ネタバレ程では無いと思いますが、気になる人は一応注意で。
「鬼狩りがァァ! 死ねェェエエ工!」
「おいおい。いろんな所からうじゃうじゃ現れて。鬼は群れないんじゃなかったのか?」
今日も今日とて任務中。御館様。俺の任務の頻度、少しハードワークでは無いでしょうか? 隊士の質が下がりつつあるのは分かりますがね。
鬼の数は5。
大きく息を吸い込む。より多くの酸素を肺に蓄え、身体の隅々まで血液を循環させる。
腰に刺された日輪刀の柄に自身の右手を添え、屈んだ状態で瞬時に直進する。
そのまま此方に突っ込んで来た鬼の懐に飛び込み、刀身を抜くと同時に鋭い斬撃で、突き上げる様に鬼の頸を切る。
【雨の呼吸 攻式捌ノ型 篠突く雨】
頸を切られた鬼達は、炎に焼かれたかの様に、灰になって消えていく。
雨の呼吸。水の呼吸の派生で、戦国の時代から我が家計に代々伝わる呼吸法である。
11の型があり、攻式・守式・特式の3種類に別れている。水の呼吸同様、その場その場に応じて使い分けが効く柔軟な剣技だ。
しかしこの呼吸法、型の伝授において、型を1度しか見せないと言う中々の鬼畜具合だ。長きに渡り存在する呼吸だと言うのに、使用者が全然居ないのはそれが原因だろう。
父は時雨蒼燕流がああだこうだと言っていたが俺にはよく分からん。
それにしても、甘露寺さんとの見合いから約半年。あれから俺は1度も見合いをしていない。
もちろん忙しいと言うのもあるが、見合いの1つや2つ出来ないほどでは無い。
では何故か? 理由は簡単。
甘露寺さんの事が未だに忘れられないのだ。
あんな別れ方をしておいて、今も尚、彼女を思い続けているなんて、女々しいだろうか?
この事を恋愛マスター(だと勝手に思っている)の宇髄に聞いたところ、珍しく地味な考え方だな! と笑われた。何だ地味な考え方って。
もしかして、俺の人生は一生、結婚や恋人という言葉とは無縁なのだろうか?
父さん、母さんすいません。青梅家の子孫繁栄はここまでの様です。
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どうやら杏寿郎が継子をとったらしい。
いや、杏寿郎は柱で無い為、正確には違うかもしれないが。
とは言え、現炎柱である槇寿郎さんがあの様子では、杏寿郎が炎柱を継ぐのもそう遠くないだろう。そう考えれば、継子とあまり変わらない気がする。
聞いた話によると、なんでもその継子、鬼殺隊を目指してから約半年で最終選別を合格したとか。
いやはや、恐ろしい才能だ。杏寿郎が継子にするのも頷ける。
それに最近、煉獄亭にも足を運べていない。そんな事もあり、その継子への興味がてら今日は久しぶりに煉獄亭へと足を運んでいる。
その巨大な屋敷の門を叩くと、中から千寿郎が顔を覗かせる。
「緑雨さん。お待ちしておりました。どうぞ中に」
「久しぶりだな千寿郎。杏寿郎は?」
「お久しぶりです。兄上は只今、稽古中ですので。ご案内しますね」
煉獄千寿郎。杏寿郎の弟で、顔は見事に瓜二つ。この家の血筋は凄すぎる。杏寿郎との見てくれの違いと言えば身長と眉毛が八の字になっている事ぐらいだ。
しかし、中身は杏寿郎とは大違い。正義感が強く、真っ直ぐな性格の杏寿郎とは逆に、千寿郎はとても小心者だ。しかし、礼儀正しくて落ち着きがある。煉獄亭に何度も来たことのある俺をわざわざ案内してくれる様な優しい子だ。
千寿郎は杏寿郎では無い。この子にはこの子の良い所が沢山ある。
「丁度、休憩の為にお茶と菓子を用意しようと思っていたんです。緑雨さんの分も用意しますね」
「じゃあ、俺も手伝うよ」
千寿郎はそう言うと、ちょこちょこと歩いていく。なんて可愛いらしい生き物なんだ。
俺も、千寿郎を手伝うべく後を着いて行った。
一方その頃
「甘露寺! そんな打ち込みでは剣士としてやって行けないぞ! 頑張れ!」
「ひゃい〜! で、でも腹ぺこで〜! 甘味休憩を所望します!」
どうも皆さん。甘露寺蜜璃です。
煉獄さんの継子になって早半年。煉獄さんの稽古はとてもスパルタです。
最初は怖い人だと思っていましだが、接してみればとても優しい方でした。
「そう言えば甘露寺は何故、鬼殺隊に入ったのだ?」
地獄の様な鍛錬が一段落し、タオルで汗を拭いていると、煉獄さんがそんな事を聞いてきました。
そう言えば、師であるにも関わらず、煉獄さんには話した事がありませんでしたね。
「実は、柱で1人お会いしたい方がいるんです。その人に会う為に鬼殺隊に……」
青梅さん。今は何処で何をしているのかな?
この半年、青梅さんの事を考えなかった日はありません。
とは言え、青梅さんに会う為にと息巻いて鬼殺隊に入ったは良いものの、一般隊士が、もっと言えば、最終選別を受ける前の修行中の身であった私が柱である青梅さんに会えるはずがありません。炎柱様の息子である煉獄さんの元で修行出来るだけでも奇跡な様なものなのですから。
やはり柱を目指すしかないのでしょうか……
「して、その柱と言うのは誰なのだ?」
「その…… 青梅さん。いえ、雨柱様です……」
「なんだ! 緑雨だったのか!」
緑雨……。煉獄さんは青梅さんの事を、随分と親しい呼び方をしています。
え? えぇ!?
「煉獄さん、青梅さんと知り合いなんですか!?」
「ああ! 緑雨とは同期だ! 友人だ!」
な、なんと言う事でしょうか。世間というのは案外狭いものですね。
「ところで何故、緑雨に会いたいのだ?」
「そ、その……
……青梅さんの事が、その…… す、好きでして」
蚊の鳴くような声。いったい私は師に向かって何を言っているのでしょうか!?
「うむ! そうだったのか! そう言えば、少し前に緑雨も気になる女性が居ると言っていたぞ! それに今日も──―」
ガーン!!!
煉獄さんの言葉による衝撃は、鈍器で頭を殴られた。そんな感覚でした。
青梅さんに、好きな女性が……
普通に考えてそうですよね。青梅さんはお見合い初めてって言っていたし、あの後もお見合いをして当たり前。
私なんかより、素敵な女性なんて沢山……
あ、あれ? 涙が……
こんな所で泣いちゃ駄目よ私。
泣いちゃ駄目。泣いちゃ駄目なのに……
私の目から涙が止まってくれません。最後の方に煉獄さんが何か言っていた気がしますが、今の私にはそれを上手く聞き取る余裕などありませんでした。
「む? どうしたのだ甘露寺!」
私が泣いているのに気づいたのか、煉獄さんが駆け寄って来ます。
このままじゃ心配かけちゃう。
涙を拭って、何とか泣きやもうとした時──―
「兄上、蜜璃さん。お疲れ様です。お菓子を作って参ったのですが……」
千寿郎くんの声が聞こえ、そちらの方向を向くと、そこには千寿郎くんと1人の男性の姿が。
「「え?」」
お互いの目が、声が合う。
そこには、この半年間恋焦がれ続けて、1番会いたくて、けど、今1番会いたくない相手でした。
長くなりそうなので一旦切ります。
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