ここから1.2話、煉獄杏寿郎外伝の内容となります。読む際はネタバレ注意でお願いします。
柱合会議
それは鬼殺隊における柱が半年に一度、鬼殺隊本部に集い、御館様のもとで自身の地区での鬼の動向や調査報告等を行うものなのだが……
「どったの、杏寿郎」
何故か柱では無い杏寿郎がいた。
「父上の様子を報告をしに来た」
「あー。なるほど」
おおかた、御館様の指示と言ったところだろうか?
柱としては、槇寿郎さんの柱合会議不参加には思う所があるにはある。
ん? まてよ。杏寿郎がここに居ると言う事は……
「え? 蜜璃は?」
「うむ! 甘露寺には申し訳ないが恐らく今頃、千寿郎が甘露寺の相手をしているだろう!」
ですよねぇ! だって今朝、杏寿郎の所で稽古って言ってましたもん! それが師である杏寿郎がいないんじゃ、そりゃあできないわな。
……まぁ、蜜璃にもたまには息抜きも必要だろうし。うん。そういう事にしておこう。
「それじゃあ、俺はこっちだから」
俺はそう言うと、既に集まっている俺以外の柱の方を指さす。
いくら友人と言えど、俺は柱で杏寿郎は一般隊士だ。この場においては、その差を明確にしなくてはならない。
俺はそう言うと、宇髄の隣に座る。
「なんだ青梅。お前あいつと派手に知り合いか?」
「ん? まぁね。友人だよ」
俺と杏寿郎の会話を見ていたのか、宇隨がそんな事を聞いてくる。
宇髄天元。
音柱にして、元忍び。超がつくほどの派手好きで、口癖も『派手』。
これだけ聞くと、変な奴に聞こえるかもしれないが、柱としての実力は本物だ。元忍びと言うだけあって身体能力が高く、宇隨独自の能力から指揮官としても超一流。さらに付け加えると、この男かなりのイケメンである。
俺と柱に就任した時期が一緒という事もあってか、隊士の中でも絡む事が多い部類だ。
「御館様のおなりです」
宇隨とそんな話しをしていると、少女の高い声が聞こえる。
それが聞こえた瞬間、いっせいに片膝をつきながら頭を下げる。
「半年ぶりだね。私の可愛い子供達。皆、息災だったかな?」
「はっ。御館様におかれましてもご健在でなによりです」
御館様の言葉に、不死川がそう答える。
「ところで御館様。何故柱でもない隊士がここへ? 炎柱、煉獄槇寿郎殿はどうなされたのですか?」
不死川の言葉により、いっせいに杏寿郎へと視線が集中する。
御館様から見て、左から悲鳴嶼さん、不死川、宇隨、俺、しのぶ、富岡。そしてこの場にいない槇寿郎さん。この7人が現在の柱である。
そして、そこから少し離れた場所に、御館様と柱、その両方を見れる様に姿勢良く正座をしている杏寿郎。
その性格故、空気が読めなく若干デリカシーに欠ける杏寿郎だが、さすがは名家である煉獄家。この様な場での礼儀作法をしっかりと心得ている。
「うん。その説明をしてもらう為に杏寿郎を呼んだんだ。皆、槇寿郎の事を心配している。彼の様子を説明してくれるかい?」
御館様の問いかけに、今まで黙っていた杏寿郎が口を開く。
「……確証はありませんが、母、瑠火を亡くしてからというもの、気力を保てなくなった気がします。
任務に酒を持ち込む様になり、今では自室に籠り、任務前でも断酒出来なくなりました」
その話しを聞いた周りの反応はまちまち。
「あぁ、おいたわしや。槇寿郎殿は柱古参。本来ならば皆をまとめなくてはならない立場だと言うのに……」
「しかしこれじゃあ、隊員に示しがつかねぇ。俺は派手に引退を推奨するぜ」
「どちらにしろ柱が足りねぇ。酩酊状態じゃあ、御館様も任務を振れねぇしどうしたものか」
反応はまちまちとは言え、悲鳴嶼さん、宇隨、不死川の意見はもっともだ。
いくら槇寿郎さんに柱としての実力があるとしても、この状況では意味が無い。宇隨の言う通り、このままでは隊員の士気に影響が出る。
しかしまぁ、不死川の意見に関しては大丈夫ではないだろうか?
俺はそう思い、チラリと杏寿郎の方を見やる。
うん。自身の父がなんと言われようとその目は死んでいない。
「それは問題ない! 俺も炎柱になれば父上もきっと、やる気を取り戻してくれるでしょう!」
クッハハ。そうそう、その意気だよ杏寿郎。
ただまぁ、その言葉が気に食わない人が居るのも事実だけど。
「おい、煉獄杏寿郎……」
ほら。不死川がとんでもない眼力で杏寿郎の事を睨んでいる。
「随分と自信がある様だが、そんなホイホイなれる程、柱は甘くねぇんだよ」
「勿論、柱になる為の条件は理解しています!」
「じゃあ、てめぇの腕前見してみなぁ!」
不死川はそう言うがいなや、杏寿郎へと殴りかかる。
おーおー。今日も不死川は喧嘩っパヤイねぇ。
「おい。止めなくていいのか?」
不死川の行為に、宇隨がそう問いかけてくる。
「え? なんで?」
「なんでって…… お前ら友なんだろ?」
「あぁ、そういう。まぁ、大丈夫じゃない? 杏寿郎はあれくらいでやられるタマじゃないし」
とは言え、さっきから杏寿郎は不死川の攻撃をガードするばかり。
「オラァ、どうした! やり返してこいや!」
それに痺れを切らしたのか、不死川が自身の腕を大きく振り上げた所で、杏寿郎がその腕を掴む。
「殴るわけないだろう! 隊員同士の喧嘩はご法度! そもそも人は殴ってはいけない!
それに君はツンケツンケしているが、アツイ心の持ち主と見た! ありがとう! 頑張るよ!」
杏寿郎はそう言うと、良い笑顔で不死川の肩を組む。
「プッ! やっぱズレてるなぁ杏寿郎。ね? 心配いらなかっただろ?」
「あぁ、不死川の攻撃を受けきるとは、派手な野郎だぜ」
にしても、少々騒ぎすぎただろうか? チラリと御館様の方を見る。
「実弥」
「……申し訳ありません。あつくなりすぎました」
静かな、どこか穏やかなその声。御館様の声色は不思議だ。
名前1つで、あんなに暴れていた不死川を従えている。
「杏寿郎。帝都付近で十二鬼月の可能性が高い鬼がいると言う情報が入った。君にはその鬼を討伐してもらいたい」
「「「「!!!!」」」」
流石にこれは驚きだ。十二鬼月の可能性があると分かっていながら柱では無く、一般隊士だけを向かわせるとは。
「お言葉ですが御館様。十二鬼月の可能性があるのであれば、我々が向かうべきかと」
しかし、しのぶの言葉に御館様は首を横に振る。
「君たちには、空席となった柱達の警備地区を担当してもらわなければならない。
それに、元々そこは槇寿郎の担当地区だからね」
柱の定員は10人であるのだが、今は7人しか居ない。要するに、本来柱が担当するはずの警戒地区が、3つも空いているのだ。
普段、俺が忙しいのもこれが原因。あぁ、早く柱が定員まで揃って欲しいものだよ。
「自身が、柱になりえる存在だと言うならば、その実力を示しておいで。杏寿郎」
「はいっ!」
御館様の言葉に杏寿郎はそう返事をすると、深く一礼をし、この場を去って行く。
「緑雨。君は確か、杏寿郎と親しい仲だったね」
「はい。杏寿郎とは入隊時からの仲です」
「君から見て、杏寿郎はどうだい?」
おっと。どうやら、杏寿郎がいなくなった後は俺に白羽の矢がたったらしい。
「……多少ズレている所はありますが、鬼狩りとしての実力は本物です。
贔屓目なしにしても、剣術、そしてなにより戦闘時における状況判断の速さと周りに指示を出す正確さは既に柱に匹敵するものを持っていると考えています」
「そうかい。ありがとう。君がそこまで言うのであれば、私の判断に間違いは無かっただろう。杏寿郎、あの子はそのうち鬼殺隊の運命を変える1人になれる」
杏寿郎を任務につかせたのは勘か直感か。はたまた確信か。
しかし、御館様の言葉を聞く限り、これは確信に近いのであろう。
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