抜きゲーみたいな島に派遣された対魔忍はどうすりゃいいですか?   作:不落八十八

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ネコタチの攻防。

 どうしてこうなった、と本日二度目の悪態を那須は内心で言ちた。久しぶりに温泉に浸かってリラックスしていたところを狙われたのは分かる。桐香の悪ノリに押されて麻沙音が恐る恐るながら好奇心に負けたのもまぁ、まだ分かる。だが、一番の問題は媚薬に対する耐性を持つ筈なのに媚薬めいた症状が発生している事についてだ。

 

 媚薬とは様々な種類があるが、麻薬のように脳を破壊して思考力を落として性欲に傾けさせるものと漢方のような発情しやすい体質を整えるものに大別できる。オークの持つ媚薬効果は後者のものであり、性的な興奮を促す脳内物質を促進させ、段階を経て中毒症状めいた発情状態を持続させる身体に作り替えるものだ。

 

 そのため、末期症状に至った者は快楽を得るために必死になる程の後遺症を発症、常に身体が疼いてしまい、些細な事でも快楽を得ようと脳が率先して絶頂へと導こうとしてしまう。ただでさえ快楽に敏感になった身体が絶頂してしまえばどうなるか、快楽に溺れるのである。そのため、とびっきりの快楽を享受してくれる者に対して媚びるようになり、数多くの対魔忍がオークの肉棒に縋りついたのはそれが理由である。

 

 そして、那須における媚薬耐性というのは脳内における快楽物質の抑制が可能という点である。言うなれば電子回路における絶縁体のような物質を作り出せる耐性を持っている。これにより、初期段階で閾値を設定でき、それ以上に至らないという防壁を構築する事ができる。そのため、多少なりと発情はするものの、風邪の微熱程度に症状を留めておけるのだ。これによりどれだけ媚薬を浴びようが初期段階で留まるため、房中術の精神制御も相まって冷静に任務を熟せる。

 ――筈なのだが。

 

(なんでこんなに熱いんだ……っ!?)

 

 頭が茹だるような感覚、身体の芯が赤熱してその温度が伝播していくような心地だった。対魔忍の身体は非常に丈夫であり、五右衛門風呂形式の拷問ですら数時間以上耐えきるポテンシャルを持っている。

 

 そんな対魔忍の一人である那須が温泉の長風呂でのぼせる訳が無い。と、なれば、別の要因が存在するという事だ。自身の媚薬耐性からして桐香が先んじて旅館と結託して媚薬を紛れこませていたとしても普通に耐えうるし、察知する事ができる。だが、那須は自身に起きた症状に全く持って対応できていなかった。つまり、これは媚薬ではない何かと言う事になる。

 

 で、あれば、此処にあるのは温泉のみ。問題は温泉に存在するのは間違いない。那須は麻沙音に左腕を取られて柔らかい幸せな感触を楽しみつつ、薄目を開けて辺りを見回した。絶賛暴走中の裸の麻沙音を見れば理性がどうにかなってしまいそうになるため、極力左側を見ないでそれを探して――見つけた。源泉の効能を紹介する一枚の板を。

 

<混浴温泉の効能について>

・休火山の影響もあり硫黄を含み、お肌がつるつるになるメタケイ酸が豊富に含まれています。

・青藍島の温泉にはドスケベライフを応援する強い味方アクメイキ酸が含まれており、性産的活動を活発化させる効能が高名な膣質学者によって証明されています。

・アクメイキ酸はちんちん代謝を向上し、より良い精子及び卵子を作り出します。SHOの研究により不妊症状の湯治にも効果があると判明しており、更なる効能の発見が期待されています。

 

 お前のせいかー!? と那須はふざけた名前の物質に悪態を吐いた。精子も卵子も持っている那須だからこそ、この物質の効能を強く受けたに違いなかった。そう、那須はアクメイキ酸を長風呂によって多量摂取したが故に発情状態になっていたのであった。今にも噴火しそうな節操無しの愚息が未だに対魔粒子の静止を振り切っているのはそれが理由らしかった。

 

「えいっ」

「ぬぁっ!?」

 

 桐香の繰り出したキラーパスを乙女心で受け止めた麻沙音が動いた。恐る恐るの歩みが意を決したものとなり、好奇心と性欲に導かれるように地雷原のドリブルを始めたのだった。兄のイチモツを見た事はあっても触れた事は無かった麻沙音の右手に熱を持った鋼鉄の棒めいた感触が生じた。

 

 初めて触れたそれは――イチモツというにはあまりにも大き過ぎた。大きく、分厚く、硬く、そしていぼが付いてごつごつ過ぎた。それはまさに棍棒だった。

 

 その異質過ぎる返ってくる掌の感覚に麻沙音は困惑した。柔らかい掌を押すこのイボめいた突起はなんだろうか、カリ首のそれではなく、竿全体に存在するそれの存在に。押してみれば真珠のような硬さは無いものの返ってくる感触は固くて柔らかい。摘まんだ肉の硬さというべき跳ね返りがするのであった。

 

 オークという種族は階級の差別無くイチモツに快楽を増幅させるための凶悪なイボを搭載している。これにより快楽の生じる箇所を引っかき、媚薬によって増幅された尋常じゃない快楽を与えるのである。階級が上がるにつれてそのイボの数は多くなり、そしてイチモツの大きさも巨大になっていく傾向にある。

 

 ――大久那須と言う少年に“使われた”羅刹オークロードの遺伝子が発露した結果であった。

 

 オークオブオーク、全てのオークの頂点に立つ羅刹オークを率いる頂きこそが羅刹オークロードと呼ばれる存在であり、戦闘能力に長けた恐るべきオークである。そして、この存在の精子をひょんな事で手に入れてしまったとある女性科学者が居た。その狂気の女性科学者は思いついてしまった。最強種のオークの遺伝子と最強の対魔忍を掛け合わせたらどうなるか、という禁忌の実験を。

 

「う、うわぁ、これが那須さんの……、すっごい硬いし、熱い……」

「ぐっ、んっ、んんっ……っ」

「凄い脈打ってる……、ぁっ、びくついて……、ふへへっ、すっごい……」

 

 ぬるりとした白濁の温泉を潤滑油に柔らかな麻沙音の右手が上下する。掌に返ってくる感覚全てが初体験の麻沙音は段々と好奇心に負けて、幾多のエロゲーで培った知識を用いてイチモツを知ろうと手を動かす。

 

 竿元から亀頭の先へ、行ったり来たりする度に跳ねる感覚に下腹部の奥に生じた熱さが高まっていく。気になる異性に抱き着いたまま、利き手で触れる初めての性器。そして、噛み締めた口元から薄っすらと漏れる喘ぎ声が、バイノーラル音声染みた近さで右耳から入ってくるシチュエーション。オナニー好きな麻沙音が興奮しない訳が無かった。

 

 段々とコツを掴んだのか敏感なカリ筋や鈴口といった場所へ指が伸びる回数が増え、傍目から見ればショタを弄ぶ痴女めいた官能的な光景が出来上がっていた。奥歯を噛み砕かん勢いで噛み締めて絶頂を抑え込む那須の忍耐力は流石の一言であり、興味本位が勝っている麻沙音の手遊びに耐えきっていた。そして、乗り込めーと言わんばかりに便乗しようと小さな胸へ伸びた桐香の手の動きを察知して、反射的に身体が動いた。

 

「好い加減に――しろっ!」

「あぅっ!?」

 

 左腕を上げるようにして麻沙音の一連の動作を振り払った那須は、持ち上げた勢いを利用して桐香の脳天へチョップを落とした。好奇心に負けた麻沙音は兎も角、一連の原因に天誅を落としたのであった。はぅぅと涙目になった桐香の様子を驚いた声を聴いて、麻沙音は暴走していた頭が冷えてやっべと正気に戻った。

 

「はぁーーっ、はぁーーっ、……ふぅー……はぁー……」

 

 息を整えながら開かれた三白眼の双眸は据わっており、横目から見れば怒りの色が感じられる。流石に悪乗りが過ぎたなと桐香は頭を抑えながら涙目をする振りをしつつ視線を逸らした。那須は深めの溜息を吐いて、後ろに寄り掛かってから、もう一度深い溜息を吐いた。

 

「……次は無ぇからな」

「「ごめんなさい!!」」

 

 今まで聞いた事の無いドスの効いた低い声で呟かれたそれを聞いた瞬間に、温泉に居るのに寒気が走った二人が声を揃えて泣きの謝罪を入れた。昂る性欲によって魔族因子が活発化しており、口調が大分荒くなったその言葉は非常に恐ろしかった。

 

 目の前の見目麗しい美少女の本性が男性なのだと再認識した瞬間であった。対魔粒子を全開にして魔族因子を封じ込めた那須の双眸が段々と普段に戻って行くにつれて、イチモツの怒張もまた角度を下げていきマイナスへと曲がって行った。そして、怒らせた雰囲気が段々と薄れて行き、長い溜息を吐いた後の那須は普段の様子へと戻っていた。

 

「……ほんと、勘弁して。ボクが性欲をコントロールしてるのは暴走する可能性があるからなんだ。自分で言うのもほんとアレなんだけど、ボクの身体は色々とやばくてね。性欲が昂り過ぎると理性が飛んで本能に身を任せるケダモノになるんだよ。……此処だけの話、ボクは体液と精液に媚薬の効果があってね、理性飛んでる状態だと濃度がやばいから一般人だと死にかねないからね……」

 

 そう疲れた様子で吐露する那須へ両端からの視線が集まる。その視線は下へと移り、先程触れた時の感触を思い出してすんなりと納得できてしまった。陰茎への手術をしているなら兎も角、那須がそれをするとは思えないのであのイボは先天的なそれなのだろうと理解できてしまったからだ。そもそも現実的にふたなりを体現している人物はそう居ない、それを成している時点で普通の生まれをしていない事への理解を深めてしまう。

 

「……ボクは、魔族のオーク、それもハイエンド種の羅刹オークロードと対魔忍のハーフなんだ。半分魔族で、半分人間。だから、オーク・ナスに当て字して大久那須って言う名前を付けられたんだ」

「えーっと、確かベーオウルフの叙事詩に出てくるグレンデルの種族名、だっけ? ……あの、もしかしてこれあんまり言いたくない事なんじゃ……」

「まぁ、そうだね。ボクは試験管で体外受精させて生み出された実験生物なんだよ。下劣な性殖猿と呼ばれるオークの頂点と、対魔忍の頂点である井河アサギの卵子を使って産み出された子供はどうなるのか、っていうくだらない実験の産物なんだ。対魔忍としての身体を持ちながら、魔族としての生殖機能を兼ね備えたハイブリッド、それがボクだ」

 

 それこの場でさらりと言って良い事では無いのでは、と二人は冷や汗を流し始めた。そして、同時に自分たちのために忠告として言ってくれているのだとも理解が及んでしまう。特に、今回良かれと思って悪ノリで行なった桐香に対する釘刺しが一番の理由だろう。

 

 那須を反交尾勢力として麻沙音などを利用して捕まえた場合、抱き潰してやるからなという脅しである。桐香でさえ那須のソレを入れればただではすまないと感じ取っている程だ。淳之介のソレでさえこの島を征服できるのだ、那須のソレであればどうなるか言を俟たない。

 

「……郁子への応援は止めておこうかしら」

「それが無難だよ、いやほんと」

(那須さんに抱き潰される、か。……ご褒美では?)

 

 凌辱ゲーではスタンダードであるそんなプレイに肯定的な麻沙音はこっそり微笑んだ。むしろ、壊れるような快楽に溺れてみたいと思ってしまっている程に性癖がアレであった。何せ、程々に可哀想なのでしか抜けない主義の麻沙音である。

 

 延々と快楽屈服させられてアヘ堕ちする展開も勿論ながら好みである。何せ、見た目が美少女な那須である。今では性癖にぶっ刺さっている相手にそんな事をされたならば心から堕ちるに決まってるだろう常識に考えてと思考するのが麻沙音だ。那須としては、今回の一件を機に壁を置いておこうと思っていたのだが、その壁に穴を開けてハマりに来るのが麻沙音と言う少女だった。

 

 麻沙音の様子が普段通りな事に気付いた那須は内心安堵の混ざった溜息を吐いた。

 その後、何処か疲れた様子で洗い場へ向かった那須であったが、しれっと二人が付いて来て両隣で体を洗い始めた時は本気で困惑していた。今の話をした後に隣に来る度胸凄いな、と。そして、案の定ロクに身体を洗う事ができない桐香の世話を二人掛かりでする羽目になり、一瞬でシリアスな雰囲気はぶち壊されたのであった。




此処だけの話、セーフ?アウト?よよいのあぁん!感ある話となりました。ぬきたしっぽく中盤付近で主人公の秘密暴露です。いやまぁ、彼方此方に伏線入れてたし気付いている人は気付いていたんだろうなぁとは思いますけども。
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