抜きゲーみたいな島に派遣された対魔忍はどうすりゃいいですか? 作:不落八十八
運命の木曜日、輪姦学校当日――。
「……どうしてこうなった」
死んだ目をしながら煙草を咥えた那須の耳に鹿威しの小気味良い音が届いていた。
青藍島にはかつて旧日本軍が井戸を掘る際に出泉した天然の温泉を用いた温泉旅館が存在している。古き良き木造の旅館であったが、今では名を変えて混浴温泉と言う名称で経営されており、源泉かけ流しのためメタケイ酸を多く含む事から美人湯として名を馳せる青藍島スポットの一つとなっている。
天然の保湿成分と称されるメタケイ酸は新陳代謝を高め、肌をツルペタロリ並みに綺麗にしてくれる効能を持っている。そして混浴温泉の源泉は濁り湯であり、それも白濁液並みの乳白色をしているため風呂場プレイも安心と人気の一つだ。
かつては松竹梅に数字記号を合わせた部屋番号であったが、混浴温泉と名を変えてからは豚犬馬に数字番号と言う倒錯染みたものに変わっている。動物愛護法によって取り締まられてしまうため該当する動物は飼われていない。
それの詫びと言わんばかりに、押し入れの布団が入っていない下段スペースに動物ディルドが備わっているのでプレイも捗る事だろう。勿論ながら混浴温泉の成分を含んだローションも付属しており、これを目当てに来る奇特な客も居るとか居ないとか。
「……はぁ」
吸い殻をガラスの灰皿に放り投げるように捨てて冷めたお茶を少量零して消火した。その時の音は那須の少しだけ残っていた気力が消える音と酷似していた。二つ目の溜息を吐いた那須は旅館の一室、馬の部屋一本と言う狂ったような部屋名の窓前で椅子に身を投げ出していた。
椅子の背に沿うように部屋へ顔を向ければ、壁際に置かれた“三人分”の荷物が置かれているのが見える。そして、早速と言わんばかりに一つの鞄からタブレットの充電コードが伸びてコンセントに刺さっているあたりくつろぎ度がガチである事が見受けられる。
そう、本日この部屋に泊まるのは那須だけでは無い。何処に出しても恥ずかしい生徒会長の冷泉院桐香、そして、秘密組織NLNSの情報担当である橘麻沙音である。
男女女、一部屋、一泊二日。何も起きない筈も無く……。
桐香に背を押される形で部屋に内蔵された西洋風のバスルームで着替えている声が時折聞こえてくる。もっとも、その内容はあたふたする麻沙音の奮闘と困惑と呆れの三重奏であり、にこにことおかーさんおねがいーと言わんばかりに着替える事を諦めたとーかちゃんの世話の声である。
輪姦学校のしおりが配られた放課後。那須のタブレットを鳴らしたのは桐香であった。内容は、輪姦学校を回避する用意があるのですが、と言うお誘いだった。
「……多忙過ぎた生徒会長への労い、と言う名の隔離、かぁ」
冷泉院桐香と言う少女は水乃月学園において高嶺の華として認知されている。そんな少女が乱交の渦に巻き込まれたらどうなるか。教師陣の解答は渦の中心となる、であった。
普段生徒会長としての職務により多忙な桐香が乱交イベントに参加する時間は無い、筈だったのだが、那須の手助けによってある程度の余暇を得られる程に改善されてしまったため参加の意向を示したのが事の始まりである。
美しい人形めいた美貌を持つ桐香に男子の性欲の肉棒が向いてしまった場合、乱交イベントは輪姦イベントになってしまい、当初の目的を果たせなくなると危惧した教師陣の苦渋の選択だったらしい。
名前通りになるのが企画倒れという世にも奇妙な事だが、実際そうなる光景が見えているので英断だっただろう。桐香を抱ける、そう意気込んでいた一年生男子は多い。そして、同様の事が那須にも言えたのである。この場合は女子からの肉欲が迫る事となる。そのため、那須もこの隔離の一人に選ばれた訳なのだが。
「ふふん、良かれと思って、那須さんの性欲が強過ぎて私だけでは受け止めきれないという理由を付けて麻沙音さんも呼んだのでした♪」
「あ゛っ、待って冷泉院さん! 帯! 帯締めてないから!」
「きゃっきゃっ、やぁん♪」
ガチャンバタンと扉を開けて飛び出そうとした半裸の桐香が麻沙音に回収されていた。もっとも、教師陣はそれを理由として頷いては居らず、単純に普段から体調不良を訴える麻沙音をこのイベントに参加させるのは危険だろうという判断からである。
教師陣から見た那須という生徒は、チン勉で真面目な性徒と言う印象であり、んな訳無いだろうけどまぁ生徒会長が言うなら、と言う感じでオーケーを出したのであった。実際問題、この二人だけでは数時間で那須は抱き潰せるポテンシャルを持っているので間違ってはいないのが皮肉だろう。
そんなこんなで、混浴温泉一泊二日のお泊りが実現してしまったのだった。
ちなみに、その電話を受けた時のNLNSメンバーの視線は生暖かいものであった事を追記しておく。具体的にはあらあらまぁまぁと言う具合の温度である。その時の二人の顔は完熟したトマトのように赤かったのは言うまでもないだろう。
「うふふ、御着替え完了です♪」
「ぜぇ……はぁ、お母さんに結構負担掛けてたんだなぁって実感できちゃったよ。同級生相手に」
「お疲れ様、麻沙音さん。ちなみに上手く着せないと吐くらしいよ」
「え゛っ、あの時若干えづいてたのそういう事だったの……」
「さて、那須さん。同級生の浴衣はどうですか?」
「よくもまぁ平然と言えたもんだね……。はぁ、似合ってるよ。これで良いかい」
「んー……、欲しかったリアクションとは違いますが、まぁ、良いでしょう。それでは、早速温泉に行きましょうか」
「行かないけど?」
「今、なんと?」
きょとんと首を傾げた桐香に呆れ口調で那須は投げやりに言った。
「行かないって言ってるんだよ。文字通り混浴の温泉なんだろ此処。地雷原だって分かってるのに行く訳無いでしょ」
「ふふっ、そう言うと思って――家族風呂の方を貸し切りにしてあります♪」
「……用意周到が過ぎる、と言うかSSの名前でそこまでできるの?」
「いえ、此方は教師の方々からのお節介のようですね。一応私たち輪姦学校の代わりとして来ていますので、あくまで生徒間の性産的活動が望ましいのでしょう」
「あぁ……、そういやそうだったね」
「あはは……、まぁ、絶望的なイベントを回避できた事を喜びましょうよ那須さん」
「それもそうだね……」
散々はしゃいだであろう桐香を見事着替えさせた麻沙音がやや疲れ気味に那須の対面に座る。座った時の反動でたゆんと揺れたそれをつい目で追ってしまった那須は、対魔忍の優れた視力によって爪先から頭まで一瞬で舐め見てしまう。
贅肉が程良く乗った悩ましい曲線が薄い浴衣によって浮彫になり、豊満寄りの双丘の北半球がやや着崩れた胸元から見えてしまっている。桐香の世話をしたからかほんのりと汗をかいた火照った肌が艶やかに感じてしまう。
最近ご無沙汰と言う事もあって、鎮めている筈の性欲の鎌首が持ち上がりそうになる。言うなれば、那須は何処か色っぽい麻沙音に見惚れてしまっていたのだった。そんな様子をにまーっと笑みを浮かべた桐香が見抜く。楽しそうに口角をこっそりと上げて、そうだわ、と思いついたそれを実行すべく動き出した。
「那須さん、少し麻沙音さんとお喋りをしたいのですがよろしいですか?」
「別にボクに断りを入れる必要は……って、ああ、そういう事か。……はぁ。なら、三十分くらい温泉入ってくるよ。あんまり無茶振りしちゃ駄目だからね」
「うふふ、分かっていますよ♪ では、お先にどーぞ」
「……はぁ、何を考えているんだか」
言外に席を外して欲しいと言われたのだと理解した那須は溜息を吐いてから、手拭いなどを押し入れから出して予備のインナーを包んだ。あっさりと立ち上がったのを麻沙音はぽかんと見送り、引き戸が閉じられた音ではっと正気に戻った。先程まで那須が座っていた場所に上品な所作で座った桐香から発せられる無意識的な圧に、野生の本能が警鐘を鳴らして何をする気だと臨戦態勢へと陥る麻沙音。
「ふふっ、そう硬くならなくても大丈夫ですよ麻沙音さん」
「……いやいや、貴女うちの組織の敵でしょうが。それも木っ端じゃなくて頂点」
「もし、私にその気があれば、今の状況は無いでしょう?」
「それもそうだけど……」
「それに、先輩の妹さんですもの。手荒な真似をする気は毛頭ありませんし、何より那須さんの信頼を裏切る事になります。……その、まだ死にたくないです」
「あっ、うん……。何だろう、凄く安心した」
さーっと青褪めてからしわしわ顔になった桐香の表情を見て、少しだけ目の前の少女が年相応に感じてしまった。あんまり怖くないなと内心で独り言ちた麻沙音は、差し出された昆布茶の入った湯飲みを受け取って口を付けた。
「それで?」
「わたし、先輩に、貴女のお兄さんに恋をしてるんです」
「ぶはっ」
「そして、それを那須さんに後押しされる形で応援されてまして」
「げほっ、げほっ!」
「なので、御返しに那須さんにも幸せになって貰おうと思い立ちまして」
「ごほっ、マジで……?」
「はい♪ マジですよ」
愛する兄に対して恋慕している同級生の発覚と実の仲間から支援されているというとんでもない暴露をされた麻沙音は昆布茶を飲んだ後に驚きのあまり咽てしまった。そして、続く言葉に対して嫌な予感が鳥肌を立たせた怖気と共に感じてしまう。
「麻沙音さん、那須さんの事お好きでしょう? きっと那須さんも同じ気持ちでしょうから仲を取り持とうかなって」
「ぇっ」
「先程も那須さん、椅子に座った麻沙音さんを情欲の籠った視線で一瞬でしたが舐め回すように見ていらっしゃいましたし、お互いに気があるならどうかなと思いまして」
「えっ、那須さんが? 私に? えっ、へ!?」
「うふふ、これでも戦闘もできちゃう生徒会長なので朝飯前です」
「いや、というか、それをSSのあんたが言っちゃまずいんじゃ……」
「んー、それがですね。勘違いされているようなので一応説明致しますね。わたし、セックスは効率的なコミュケーションとして実用しているだけであって、別にドスケベ条例を推進するためにしている訳じゃないんです。なので、こうしてNLNSのメンバーである麻沙音さんたちの手助けもしちゃいます。先輩に嫌われたくもないですからね」
「は、はぁ……。そうなの?」
「はい。実のところ、SSに所属している子たちも事情があって入隊している子も多かったりするんです。幼少期に親に売春を強制させられていたり、負ってしまった借金の返済のためにだとか、暮らしをよくするために身を売った結果がこの島に、というケースも少なくありません」
「へー……、もしかして女部田先輩も?」
「いえ、純粋にえっちな事が好きだからっていう理由だったかしらね。それに至る過程が過程ですけども」
「あ、そうなんだ……」
「何故郁子の事を?」
「えと、この前那須さんの事をダーリンって呼ぶ姿を見かけてしまったので、その」
「うふふ、知ってしまったのね。郁子曰く、那須さんのチン長は三十センチ定規級らしいから、気持ちの良い事に熱心な郁子にロックオンされちゃったみたいね」
「ふぁっ!? 兄より大きいじゃん!?」
しれっと兄の秘密を暴露している麻沙音の驚愕に、桐香はうふふと笑みを浮かべた。何処からか取り出した三十センチ定規を麻沙音に善意で手渡し微笑む。恐る恐る受け取ったそれを麻沙音は椅子の面に当てて自身の下腹部へと立て掛けて、ひぇ、と顔を真っ赤にして震えた。
日頃からエロゲー、それも乙女ゲー系ではなくがっつり凌辱ゲー系を嗜む麻沙音は日本人の成人男性の平均チン長を知っている。幾多のスチルでこんなに大きいのフィクションだなーと微笑を浮かべる事もあり、兄のデカチンの存在を知っているが故にそれとなく理解はあったのだ。
だが、こうして手渡された現実に、こんなの入る訳ないじゃんという困惑と、ほぐしたら入るんだろうなぁという興奮が入り混じって思考が茹だり始めた。恐怖よりも好奇心が勝ってしまう、実に青藍島乙女である。
「麻沙音さん、家族温泉の方は男女の仕切りは当然ありません。そんなところに今、那須さんは居ます。奥手な麻沙音さん一人では難しいでしょうが、私がお供しましょう。那須さんの裸体、見たくないですか?」
そんな、悪魔の囁きめいたお節介の声が聞こえてしまえばどうなるか、言うまでも無いだろう。
此処だけの話、輪姦学校イベント回避√です。全年齢版の方で投稿してるから仕方が無いね(ぶっちゃけ内容が無いよう(激寒)なので隠れてそれっぽいスチルになる程度なので……。
残念ながら凌辱ゲーじゃないからね、ぬきたしは。アサちゃんととーかちゃんが対面して囲まれックスされるシチュは存在しないのです、ええ。
時系列的には淳之介たちはドスケベランドにボランティアしている時期です。
ぬきたし本編は淳之介主体ですが、この作品はアサちゃん主体ですのでイベント追加です。
まぁ、全√混ぜてるので色々と齟齬が出てるかもですが、気付いたら指摘くださると嬉しいです。多分、大丈夫だと思うんですけどね……。