抜きゲーみたいな島に派遣された対魔忍はどうすりゃいいですか?   作:不落八十八

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腰振は慈しみ深く。

 淳之介がSSの訓練にドナドナされる事となった日の翌日。

 普段通りに登校した那須だったが、朝のホームルームになっても姿を見せない麻沙音の姿に小首を傾げた。昨日は特段見つかる事なく無事に家へと帰宅できた筈であり、その後に何かがあれば知る由も無いが連絡くらいは入るだろう。もしくは麻沙音の性格の事だ、盛大に寝坊しているのかもしれない。

 

 だが、それを淳之介が許すかと言えば否である。授業を受けながら淡々と考えていたら、裸インにメッセージが届いた。差出人は麻沙音であり、内容は体調不良で暫くお休みすると言うものだった。

 

 昨日の様子からして風邪を引いたようには思えない。しかし、何処か気だるげな様子であったかもしれない、と感覚的な憶測を思い浮かべる事しかできなかった。普段の様子を見ていると言っても四日程度であり、彼女の全てを把握している訳ではないのだから気が付かないのも仕方が無い事だ。

 

 復習めいた授業を半ば呆けるような心地で受け、昼休みは屋上の貯水タンクの上でこっそりと過ごし、やがて放課後の時間になった頃になって溜息を吐いてやや正気を取り戻した。麻沙音との学園生活が楽しかった事もあり、居ない時間を過ごした事でその体感の重さを思い知ったのだった。

 

 那須はしっかりと授業を受けている訳ではない。うーんうーんと唸る後姿を見つめていたり、中休みに他愛の無い雑談を楽しんだり、すやすやと夢心地な背中を見ていたり、そんな毎日を過ごしていた。だからこそ、ぽっかりと空いたような寂しさの穴を埋める何かが欲しかった。

 

「こんにちはー……って、一番乗りだったか」

 

 誰もいない秘密基地に照明は灯っておらず、壁のスイッチを切り替えて明るくした。タブレット端末からマップを映し出せる机のあるブリーフィングルームの隣に、生活環境が整ったリフレッシュルームはある。そこのソファへと腰掛けて、溜息を吐いて寝転がる。

 

 今日もまた嬌音問題による蓄積されたストレスが溜まっており、加えてそれを浄化してくれる麻沙音も居なかった事で体に重みを感じていた。正確にはストレス過多な脳の錯覚であるが、柔らかなソファに身を沈めた事で少し和らぐ事ができた。此処のところ深夜帯の探索作業が多かった事もあって纏まった睡眠ができていなかったのもあり、段々と瞼が落ちていく。

 

 意識が飛び――、数十分後に誰かが隣室に来た事を察知した身体が自然と臨戦態勢に移った。そして、聞き覚えのある声に戦闘スイッチがオフに切り替わり、ぼんやりと目を覚ました。寝ぼけ眼で上半身を持ち上げ、何処か静かな隣室の会話に混ざるために立ち上がる。NLNSメンバーが一人を除いて勢揃いしたようで、何処か消沈気味な淳之介を囲うように円になっているようだった。

 

「おはようございます、先輩方……」

「あら、那須君はそっちに居たのね。こんにちは」

「私、一番乗りじゃなかったかー。こんにちは那須くん!」

「こんにちは那須君! 今日も可愛いですねぇー!」

「……こんにちは」

「寝起きだったのか? 大丈夫か那須君……」

「それはこっちの台詞ですよ淳之介先輩。酷い顔ですよ……」

「いや、どっちもどっちなのだわ」

 

 まるで徹夜明けの病人めいた表情の二人が顔を合わせているのを見て、肩を竦めて言った奈々瀬に誰もが頷いた。那須も淳之介も麻沙音に対して色々と関わりが深いからか、不在と言うだけでこれだけの不調を見せている。兄である淳之介は兎も角、学園内では殆ど一緒に居たからか随分とへこんでいる那須を見て一同驚きの表情を浮かべていた。

 

「そういえば淳之介先輩。麻沙音さんの事ですけど」

「ああ、それなんだが……。アサちゃん、女の子の日みたいでな。結構重いタイプみたいで、しんどいみたいだ。ここ数年は落ち着いてたんだが……、生活環境が変わったせいか、ドカッと来たみたいで……」

「そうだったんですか……。確かに生理の時は学園休みたくなりますもんねぇ」

「成程なぁ。私も結構重い方だから、大変なの分かるな」

「えっ」

「えっ、じゃないよ。私だってちゃんともう大人の身体なんだからね! 赤ちゃん! 作れるんだから!」

「その見た目でその台詞はやばいですよわたちゃん先輩……」

「やばくないんですけど! 立派なレディなんですけど!」

 

 美岬との漫才めいた遣り取りでヒナミが吠えた事で幾らか場の空気が温まる。見た目が完全にロリな小さな先輩であるからか、微笑ましさが先に来るため申し訳なさが後回しになるのである。

 

「まぁ、確かに両親が亡くなったのもここ最近の事だしな。青藍島への引っ越しで忙しかったし、奈々瀬の代行サービスのおかげで大分精神的に余裕が持てたのもあって日々のツケが溜まってた感じだと思う。ありがとう奈々瀬。お前の手料理が無ければもっと酷くなってたかもしれない」

「淳……。少しでも役に立ってたなら嬉しいわ」

「ああ、ほんといつも助かってる。ありがとうな」

 

 普段の遠慮の無い遣り取りと違って褒め殺しな台詞に、奈々瀬は頬を赤らめて口元を抑えて嬉しさを噛み締めていた。それはまるで、日頃の感謝を伝える母の日のお母さんのそれであり、それはまたでかい息子が居たものだなと突っ込みを入れる存在は流石に居なかった。

 

 最初はバイト感覚であった筈の日常代行サービスも段々と力が入っており、今では筋トレをする淳之介のための専用メニューを考えたりと専業主婦張りの働きをしている程だ。もはや筋トレに目覚めた息子のためにせっせと甲斐甲斐しく働くお母さんめいた存在になりつつある。

 

 親子(?)の団欒を見届けた那須は小さく溜息を吐いて呟いた。

 

「生理の日かぁ。確かに重い時はきついですよね……」

 

 その台詞は一同の耳に入り、目の前の少年の性別を疑った。見た目が完全に美少女のそれであるが、彼自身は男性を主張している。しかし、先日の一件でふたなり、つまりは文字通りのユニセックスな身体である事をカミングアウトしている。彼らの続く言葉は一つ、女の子の日もあるんだ、である。

 

 デリカシーが無い事で認知されている淳之介でさえも尋ねる事はできやしなかった。先程の言葉は明らかに経験があっての体感的な言葉である。つまり、彼及び彼女である那須は生理の日を持っている事となる。一同の視線が集まった事で那須は胡乱な瞳で見渡す。そして、自身の言葉に気付いて困ったように頬を掻いた。

 

「えぇと、前に言った通りボクは男性器と女性器を持ち合わせた所謂ふたなりって奴でして、言うなれば女性の身体に男性器が付いている、そんな感じですね。両性の性質を持ってるので勿論生理もあります。青藍島に配られているピルは女性用なのでボクは貰ってません。ヤったらできちゃう訳ですね、あはは」

「あははじゃないんだが?」

「そもそもボクを手籠めにできる人なんてそうそう居ませんよ」

「フラグかしら?」

「ボクを犯せる奴が居たなら大したものですよ」

「もはや死亡フラグの域じゃないですか……?」

「あはは、……自分で言ってて少し怖くなったので止めますね」

「むべ……、面妖なお体ですね……」

 

 そう、普段の那須であれば何の問題は無い事だ。だが、今はNLNSのメンバーであり、彼らを人質に取られた場合は従わないといけない場合も出てくる事だろう。相手が男の娘でも良いと猛る者であったなら確実に気付かれるに違いない。

 

 那須は過去の経験から、この際男でもいいやと男性の対魔忍をオナホール扱いするオークの実例を見ている事もあり、いつ襲われるか分からないのが現状である。そして、この島は青藍島、性乱島などと自称するような島である。安心できる様子が皆無であった。流石に一般人を縊り殺すのを躊躇わない性格ではないので余計にである。

 

「えぇと、取り合えず、今日の活動はお休みって事でいいか? 朝に見たアサちゃんの様子が気掛かりでな。あんまりにも弱ってるから傍に居てやりたいんだ」

「それは良いけど……、少し心配ね。淳は性人前にこの島を出たのよね。クラスの子から聞いたけど青藍島では生理に関する授業をC等部で受けるらしいのよ。早く帰るのは良いけど、一人で大丈夫? ちょっと心配なのだわ」

「うっ、そ、それは……。生理に良いものでも買って帰ろうと……」

「……はぁ。先輩だけだと心配なのでボクも付いていきますね」

「うん、そうだな。これはちょっと心配だな……。よぉし! 私も年上のおねーさんとして一肌脱いじゃうよ! 橘くん、一緒にお買い物しようか!」

「那須君……わたちゃん先輩……、ありがとう、助かります」

「アタシも行くわよ。家の事は後でもできるからね」

「奈々瀬……」

「麻沙音様は愛されておられますね」

「そうだな……、本当に有難い事だ。よし、葉琴も力になってくれるか?」

「勿論です、ふんす、お体に優しいものを作って差し上げなければ」

 

 そう一致団結した一同に笑みが浮かぶ。本当に良い仲間を持ったものだと淳之介は心が温かくなった。そして、案外上手くやれてるものだなと那須は文乃を見て思った。隣人から貰った子犬のような警戒を見せていた筈の文乃だったが、数日橘家に居候させた途端にこれだ。視線を向けたのは文乃の隣の淳之介であり、NLNSメンバーの好感度をこれでもかと集めている存在である。案外女たらしなのだろうか、または人たらしなのか。どちらにせよ、良い方向へ向かってくれていると安堵していた。

 

 琴寄文乃と言う少女の経歴は殆ど抹消されていた。取り換えられたように吹寄葉琴という男性の戸籍が作られている事から、彼女を匿っていた誰かが居る筈だった。だが、その影を見つける事ができないのだ。まるでもう、この世に居ないかのように。彼女が古い神社を間借りしていた経緯もあり、そちらの線だろうと那須は当たりを付けていた。しかし、どうも引っかかるのだ。まるで、誰かが横からもう一手加えてから戻したかのような、そんな不自然さが残っている。

 

 潜入のプロである那須は幾多の極秘資料を捜索し、断片を拾い集めて、それら全てを一繋がりになるように纏めてきた経験がある。故に、素人なりの工夫に対して玄人の介入がされているのが浮き彫りになっていた。

 

 それこそが文乃を橘家に保護させている一番の理由だった。今後横槍を入れてくる第三者が居るとなれば、それに対するカウンターを構築せねばならない。そのための調査をする事が必要となっていた。幸い、SHOやSSから逃げる経験があるNLNSならば那須が駆け付けるまでの時間を稼いでくれるに違いない。それは、対魔忍同士でチームを組んだ時には皆無だった信頼が芽生えている事を示している。

 

 そう、那須は今の立ち位置が心地良いと感じていた。対魔忍でありながら、こうして馬鹿をやる学生めいた青春が送れている事が嬉しかった。それはまるで、いつかの再演で、失ったと思った友情の代替に成り得るものだったからだ。

 

「大丈夫かな、麻沙音さん……」

 

 だからだろう、こんなにも仲の良い麻沙音を心配してしまうのは。自身にも起こる生理現象に理解があるため、そう悪くはならない事は知っていた。だが、傍に居ないという寂しさから無意識に思ってしまうのだ。ずっと隣に居て欲しい、と。今度こそは、失わない、と。




ぬきラジ2!ぬきラジ2ですよ皆さん!
キャラソンの姦想回だそうで、ヌキタシニウムの摂取の機会ですよ!
12月18日の20時にようつべ生放送だそうですので、TwitterのQruppo様を要チェックですよ!

此処だけの話、次回アサちゃんてぇてぇ回予定。
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