抜きゲーみたいな島に派遣された対魔忍はどうすりゃいいですか?   作:不落八十八

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射精よ、とまれ。

「――と、言う訳でSSで働く事になっちまった……」

 

 翌日の放課後、足止め役のヒナミと影の斥候役の美岬を連れて、自信満々に風紀委員室へ潜入した筈の淳之介の報告に一同は黙ってしまった。事の顛末と言うと、礼と面識のあるヒナミによる時間稼ぎを美岬の突発的な変態行為によってぶち壊された結果、目的の資料を発見する前に淳之介が見つかってしまったのだった。咄嗟の機転で裏風俗に対する噴火めいた憤りを吐き出す事で注目を集め、美岬を逃がす事に成功したもののSSBIG3が勢揃いの場で逃げ出す事が出来ず交渉に当たった、と言う説明がされての先の発言である。

 

 約一名、半々の確率でこうなるかなと思っていた那須が笑いを堪えていたが、他の面々は唖然とした表情で淳之介を見つめていた。その中には戦犯の美岬も含まれており、事が事のために自分の事を棚に上げてリアクションしているようだった。

 先日の意趣返しのために那須がにんまり顔で口を開いた。

 

「裏切り者ですね、先輩?」

「裏切り者なのだわ」

「うらぎりものー!」

「裏切り者、でございますね……」

「信じて送り出した兄がSSに変態ドスケベされてフェラ顔ダブルファックサイン寝取られ報告するだなんて……」

「淳之介くぅん……」

「いや、一から百までお前のせいだからな畔!?」

「うっ、知り合いの男性の前でアナル弄りできると脳裏に過ぎって、ついアナルが刺して善がっちゃいました……」

「こいつを信じてしまったのが運の尽きだったんだよ兄ぃ」

「馬鹿にしないでください! ちゃんとしっかり洗浄してます!」

「そういうところだぞミサキチ野郎。だーからこいつ仲間にするの嫌だったんだよ今からリコール効かないかなまだクーリングオフ期間中だし萌えないゴミに出しましょうそうしましょう。油の塊だからよく燃えるでしょうよこれから毎日デブを焼こうぜ兄ぃ」

「まぁまぁ落ち着いて麻沙音さん……」

「すごくおちついた」

「即効性の特効薬みたいな早さ」

 

 だわミサむべむべと混沌と化した秘密基地は今日も姦しかった。淳之介は何時の間にかアサちゃん特効薬と化した那須の存在に若干思う所はあるものの、理解してくれる存在が増えた事を純粋に喜んでいた。何せ、那須と一緒に居る時の麻沙音は笑顔だからだ。自分と馬鹿をやる時の様に自然体な笑みを浮かべてくれているのだから、兄としてこれほど嬉しい事は無い。

 

「にしても、まさか青藍島の転覆を目論む俺が悪の手先になる日が来るとは……」

「まるでいつも礼ちゃんが見てる特撮の悪の組織みたいなことを言ってるな?」

「そ、そんな訳あるか! SSは青藍島を牛耳るSHOの尖兵、つまりは悪だ! いやでも確かに奇襲や逃亡に潜入がメインだしそう見えなくも……。あいつらはマジョリティを押し付ける敵で、俺はマイノリティの味方! ヨシッ! もうこの話は終わりだな!」

「お、そうだな。……いや、無理矢理過ぎるよ兄。途中で作品ごっちゃ煮と言うかそもそもそれ流れてた画像の奴だし玉突き複雑骨折事故みたいな感じになってるよ……」

「むべむべ……、しかし、淳之介さんがえすえすに参る、となれば色々と問題があるのでは……」

「……それに関しては問題無いんだ。特別にインポ枠を作ってくれたみたいでな……」

 

 淳之介の乾いた笑みに痛ましさを感じて一同黙ってしまう。間一髪助かった筈なのに死体蹴りをされているような感覚を味わう淳之介であった。そんな雰囲気を切り裂くように、斥候として前に出る奈々瀬が口を開いた。

 

「でも大丈夫なの淳。クラスの子から聞いた事があるんだけど、SSの訓練は死人が出るくらい厳しいって聞いてるけど……」

「安心してくれ奈々瀬。何を隠そう俺は筋トレの天才だ、それこそ生半可な訓練をやっているであろう奴らの鼻を明かしてやるさ」

「頑張ってくださいね淳之介先輩。訓練に打ちのめされている間に、市街探索で裏風俗について調べておきますので安心してぼっこぼこにされてください」

「随分と辛辣だな那須君……。そ、そんなにやばいのか、訓練」

「ヒナミ先輩が一番知ってると思いますが、SSの訓練をする教官役は風紀委員長の糺川礼先輩です。……印象は青藍島仕込みのハートマン軍曹って感じでした」

「あっ、それ知ってます。皮被りジャケットの人ですよね。アナルの中でミルクを飲み干すまでしごき倒すぞっていう名台詞のある映画で、一時期凄い有名でした」

「間違っているようで間違ってないのがむかつく、畔さんの癖にぃ……!」

「どうどう……。なんでこんなに目の敵にしてるんだろ……」

「がるるるるっ、見た目気弱な清純系豊満同級生キャラ擬きな畔さんは兄みたいな灰色青春童貞野郎好みなアピールポイントを持ってる奴なんですよ! こんな奴を嫁に貰ったが最後うちの家計簿が火の車で大炎上間違い無しで生活費の八割が食費に溶ける生活で激太りするに違いないんです! どいて那須さん、その女を焼き討ちできない!」

「駄目だよ麻沙音さん。あの臭い結構きついから焼くのはおすすめしないよ」

「アサちゃん物騒な事を言っちゃめーでしょ」

 

 なんでその臭いを知ってるんだと言う突っ込みを入れる者は皆無だった。好奇心で聞こうとする内容じゃないのは確かである。那須の何気なくしれっと吐いた言葉に、文乃が追われていた時の出来事を思い出してそっと記憶に蓋をした。こんな成りをしているが彼は立派な対魔忍である。忍者がやる仕事だなんて、潜入や諜報に暗殺だと相場が決まっているのだから口にしないのが身のためなのだ。

 

 ちょっとだけ那須に麻沙音を嫁にやる計画は修正した方が良いかもしれないと淳之介は思ってしまった。だが、カミングアウト騒動の夜に麻沙音から対魔忍の実態について聞き及んでいるため、軍人などと一緒であると考えれば納得もできてしまうのである。あくまで国のために手を汚しているのであって、私欲でそれを成している訳では無いのだから。彼らの奮闘によって救われる命がある、そう考えるならば口を出す必要は無いのだ。ただ一言、ありがとうの言葉を伝えれば良い。

 

 人としての一線を弁えている淳之介だからこそ、今の青藍島を許せないのだから。マイノリティを多数決で踏み潰す条例を憎み、裏風俗という外道を許しておけないのだ。一人だけでは見えない活路も、こうして仲間を集めた事で見えつつある。そう考えたところでふと忘れていた事を思い出した。

 

「っと、危ない。忘れるところだった。那須君、調査に加えて欲しいのがあるんだが大丈夫か?」

「はい、構いませんよ。どうも、あのヤクザたちも表立った活動を自粛してるみたいですから」

「そうなのか?」

「ええ、多分、こっちに何をしてでも情報を吐き出させようとする奴が居るって分かったからでしょうね。この三日間、誘拐などをしやすい時間帯の夕方に動いている気配がありませんでした。酷く警戒してるみたいで、外出すらも自粛している可能性がありますね」

「あっ……。なら、もう一個の案件について調べを進める事にしようか」

「ええと?」

「ほら、会った初日に言っただろ? 俺たちのスポンサーからの依頼があるって」

「……あー、琴寄文乃の捜索及び保護、でしたね」

 

 那須の言葉に炒った茶葉で作ったほうじ茶を配っていた文乃が体を撥ねらせた。そして、静かにどう言う事ですかと睨み付けるような視線を那須に向ける。聡い文乃は偽名を名乗った日に正体を隠したままにした理由を察したからだ。そんな可愛い睨み付けをされた那須は苦笑しながら肩を竦めた。

 

「そちらの方も平行して行なっていますよ。昨日SHO本部に忍び込びましたが、住民票に琴寄文乃と言う少女のそれはありませんでした。つまり、彼女は何かしらの援助を受けてこの島に住んでいる、または隠れ潜んでいる可能性が出てきました。もしかしたら、何処かの団体が匿っている、そんな可能性もありますね」

「いけしゃあしゃあと……」

 

 小声で呟いてジトっと睨んだ文乃の声を飄々とした様子で那須は流した。

 

「ですので、それについてもSSが情報を握ってたりするかも知れません。SHOは確かに彼女らの本体ですが、末端の長たる桐香さんがあの様子ですから、情報を握ったまま潰している可能性もあります」

「責任重大だな橘くん。ごめんね、もっと私が礼ちゃんたちを止められてたら良かったな。先輩なのに頼りにならなくてごめんね」

「……わたちゃん先輩が健気過ぎて、戦犯やらかした私は穴があれば埋めて欲しいです……」

「大丈夫ですよわたちゃん先輩。先輩はしっかりと役割を熟してくれました。先輩として格好良い姿を見せてくれましたよ」

「そうかな? なら、良かったな。頑張った甲斐があったな。私にできる事なら何でも言ってね。先輩のおねーさんだからな、私」

「何でもは駄目よわたちゃん。まぁ、淳にそんな事ができる度胸があるとは思えないけどね」

「で、できらぁ! いや、仲間にそんな事できるかっ!」

「でもまぁ、橘くんはこれから礼ちゃんと一緒に頑張るからな。少しだけなら良いよ?」

「えっ」

「えへへっ、頑張る橘くんにえっちなご褒美、前祝って奴だな?」

 

 ぽかんと口を開いた状態で淳之介が固まる。むんっと無い胸を張ったヒナミの姿に何時ぞやの記憶が蘇る。尻壁オブジェに誤って拘束されてしまった時に、不慣れな愛撫にくすぐったいと笑っていたヒナミが、段々と色気を醸して煽情な様子になっていくアダルティな様子が脳裏にちらついた。同時に、奈々瀬の遊んでなさそうな綺麗なあそこと美岬の豊満で柔らかなおっぱいの感触も芋蔓のように記憶から引っ張り出してしまった。

 

 まずい、そう思った時には正直な体は反応し始めていた。立ち上がっていた淳之介は前屈みになるのと同時に、壁に面した机に置かれた湯飲みを取るような所作をしながら自然に椅子へ着席した。手に持った湯飲みを息で冷やすようにカモフラージュして前傾姿勢をしている理由を作り出す。それはまるで思春期の男の子がエロ本を読んでいた時に親フラされた時のような反応であった。

 

 何となく兄の行動から意図を察した麻沙音はにんまりと笑みを浮かべた。そして同時にロリ属性まで会得したのかよ兄と心中を察した。淳之介の行動の意図を察せなかったヒナミは喉が渇いたのかなと小首を傾げた。そして、年頃な息子の可愛らしい姿を見たと言わんばかりに、奈々瀬はお母さんめいた微笑ましさを感じて胸が一杯であった。美岬と文乃は小首を傾げたものの、やや膨張した淳之介のズボンに気が付いてしまって静かに顔を赤らめた。

 

「……じれったいな、やらしい雰囲気にして去ろうかな……」

 

 自身の魔族因子が活発化し始めてとち狂った事を呟いた那須だったが、ふと直ぐに正気に戻って因子を抑え込んだ。彼の忍法を遣えば老若男女の区別無く、酒池肉林の空間へと変貌させる事ができるからこそ漏れた言葉であった。

 

 そして、椅子に座った事で身長差が緩和され、少し背伸びすれば同等になるくらいの高さになったのを良い事にヒナミが動いた。一体何を、そう一同の身体が強張った空間に、可愛らしいリップ音が響いた。淳之介の右頬にちゅっとヒナミがその小さな唇でキスをしたのだった。

 

 そして、それは少女漫画好きなヒナミらしい行為であり、いつかやってみたい事リストの一つであった。ほっぺにちゅーをかまされた淳之介は静かに硬直し、頬に残る柔らかくも瑞々しい余韻に顔を真っ赤にしてから口元を右手で抑えた。

 

「えへへ……、ほっぺにちゅーしちゃったな。これで橘くん、頑張れそう?」

「……その、はい。ガンバリマス」

 

 頬を赤らめて朗らかに笑顔を魅せるヒナミの顔を直視してしまった淳之介は、その尊さに浄化される想いであった。付き合い始めたばっかりのカップルか、と言わんばかりの甘い雰囲気が秘密基地を満たす。随分と好感度稼いでるんだな淳之介先輩、と那須は内心独り言ちた。




此処だけの話、原作で起きなかった事を書けるのが二次創作の良い所ですよねぇ。
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