユが、指輪に押しつぶされて死ぬのか、それとも長生きするのか。
指輪を捨てるのか、指輪を嵌め続けるのか。
その辺りを含めて、読んでくれた方の好きにご判断を。

久々に妄想を書いてみたけど、リゼットの影うっすいなーと上手く書けない感じでした。
この設定だと、ミレイユが苦しんでるのを見てるだけしかできないので、結構きっついはずですが。
アルケミスト・デザイアはラストとフェイトで否よりな私ですが、こうやって妄想を形にしてみる難しさを改めて思い出すと、前半部分はかなり楽しめたし、月1で声つきイベント仕上げてるグラブルはなんだかんだすごいなーと思いました。

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