響け!ユーフォニアム一年目でゴールド金賞RTA   作:ブロx

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第十七回

 

 

 

昨日の夜。全てを失くして見えない雨に濡れていた。

今日の昼。命を的に、遺った夢の浮橋を追っていた。

明日の朝。チャチな私とちっぽけな吐息が思い出の中で楽器を吹く。

 

明後日。そんな先の事は分からないRTA、はぁじまぁるよー。

 

 

 え~皆様早速ですが謝罪致します。前回は個人的な(精神的)ショックにより途中で強制終了してしまい、まことに申し訳ありませんでした。走者反省に反省を重ね、猛省?猛省しております。

 

 さて初手謝罪も終わりました所で真由黒江ぇええ!!!!!何でお前がこんなところにいる!?!(千征令兄貴ガチ困惑断末魔並感)

 

 そう!こ奴こそこのゲーム最強キャラ、清良女子高等学校吹奏楽部1年(現時点)・黒江真由ちゃんです!語感がいいので真由黒江と走者は呼んでいます。

 彼女は黄前ちゃんが3年生になると北宇治に転校してくるキャラで、とてもとても魅力的なユーフォニアム奏者です(震え声)いやホントマジ無いわ失念してました。

 

 1年の段階ではこの子と接点が生まれる筈ないと高を括ってましたね。そういえば極低確率でランダムイベ、出会うなんて事を忘れていたとは走者一生の不覚(誰だよ兄貴は決意の最終楽章読んで震えてどうぞ)

 

 だがしかし!彼女を打破する事こそこのゲームをRTAする目的の一つ。

ここでホモちゃんと出会っちまったからといってそれは変わりません!(全国大会以外で)もう会う事はないでしょう真由黒江!お前のびっくり顔をコンクールで拝む時が楽しみだぜウッハハハハハハ!!

 

 ・・・彼女のルートほんと切なくて正直トラウマなんでホモちゃんお願い。彼女の思い出なんかにはならないで。ていうか私は思い出にはならないさって言え(片翼の豹変)

 

 さあ!気を取り直して楽器の練習練習!! 

・・・お?ついにあすか先輩のカッチャマが本格的に出て来ましたね。この人もまた恐ろしいキャラクターの一人です。あの和菓子屋でホモちゃんが出会った女性、それがこの大好き栗饅頭ーマン・田中明美さんです。

 女手一つで我が子をあの特別な田中あすかに育て上げた女傑と言えば聞こえは良いですが、子供の幸福はこうだって勝手に決めつけてる只の毒親だろというのが一般的な見解です。走者もそう思います。

 彼女のルートは好きですけどねターミネーターみたいで。あすか先輩はジョンコナーだった・・・?

 

 ともかくカッチャマ、これもRTAの為。

今回は見逃しますが次に会う時が大作戦発動の時。役割分担は原作通り黄前ちゃんにあすか先輩を、ホモちゃんらにはこのカッチャマを宛がい(ほぼ)同時攻略とします。マドラスとキリマンジャロ攻略戦みたいだあ。後で楽しみにしとけや(地獄の二方面作戦)

 

そんな走者の決意をホモちゃんに丸投げして今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

◆ 

 

 

 

 

 

 ―――やっぱり京都は良い所だね。そう言う彼女は、空にレンズを向けていた。

 

「でも何でまたここに?清良はたしか九州の学校だよね?」

 

「今月の終わりに京都駅で演奏会があるんだけど、先輩たちが先生と一緒に下見に行くことになったの。偶々私にもお呼びがかかって、昨日日帰りで帰る筈だったんだけど――」 

 

「あ、分かった。ストームレインのせいだね?」

 

「スト? うん、嵐のせいで急遽ホテルに一泊する事になっちゃって。演奏会には北宇治高校の吹奏楽部とマーチングが有名な立華高校も来るって聞いてたから、もしかしたらと思ったんだけど。勘が当たってよかった~」

 

 清良女子高校吹奏楽部1年、黒江真由。

私の眼の前にいる、ひょんな事で出会った女性はそう自己紹介した。もちろん私も一緒に自己紹介。…一目で只者じゃないと思ったけど、まさに案の定。まさか全国大会ゴールド金賞常連の学校の子だとは夢にも思わなかった。

 

 もうじき帰らなければならないので、その前に記念として散歩がてらこの辺りの写真を撮っておこうと思った。そう、黒江さんは言う。

 心底楽しいと感じさせる笑顔が朝陽に照らされて、より一層魅力的だなと私は思った。

 

「清良の人は演奏が上手いだけじゃなく美人さんなんだねえ~」

 

「え?私、全然美人なんかじゃないよ?」

 

「いや~…それは謙遜しすぎだよ黒江さん」

 

「真由でいいよ?帆高さん」

 

「え、本当?私も桃でいいよー」

 

 笑みを浮かべる。多分、この人とは違う笑みを。さっきから真似しようと試しているけど、どうしたって真似が出来そうになかった。

 

「でも本当に桃ちゃんありがとう。さっき助けてくれなかったら、きっと先輩達に怒られてたよ。制服も濡れちゃってただろうし」

 

「急に手が出ただけで、お礼を言われるような事はしてないよ」

 

「だからだよ。桃ちゃん」

 

深々と頭を下げられる。本当にありがとうと、芯のある声で真由ちゃんは言った。

 

「何かお返しがしたいな」

 

「え?別にいいのにー」

 

「これから朝練でしょう?何か奢るよ」

 

「う~~ん…」

 

やる気満々なその表情を見て。私はその時ふと、細い首から下げられたカメラに目を止めた。

 

「あ、じゃあカメラ」

 

「え?」

 

「私の写真を撮ってほしいな」

 

「写真を撮るだけでいいの?」

 

「うん。そして出来上がったら、全国大会で渡してくれない?」

 

「それ素敵」

 

 瞬間、笑顔の色が変わる。大事な宝物を見るように。カメラを構える真由ちゃんは、はいチーズ。カチリと音が鳴った。

 

「絶対に渡すからね。桃ちゃん」

 

「ありがとう。でも本当、真由ちゃんは写真が好きなんだねえ。景色を切り取れるから?」

 

「そういう人もいるけど、私はちょっと違うかな。だって思い出を切り取るだなんて、何か変でしょ?」

 

「……思い出?」

 

変わらない表情で。彼女は言う。

 

「写真を見るとね、その時の思い出が甦るの。それが好き。 ――私ね?親の都合で今まで色んな学校に転校してたの。そこには私を慮る人、同情する人、無視する人、好きだって言ってくれた人。たくさんの友達がいた。けどそんな友達も、時が過ぎれば目の前からいなくなっちゃった。ううん、私がいなくなった。そんな昔が写真にはあるの。

 永遠なんてこの世に無いけど、もしも有るとするならそれだと私は思う。あの一瞬こそが永遠で、私はそれを作る為に生きてて、吹奏楽だってやってるの」

 

「………」

 

「あ、ごめん。なんか変な事言っちゃって。…本当にごめんね?桃ちゃん」

 

「ううん。良いと思う」

 

「…え?」

 

「とっても素敵だと思うよ。真由ちゃん」

 

 それは口から自然に出た言葉だった。

全国金の常連で、強豪校。そんな吹部部員は皆高坂さんみたいにギラギラとしてるのかなって何処となく思っていたけど、それは間違いだった。少なくともこの人は音楽しか頭にないんじゃなくて、音楽すら頭になかった。

 

「ありがとう」

 

「ね、真由ちゃんの担当楽器って何?」

 

「ユーフォだよ。桃ちゃんは?」

 

「クラだよ」

 

「桃ちゃんのクラはきっと良い音色なんだろうね。早く月末にならないかなあ」

 

「そうだねえ。でもきっと真由ちゃんのユーフォは、」

 

「?」

 

・・・・・。

 

「きっと。深い音色なんだろうね」

 

 

 

 

 

 

 こんな人が世の中にはいるのか。久々に味わう事になった真由ちゃんとの出会いからちょっと経ったある日。私は部活前に久美子と話をしていた。

 

「駅ビルコンサート楽しみだね」

 

「清良と立華が来るんだってね~。梓ちゃん元気かな?」

 

少し、目を動かす。周囲にはみどりちゃんと葉月ちゃんしかいなかった。

 

「あの佐々木あずにゃんだよ?大丈夫でしょ。――よし!さあっ練習練習!!立華にも清良にも私達は負けられないよッ」

 

「その意気ですよ!桃ちゃんっ」

 

「あ、ごめん私今日ノート係だから。職員室に行ってから部活に行くよ」

 

「え?そうなんだ?」

 

「先に行ってようよ、桃」

 

「行きましょう桃ちゃん」

 

「ノートって結構量あるよね?少し持とうか?」

 

教卓には山積みのノートがある。やはりと言うべきだろう。

 

「ぇえ?別にいらないよそんなの」

 

「困ってる人は助けましょうって、小学校で教わったでしょ?」

 

「別に困ってないんだけど?」

 

「いいからいいから。二人でちゃちゃっと終わらせてくるね~」

 

「いってらっしゃーい」

 

 

 

 

「おい。やっぱり重いじゃないか…ッ!」

 

「え?そう?」

 

「こんなの全部一人に持たせるなんてどうかしてるよ…」

 

「感謝してまーす。違うクラスの人ー」

 

 手分けしてノートの束を持ちながら歩いていく。よし、職員室まですぐそこだ。幸い扉は開いている。余裕しゃくしゃくな久美子と違い、私は腕をプルプルさせながら歩いている。なんなんだこれは。純粋な、腕力の違い…?

 

「久美子腕太くなった?」

 

「音楽室出禁にするぞ」

 

その時だった。

 

―――どうして受け取って頂けないんですか?滝先生。

 

―――受け取るつもりはありません。それが田中さん自身の意思で書かれたものでない限りは。

 

「………?」

 

「?」

 

 互いに顔を見合わせる。久美子はよく分からないといった風に。私は聞き覚えのある声が、何故この学校で聞くことになるのだろうという顔で。

 

「先生なら、高校3年の生徒にとって何が今一番大切か。解かる筈ではないのですか?」

 

「・・・・・」

 

「ええ勿論、お母様のおっしゃる通りですハイ」

 

教頭先生の苦笑いと声が、その場の空気を表していた。

 

「頭が良かろうと悪かろうと、子供には勉強の時間が必要です。十月の全国大会が終わってから勉強に専念すればいいなんて言葉は、負け犬の台詞になりかねない。解かりますよね?」

 

「勿論ですともハイ。しかしながらですね、今年の吹奏楽部の生徒達は本当に頑張っておりましてですね。この子たちの夢を、頑張りを、努力をここで大人が潰えさせるというのは如何なものかと思うわけでありましてハイ」

 

「この高校の吹奏楽部は関西大会を突破した。その頑張りや努力とやらは充分発揮されたでしょう。だから今度は学生の本分を、将来を見据えた高校3年生として全うさせて下さいと、この度直接申し上げに来たのです。母親として。おかしいですか?」

 

 職員室の一角。そこには滝先生と教頭先生、そしてあすか先輩とキャリアウーマン然とした人がいた。……和菓子の人だ。私はすぐに判った。でも一体何でここに。

 

「おかしいとは思いません。しかしその退部届は、お母さんの意思で書かれたものではないですか?」

 

「それはおかしいと?」

 

「はい。少々」

 

「そうですか。先生、失礼ですが貴方お子さんはいますか」

 

「いいえ」

 

「子育ての経験は?」

 

「ありません」

 

「そうですか。では分からないのも無理はありません。貴方方高校の教師は、大勢の生徒を三年間のみ管理成長させる義務と責任がありますが、私のような親は自分の子供を十年以上管理成長させる義務と責任があるのです。 昨今は、義務も責任も果たさず権利のみを主張する親が多くなっている傾向にありますが、私は違います。この子の将来は私が決める」

 

・・・・・。

 

「皆様方には興味も無いでしょうが、この子は私が一人で育てました。誰の手も借りずに、ここまで一人で。毎月振り込んでくるお金は親の義務と責任だから受け取ってはいますが、鐚一文使った事はありません。何故ならこの子は私の全てで、田中あすかだからです。飢えさせた事もお金に不自由させた事も未来を一緒に見なかった事もありません。

 この子が人外跋扈する魔境に、社会に出ても何とか生きていけるよう教育する。それが親なのです。生徒が全員無事卒業できるよう教育する貴方方教師とは、少し違います。そしてこの子は音楽の道でも推薦でもなく一般受験を控えている。 解かりますね?今何が必要で、何をさせるべきなのかが」

 

「ええ勿論、ハイ。お母様のお言葉は尤もですしかし、」

 

「私は本人の意思を尊重します」

 

「…!」

 

 滝先生が断言する。流石だ、と私は思った。

まるで巌のよう。梃子でも動かないし、動かせない。でも対峙するその人の表情をそっと見て、私は息を呑んだ。女性の表情は、あの和菓子屋で会った時と全く同じ顔だった。

 

「田中さんが望まない以上、たとえ誰が何と言おうとも私は受理しません。田中さんはこれまで、立派に部も勉強も頑張ってきました。高校3年時の学生の勉強が将来にとってどれだけ大事か、私は学生を経験した教師として弁えているつもりです。ですがその学校生活の努力の結果の一つが今、吹奏楽コンクール全国大会という形で表れているのです。・・・応援してあげる事は、出来ませんか?」

 

「出来ませんね」

 

冷徹にすぎるその声に。誰かの脚が震えた。

 

「あすか」

 

「…はい」

 

「今退部すると言いなさい」

 

「………ぇ?」

 

「今、辞めるの」

 

・・・・・。

 

「……。お母さん私」

 

 あすか先輩の横顔を見る。いつもとは違う、一握りの勇気に満ちたその顔を。まるで敢然と立ち向かう誰かのように、先輩は。娘は母親に口を開いた。

 

「ええ」

 

「私。部活辞めたくない―――」

 

そしてその瞬間、乾いた掌の音が娘の頬で響いた。

 

 

 

 

 

 

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