抜きゲーみたいな島に派遣された対魔忍はどうすりゃいいですか?   作:不落八十八

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コンドーム強襲。

 馬の部屋一本から出た那須は死んだ目で廊下の一角を見やる。そこには案内板が置かれており、混浴温泉の位置が示されていた。此処、混浴温泉は三階まである旅館であり、風情のある木造建築が侘び寂びを感じさせるものとなっている。旅館そのものの雰囲気は良いのだが、男女の仕切りの無い温泉という狂った場所があるが故に気が滅入っているのであった。

 

 二階から一階に降り、今日は宿泊客が少ないのかすれ違う者も居なかった事で難無く温泉フロアへと辿り着いた。辺りを見回し、温泉への入り口の前に番頭として立っている店員を見て、その隣に家族風呂への入り口があるのを確認できた。

 

「すみません、家族風呂の方を使いたいのですが」

「いらっしゃいませ、水乃月学園の生徒さんですね? 一応部屋の確認をお願いできますでしょうか」

「……馬の一本です」

「はい、ご確認が取れましたので、どうぞご利用ください。……お一人ですか?」

「女性同士、積もる話があるみたいでしたので抜けて来たんですよ」

「あら、そうでしたか。うちの温泉は源泉掛け流しなので、お肌つるつるになりますのでご期待くださいね」

「そうですか、興味はあったので楽しんできます」

「それはそれは、では、ごゆっくりどうぞ」

 

 古き良き女将さんと言った様子で深い内容を聞いてこない辺りしっかりとした店員のようだった。家族風呂は基本貸し切りのため、一般の客が入らないようにこうして見張っているようだ。ちらりと見えた壁に貼られたそれには、貸し切りのお客様以外の入場は禁止となっており、それを破ると出禁になる上にSHOガードマンによる制圧が行われるという脅し文句が書かれていた。確かに乱入があれば貸し切りの意味が無い。そういった配慮がされている事もあって、少し那須の肩から力が抜けた。余計な心配はしなくて良さそうだ、と。

 

 ドスケベ条例が適用される前は普通に男性女性に分かれていたが、混浴となったために片方を混浴スペースに、もう片方を家族風呂もとい貸し切りスペースになっているようだ。そのため、中の間取りは殆ど同じのようで、初めて来た那須でも何となく実情を察する事ができてしまった。従来の分厚い仕切りによって混浴スペースとは分断されているようだと那須の瞳に若干生気が戻った。

 

「さてと、精々貸し切りを楽しむか……」

 

 靴置きの棚に履いてきた靴を入れ、古めかしい木製の鍵を引っこ抜く。脱衣所へと入ると設置された扇風機が動いている音が聞こえ、奥からは水の流れる音が響き渡っていた。入口と風呂場との死角になりそうな場所を選び、荷物を置いて一つ溜息を吐いてから那須は制服を脱ぎ始めた。

 

 今でさえ疑惑を受けている男子制服を脱ぎ去ると黒いインナーシャツとボクサーパンツだけとなり、制服で隠されていた肢体が露わとなる。この場に誰か居たのならば違和感を覚える事だろう。

 

 何せ、男性であり細身である那須の胸は僅かに膨らんでおり、胸筋のような平たいそれでは無いからだ。一度だけ辺りを見回し、杞憂かと自嘲した那須はインナーシャツから脱ぎ去った。そこには白いさらしが巻き付けられており、結び目に指をやるとあっさりとほどけ始めた。指に巻き取るように回収したさらしの下にあった、世間一般的にちっぱいと称されるような僅かな膨らみとピンク色のぽっちが露わとなる。

 

 そう、那須の身体は先天的なふたなりであり、女性の身体に男性器がついているパターンであるため、女性器と共に胸も存在する。しかしながら精神的な男性ホルモンが勝ったのか胸は成長しておらず、御椀の半分以下に収まる程度に育っているようだった。ボクサーパンツを脱ぎ去れば皮の剥けたビッグキャノンが解き放たれ、ふたなり美少女少年の全貌が明らかとなった。

 

 バスタオルの下に衣服を隠すように置き、手拭いのタオルで何となく前を隠してから那須は引き締まった尻を揺らしながら風呂場へと歩いていき引き戸に手を掛ける。小気味良い音を立てて開かれた扉の先から硫黄混じりの温泉の匂いが香った。

 

「おぉ……、普通に温泉だ。奇抜な何かがあるのかと思ったけど、普通だ……」

 

 世間一般的な温泉旅館の風呂場がそこにはあった。辺りを見回して、備え付きのボトルの横にしれっとパコローションというボトルがあったのを見つけてしまい、何とも言えない表情になる那須。

 

 よくよく見れば洗い場に立て掛けられたそれは板ではなく、タイルと同じ色をしたローションマットであったり、風呂の淵にしれっとディルド型の突起が備わっていたりと全くもって普通ではなかった。

 

 一瞬でテンションがローに入った那須はもはや何も言うまいと、掛け湯をするために洗い場へと向かい、近づいて置かれていた椅子が全てスケベ椅子であった事もスルーして淡々と身体にシャワーを浴びた。マナーとして身体を洗い流した那須は白濁とした湯へと足を進め、爪先を入れて温度を確かめてからゆっくりと水面へと沈んでいった。じんわりと肌よりも熱い温泉との差異を感じつつ、肩まで浸かると心地良さそうな声を漏らした。

 

「あぁーー……、これは、良いな。温泉はまともで良かった……」

 

 ぐったりと温泉に溶けた那須は淵の突起に頭を置くと身体から力を抜いた。一人だけの貸し切りであるため、前を隠していた手拭いは折りたたんで頭にのせていた。肺の空気でややぷかりと浮いた那須の上半身、形の良い鎖骨と乳房の北半球が露わになり、傍目から見れば貧乳の美少女にしか見えなかった。

 

 那須は温泉が、と言うよりも広い風呂が好きだった。狭い風呂を使用すると生暖かい液体に全身を浸らせていた頃を思い出してしまうためだ。狭い風呂に入るくらいなら濡れタオルで体を拭った方がマシだと言う程に、水を嫌う猫の様に逃げ出すのである。日頃のストレスが疲れと共に溶けていくようだと夢心地の表情を浮かべた那須は目を瞑って暫く溶け続けた。

 

 そして、その楽園の終わりを告げるように鋭敏な対魔忍センサーが脱衣所に侵入してきた二つの気配を感じ取ってしまう。あの二人ならやりかねないと思っていたが、本当にそれをやってしまうとは、と那須は溶けた頭で考えて、やがて考える事を放棄して温泉に身を委ねた。目を瞑っていてもきゃっきゃっと騒ぐ桐香のはしゃぐ声と羞恥で声が震える麻沙音の声が洗い場から聞こえ、シャワーの音が続いて聞こえていた。

 

「お邪魔しまーす♪」

「お、お邪魔しまーす……」

 

 楽しそうに入ってきた桐香とは違い、風呂場の景観に唖然としていた麻沙音だったが、温泉に溶けている美少女を見て一瞬でボルテージが上がった。此処に先に居るのは那須しか居ないのだが、彼は男性でありながら女性でもあるのだと僅かに膨らんだ胸を見て再認識するのだった。

 

 目を開けば整ったプロモーションをノーガードで披露する桐香と準豊満な身体を手拭いで隠した麻沙音の裸体を見る事ができただろうが、それをすれば色々と終わりかねないと理性が好奇心を押さえ付けていた。そんな那須の心境をスルーして右側に桐香が、左側に麻沙音が陣取るように温泉へと浸かった。はふぅという気の抜けた声が両方から聞こえ、那須は諦めの境地へと達していた。

 

「やるだろうなぁと思っていたけど、本当にやられるとは思ってなかったよ……」

「うふふ、私が強引に誘ってしまったんです」

「だろうね」

「ご、ごめんなさい那須さん。一人だけ残るのも怪しまれそうだったので……その……」

「あぁ、うん、確かにそうだね。此処でヤったと思われた方が後が楽だもんね……」

「……あら、意外と慣れてらっしゃるのですね?」

「そりゃまぁ、昔ヨミハラに住んでた頃はよく風呂場にクラクルが突撃してきてたからね。……あぁ、クラクルは魔族で、駄猫で、人の形をした猫っていうか……、まぁ、ペットみたいな同居人というか……、まぁ、慣れるよね……」

「また女性の影が増えた……! 案外彼方に居た那須さんってプレイボーイだったりするんですか?」

「いやぁ? 生まれてこの方彼女は居ないし、それっぽい事も無かったね。学校に通ってたのも三年ちょっとしか無いし、そもそも学校生活に慣れてもないし……、ボクに話しかけてくる奴なんて達郎とゆきかぜが精々だったし……、はふぅ」

「すんごい溶けてる……。それに心成しか頭の方も溶けてるような……」

「あら、となると普段猫を被っているのは処世術の一環なのですか?」

「うん、そうなるかなー……。達郎とゆきかぜに一般常識ってのを教え込まれて、言葉使いも矯正されてるんだー……。なんかふわっふわとしたアニメをずっと見せられて、漫画とかも借りて読んで……、ここ一年くらいは穏やかな口調で通してるかなー……」

「いっぱい喋るじゃん那須さん。それも普段なら意地でも言わないような内容を……」

「前に言われたなぁー……、ボクから情報を抜き出すなら、拷問よりも温泉を予約した方が早いって……」

「うふふ、お風呂がお好きなんですね那須さんは」

「うん、すきー」

「見た目も相まってロリみたいになってる……」

 

 段々と雰囲気と声が柔らかくなっていく那須を見て麻沙音はほっこりとした気分になった。桐香の甘言に乗って来たものの、段々と那須への申し訳無さに罪悪感を感じていた事もあって特段気にしてない様子を見て安堵を覚えていた。

 

 それにしても、だ。こうもノーガードな那須を見たのは麻沙音にとって新鮮だった。普段から抜け目の無い印象が強く、弱さを見せてくれる一面もあるものの何処か壁を感じるのが常だった。しかし、今の那須は温泉の心地良さにふやけているためか、その壁もふにゃふにゃになっている印象があった。

 

「それにしても……、その、体についてお聞きしても?」

「あっ」

「んー……? あぁ、言って無かったっけ。ボク、女の子の身体に男性器付いてるタイプの男なんだよ。先天的だから天然もの……ではないか、人工ものだし、まぁ、そんな感じだけど精神的には男だから勘違いしないでねー……」

「あら、なら今の状況は意外とぐっと来てたりするんでしょうか? 美少女二人を侍らせているこの状況は」

 

 そうにまぁと笑みを浮かべた桐香が寄り掛かるように那須の右腕を取って抱き締める。な、と反対側の麻沙音が驚愕の声を漏らしたのと同時にアイコンタクトが飛ぶ。

 

 そう、それは風呂場へ来る前に予め決めていたサインだ。大胆な事をするチャンスを作るからそれにノるように、という催促の合図だ。今、タイミングを外せば場のノリを使わずに自分の意思で行動する羽目になる。それならば今、場のノリに従ってくっついた方が羞恥心は薄まる。そう一瞬の間に天秤に掛けた結果、意を決して麻沙音もまた那須の左腕を取って抱き締めた。

 

 その驚きは顕著だった。ノってくると思っていなかった麻沙音の参戦に那須の身体は一瞬ながら跳ねた。そして、桐香の美乳が当たっていたのに関わらずノーリアクションであったのに、麻沙音の胸が当たった瞬間に顔を明らかに赤らめた。気まずそうな表情を浮かべた那須は気恥ずかしさから逃げ出そうと腰を少し上げてしまい――。

 

「んっ♥」

 

 那須の華奢な見た目からは感じ取れない逞しさを内包した二の腕に乳房の先端がこすられた事で、艶めかしい声を麻沙音が漏らした。勃ったので立てなくなった那須が腰を下ろし、羞恥心で震え始めた麻沙音の初々しい遣り取りに桐香の笑みが深まっていく。そう、桐香は実は寝取られフェチであり、今の状況を妄想変換して自分以外の女性に気を取られているのだと想像して興奮し始めていたのであった。

 

「ふふっ、分かってはいましたが、やはりと言いますか。随分とご立派なものをお持ちで」

「ちょっ、何処を握って――」

「あら、蟻走りのところに本当に女性器が……、それも、ぴったりと閉じた可愛らしいものが」

「冷泉院さん!?」

「おっと、ごめんなさいね。つい。でも、郁子が気になるのも分かるわ。これは、確かに良い物だもの」

「ふたなりが珍しいのは分かるけど、それ以上は怒るよ」

「うふふ、ごめんなさいね。そうね、気を許せない人に触れられたくはないものね……」

 

 そう宣いながら、もはやウインクと化したアイコンタクトが飛んだ。那須が目を瞑っているが故に気付けない、善意百パーセントのキラーパスが麻沙音の元へと転がってきたのだった。




此処だけの話、スチルイベント回です。R18板以下の描写って何処までセーフなんだろかとチキンレースしてる気分です。

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