響け!ユーフォニアム一年目でゴールド金賞RTA   作:ブロx

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中盤関西大会まで
第九回


 

 

 

 数多の音楽家を世に輩出した、関西の吹奏楽強豪・北宇治高校が零落して10年。関西吹奏楽コンクールは、大阪東照・明静工科・秀大附属の3つに分かれ混沌を極めていたRTA、はぁじまぁるよー。

 

 

 やっとこさ関西大会に進みました今回。ならばやるべき事(こたえ)は一つぅ!

北宇治高校吹奏楽部左右両翼の一人、鎧塚みぞれちゃんを覚醒させる事です。所謂のぞみぞイベントですね。

 

 これをうま~~く消化すると、只でさえ高いみぞれちゃんの演奏レベルが3倍になります。

 システム上、みぞれちゃんはホモちゃん(主人公)がどんだけレベルを上げて追い越しても1だけ常に演奏レベルが上回る人物で、そんなキャラは北宇治にはあと一人しかいません。そして逆説的に(適当)ホモちゃんのレベルを上げまくってる現在の状態でイベントをこなせば、もうホント『虹の翼』が虹天剣。

 鳥になってこい!

 

 しかして関西大会まで一ヶ月もないこの状況。当代最強のオーボエ奏者に彼女を覚醒させなければ、北宇治が関西を勝ち抜く事は非常に困難です。というよりその先の全国で勝てません。

 

 全国大会には清良女子という強豪校がいるのですが、そこがもう皆アホみたいにレベル・ステータスが高くて、例えるなら全員ゴ集団でカテゴリーキングですね。一番強いって事です。

 

 特に低音パートにはこのゲーム最強ステの魔王がいて、ぶっちゃけジョーカーです勝てません(トラウマ)

北宇治高校吹奏楽部両翼の二人を覚醒させなければ、彼女達の足元にも及びません。つまり金賞も獲れません。

 

もう終わりだぁ!ライダー(ケンジャキ)助けて!

 

 ま、まあそれはさて置きもう一つ現状報告をしておくと、件のみぞれちゃんは傘木さんが好き過ぎるあまり目と目が合うと脱兎の如く走り出してしまいます。会話が成り立ちません。恥ずかしがり屋かな?(すっとぼけ)

 

 なので彼女を出来るだけ早く傘木さんと引き逢わせる必要があります。ショック療法だよ上等だろ。

 雌雄を決すんだよ!過去の自分を他人にする為に上手くなりたい橋走った黄前ちゃんみたいによお!(豹変)

 

 ちなみに傘木さんというのは2年の傘木希美(のぞみ)さんの事で、好きですじゃなかった北宇治吹部に必要なキャラの一人でみぞれちゃんの特別な人です。

 

 このゲームでは各キャラに二つルートエンディングが用意してあるのに対し、彼女には三つ目の隠しルートがあって、その最後である『笛聖』というエンドが走者的にはお気に入りです。

 話の出来自体は傘木さんが強くなり過ぎるだけなので嫌いですが、最後の最後にみぞれちゃんが傘木さんの吹くフルートを好きって言う所でたった今好きになった(霙並感)

 

 しかもこのエンドを迎えると、以降傘木さんのステはめっちゃ高水準な状態が維持されます。所謂笛聖モードです。システム画面でオンオフを切り替えられますが、この『ドリームソリスター』ルートではどっちでも構わないのでオンのままにしときましょう。

 

『幸せそうで』

 

『私も練習しよっと』

 

 おっ、やべえ上を選択だな!

下を選ぶとホモちゃんの演奏レベルは超上がりますが、のぞみぞイベントが終わります。ま、上の方はみぞれちゃんの信頼値も上がるし多少はね?

 

現在のホモちゃんの演奏レベルこんなに高いから問題もなしです。当たり前だよなあ?

 

 え?慢心?攻めなきゃ勝てねえから!秀大附属ミスしろとか三校怖いと思った瞬間負けなんだよ!だって全国には怪物しかいねえ!! 

 

 走者はこれ以上、真由黒江じゃなかったあの怪物達には屈したくない・・・!

 

 たとえ負けても勝つんだぁあ!

エンジン全開!!!という所で今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――続きまして、清良女子高等学校・吹奏楽部の皆さんの演奏です。

 

「………」

 

「すごい演奏ね。ここと闘うんでしょう?皆」

 

「………。全国でね」

 

「ふーん」

 

 テレビから聞こえてくる清良女子という全国大会常勝校の演奏を聴いて、私は震えていた。出る音は空を彩る雲のように、だけど風と共に消える事はなく残り続け、数多の誰かの心の風景になるのだろう。

 

音色は赤みがかった蒼の色。もうすぐ綺麗な夕空だ。

 

「こんなもんか」

 

「え?」

 

「このユーフォニアムの人と、こっちとこっちの人達くらいだね。自分の音色が出てるのは」

 

「判るの?一人一人」

 

「うん。これが全国かあ…」

 

特にこのユーフォは綺麗な深い海の色。クラゲみたいで面白い。

 

「―――へえ」

 

「? なに?お母さん」

 

「お父さんも喜ぶわね。桃に自信がついたって」

 

「自信て」

 

 母の視線が一分(いちぶ)細くなって、こちらを見る。真面目な話をする時の、いつものクセ。私は少し居住まいを正した。

 

「でも気を付けた方がいいわよ? そこに辿り着いた時、壁と試練は列をなし始める。貴女だけの何かを自覚してからが本当の始まりよ、桃」

 

「……うん」

 

「毎日頑張っているのは知っているし、応援も手伝いも勿論する。でも壁と試練を前に、逃げるか壊すか回り込むかその場で一生へたり込むかは自分次第。特に自らの意志が、強固であるほどね。いつでも私達や良い友人に相談なさい」

 

「……うん。ありがとうお母さん」

 

「―――今日の夜は貴女の大好きなスキヤキにしましょう!ちょうどお肉食べたかったのよね~~。ああ~~焼き肉の音ォ~~」

 

「あっはははー」

 

母の声と共に聞こえる全国の音色。でも北宇治の方が強い。私が居るのだから。

 

「じゃあ今日も走ってきまーす」

 

「気をつけてね~」

 

 挨拶もそこそこに、私は日課の早朝ランニングに出掛けた。

夏は夜が良いと大昔に誰かが綴ったらしいけど、私は朝が好き。それも太陽が大地を覗く前の、吹き抜ける風が汗を拭く感じが心地よくて、ずっとこのままでいいのにと思ってしまう。

 

 でも自分が何もしなくても、時間だけは過ぎていく。だから前に進めなきゃいけない。所謂もののあはれってやつ。 ちょっと違う?

 

「っふ、っほっほっ」

 

 少しきつい、でもまあだ大丈夫…。そんなペースを維持して走る。

キョロキョロ顔を上下左右に向ければ、同じように走ってる人が結構いて何だか楽しくなってきた。

 

山間からひょっこり太陽が私に挨拶をしたので、目礼する。

 

 ……若干ランナーズハイ気味だ。ペースを早め過ぎたみたい。最初から最後まで同じペースを維持しなければならないのに。

 

そう、このように走る事は肺活量・体力向上の他に自律向上にも繋がるのである。

 

 ふっふーん、であれば今すぐ論文を書いて出せばこれでノーベル賞は私んモンかもしれないなあ。

 

「ふっ、ふふ」

 

「―――ねえ。貴女」

 

「? はい、?」

 

「北宇治の吹部の人だよね? 関西大会出場おめでとうございます」

 

 綺麗な運動着。活動的な、黒いポニーテール。女性特有の柔らかい微笑み。走ってる最中に話しかけられたのは、これが初めての事だった。

 

「…ありがとうございます」

 

「この前の大会で、私確信した。北宇治は今までと大きく、本当に大きく変わったって。

差し支えなければ教えてほしいんだけど、何があったの?」

 

「練習しました」

 

「え?」

 

「練習。しました」

 

「………」

 

・・・・・。

 

「――早朝ランニング。ってことはこの後朝練?」

 

「はい」

 

「キツイとは思わないの?」

 

「思います」

 

「でもやるの?」

 

「はい、勿論っ」

 

「先生がそう言ったから?」

 

「自分達が、やりたいと思っているからですっ」

 

「………」

 

あ、この眼。走る私はデジャブを感じた。

 

 観察すれば、全然息を切らしていないこの人の心肺機能と微笑は鼻呼吸だけでまだ全然余裕と伝えていて。年季を感じる背筋と走りと瞳はまるで空に浮かぶ飛行機雲。けれど決して、空には溶けてやりはしないだろう。

 

「凄いなあ、皆。ホントに凄い」

 

「………」

 

でも眼の色だけは、先輩達が浮かべるあの色に似ていた。

 

「じゃあ私、こっちだから。走ってるのにお話しちゃってごめんね。 またね」

 

「はい」

 

 また、とは。果たしてどういう意味を持つのだろう。私は一瞬疑問を浮かべたが、それは汗と一緒にどこかへ流れて消えていった。

 

 

 

 

 

 

「鎧塚先輩。おはようございます」

 

「…おはよう」

 

 ランニングを終え、ご飯を食べて今日も今日とて朝練。と思いきや、音楽室には珍しく久美子と高坂さんが既にいた。

 

「久美子と高坂さんも。おはよう」

 

「おはよー」

 

「おはよう、帆高さん」

 

「二人でなんて珍しいね?」

 

「まあね」

 

 二人が移動する。仲が良くてなにより。

自然と聴こえてくるトランペットとユーフォニアムのメロディーは青空と、それに手を伸ばす羽の生えた幼馴染。そんな感じ。安心して聴いてられる。そして面白い。

 

「ふふ」

 

「…どうしたの?」

 

「あ、いえ。すいません、ちょっと面白くて」

 

「? …面白い?」

 

「あのユーフォニアムの子、小学校からの幼馴染なんです。良い友達が出来て、あんなに輝いてる演奏が出来て、何だか面白くって。幸せそうで」

 

「………」

 

・・・・・。

 

「どうして」

 

「え?」

 

「どうしてそんな風に。わらえるの?」

 

「………、えっと?」

 

「友達が。ある日急に、目の前からいなくなるかもしれない。不意に帆高さんを、一欠片も見なくなるかもしれない。それでも、」

 

「………」

 

「それでも。そんな風に嗤えるの?」

 

 咎めるような視線が、真っ直ぐに私を射抜く。そしてゆっくりと右に移動して、その先である左頬を右手で触ると、…私はそちらだけで笑みを浮かべていた。

 

ずっと。朝から。

 

「…追いつけると、いいね」

  

 眼を伏せた鎧塚先輩はスケールを吹く。

たまに速く急にゆっくり、まるで歩速と歩幅を一定にしないで走るように歩くように。高坂さんと久美子も同じように。

 

みんな綺麗な黒青黄蘗。

 

 無言で楽器を取り出して吹くと、面白いくらい良い音が出た。

指はスラスラ回り、何度も何度も吹き込む息は日々の練習の成果を感じる強さと長さ。これより上なんて無いくらいに。

 

でもそれが何色なのか、私には今も分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

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