「杏寿郎。帝都での任務の詳細は?」
「いいや、まだ何も知らされていない」
「そうか…… 恐らくだけど、十二鬼月の可能性がある鬼に柱が向かわないと言う事は部隊での任務になると思う。そうなると、杏寿郎の継子の蜜璃が今回の任務に呼ばれる可能性は非常に高いんだ。
こういう事はあまり頼みたくないんだが……」
「分かっている! 安心ししていい。友の婚約者だ! 俺の命に変えても甘露寺の事は守ってみせる!」
「! ……ばーか。そういう責任だとかおもっ苦しい事は俺達柱が背負うもんだ。
だから杏寿郎。お前はお前の任務に集中しろ。そんでとっとと柱になって少しは俺に楽させてくれ」
──だけど杏寿郎、お前はきっと全てを守って戦ってしまうのだろう。だからこれ以上は何も言わない。ありがとう杏寿郎。お前の強さは俺が1番知ってるよ。
とは言ったものの……
心配すぎる!!
確かに蜜璃の才能や成長速度には目を見張るものがあるが、如何せん経験が足りなすぎる。杏寿郎がいるとは言え心配だ。
杏寿郎の帝都での任務当日。案の定、蜜璃にも招集がかかった。そんな中、俺はと言うと、前回の柱合会議にて御館様が話していたとおり、現在柱不在の地区にて任務中。
日が入り込みにくい山の中と言う事もあり、日が完全に沈みきっていないというのに、すでに鬼がチラホラ見受けられる。
更に、この山は鬼が多く潜伏していると言う事もあり、珍しく宇隨と共に任務に取り組んでいる。
宇隨との任務も久しぶりだ。柱はその個々の能力の高さ故に、一緒に任務を任される事はあまり無い。
「青梅! そっち行ったぞ!」
「!」
蜜璃の事が心配なあまり、物思いにふけていると、突然宇隨の声が耳に入る。視線を前に向けると一体の鬼が此方に攻撃を仕掛けようとしている。
「死ねェ!」
「おっと」
手にしていた日輪刀で水を巻き上げる様に下から上へと振り上げ、前方に巨大な水の壁を作る事によって姿を隠しながら屈む。
【雨の呼吸 守式弐ノ型 逆巻く雨 】
そして鬼の攻撃を交わし、起き上がる動作のまま鬼の頸を下から斜め上へと切る。
危ない危ない。宇隨の声が無かったら気づかなかった。
すると、当の宇隨が此方に向かって歩いてくる。
「おいどうした。珍しく任務中にボーッとしやがって。
……まさか煉獄杏寿郎、あの派手髪の任務に同伴してるっていう、お前の恋人の事が派手に気になってるのか?」
「うっ……」
「派手に図星だな」
「すまん。気をつける」
そうだ。今は任務中。余計な事は考えるな。少しの油断が命取りになる。
しかし宇隨は、シッシッと手を振ってくる。
「いや、いい。心配なんだろ? ささっと行ってこい。幸いにもここは帝都からそう遠くない。お前の足なら今からでも間に合うだろ」
「えっ? いや、けど任務が」
「量がいると言っても雑魚鬼だ。これくらい1人で見れる」
「御館様様にバレたらどうなる事か」
「そんときゃ、2人で派手に頭下げて怒られるしかねぇだろ」
笑いながらそう言う宇隨に頭を下げる。
「……恩に着る」
宇隨に感謝の旨を伝え、帝都に向かい駆け抜ける。
今はただ、蜜璃や杏寿郎の無事を祈るばかりだ。
(ったく。柱の中でも最強の一角を担う男も惚れた女には適わんとは。人間らしい所もあるもんだな)
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今日は煉獄さんとの初任務。
標的となる鬼は、十二鬼月の可能性があるとか……
家を出る時、緑雨さんには心配かけたくなくて大丈夫って言ったけど、やっぱり緊張するわ。
「甘露寺、任務を共にするのは初めてだな! 期待してるぞ!」
「はい!」
2人1組での行動と言う事で、煉獄さんと共に歩いていると、後ろから走ってきた小さな男の子とぶつかってしまいました。
「だ、大丈夫?」
「うぇぇぇん!」
えっ、あ、泣かせちゃった!? どっ、どうしよう!
「ちょっと! うちの子に何するの!」
すると、この子のお母さんらしき人が来てこの子を抱きかかえる。
「え……? いや、私は何も……」
「何あなた、その髪色。刀まで刺してるし、まさか人攫い!? 早く警察に……」
男の子が泣いてしまい、更に急に人攫いと疑われた事でオロオロしていると、傍にいた煉獄さんが、男の子の事をヒョイッと持ち上げる。
「失礼! この子が転んで泣いてしまっていたもので! 大丈夫かい、少年?」
「うん。……変な髪の毛のお兄ちゃん」
「うちは代々この色だ! きっとご先祖さまが海老天を食べ過ぎたのだろう!」
「あはは! 変なの!」
煉獄さんのおかげで誤解も溶け、この場は何とかなりました。
煉獄さんは凄いな。見た目の事を言われても、気に病む所かそれで相手を笑顔に変えれるんだから……
私は緑雨さんが、この髪を綺麗だと言ってくれるだけで幸せ。だけど、やっぱり見た目の事を言われると傷つくな……
そんな時、ドン! というものすごい音と揺れがし、音の方を向くと、奥の方の建物から煙があが立ち上がっている。
「爆弾!?」
他の場所でも爆発が置き、多くの人の悲鳴が聞こえる。早く助けに行かなきゃ!
「煉獄さん、私救助に──」
「まて!」
煉獄さんに救助の許可を得ようとすると、煉獄さんが私の肩を引っ張る。
ズドン!
「!?」
煉獄さんが私の事を引っ張った直後、私の目の前を銃弾が通り抜ける。
あっ、危なかった! 煉獄さんが止めてなかったら今頃私!
「ありがとうございます、煉獄さん!」
横を振り向き、お礼を言おうとすると、そこには既に煉獄さんの姿はない。
えっ? えっ?
急に居なくなった煉獄さんを探していると、赤く燃え上がる炎が目に映る。
【炎の呼吸 壱ノ型 不知火】
すると、先程狙撃された建物の屋上に立つ煉獄さんの姿が。さっきのは煉獄さんの炎の呼吸。間違いない。あそこに鬼がいるんだわ!
激しい戦闘音。何か話している様だけど、遠すぎて聞こえない。
煉獄さんがいる建物の下まで来た時、冷たく、そして重い何かが私の後頭部に突きつけられる。
「やはり貴様、煉獄の部下か。煉獄と同じで品の無い髪だな」
そんな男の声が聞こえたと同時に、私は背中からおもいっきり地面に叩きつけられる。
そして、その手にしている銃の銃口が、私の額の前に向けられる。
「安心しろ。奴は生きている。虫の息だがな。
簡単に死なれては困る。復讐は奴がもっとも苦しむ方法で行わなければならん。
奴の目の前で、同僚や家族を拷問して殺す。どれだけ生きたまま壊せるか。感覚で分かるんだ」
そう言うと、恐ろしい程の笑顔で、私を踏み付ける様に右足を顔の上に乗せてくる。
「お前の人生は俺の復讐に消費される。恨むなら自分を恨め。鬼殺隊なんかに入ったお前の責任だ。
惨めだ。惨めだなぁ。誰にも知られず、誰にも認められぬ。貴様ら鬼殺隊は惨めに死ぬだけだ」
怖い。私の顔を覗き込んだ時に見えた男の瞳。そこには下弦弐の文字があった。この先にあるもの。これが死──
たす、けて……
【炎の呼吸 伍ノ型 炎虎】
死を覚悟したその時、炎の虎が男の事を飲み込む様に、いきなり現れた煉獄さんが男に切りかかる。
「たとえ認められずとも、鬼から人々を守る為に戦う。それが鬼殺隊だ!
どれだけ惨めだろうと、俺は俺の責務を全うする!」
「煉獄ゥゥウウウ!!」
叫ぶ鬼を前にして、煉獄さんは一瞬こっちを振り返る。
「安心しろ甘露寺。俺は弟子や部下をそう簡単に死なせたりしない。
それに緑雨との約束だ。甘露寺、お前の事は俺が命にかえても守り通す!!」