抜きゲーみたいな島に派遣された対魔忍はどうすりゃいいですか?   作:不落八十八

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復活のプシャア。

 港から水乃月学園へと向かうメインストリートは大賑わいであり、ローション噴水のある広場を中心に商店街のような作りをしている。そして、その全てがドスケベナイズされているため、初青藍島を果たす人々はこの斜め上な光景を目にして悟るのだ。

 

 あ、ここやべー島だ、と。

 

 そして、素晴らしい島だ、と性を解放する者も居れば、どうしたら良いんだ、と困惑して暗がりへ島民に引き摺り込まれる者も居る。その後、どちらも、んほぉ、やら、あはぁん、と聞こえるのが通例であるのは言を俟たない。

 

 日常雑貨もあるため此処に来ざるを得ない時もあり、淳之介たちもある程度は見知った場所だった。ローション噴水から見て港寄りの路地裏へと入ると住宅街が広がっており、彼方此方で嬌声に混じって工事の音が聞こえる程に拡張工事が進められている。

 

 右肩上がりの移住希望者のための住宅を作っているが満員御礼状態であり、近々ショッピングモール近くにマンションを増築する案も挙がっている程にこの島は活気に満ちている。そんな騒がしい島に住み続けた者たちはどんな思いでその光景を見ているのか、時折憂いを秘めた視線がそれを物語っている事だろう。

 

「此処があの男のハウスね」

「いきなりどうしたんだアサちゃん」

「いや、家に着いたらやらなきゃいけないような気がして、つい」

「むべ……、此処は随分と騒がしく感じますね」

「まぁ、一番盛況なメインストリートの近くだしね。一応此処一等地なのよ。利便良し、風俗良しで立地良し、ってね」

「はわわ……、そんな凄い所におうち持ってるんだね那須くん。凄いなぁ」

「ですねぇ。お腹一杯食べて直ぐに家に帰れるだなんて良い場所ですねぇ」

 

 美岬の言葉にブレないなこいつもと一同思いつつも、目の前に建てられた新築の一軒家を見て嘆息する。何せ、任務のためと言えども一軒家を買える財力があるのだ。それも同年代の少年のポケットマネーであると聞いていれば感嘆を通り過ぎて溜息も出るというものだ。

 

「それじゃ、鍵は預かってるんで待ちましょうか」

「麻沙音ちゃん、因みにそれはスペアですか?」

「え、そうですけど……、何ミサゴン」

「グォオオオン、オ二人ハオ熱イデスネェ!」

「どっから出してるのその怪獣ボイス」

「げほっげほっ、んんっ。それってつまり、いつでもお家に入れちゃうって事じゃないですか。何時のまにそんなに進展してたんですかぁ」

「おおっ! そういえばそうだねぇ! 麻沙音ちゃんと那須くん仲良しさんだからなぁ。お泊り会とかしてるの?」

「このロリ先輩本当にこの島の住人か? 絶対これピュアなお泊り会でしょ」

「違うの? 仲良しのお友達とお泊り会って楽しいんだぁ。よく、礼ちゃんとしてたんだよ。ついつい礼ちゃんの好きな特撮を見てて夜更かししちゃって、お寝坊しちゃったトキあるし。……ロリな先輩じゃないんですけど!?」

「あぁ゛~、好きな事を話したがっていつものを忘れちゃうわたちゃん可愛いのだわぁ」

「お泊り会、ですか。私はした事がありませんね、境内をお借りしていましたし……」

「聞いてみれば縁側で寝てたらしいしな……。この島でも寒い時があるし、どうしてたかって聞いたら丸まって寝てただなんて野良猫みたいな話してたもんな……」

「というか、誰も居ない境内なんて文字通りの穴場スポットでしょうに、よく見つからなかったですね」

「ちんちん大社があるからだねぇ。あそこで罰当たりな事をするとたんしょーほーけーになるって噂があるからそれじゃないかな?」

「ロリちんまいわたちゃんから短小包茎だなんて言葉が出ると、ああ、この島の娘なんだなぁって感じがするね兄」

「ああ、犯罪的だな」

「十三歳未満の児童じゃないんですけどっ! 手を出しても犯罪じゃないんですけど!!」

 

 ぷんすかするヒナミを尊みが溢れた奈々瀬が後ろから回収した事で一件落着し、スペアキーで鍵を開けた麻沙音が先んじて扉を開ける。スペアキーはこの日のために渡されただけで受け取ったのは中休みだった。

 

 本来であれば那須が帰ってきたら返すべきそれであるが、しれっとこのまま保持できないかなぁとも麻沙音は画策していた。何せ、淳之介でも良いのにこの鍵を渡されたのは麻沙音であり、少なからず想われている事を仄かに感じさせる遣り取りだったからだ。

 

 是非ともこのままスペアキーを所持して、あーんな事やこーんな事への布石にしたいと麻沙音は素直に思っていた事もあり、初のお家訪問に少しだけドキドキしていた。入った途端に仄かに感じる良い匂いに一同は他人の家である実感を無意識に感じ取っている最中、これ那須さんの匂いだ、と特定できてしまった麻沙音は少し頬を赤らめていた。

 

 1LDKの住まいは割と殺風景であり、初期に置かれていたであろう家財をそのまま使っているような印象が見受けられる程に生活感が無かった。手洗いうがいを済ませ、辺りを散策し始めた面々は段々とテンションが下がって行く。まるで見学会に来てるみたいだ、と言う淳之介の言葉に一同が頷いてしまう程に物が少なかった。

 

 リビングから続く寝室へは引き戸のようで、麻沙音が好奇心で開いた先には――これでもかと壁に貼られた防音シートがもはや壁紙と化しており、甘ったるいフレーバーの匂いが充満している部屋だった。開けた途端に広がる甘い匂いに誰もが驚いて其方に視線をやれば、サイドテーブルの灰皿に溜まりに溜まった吸い殻が那須のストレスを可視化させているように見えた。

 

「……随分とストレス溜まってたんだな那須君」

「……此処、すんごい嬌声で五月蠅いし。この部屋だけ微かにしか聞こえないくらいになってるよ」

「……おいたわしや」

「……へう゛ぃーすもーかーって感じにこんもりしてるねぇ」

「……あ、あはは……。人の部屋だし、あんまり見ちゃ悪いわよ」

「……そ、そうですね。すんごい甘ったるい匂いしてますけど、ああ、これ煙草の臭いだったんですね……。てっきり那須君のシャンプーの匂いかと思って微笑ましく思ってましたけど違ったんですね」

 

 思わず合掌した一同。麻沙音はそっと扉を閉めて見なかった事にした。唯一の生活感のある部屋がある意味生々しかったので気後れしまっていたのであった。取り合えず、此処への行きに買ってきたジュースでも配ろうかと奈々瀬と文乃がキッチンへと向かい、残りの面々はリビングの敷物に腰を下ろした。麻沙音がそわそわとしながらタブレットに目を落とし、那須からのメッセージを確認していた。

 

「兄、那須さん合流できたって。此処に来るってさ」

「おお、そうか。にしても……、アサちゃん的にどうなんだ?」

「どうなんだって、何が?」

「いやその、那須君の応援に来るのって三夜を共にしたっていう子なんだろ?」

「……兄。それでも私は那須さんが好きだよ」

「アサちゃん……」

「むしろ、その人も含めても有りかなって、そういうシチュのエロゲーで慣らして来たから大丈夫」

「アサちゃん……?」

「那須さんが抱いた人って事はこれからはその人とアサちゃん棒姉妹になるって事だし仲良くしたいなって」

「アサちゃん……!?」

「それにほら、兄忘れてない? 私、女の人が好きなんだよ。那須さんもそれを込みで私の事を考えてくれてるから大丈夫だよ兄」

「……アサちゃん」

「だから兄は早く奈々瀬さんとドスケベして幸せな家庭を築くんだよ年貢の納め時だぞ童貞野郎」

「アサちゃん?!」

 

 そんな会話を聞いていたヒナミと美岬は話のオチに苦笑と焦りを感じつつも、何処か色気のある表情で居た麻沙音の横顔を見て安心していた。それどころかほんのりと幸せそうに語るのを見て純粋に良いなと思っていた。感情としては羨ましいといったものだ。好きな人が居てその人の事を想える。その幸せそうな雰囲気が惚気のように滲み出ている姿は正しく恋している乙女のそれだった。

 

 対して、自分たちはどうだろうか、と顔を合わせる。想い人である淳之介を中心にもはやNLNSハーレムと化しているが、誰もが気遣い合って続く一歩を踏み出せていない。特に一番リードしている筈の奈々瀬が、淳之介の幸せを第一に想うような一途で幸薄い未亡人めいたスタンスで居る事もあって尚更に踏み込み辛い。増してや実の妹である麻沙音の後押しもあるのにこれなのだから、それを押し退けて思いを告げるような強心臓を持っている者は居なかった。

 

 明らかに停滞してしまっているが、NLNSのメンバーで集まって何かをわちゃわちゃするのは楽しいのは確かだ。だからこそ、この微温湯のように抜け出せない心地から出ようとできない。そして、自分の行動によってこの空気が壊れてしまうのを見たくないという無意識的なブレーキが心で掛かってしまっている。

 

 だからこそ、麻沙音と那須の恋の行方が重要になってくる。恋人同士になり、惚気てくれれば空気も変わる。それはきっと奥手な淳之介にも作用するに違いない、恋の抑止力を解き放つ一手になると皆が期待していた。――もっとも、さらに混沌と化すとは誰も思っていなかっただろうが。

 

「あ、着いたみたいだよ兄」

「おお、そうみたいだな。迎えに……行くよりも来るのが早そうだな」

 

 扉が開き、やや甲高い声が聞こえてくる。それは中性的な那須の声とは違った活発な少女の声だった。何処か喧嘩しているように聞こえてくる程に会話が弾んでいる。段々とリビングへ近付いて来るものの、廊下での会話がヒートアップしたのか二人は立ち止まったようだった。

 

「だから言ってるだろ、現地での協力者だって」

「分かってるわよ。でもこの島の連中なんでしょ? 俗に言う頭青藍島な島民を信用しろってのは無理がある話よ」

「それは、そうだけどさ」

「だいたいねぇ、アッシュ。あんた現地協力者だなんて認める性格してなかったでしょうが」

「……まぁ、うん」

「でしょう? ただまぁ、あんたがそこまで心変わりするくらいに良い奴らってのは分かったわよ。でも、任務に付いて来させるのは別の話よ」

「実はゆきかぜを呼んだの彼らを守るためって言ったら怒る?」

「うふふ、ぶち殺すわよ」

「だよねぇ……、プライド高いしなぁゆきかぜ。でもさ、どうしても頼みたいんだよ」

「はぁー……、まぁあんたの報告書を見る限り一人でも十分でしょう。だけど、お守りをするために来たんじゃないんだからね。そこんとこ分かってるのアッシュ」

「そりゃ、ね。雷遁の術は火力に秀でてるからね、殺し辛いのが出て来たらボクよりも活躍できるだろうさ。だからこそ、後詰めとしてゆきかぜを背中に置いておきたいんだよ」

「……もうっ、そんな言い方して……もうっ、ふふん、仕方が無いわね。分かったわよ。貸し三だからね」

「多くない?」

「これぐらい貰わなきゃやってらんないわよ、ばーか」

 

 ツンデレがデレたような甘い声で途切れた会話。それを聞いていたNLNSのメンバーはリビングで何とも言えない顔をしていた。確かに那須と仲が良いと実感している一同ではあるが、気安い軽い口調での遣り取りができる程には至っていない。何せ、まだ二週間ちょっとだ。半年くらい一緒に居たような感覚ではあるが、実際の日数はあんまり長くはない。そして、それを一番噛み締めたのは誰でもない麻沙音だった。

 

「それじゃ、顔合わせと行きましょうか」

 

 という声と共にリビングに続く扉が開かれて対面する事となる。小柄な少女は勝気な表情で現れ、NLNSメンバーを一瞬で見渡した。その際、少女の栗毛なツインテールが揺れて、微かにしか揺れない胸を張って腰に手を当てて不敵に笑みを浮かべた。

 

「私は水城ゆきかぜ。アッシュの親友で、同じ対魔忍の仲間。よろしくね、NLNSの人たち」

 

 堂々とした様子で視線を掻っ攫ったゆきかぜのアメジストめいた双眸が黒一点の淳之介へと向かう。そして、頬を掻いて何とも言えない表情で後ろから那須が続いた。視界に入った那須へ一番最初に視線が動いた麻沙音へゆきかぜの視線が移る。

 

「ふーん、あんたがアッシュが惚れた女って訳ね」

「え゛っ」

「何で分かったか、って? 分かるわよ、同じ目をしてるもの。それに……、ふぅーん、中々面白い事になってるのね。ちょっと面白くなってきたわ」

「あわわ、できる女って感じだぁ」

「そ、そうね。見た目と纏ってる雰囲気のギャップが凄いわね……」

「ごくり、あれが処女と非処女の差って奴なんですねぇ」

「む、むべ……」

 

 薄い胸も相まって活発なロリ系に見えるゆきかぜだが、日焼けの褐色と白磁な肌とのコントラストが映える露出の強めな恰好という事もあり色気を感じさせている。無論、それは男と言うモノを知った生娘を卒業した女としての風格に、那須との三夜の濃密な快楽によって生じた奥底からの願望が滲み出て淫靡な雰囲気を醸しているのだった。にぃっと口角を上げたゆきかぜは誇らしげな表情で隣を見やる。隣に居た那須は自慢げなゆきかぜに嘆息しつつ呆れた表情で苦笑を浮かべた。

 

 そんな二人の近さに麻沙音は静かに戦慄していた。これが情を交わした男女の近さなのか、と。そして、ロリサキュバスめいた魅惑的な雰囲気を醸し出すゆきかぜの色っぽさに若干ながら惹かれてもいた。小柄で貧乳でありながらも淫靡な色気を魅せるゆきかぜは正しくギャルロリビッチの貫禄があったからだ。もっとも、経験人数は那須一人のためビッチの称号は返上であるが。

 

 だが、そんな余裕振ったゆきかぜだったが密かに焦っていた。何せ、那須の心を射止めた麻沙音の容姿が容姿だったからだ。何処とは言わないが自分よりも遥かにでかいし、滲み出る陰キャ特有の影が相まって保護欲を掻き立てる雰囲気は対照的だった。そして、何よりも自分が那須に与えたかったものを与えた人物だったからだ。

 

 対魔忍の家系に産まれたゆきかぜは那須と比べて遥かに人間味に溢れた生活をしていた。しかし、対魔忍の暮らす世界は表社会を大手を振って歩ける一般人の生活とは違う。人魔悪鬼を討つ者であれと宿命られた対魔忍の生活は、アサギと言う存在も在って武力一辺倒になりつつある。そのため、任務の内容も相まって血生臭い生活を余儀なくされる事もあって、人間味の溢れる日常と言う物を教え込む事をゆきかぜはできなかった。

 

 何故なら、ゆきかぜもまた非日常を生きる者だったからだ。幸い深夜アニメと言う俗に塗れているものの日常の教材があった事で何とか被る皮を用意してあげる事ができたのは幸いだった。だが、それだけしかできなかったとゆきかぜは悔しさを噛み締めていた。そんな中で起きたのが奴隷娼婦未遂の件だった。そこでゆきかぜは女に目覚め、そして、那須に女を教える事ができた。もっとも、それが仇となってしまったが故に二番に落ち着いてしまったが。

 

「ま、短い間になるか、長い間になるかは分からないけど、よろしくね」

 

 けれど、目の前の獲物を逃がすようなゆきかぜでは無い。それが無意識ながらも惹かれて、身体の交わりを経て自覚した恋心の相手であるならば尚更に。そんな強い意志を雄弁に語るその瞳に貫かれた麻沙音はこくこくと頷く事しかできなかった。




此処だけの話、自宅にキャンパスアートが届いて狂喜乱舞してました。
集合写真尊いんじゃぁ^~。

カクヨムで同じペンネームでオリジナルを書き始めた影響か、文章量がちょっぴり増えました。書きたい事を書くのが作家ってもんですしね。

時間が経ちましたし、陸拾玖物語にも少しだけ触れようと思います。
……ランチタイムの喫茶店の話、ほとんどカクヨムのそれで感動しましたね。
耳だけで聞くよりも、耳と目で物語を聞くってのも乙なものだなぁと思いました。
Qruppo様のお名前でカクヨムに掲載されているので、知らなかった人は是非是非ご覧くださいね!
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