駅ビルコンサートで北宇治の演奏を突然聴かせて、ビックリさせたる!RTA、はぁじまぁるよー!
ついにあすか先輩が部活に来なくなってしまいました。吹部部員のやる気値はダダ下がりですね・・・。なんだかんだ言ってこの人がいるなら大丈夫ーって気にさせてくれる人って・・・勲章ですよぉ?まさに柱。支えるものがあってこそ柱は柱足りえるからね、しょうがないね。
そんな大黒柱が居ない状態で迎える駅ビルコンサート。
果たして北宇治は清良を真由黒江をあっ・・・と言わせることができるのか? 出来るに決まってんじゃん。
さてではその為の下準備。部長の晴香先輩に話しかけて彼女の演奏レベルを上げます。この時期はどのパートの子に話しかけても演奏レベルが上がるので利用しない手はありません。ただし演奏レベルを上げられるのは二人までなので、あとはトランペットの香織先輩に話しかけましょう。
良いレベルだあ。
本番の全国大会ではここに覚醒したあすか先輩が加わるわけなのでもう最強コレ。てなわけで駅ビルコンサートのスタートです。
『あれって立華?』
! あの水色の麗しいユニフォーム。マーチングの強豪・立華高校の皆さんです。佐々木もとい梓ちゃんがいる高校ですね。栞先輩はどこ?・・・ここ?(小声)
ファッ!?あれは素晴らしき未来先輩とクールビューティ南先輩!?
こんな所で拝めるとはいやいや落ち着け落ち着くんだ走者今は立華高校編ではない部長の翔子さんを見て落ち着くんだ。翔子さんはあの立華編の中で影が薄い=最強キャラという孤高の人。走者に勇気を与えてくれる。
しかしながら未来先輩と南先輩は本当に良いキャラですよね(ファンクラブ会員並感)一昔前は、あの二人プライベートだとラブラブだよ派と、あの二人はいつまでもプラトニックで友情だよ派と、二人の間に挟まりてえ派の三つに分かれ混沌を極めていましたが、何故だか最後の派閥が一匹残らず根絶やしにされて今は二つしかないっていう経緯があります。まあ走者はあえて挟まってみたいなって思って昔立華編プレイしてみたんですけどね。無駄でしたが。
ん?こんな時間に誰だろう宅配便かな?頼んでないしRTA中なんで無視だ無視!
よし(ベネ)!カテゴリーキング清良に北宇治の凄さを思い知らせる事が出来ましたね。これでフラグが立ちました。ついにその時です。そう、あすか先輩を連れ戻すぞ大作戦発動の時です。
無くてはならない人、特別な人。この吹部にとって私にとって。そんな彼女をたとえ親であっても奪う事は許されないんだよなあ・・・。てなわけで作戦開始です。止まるんじゃねえぞ全国が、待ってんだ!そんな感じで今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。
◆
―――いつもどこにでもいる。
私にとって大事な人を傷つける人間が。
大きな音。頬を叩かれ、グラリと身体が傾くあすか先輩を見て、私はすぐさま駆け寄った。何も考えられない私はただ寄り添って、顔を見つめるとそこには何も映っていなかった。
頭の中が割れる音がした。
許せない。こんなの大人のやる事じゃない!私は握り拳を作ったまま前に向き直って思いきり振りかぶった。
「――いつも、どこにでもいる」
しかし聞こえてきたのは、まるで地獄の底の主のような声だった。
「――自分が信じているモノだけを尊び、さもそれが絶対的なまでに正しいと盲目的に思い込んでいる未熟者(子供)が。そして往々に、間違いだと気付いた時には、いつもこう叫ぶ。何であの時教えてくれなかったんだ?と」
「………」
言葉なんて行動に比べれば大したことない。なのに足が、全身が竦む。
化け物みたいな表情で、自分の子供の顔を叩いた母親はしゃべり続けていた。
「あすか、質問するわ。貴女を叩いたのは今回で六度目だけれど、過去五回において毎回私は何と言っていたか憶えている?」
「………。暴力を振るう理由について」
「続けなさい」
「言っても聞かない子供は、殴るしかないという乱暴な理屈を実践しているのです。しかし暴力を、家族であっても暴力を他人に振るってはいけませんという話は子供でも分かるものです。現に、現代社会において暴力を振るう者は例外なく排斥されています。にもかかわらず私は貴女に暴力を振るう。理屈を実践する。何故だか解かりますか?」
「………」
「それは暴力が、一時的ながらこの世で最も効率的な指導方法だからです。どんなに賢しい子供も大人も、殴られた時には脳を痛みだけに支配される。こんな指導法が蔓延ってしまえば、ただ短絡的に他人を殴るだけのバカ(人間)がこの先産み出され続けてしまうというのに。だからこそ現代では暴力を過剰なまでに忌避しているのです。
しかし苦痛を知らない人間は、痛みを他者に与える苦しみも危うさも知らないバカ(人間)になる。よく覚えておきなさい、貴女が抱いた間違いと共に」
「正解よ、あすか。 さて?大衆の面前で子供を殴るなど母親のする事ではないかしら?貴女」
「………。はい」
私は拳を下ろして言った。
「何処の世界に我が子を殴りたくてぶちのめしたくて堪らない親がいるのかしら?もしそんな親がいるのなら、そんな奴は親でも何でもない只の犬畜生未満のゴミです。
暴力を振るうというのはとてつもなく重い行為であり、親というのは常に自分を戒め続けなければならないのです。子供が犯罪を犯したら誰が警察に頭を下げる?子供が道を外れそうになった時は、誰がイの一番にその道を修正させる?」
「………」
・・・・・。
「貴女達は知らない。本当に何も知らない。生きる事の意味も苦痛も屈辱も何もかも。知っていると思っているなら、それはただ知ったかぶっているだけ。 自分で選んだこの道をただ進む?誰にも文句は言わせません?人生に正解は無いのだから?子供は皆そう言って、そして世間一般の大人は皆こう言う。頑張りなさい、と。何故だか解かるかしら?」
「…選択したからです」
「何処の世界に子供を自分と同じ地獄以下の穴底に進ませる親がいる!!!」
悪魔のような形相で、目の前の大人は口にした。
「大人は社会の権化だと知りなさい。大人というものは、子供がこちらに来る事を今か今かと愉しみにしているのです。屈辱と怒りの表情が見たくて見たくてたまらないの。珍しいから、懐かしいから。そして全てを経験したあなたに、優しげな笑顔で今更手を差し伸べる。それが社会なのです。 ――であるなら?大人であり親である者は自分の子供をどんな大人に導いていけばいいか?」
・・・・・。
「そう。親のようにならなければいい」
・・・・・。
「その為に親は子供を管理する義務と責任があるのです。所詮カエルの子はカエル。おざなりに接していけば必ず自分と同じ道を歩む。そして思い知る。今いる場所が地獄以下の穴底だと気付いた時にはもう手遅れ。
これが、私が娘に暴力を振るってでも音楽を続けさせない理由です。よく覚えておきなさい。管理とは、成長させる事。現状を維持する事ではありません。そして私のような親は、子供の為なら神にも悪魔にも化け物にだってなれるのです」
「………」
「・・・・・」
職員室内の全てが水を打ったように静まった。恐ろしかったからだ。
それは貴女の被害妄想ですと反論する事は簡単だろう。でも誰も、先生たち大人すらも何も言わなかった。つまり全くの間違いではないからだ。
私は数学の補習で教えてくれた先生ならと思って後ろを振り向いたが、生憎今この部屋にはいなかった。そして久美子は青ざめていて、あすか先輩はただ目を伏せていた。
……私の親もこういう風に考えているのだろうか。いつも私を優しく見つめる眼差しは、これから社会という名の地獄以下の穴底に突き進む様を嬉々として待っているからなのか。それともこの人のように、そうならないよう注意しているからなのだろうか。
「……。でも私は、」
「………?」
?私は? 何だろう、今私はなんて言おうとしたのだろう。
前を向く。そこには恐ろしい表情。独特な、川の流れのような視線。胃が縮む。…この空気で、この場で子供が何を言っても大人相手には通じないだろうに。でも何故か、
「……桃?」
久美子ならきっと。それは違うって思っている気がしたから。
「――職員室で誰が騒いでいるかと思えば。子供の将来と教育に親御さんが口を出すのは、三者面談の時と自宅にいる時のみでお願いしたいものですが?」
「……え?」
「子供は生まれた時から、子供の社会の中で頑張って生きているのです。ならば大人の社会でも同じく頑張っていけるよう応援し、信じ、教育するのが我々大人の、親の義務と責任。 そんな事も知らないのか?お前は」
「―――なに?」
静寂な職員室内に颯爽と靴音を響かせながら歩き現れたのは。振り返ると、そこには副顧問の松本美知恵先生がいた。
いつも通り一文字に結んだ口元。鋭すぎる視線は、でもほんの少し緩んでいた。……恐がってる?ううん、違う。何故だか私には分かった。でもそれは一瞬の出来事で、今は私とあすか先輩を護るように背中だけを見せている。
「―――」
「………」
二人の大人が睨み合う。一触即発の空気。本当に怖い。拳ではなく眼だけでやり合うのが大人の本気の喧嘩なのか。そう思わせる程に熾烈な目線の合戦は、
「――――美知恵か?」
「久しぶりだな、明美」
まるで自分が自分である為に捨ててきた何かを。偶然見つけたような表情で終わった。
◇
「成る程、お前がいる学校だったか。であるなら納得だ」
「何の納得だ?聞こう」
「黙ってそこに立っていればいいものを。ここの子供は活きがよすぎる。ちょうど、昔のお前を見るようだ」
「そう言うお前は変わったな。それがお前の証明の仕方なのか?率直に言って品性を疑う。大人気無いにも程がある」
「?証明だと?」
「己を証明すると。他ならないお前が言っていた事だろう」
「…一体いつの話をしている?己の証明だの自分とは何かだの。そんな思考は、親には大人には必要ない。そんな無駄な事をしている暇があればお金を稼ぐなり自分の子供の為になる何かをするべきだろうが。もう暇じゃないんだ私達は。背負っているんだ人生を」
「ご存じないようだな。人生を背負っているのは子供だって同じだ」
「ま、松本先生。お知り合いですか?」
二人だけの空気を教頭先生が破る。それは絶好のタイミングだった。私はお陰で一息がつけた。
「ええ、…昔馴染みです。 申し訳ありませんが、今日のところはお引き取りを。田中さんのお母さま。これ以上はお子さんに酷ではありませんか?」
「………」
和菓子の人。あすか先輩のお母さんはゆっくりと松本先生と先輩を見詰め、最後に私を一瞥した。
「あすか、帰るわよ。先生達にご挨拶なさい」
「…先生、すいません。今日部活は休ませてください」
「はい、・・・それは構いませんが」
「母と一緒に帰りますので。失礼します」
あすか先輩が母親と一緒に歩き去る。そしてこの騒動のあいだ先輩は私にも久美子にも、一度も目線を合わせてはくれなかった。