甘露寺さんの婚約者は雨柱   作:宮川アスカ

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完全なる「鬼滅の刃 見切り発車編」です。
続くかは分からん。


第1話 雨柱は家族が欲しい

「俺は時折、杏寿郎を羨ましいと思うよ」

 

「む!? なにがだ!?」

 

 煉獄亭にて杏寿郎との稽古の休憩中。俺がふと呟いた言葉に、隣に座る杏寿郎はそう問いかける。相変わらず元気の良い奴だ。

 煉獄杏寿郎。鬼殺隊隊士。階級は甲。

 炎柱である槇寿郎さんの息子で、俺と同期の良き友。

 鬼狩りとしての実力は本物で、良くも悪くも表裏のない真っ直ぐな性格のこの男の事を、俺は偶に羨ましく思う時がある。

 

「杏寿郎には帰る家があって、お前を迎えてくれる家族がいるだろ? ここ最近、俺はそれが何よりも羨ましい」

 

 俺の両親は既に他界していて兄弟もいない。杏寿郎も少し前に母である瑠火さんを亡くして辛い時期だろうが、まだ槇寿郎さんと弟の千寿郎がいる。まぁ、槇寿郎さんは少し荒れているらしいが……

 

 母は俺が物心ついてすぐの頃に病で亡くなった。そこから男手ひとつで俺を育ててくれ、鬼殺隊の隊士であった父は上弦の鬼との戦闘の後、鬼の首と引き換えに戦死した。

 別に悲しくはなかった。母の事は当時まだ幼かった俺にはよく分からなかったし、父は雨柱としての役割を立派に果たして散ったと聞いた。

 

 ただ最近、どうにも人の温もりと言うか愛情みたいなものがかけている。

 勿論、御館様や同じ柱、今も隣で俺の話を聞いてくれている杏寿郎。他にも色々な人と上手くやれているのは分かる。

 だが任務後、我が家に帰った時にふと感じる。父の後を継いだ巨大な屋敷に自分1人。どうにも寂しさが生まれてしまうのだ。

 

「うむ! つまり緑雨(りょくう)は嫁が欲しいのだな!」

 

「……杏寿郎。お前はもう少し言い回しを覚えた方がいい」

 

「なんだ! 違うのか!」

 

「いや、当たってるけども!」

 

 そうさ。ここまでなんだかシリアスな雰囲気な事を話して来たが、実際の所は杏寿郎が言う通り、嫁さんが欲しいのだ! 

 いや、嫁とまではいかなくてもいい。恋仲。そう、せめて俺を癒してくれる意中の相手が欲しいのだ! 

 

 なのに! なのにだ! 俺には今までそう言った経験や女性といい雰囲気になった事など1度もない。

 

「俺はそんなに駄目だろうか」

 

「自信を持て! 緑雨はかっこいいぞ!」

 

 杏寿郎はこう言ってくれてはいるが、では何が駄目なのだろうか……

 

「俺は恋路について詳しくないが、柱ともなれば引く手あまたなのではないのか?」

 

 おい、やめろ杏寿郎。そういう疑いの無い眼差しで此方を見るな。心が痛い。

 そして、悪気が無いあたり、余計にタチが悪い。怒るに怒れないだろうが。

 

「そんな事は全くない。良く考えてみろ。柱が下の者に色目かけるなんて示しがつかないだろ」

 

「それもそうだな!」

 

 とは言ったものの、こんなものは建前でしかない。俺と同時に柱になった宇髄は3人も嫁がいるのだ。くそう。

 そもそも、鬼殺隊に入ってからというもの、俺が出会うのは鬼ばかり。ここ数年で俺が経験しているのは、愛し合いでは無く殺し合い。

 鬼と隊士以外との出会いなどない。

 

「ならば同じ柱はどうだろうか!」

 

「同じ柱ァ?」

 

 現柱の女性と言うと、しのぶしかいないが……

 

「いや、ないな。それはない」

 

 見た目は誰が見ようと異論なしの美人だが、アイツは性格に難ありだ。

 その姉であるカナエさんは、見た目も中身も完璧だが、どうにもカナエさんからは男と見られていない節がある。なんというか、弟みたいな。そんな感じだ。

 それにカナエさんに手なんか出してみろ。いつしのぶに刺されるか分かったもんじゃない。

 

「忙しい日々に癒しが欲しくて出会いを求めているのに、忙しくて出会いがないって……

 

 いっその事柱なんて辞めてしまおうか」

 

「それは駄目だ!」

 

「冗談だよ」

 

「うむ! では、見合いをするのはどうだろうか!」

 

 見合い。見合いか……

 

 隊士ではない女性と出会う事が出来る場。目的が向こうも同じならば、出会いを探し無駄に時間を浪費する事も無い。これは忙しい俺にうってつけかもしれない! 

 

「杏寿郎! やはりお前は天才だ! ありがとう!」

 

「うむ! なんだかよく分からないが、それは良かった!」

 

 雨柱。青梅(おうめ)緑雨。

 産まれてこの方18年。はじめてのお見合いを実施したいと思います!

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