初めまして、でいいのかな。学園都市第三位のレベル5、御坂 美琴せんせーよ。
そのものずばりとあるな世界の超能力少女で、最強の電撃使い(エレクトロマスター)である常盤台中学では憧憬の的になってるお姉さま、な訳なのだけどね。
まあ、あれよ、あれ。
「はぁ。こういうのを憑依転生、っていうのかしらね」
まあ、つまりはそういう事だ。
生まれてビックリどこかで見たような顔の若作りお母様がいて、しかも名前が御坂 美琴の上に学園都市まであって腰抜かすかと思ったわ。
でまあ、原作通りに電撃使いとしての能力を得たまでは良かったのだけれどね。 ほら、何もかもが原作通りじゃつまらないと思わない?
思わないって言った奴は今すぐそこに並びなさい。一人ずつ超電磁砲(レールガン)でぶち抜いてあげるから。原作通りの能力で消し炭になるなら本望でしょ?
まあ、今まで一回も使った事なんて無いけど。
「だってさ、レールガンってぶっちゃけちゃうと手間がかかり過ぎるじゃない? コイン弾いて磁力のレール作って飛ぶ方向制御して? 面倒極まり無いわよ本当に。それなら極大の電撃使った方が楽だし、同じレベルの手間を掛ければもっと強力な攻撃ができるし、そう思わない?」
私はそう言って、手に持った木の枝で這い蹲ってるレベル0をつつく。生きてますかぁ? 口には出さなくとも目で問いかけたところ、もぞもぞと動いて不良然としたモヒカンは生存を主張して来たのでつつくのをやめる。まあ、生きてるのは初めから分かってたけど。
「………い、意味わかんねぇ、ガクッ」
「うわ。口で効果音出す人とか生まれて初めて見た。絶滅危惧種として見世物になるんじゃないかしら。ねぇ、どう思う?」
「なるわけねェだろ。テメェはいつもこンな事してンのか?」
再びつつくのを開始しながら問いかければ、意外にも彼(・)はしっかりと答えを返して来た。ので、私もそのとてもとても珍しい行為に対する敬意を態度で示すために背後を振り返る。
「いつもっていうか、こういう馬鹿どもに関しては一度痛い目見せないと付け上がるからね。というか、中学生の私をナンパするとか、この街ってロリコンが多いわよね、本当に」
「待て。どうしてそこで俺に憐憫の目を向けやがるンだよ、おい」
「にしても、コンビニ帰りに路地裏通るとか、不良に襲ってくださいって言ってるような行為よね。このカフェイン中毒は本当に襲撃を鬱陶しいって思ってるのかしら」
そこには分かっていた通りに、大量の缶コーヒーが入った袋を持った一方通行(アクセラレータ)がいた。
ひくひくと口の端を痙攣させる顔を乗せる首にチョーカーは付けられていない。といっても、すでに夏休みは終了しており、打ち止め(ラストオーダー)は今頃こいつの家でテレビでも見てはしゃいでいるに違いない。
「無視かァ、おい!? クズどもに関しちゃ、どこを歩こォが襲って来やがるからな。どこでも同じなら、邪魔されねェ場所の方がいいだろォが」
「意訳すると、『人通りのある場所で一般人に万一の事があったら困るから、私は人気の無い場所を選んで歩いています』ってとこかしら。見た目にそぐわず根っこのところは本当に優しいのよね」
「チッ。なンでそうなる。むしろ見た目にそぐわないのはテメェだろうが。なァ、“万象掌握(フルグラスパー)”さンよォ」
「その名前って眉唾だからあんまり好きじゃないのよね。どうあがいても私が干渉できない領域って結構あるのよ? 少なくとも、世界の半分くらいは」
世界は科学と魔術で半々の勢力として拮抗している。私が干渉できるのはその内の科学サイドの物質だけで、それすらも完璧ではない。
マナやオド等、魔術的要素が世界にどれだけあるかは知らないが、学園都市二百三十万人の超能力者が構成するAIM拡散力場―――虚数学区と同質の、人の世界とはズレた世界があるはずで、少なくとも世界の半分以上はオカルトで出来ていると想定して構わないだろう。
そもそも、虚数学区はともかく、天使の力(テレズマ)や魔術なんて物にまで干渉できるというのはアクセラレータや垣根帝督は本当に真実例外なのだ。
まあ、虚数学区のみとはいえ、上位概念に干渉できる私も大概なのだろうけれど。
「ハン。この世の半分はオカルトが占めてるってェ奴か? くだらねェな。ンな馬鹿げた代物があるっていうなら、もうとっくに発見されてもおかしくないだろォが」
「普通はね。ま、そろそろ時間的にも丁度良いし。ちょろ~っとお出かけしましょうか」
そう言って、ニッコリと聖母をイメージして笑ってやると、あろう事か一方通行は顔を盛大に引き摺らせて後ろへと後退り、そのまま全力で逃走した。
当然、それを私が逃がすはずも無い。
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私と一方通行は、建設途中のオルソラ教会を見下ろしていた。
「さてさて今回のミッションはとっても簡単。ただここからあの教会へと突っ込むのみ。制限時間は三分です。では、逝ってみましょうか。あ、もちろん死人は出さないようにね。処理が面倒だから」
「おいコラ。無理矢理連れてきて今度は爆弾扱いですかァ? なァオ―――」
「投下~♪」
およそ上空千メートルほどの上空から。
鉄製のタイヤが無いスケボーのような板に乗ってここまで来たが、いきなりのノーロープバンジーもしくはパラシュート無しスカイダイビング発言に口の端をピクピクと震わせる。
だが、私は無駄口に付き合うつもりは無い。だってもうステイルが裏手にスタンばってるし。
「―――ふざけンなァ!?」
「あらこんな所に丁度いい足場が」
一方通行の背を踏み付けて自由落下。そのまま加速し続けて一気に教会の屋根を突き破って床に激突する一方通行を尻目に、私は唖然とする集団の中へ華麗に着地を決めた。
うん、百点。
「はろはろ~。皆さんこんな所に集まってパーティでも始まるのかしら? 楽しい事をするならこの美琴様も混ぜないと怒っちゃうわよ~?」
「み、御坂?」
「ふふっ。見ての通り学園都市第三位の御坂 美琴様ですよ~。ま、パーティ云々は冗談として、今日は人の話を信じないモヤシを連れてちょろ~っと裏社会科見学をしようかなってね。具体的にはオカルトを認めない意地っ張りなガキに本物の魔術を見せてあげましょう、という訳よ」
唖然とした表情を崩さずに名前を呼ぶ上条少年にニッコリと笑ってここに来た目的を告げる。すると、反応を返して来たのは意外にもローマ正教のちびっ子シスターだった。
「が、学園都市がどうして魔術サイドの問題に顔を突っ込みやがるんですか! 魔術サイドの領域に平然と踏み込んできて、戦争でもおっ始めるつもりなんですか!?」
「んー。その質問はステイル少年から来ると思ってたんだけどなぁ。ま、今回に限っては全く問題なく介入できちゃうのよね。理由としてはイギリス清教と同じく『立ち位置の曖昧なオルソナ・アクィナスの一時的な保護』っていうお題目がある訳だからね。後、学園都市住民の保護っていうのもあるかしら。ま、建前だけどね。というか、一方通行もさっさと出てきなさいよ。一発ぶち込むわよ」
「………ったく。面倒くせェ。見るだけなら遠くからでも良かっただろォが」
「アクセラレータ!?」
「よォ、善人。相変わらずなよォで結構なこったなァおい。また面倒事に首突っ込んで、ちっとは学習っつゥ事をしねェもンかね。ま、だからこそテメェは善人なんだろォな。ンで、そこの悪女みてェな奴に騙されるンだろ」
「はい、余計な事言わない」
スパーン、といい音させて一方通行の頭を叩く。やり方は至って単純な木原式。ただ当たる直前で手を引くだけの簡単なお仕事です。
一方通行の反射を平然と無視して殴った事にか、上条少年が驚愕しているのを横目に、パンパンと手を叩いて周囲の注目を集める。
「じゃ、さっさと始めましょうか。お題目は一騎当千もしくは無双。死んでなければ私がどうにかするから、思いっきり暴れなさい!」
ババーン、という効果音まで出して、デデンと指をアニェーゼへと向ける。
我ながら惚れ惚れする程完璧な演出だ。
だというのに、全員先程以上の静寂を返して来て全く動かない。どころか、何故か白い目を向けてくるような輩までいる。
むぅ。解せぬ。
「み、御坂が壊れた」
「シリアスって言葉を知らない女だね、全く」
「リアルにここまで空気読めない奴は初めて見たのよ」
「お願いですから時と場所を選んでふざけてくれねぇですか」
「あのガキがテメェのクローンだって事を痛感したぜ」
「く、空気が読めなくてもきっと良い事があるのでございますよっ!」
敵味方総勢から盛大にツッコまれた。
ルチアとアンジェレネはそれぞれ「全くその通りですね」と言ったり無言で頷いたりしていて、その他モブ連中も「シリアスカムリターン!」「なあ、ここはツッコミを入れるべきか?」「シリアスブレイカー過ぎるだろ」「あれが三位って、学園都市はそれでいいの?」等など梳き放題に言ってくれている。
「よし、今から全員私の敵だ」
翌日。ニュースの緊急特番では一晩で更地になった教会建設予定地に総勢二百名以上ものシスターが半裸で地面に頭から突き刺さっていた事件が報道された。
人々の間で犬○家事件と呼ばれるこの事件は、被害者のシスターに多大なトラウマを植え付けた事実以外何も分かる事は無く、現代のミステリーとして世間を賑わせたという。