抜きゲーみたいな島に派遣された対魔忍はどうすりゃいいですか? 作:不落八十八
週末に開催予定の体イク祭に対し、極秘リストを一応信用して対策を練り始めたNLNSメンバーであったが、美岬の悲鳴を聞いて女性陣もまた思う所があったのか視線を下げて自身を見やった。そして、この場に居る男性、淳之介、そして麻沙音は那須に視線が向いた。
自分のスタイルは見せられるものか、と自問自答し始めた面々が唸り始める。
(最近那須君のおかげで斥候の時に走らなくなったから……)
(最近毎日が楽しくてストレス解消に走ってたのを止めてたから運動してないトキ多いな……)
(最近寝不足も解消されてご飯もしっかり取るようになりましたし……)
(……そう言えば先日温泉で裸見せたけど見惚れてくれてたし問題無いかな)
一人だけ悩みから解放されていたが、一同の心は一つだった。想い人に良い容姿を魅せたい、という乙女心の発露である。余裕そうな麻沙音に三人から視線が飛ぶが、自身の好意を隠している面々からすれば羨ましいの一言である。淳之介狙いの四人からすれば、実妹である麻沙音が那須へ向かうのは喜ばしい事である。けれど、その余裕は正直羨ましいのである。後で、根掘り葉掘り聞こうと一同の心の声が揃った。
「まぁ、那須君が色々と情報を抜いてくれているおかげで生徒会室とかに潜入しなくて良いのは有難いな。こうして対策に専念できるしな」
「光栄の極み、でございます。某、一応忍の者です故」
「うむ、褒めて遣わす。……とまぁ、濁してみたが、その、大丈夫かお前ら。凄い悩んでるけど何か懸念があったか?」
「はぁー、兄のデリカシーの無さにびっくりだわ。だーから、左手が恋人のままなんだぞ分かってるのか糞童貞やろーさっさと奈々瀬さんとくっついて出来婚して義妹になった私を一生甘やかすんだよぉー」
「悪いがお前を甘やかすその役目は那須君に譲ると決めてるんだ」
「……対魔忍止めようかな」
誰にも聞こえないような小声で恋の障害を捨てようか迷い始めた那須を置いといて、相変わらずの鈍感から乙女心を測れない淳之介が悪態を吐かれていた。そう言えば、と相変わらずの奈々瀬推しを見せる麻沙音の様子に危機感を覚えた三人はどうしようかと迷い始める。もっとも、ナイスアシストと喜ぶべき奈々瀬は鈍感主人公よろしくいつもの遣り取りだなぁと流していたので幸先は明るいようだ。
「ねぇ、淳」
「ん? 何だ奈々瀬」
「淳って日頃から筋トレしてるのよね。一週間で身体が引き締まりそうなメニューって無い?」
「……奈々瀬、筋肉は一日にしてならず、なんだぞ」
「まぁ、分かってるわよ。分かってるけど……ね?」
「それでしたら、プランクはどうですか淳之介先輩」
「ああ、あれか。確かに色々な所が鍛えられるし、良いかもしれないな」
プランク、と言う初耳の単語を聞いた女性陣は首を傾げた。腕立ての体勢から両肘を付けて、足を延ばしたスフィンクスのような恰好になる、と説明が入ると一応の納得を見せた。試しに、とリラックスルームへ向かった那須に一同が付いていく。こうして、こう、とプランクの体勢を取った那須を見て理解が及んだ女性陣は簡単そうだなと感心した。そんな魂胆が見えている筋トレ初心者たちに淳之介が内心ほくそ笑んだ。
「っと、こんな感じですよ。最初は三十秒から始めて、3セットくらいしてみましょうか」
「……ふむ、そしたらアレだな。体イク祭対策として、放課後の時間を使って皆でトレーニングしてみるか」
「と、言いますと?」
「体イク祭は水着着用なんだろ? なら、水着を着て運動すればいざと言う時に身体が慣れてるから動きやすい筈だ。それに、羞恥感を覚えるというのなら仲間内で慣れておくべきだ」
「……成程?」
「ふっ、やるからには本気でやる、それがNLNS流だ」
「初耳なのだわ」
「今考えたからな。と、言う事で明日から各自水着を持ってくるように」
マジかよという視線が実妹から飛んできているものの、会心の立案だと自画自賛して得意げになっている淳之介には届いていなかった。水着を披露する事に意識し始めた女性陣は頬を赤らめており、そしてこの男は取り消さないだろうなぁと諦めて腹をくくり始めた。それに、彼女らにしても淳之介の水着姿を見れるのでまぁいいかという思いもあった。一人、心底微妙な表情を浮かべる少年も居たが、過半数以上の無言の賛成によって放課後トレーニング計画が可決されたのであった。
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翌日の放課後、無事に秘密基地に集まった面々はそわそわしていた。
淳之介の号令の下、リラックスルームで女性陣が、作戦立案室で淳之介が、そして那須はエレベーターと秘密基地の間の空間で着替える事となった。それぞれが移動を終えて鞄から持ってきた水着を取り出し始める。同じ空間であれば衣擦れの音は聞こえてくるだろうが、流石にドア一枚挟んでしまえば聞こえてくる事は無い。だが、きゃっきゃうふふな女性らしい会話は聞こえて来ていた。
「……うぅ、葉琴ちゃんにも負けた……。わたし、先輩なのに、ねんちょーさんなのにぃ……」
「ご、ご安心くださいヒナミ様。まだ成長の余地はあります」
「そうよ、わたちゃん。私たちまだ若いんだからこれからも大きくなるわよ」
「おほぉ……、此処が天国か。奈々瀬しゃんの生着替え……生きててよかった……」
「お、お腹は見ないでくださいね。うぅぅ、心頭滅却すれば背脂も厚しと言いますし、やる気元気美岬ぃ……」
随分と姦しいな、とやや邪念が浮かんできた淳之介は首を振って欲望を振り払う。同級生、先輩、後輩が水着に着替えているというシチュエーションに昂っているようだった。淳之介もシンプルな橙色のサーフパンツの水着に履き替え、日頃の筋トレの成果である割れた腹筋を魅せ付けていた。用意ができたらしい女性陣が淳之介を呼び、机やソファを退かしてスペースの作ったリラックスルームへと招いた。
其処には、情熱的な赤色のビキニを身に着けた奈々瀬、何処か犯罪チックな見た目のやや小さめの黒いビキニのヒナミ、お腹を隠せる水着を選んだのだろう黄色主体に水色の枠線のモノキニの美岬、白と橙色のコントラストのバンドゥビキニの文乃、白色のビキニに身を包んだ麻沙音の姿があった。
エッッッッッッッッ、と楽園めいた光景を目撃した淳之介は思春期の少年らしい邪念を抱いてしまった。それも、皆もじもじと恥ずかしがっており、羞恥というスパイスも相まって股間にクる仕草をしていたのも追い打ち案件だろう。
「……すまん、見惚れてた。似合ってるな、可愛いし綺麗だ」
そう本心から漏れた感想を聞いた四人は満更でも無さそうな笑みを浮かべて喜ぶ。はいはい御馳走様と肩を竦めた麻沙音は淳之介の入ってきた扉をじっと見て、那須の登場を待っていた。控え目なノックが聞こえた瞬間に麻沙音が許可を飛ばす。開かれた扉へ全員の視線が向いた。
「すみません、お待たせしました」
そこに居たのは……美少女だった。
鈍色のタンキニの上に、色を合わせた男性用サーフパンツに身を包んだ那須はアスリート然としており、何処かスポーティな印象を抱かせる。ボーイッシュな中性的な容姿であるためかその色が濃く見える。薄っすらと割れた腹筋が何処かフェチニズムをくすぐり、隠れ筋肉フェチな奈々瀬でさえ見惚れる筋肉美も兼ね備えていた。
全員の視線を集めた那須は何処か気恥ずかしい心地になり、癒しを求めるように麻沙音の白ビキニ姿を見てぽかんと見惚れた。初々しく見つめ合う那須と麻沙音の様子に微笑ましい気持ちになった面々は穏やかな雰囲気になっていた。ついっと視線を外した那須が頬を掻き、でぇへぇへぇと麻沙音は口元を緩ませた。これでまだ付き合っていないのだから理由を知らない者は驚愕する事だろう。
「その、全員集まりましたし始めませんか?」
「それもそうだな。円状に……は駄目だな。横一列だ」
重力に従った女性陣の胸を見る事になる事を悟った淳之介がフォーメーションを変える。そんな凶悪な光景を目にしていたら封印されたイチモツがスタンドアップするに違いなかったからだ。正直、今も意識しないように気合を入れているため、危機管理の失敗がリーダー失格の烙印を押す事態に成りかねない。
しれっと麻沙音を那須の隣に追いやってから、左から文乃、ヒナミ、淳之介、奈々瀬、美岬、麻沙音、那須の順に横一列に並び始める。手に持った百均タイマーに三十秒をセットして、俯せになって肘を付いた状態に全員が移行する。
「昨日那須君がやってくれたように、こうして腰を上げて背筋をしっかりと伸ばしてキープするのが基本姿勢だ。顔は下げ過ぎずに直線を意識して息を止めたりはしないようにな。それじゃ、軽く三十秒から始めるぞ」
よーいスタート、と電子音を鳴らした淳之介に続くように一同が腰を上げてプランクを始めた。案外楽だな、と女性陣が思ったのも束の間、十秒を越えてから悪夢の時間がやってきた。奥歯を噛み締めるようにして、持ち上げている筈の腰が上から押されているような感覚に陥って行くのを耐える。
震え始めたのは麻沙音と美岬とヒナミ、二十秒を越えてからはそこに奈々瀬と文乃が続く。まるで皿に載せられたプリンのように震える尻がプランクという体幹トレーニングのキツさを物語っていた。十秒を越えると腹直筋に感じる負荷だけではなく、腹横筋などの深層筋や全身の筋肉から刺激を感じるのがプランクというトレーニングだ。そのため、三十秒プランクと言う名目で筋トレ初心者におすすめされるメニューでもある。タイマーから電子音が鳴った瞬間に女性陣が崩れ落ちた。その隣で男性陣は余裕そうに腰を落とし、互いを見て苦笑した。
「き、きっつぅ……、最初は簡単じゃないって思ってたけど、何というか、クるわね、これ」
「腹筋をしている訳じゃないのにお腹周りがががが……ばたんきゅー」
「うぅ、これすっごいきついねぇ。すっごいぷるぷるしちゃった」
「これは……侮れませんね」
「……へんじがないしかばねのようだー」
日頃の運動不足が祟った女性陣が苦悶の声を漏らす。自転車通学をしている美岬でさえ、苦痛を訴えるプランクは基礎にして王道な筋トレメニューなのである。くったりとした面々の様子を見て淳之介はやや呆れを表情に浮かべる。
その様子に苦笑する那須であったが、概ねこのような状況になるであろうとは予想はついていた。逃げるという行為は下半身が集中して鍛えられるが、このプランクは腹回りを中心としたインナーマッスルなどを直撃する。そのため、普段動いていないような部分が痛めつけられるので泣きの声が上がったのだった。
「その分、効果はしっかりしてるんですよこれ。なので、毎日三十秒を三セット、三十日行なう、所謂三十プランクをおすすめします。場所を取らず、辛さで分かるように効果を実感できる素晴らしいメニューなんですよ」
「ああ、那須君の言う通りだ。いざと言う時の筋肉作りはきっと役に立つ。……それに、筋肉を付けた方がダイエットに繋がる。女性は体重を気にしがちだが、実際見るべきは体脂肪率だと思うんだがな。脂肪よりも筋肉の方が重い。太ったんじゃない、引き締まったんだ。継続は力なり、だ。体イク祭までと言わず、二セット、いや、一回でも良いから毎日行なうと良いな。筋トレをしたらしっかりとタンパク質を取るんだぞ。プロテインが理想だが、初めは卵を溶いた牛乳とかがおすすめだ。少し砂糖と塩を入れておくと飲みやすいぞ」
「めっちゃ語るじゃん兄、ここぞとばかりに」
「はっはっは、筋肉は無いと困るからな。日頃の努力は嘘を付かないし、自信の土台になる。……必要な時に足りない辛さは味わって欲しくないからな……」
そう遠い目で嘆きの言葉を呟いた淳之介に麻沙音が悲痛な表情を浮かべて瞑目した。その仄暗い雰囲気に過去に何かがあったんだろうと一同が同情の表情を浮かべる。集まった視線に気づいた淳之介が小さく息を吐いて、もう吹っ切れてるから大丈夫だ、と分かりやすい嘘を吐いた。
それを見て見守ってあげなきゃと奈々瀬のお母さん魂が震え、おねーさんとして守らなきゃと奮起したヒナミが拳を握り、何かしてあげたいと美岬が献身的に見つめ、支えて差し上げなければと文乃がふんすと意気込んでいた。
そんな様子を見た那須と麻沙音は随分と好感度稼いでいるなぁと淳之介を温かい視線で見つめる。彼らはまだ気付いていなかった。じっとりとした湿気のある暑さにより薄っすらと那須が汗をかいていて、その汗に含まれる微量の媚薬物質が部屋に漂って彼女らの興奮を煽っている事を。
現に彼女らが淳之介に熱い視線をするようになったのは那須が加入した頃であり、女性的疼きを覚えて淳之介という気になる異性に対して無意識に惹かれる環境により恋心を加速させているのである。あくまで後押しをしているだけで、人の好い淳之介の良さに異性として惹かれている事が前提なのは言うまでもない。淳之介が性的に食われるのも時間の問題であった。
此処だけの話、対魔忍側のキャラを出すべきか迷ってます。本編終わってから後日談的に出した方が良いのか、それともちょいキャラとして出すべきか、迷いに迷って夜しか寝れません。
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第一案件は本編or後日談。
第二案件としてY猫ちゃんかR牛さんのどちらにするか(両方の選択肢も置いときます)