響け!ユーフォニアム一年目でゴールド金賞RTA   作:ブロx

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第七回

 

 

 

先を征く人は大きくみえるけどお!RTA、はぁじまぁるよー。

 

 前回は演奏レベルが足りていた事により、大会の正メンバーにホモちゃんが無事選ばれた所さん!?まででした。

 

 なので今回はとある先輩を差し置いて大会のメンバーになった幼馴染・黄前ちゃんへのフォロー。そしてこれまでの選択肢で多少は触れていたように自由曲のトランペットソロは誰が吹くか?問題の解決を急務とします。

 

 三年間すんごく頑張ってた最上級生と、誰よりも上手いだけが取り柄の1年生。

顧問の先生方は実力しか見てないので後者を選択しましたが人間そう単純ではないようで、現在部内の意見が割れています。さっさとそれを終息させなくてはいけません。

 

実のある合奏練習が削れたら勝てる大会も勝てないって、それ一番言われてるから。

 

 なのでデカいリボンがきゃわいい2年の先輩曰くマジエンジェル!!!! な3年の中世古香織先輩には(このルートではソロを)自分から諦めてもらうよう仕向けましょう。・・・え?そんな事したらデカリボン先輩に5656されちゃうだろ! 

 

先輩はそんな事しないから・・・(震え声)  

 

 そ、その代わり香織先輩ルートでは、どれもこれもトランペットソロを吹く為に切磋琢磨していく様が見所さん!で先輩マジエンジェルっていうかマジエスペシャリー。

 高坂さんを見た瞬間あすか先輩への想いとは違う何かが自分の中に生まれる『Age of Fire』ルートなんて熱すぎて脱水症になりますなります。

 

 しかもこのゲームはトランペットパートキャラが優遇されてるっぽくて、特に四人のルート・通称トランペット四騎士の話は全部熱いです。

 

 『加部友恵』 加部ちゃん先輩マジ筆頭。獅子。言うことなし。

 

 『笠野沙菜』 通称深淵歩きルート。香織先輩の陰に隠れて存在感薄いから?と思いきや…

 

 『滝野純一』 お前鷹の目みたいに香織先輩のことチラチラ見てただろから始まる彼の恋物語ルートは男の子男の子してる。

 

 『吉川優子』 香織先輩の刃

 

 

 ・・・これマジ?みんな香織先輩大好きすぎるだろ。ちなみにこのドリームソリスタールートのバッドエンドの一つは上記の四人から色んな意味でボコられます。失われた竜狩りみたいだあ。

 

 それだけ現北宇治高校吹奏楽部は粒揃いというわけですね。さて問題はいつ頃イベントが・・・・ん?

 

『中世古先輩、ちょっといいですか?』

 

 きたきたきた大当たりぃぃ!!! ホモちゃんに流れが来てます。

やったぜ工藤D!!デカリボン先輩がさあ!ホモちゃんに魔の手を伸ばすのが先か、ホモちゃんが勝つのか!!実験だよ実験!!

 

 といった感じの(嘲笑)香織先輩に相談イベントです。

これは部員大多数に好印象を持たれてると発生するやつで、これで問題解決に一歩近づきます。しかもこれで香織先輩の信頼値が爆上がり。

 

 後に発生する定期イベント解決に大きく影響してくるので、勿論ここは勝ちに行きましょう。やっちまおうぜ?やっちゃいますかやっちゃいましょうよ!!

 

『トランペットソロ。吹くべきです』

 

・・・・・は?

 

 え?あれ~?おかしいね、べきですってそれおかしいね?

たしかここは香織先輩の過去話を聞いてその上でホモちゃんの説得により高坂さんに潔くソロを譲る感じになるとこなのにね。何やってんのホモちゃん。

 

かなり挑戦的じゃないそれぇ? ・・・ゑ?リセ?再走案件?

 

『先輩が納得できるのなら』

 

『先輩は納得するべきです』

 

 あ、なんだちゃんと流れ来てましたね。下を選択。これでさっさとソロオーディションのやり直しが発生します。

 

あぁ~!トランペットの音ォ~~!! 生きてる証拠だよ。

 

 でも悲しいかなあ・・・。トランペットソロは正式に高坂さんで決定です。

そして練習を重ねついに京都府吹奏楽コンクール開催という所で今回はここまで!ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――アンタなんていなければ、大会で吹けたのに』

『何でアンタなんかが選ばれて。3年の私が吹けないの?ねえ、何で?』

『馬鹿にしてるでしょう。このクソ1年』

『お前さえここにいなかったら。私はAでコンクールに出れたのに』

 

 

『―――何とか言えよ。黄前』

 

 

「久美子~、調子はどう~?」

 

「………」

 

 嬉しくて天に昇ってしまいそう、みたいな顔。

やり遂げた吹奏楽部員の晴れがましい忌々しい顔で。オーディションに合格した日から毎日そいつは、私の前に現れていた。

 

「お互いAメンバーとして頑張ろうね!」

 

――何でこんな顔でいられるんだろう。他人の気も知らないで。

 

「………そうだね。じゃあ私個人練いってくるから」

 

 気持ち悪いその笑顔。心底嬉しいなと思ってる面構え。何も考えずに前だけを歩いていれば、誰に何も言われないと思ってる御目出度い精神構造。この子の頭の中には人間模様の『に』の字も無いのだろう。

 

他人の気も知らないで。

 

「あ、そうだ。 2年の中川先輩」

 

「……っ」

 

 うるさい黙れ。私は我慢なんかせずに、眉間にしわを寄せながら目蓋を限界まで開いて睨みつけた。

 

「――の、分まで。あとは頑張るしかないよね?久美子?」

 

「アンタ何言ってんの?」

 

「何って、そのまんまの意味だよ。あとはテッペンまで頑張るしかない。落ちた人も落ちなかった人も、この北宇治高校吹奏楽部員は一人以外全員がそう思ってる。思ってないのは三年前、中学で酷い目にあっちゃった幼馴染だけ」

 

「黙っててくんない?」

 

「あれ?私言ったよね。ここはあの中学校じゃないって。 ここにあんな程度の低い奴はいない。なんだかんだ言っても志が高い人間の集まり、それがここ。だから私達はもう頑張るしかない。違う?」

 

「黙れって言ってんだけど?」

 

 最近メキメキと楽器の腕を上げつつあり、時には恐ろしさすら滲み出てきている幼馴染の女は笑顔のまま舌を回していた。

 

「ははぁ~、小学校からユーフォ吹いてて無自覚の優越感持ってるどっかの誰かさんには分からないだろうけど、ここに来るまでそれなりに必死なもんだったよ?

 自分一人だけ満足してりゃあ良いような場所じゃないし、色んな人の音も聴いて合わせなきゃいけないし、色んな感情やら思惑が渦を巻いてる。それが部活なんだなって、帰宅部だった私は痛感してる。だから自分なりに常に力量を上げていかなきゃ生きていけない。だって時間だけは過ぎていくから。現状維持なんて無理。迷えば、あの渦に呑み込まれる」

 

「さっきから耳聞こえないのアンタ?」

 

「聞こえるに決まってんだろ吹奏楽部」

 

「………」

 

「………」

 

・・・・・。

 

「………。迷えば、」

 

「?」

 

「迷えば、負けるって言いたいの?」

 

「勿論」

 

「迷わない人間が居るとでも思ってるの? 桃」

 

「思ってる」

 

「どこに」

 

「将来。だから私はクラリネットを吹いてる。――だって選ばれたんだから。久美子もね」

 

「………」

 

 …それは初めて見る視線だった。

全国の舞台で自分を証明する。そう話した彼女は寸分違わず、今も眼で口ほどに物を言っている。麗奈に似た雰囲気すら纏いはじめた幼馴染は、人間模様よりも何よりも、自分を容赦なんてしないと全身で語っていた。桃のくせに。

 

…いつもいっつもこちらの話を聞いてそれで満足してた、桃のくせに。

 

「ちょっと失礼ー。帆高ちゃん、ちょっと黄前ちゃん借りてっていい?」

 

「!? 中川先輩……」

 

「どうぞ~、こんなんで宜しければ」

 

「あはは、こんなんって。 ――さて黄前ちゃん、このあと時間ある?ちょっとマクド行かない?」

 

「え、ひゃ、ひゃい…っ!!?」

 

「いってらっしゃ~い。気を付けて~」

 

 ふにゃりとした笑顔。先程までの火のような真剣な眼差しは別人の誰かだったのか。フリフリと手を振るこの女を尻目に、私は心の何処かで、こいつにも負けたくないと思った。

 

 

 

 

 

 

「居残り練習お疲れ様。桃ちゃん」

 

 橙色に輝く太陽が最後の力を振り絞って私達の楽器に光を与える中。

久美子と分かれた私に向かって、幼馴染の葵さんはフリフリと手を振っていた。……柔らかいその笑顔。恥ずかしいから言った事はないけれど、私は昔からこの人に憧れている。

 

「葵さん、それはお互いに言いっこなしですよー。今日はもう上がりですか?」

 

「うん、あとは勉強の時間ってね」

 

「お疲れ様です。私ももうそろそろ上がりますね」

 

「そうなんだ。あ、なら桃ちゃんちょっといい?」

 

「?はい」

 

「飲み物おごったげるよ。何がいい?」

 

「え!いいんですか?」

 

「遠慮しなくていいよ。ヒロネにも許可はとってあるし」

 

「先輩が…?」

 

こちらを見ながら小さな手で〇をつくるヒロネ先輩マジ天使(エンジェル)。

 

「そういう事。じゃあ一緒に行こっか」

 

「は、はい!」

 

・・・・・。

 

「―――あれ?葵さん? 自販機通り過ぎちゃいましたけど」

 

「………」

 

 ついに力尽きた陽に想いを馳せる暇もなく、前を進む先輩は一度も振り返らずてくてくと歩いていた。気付けば私達を照らす人工の蛍光灯が、行く先を導いていて。

 耳をそっとすませば、仄暗く聞こえる誰かの音色。…それはこの世のものとは思えない黄金色の音で。 

 

ざわりと、その時私の背中を風が撫でた。

 

「あの――――って、あれ? この曲」

 

「香織のトランペットの音色。自由曲のソロ部分」

 

「………」

 

 立ち止まり、振り向く葵さん。

……誰だろう。私は一瞬そう思った。だってその瞳には鎧塚先輩やヒロネ先輩達がたまに見せる、私達1年生には決して宿せない何かがあった。

 

「桃ちゃんごめん。ちょっと香織と、話してみてくれないかな」

 

「私がですか?」

 

「お願い。私じゃ駄目だったけど、桃ちゃんは良い雰囲気をしてるから香織も話しやすい、と思う。それに何より納得できる筈だと思うの」

 

「納得、ですか」

 

音は未だ止む気配はない。…真摯な色。私はそう思った。

 

「この音には香織の想いが籠ってる。それを部の皆にしっかりと聴かせずに風化させちゃうのは、いけないって私は思う。コンクールまでまだ日があるうちに、それはちゃんとするべきだって」

 

「………」

 

「―――去年ね、この吹部は上級生と下級生とで割れた事があったの。上手くなりたい人とならなくてもいい人。結果的に上手くなりたい人が、…後輩がたくさん辞めていった。晴香も香織も私もそれを止められなかった」

 

「そんなことが……」

 

「私達は結局何もできなかった。だからあの頃を経験した人は、この時期こんな風に音に諦めが乗ってしまう。でも、桃ちゃんなら。 証明する為に頑張って今日も楽器を吹いてる貴女なら」

 

「………」

 

・・・・・。

 

「このソロを聞いて貴女が思った事を、どうかあの子に言って欲しい。だって心底納得してるのなら、…こんな淋しい音は出ない筈だから」

 

 葵さんは火にかけたお鍋の蓋を開けて見える中身のような、煮えた何かを眼に宿しながら口にした。…冷める事も気化する事もまだ先のそれは、自分なりに形を変えようとしてるのだろう。

 

「―――分かりました」

 

「お願い。桃ちゃん。遅くなっちゃったけどあとで好きな物、何でもおごったげるから」

 

それが何に成るのかは、将来の自分にも解らないのだとしても。

 

 

 

 

 

 

「中世古先輩、ちょっといいですか?」

 

「? ああ、帆高さん。まだ帰っていなかったの?お疲れ様」

 

「お疲れ様です。あの――、」

 

 悪戯が見つかってしまってバツが悪い、とは全然見えない先輩の表情は。しかし必死になって何かを燃やそうとしているようだった。……そうやって無理矢理にでも前へ前へ、ここじゃない何処かへ進もうとしている。そんな表情。

 

なので私は思った事を口にした。

 

「? ああ、さっきの?ごめんね、未練ってわけじゃないんだけど。何だか少し吹いてみたくなっちゃって―――」

 

「トランペットソロ。吹くべきです先輩」

 

「――………え?」

 

・・・・・。

 

「さっきの音、香織先輩の音色、凄く良かったです。……綺麗な黄金色の風みたいで。こんな所でコッソリ吹いてるだけだなんて、私、駄目だと思います」

 

「何を言っているの?この前のオーディションで、ソロは高坂さんって滝先生が決めて、」

 

「だから何だって言うんですか」

 

「だから何だっ………て――――?」

 

「ここで独り、誰にも聴かせないソリストになってそれで満足なんですか?それが中世古先輩の、香織先輩だけの音楽なんですか」

 

「………」

 

「高坂さんは上手いです。出る音はどこまでも遠くを映す青空の色みたい。…もしかしたら聴く人が聴けば、この吹部で一番上手いのは彼女なのかもしれない。でもだからってそれが、―――それが自分が納得していい理由にはならない筈ですッ」

 

「納得していい……理由………」

 

「先輩は納得するべきです。だって自分から何もせずこのままでいたら、……きっと自分が自分でなくなるって。思わないんですか香織先輩!!」

 

「………!」

 

 

―――先輩は、トランペットが上手なんですね。

 

 

「………ねえ帆高さん。貴女は納得したいから、頑張ってクラリネットを吹いているの?」

 

「いいえ。証明する為です」

 

「自分を?」

 

「はい」

 

「誰に?何に?」

 

「自分に。そして幼馴染に」

 

「…そっか」

 

 ―――その時感じたのは炎のような何か。それは諦めていいものではなく、誰かに譲っていいものでもない。たとえその差は歴然と誰をも自分も口にしていても、思い出のように蓋をする事だけは決して出来ない。

 

 いつかそうなるのだとしても。いつか、あの日を空しいだけだと想う時が来ても。今だけは。

 

―――今だけは。

 

「桃ちゃん。私、ちょっと職員室に行ってくるね」

 

「付き合います。先輩、何かあれば私も」

 

「ありがとう。でも一人で大丈夫。これは私の我が儘だから」

 

「…分かりました」

 

「葵の眼の色が変わった理由が分かった気がする。ヒロネが羨ましいな」

 

「へ?」

 

「良い後輩を持って、先輩は幸せだねって言ったの」

 

「ありがたいお言葉…です…?」

 

「じゃあね」

 

……これで良いのだろうか。刹那の逡巡、頭をかすめたのは過去という名の足跡。

 

『先輩は、トランペットが上手なんですね』

 

それはいつも火のように何度も。

 

「―――。好きなの」

 

何度も。

 

「上手じゃなくて、好きなの」

 

何度も私に。

 

「お願いがあります滝先生」

 

私を思い出させてくれていた。

 

「ソロパートのオーディションを、もう一度やらせて下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

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