木々が逆さに映るなかで一人の少女が、映った自分に木の枝でイジワルをする。
「つーん、つーん、ばしゃばしゃー」
ばしゃばしゃーでほっぺをつつき、つーんで枝を激しく動かす。
みんなが彼女にイジワルをする
スカートを捲り上げてくる子
男の子達が遊んでいるところに行くと仲間に入れてくれない子達
男の子達が見つけた本を「すげー」と言いながら見ているのを見せないように通せんぼする子
地面に落としたという砂粒ひとつ付いてない隣町の有名なお菓子を嫌味を言いながら渡してくる奴
そして彼女も自分にイジワルをします。
「つーん、つーん、ばしゃばしゃー」
でも、彼女にイジワルをしない子が一人だけいました。年上の男の子です。
彼はいつもニコニコ笑っています。
何か面白いことがあったのか聞くと、とても面白い話をしてくれます。
たまに……3回に一回くらい、話のオチがよく分からなかったときにどこがどう面白いのか説明を頼むと困った顔をされますが、それ以外は楽しそうです。
彼にならなにをしても怒られなさそうなので、私にする代わりに彼にイジワルをすることにしました。
他の人にやられたイジワルを試してみます。
スカートを捲る為にスカートを履いてもらいます。スカートを捲ると真っ赤にした顔を手で隠してお母さんに謝っていました。
みんなで遊んでいるところに彼を呼びだして、仲間に入れてあげませんでした。ただ、私の友達はお人形さんたちなので、仲間には入れてあげませんが、彼にはお手伝いをしてもらいます。彼はずっとニコニコしています。
いいものを見つけたと、彼を家に呼びだします。でも、見せてあげません。彼はニコニコ笑ってお願いしてきますが絶対に見せてあげません。だって見せようにも見せられませんので。
地面に落としたという砂粒ひとつ付いてない隣町の有名なお菓子を奴に貰ったので、早速彼に渡しに行きます。彼に地面に落としたのであげると言うと、箱に入っているのだから大丈夫だろうと言われたけれど、嫌味を言って押し付けてきました。翌日、奴になんで彼にあげたのか聞かれましたが、地面に落ちたやつだからと言うと、大声で叫びながら帰っていきました。
最後に、彼を湖に連れてきました。ここに誰かを連れて来るのは初めてです。
湖に顔が映るように立ってもらいます。枝を忘れていたので走って取りにいくと、押すなよ、絶対押すなよと言われますがそんなことはしません。走って戻ると彼は目を瞑っていましたが、おしりを軽く叩くとひゃっ! と叫んだ後に不思議そうにこちらを見てきました。よく分からないことを言うのはよくあることなので、気にせず映った彼の顔にイジワルをします。
「つーん、つーん、ばしゃばしゃー」
彼は私のことをニコニコしながら見ています。
彼が村を出ていくことになりました。
なんでも、『いいとこのおじょうさん』と『けっこん』するそうです。そんな変な名前の人の為に彼がどこかにいくなんて、おかしいとおかあさんに言うけれど、とりあってくれません。彼にも行かないでと言いに行こうとしましたが、おかあさんにとめられました。
なので、夜中にこっそり行きました。彼は私の話を聞くと、困った顔で謝ってきます。ゆるしてあげるから行かないでと言うと、もっともっと謝ります。泣いて、泣いて、離さないように服を掴みます。
気づいたら朝になっていました。いつの間にか眠っていたようで、彼はどこにもいませんでした。村のどこにも居なくなっていました。
彼もいじわるな人です。私がうるさいから起こしてくれなかったのでしょうか。それとも、私が彼にイジワルをしていたからやっぱり怒ってしまったのでしょうか。お別れの挨拶すらできませんでした。
映った私の口をばしゃばしゃします。私は私にイジワルをします。
湖に他の人の顔が映る。
「これ、やるよ」
奴がまた、お菓子をくれました。
「いいわよ、地面に落ちたやつなんでしょ」
「いや、これは落ちてないやつだ」