抜きゲーみたいな島に派遣された対魔忍はどうすりゃいいですか? 作:不落八十八
淳之介が流れ弾を食らって美岬の尻で逝った後、何事も無く大規模オリエンテーションを抜け出したNLNS組は秘密基地へ帰還して一息吐いていた。吐精した淳之介と未だに腰の熱さを忘れられない美岬の二人は顔を真っ赤にして顔を背け合っているが、どちらにも嫌悪感は見えずに満更でもないのが見て取れた。
「……ねぇ美岬、その……どうだった?」
「聞いてしまいますか奈々瀬さん!? 流石の私もキャパオーバーで恥ずかしいんですけど!?」
「そんな事言って、帰って来る間にしれっと舐めてたじゃんか兄の出したのを」
「あqwせdrftgyふじこlp;@:」
「うわぁ!? 美岬ちゃんが口からエラーを吐き出して倒れちゃった!?」
「む、むべ、傷は浅いと聞きますよ美岬様」
私はもう駄目だぁと顔を伏せて倒れ伏した美岬であるが、観客席へと戻ってくる間にこっそりとハンカチにふき取っており、今では鞄の中にビニール袋に入れて持ち帰る気満々であった。おかずゲットだぜとここぞとばかりに演技力を振り絞ってその事を隠し通そうとオーバーなリアクションで有耶無耶にしようとしていた。
そんな珍道中めいたてんやわんやな様子を見つめる那須は気まずい表情を浮かべ、しれっとどさくさに紛れて忍び入っていたゆきかぜは分かるわと頷いていた。対照的な二人のリアクションであるが、草食系と肉食系のリアクションだと言えば納得できるだろうか。
性欲に任せて理性を失いたくないが故に情欲を押さえ付ける草食系対魔忍に、身を焦がす程の情熱の燃料となった性欲を持て余す肉食系対魔忍が隣り合いながら時計を見やって息を吐く。何せ、今の時間は午後二時であり、予定している時間までかなりの時間があった。
「で、実際のところどうなのよ」
「何が」
「対魔忍辞めるんでしょ? 何処まで本気なのかなーって思っただけよ」
「……まぁ、半分くらいってとこだね。この作戦で何処まで恩が売れるかで身の振り方を決めるつもり」
「ふーん……。まぁ、どっちにせよ、私も噛ませなさいよ」
「本気?」
「マジよ、これでもかってぐらいにマジよ。あんたねぇ、恋する乙女を舐め過ぎよ」
「……すまん達郎。マジで何も言えない……」
「あぁー、そゆこと。もしかして、達郎に義理でも感じてたの?」
「義理って言うか……、君らと出会った時から二人は恋人だと思ってたからさ。あの時の一件を機に二人の仲を裂いたんじゃないかってずっと思ってたんだ」
「だから、この任務受けたのね」
「……分かる?」
「そりゃ分かるわよ、ばーか」
弱めのでこぴんを打ったゆきかぜは苦笑しながら笑みを浮かべて罵った。その声色に怒りや嫌悪は感じられず、どちらかと言えば呆れや笑いの方が強い程だった。打たれたおでこをさすりながら那須はバツ悪そうに視線を外して麻沙音を見やった。
「ほんと、変わったのね。昔のあんたが指を指して笑うわよきっと」
「かもしれないね。見えて来たって言うのかな、ボクという奴の人間性ってのがさ。君と肩を寄せ合って、麻沙音さんに背を支えられて、やっと、自分を人間と呼ばれて良いのだと許せたのかもしれない」
「考えすぎなのよ。人間の定義だなんて、意志感情がある人型生物ってだけで良いのよ」
「あはは……、ブレないね、ゆきかぜは。でもさ、割と人間らしさってのは大事なんだよ。それが無いと誰かを愛せないし、愛して貰っていると言う実感も湧かないんだ」
「それが麻沙音って事ね」
「……ははは、誰かに想われる事の温かさ、そんな気障ったらしい感情を理解できたのは麻沙音さんのおかげだよ。ボクも、君も、殺伐とした場所に居過ぎたんだなって。五車学園に通ってた時には感じられなかった日常って単語を此処では感じられたんだ。だからこそ、分かる事もある」
「……ふぅん。何を?」
流し目で問い掛けるゆきかぜに一瞥返さずに、冷めていく瞳で那須は吐き捨てるように答えた。
「……オレがどうしようもない畜生だって事を。下級魔族共を切り裂いてた時の心地と、こうして馬鹿みたいな面子で笑ってるのを見ている時の気持ちの温度差がさ、ほとんど変わらねぇんだ。普通じゃねぇって後ろ指刺されてる気分でふと冷静に返るんだよ。此処に居ていいのかっていう居心地悪さと、此処に居たいっていう居心地の良さが混ざって、冷たいのと温かいのが混ざって、ぐちゃぐっちゃで、嗚呼、なんて汚らしいんだと反吐が出る。人間はこんな感情を捌いて生きているんだろ、凄ぇなって思うよ」
「はぁ、でしょうね。あんたはまだまだ人間経験値が足りないのよ。だから、そうやって悩むの。でもね、それって人間らしさでもあるのよ。この世で望まれて産まれて来た命だなんてどれくらいの割合になるでしょうね。祝福される奴も居れば、産まれなければ良かっただなんて言われる奴が居るのが世の常よ。誰も彼もが綺麗な訳じゃないの。だから、あんたはそれで良いのよ。あんたが思ってる程に人間は人間らしく生きている訳じゃないんだから」
「……そんなもんなのかね」
「そんなもんよ」
壁に背を預けて脱力した那須に苦笑してゆきかぜが澄ました笑みを浮かべる。そんな二人を見て麻沙音は胸奥をざわつかせていた。あの距離感の近さと言い、あの本音のぶつけ合いと言い、明らかに幼少期から続く幼馴染なそれでは、と。
既に馴れ初めを聞いているが、あの屈託の無い雰囲気は明らかに幼馴染の分かってるわよムーブであるのは間違いない。三年で構築できる距離の近さでは無いだろう、ともやもやとする気分が嫉妬と言う感情に乗って表情をしかめっ面に傾けていく。
そんな麻沙音のふくれっ面を見たゆきかぜは純粋に笑みを浮かべて、チェシャ猫めいたにやり顔をして手招いた。ぽかんとした麻沙音に肩を竦めながら、ゆきかぜが座る那須の右側の反対側へと視線をやるように顎で示した。そうして漸く意図を悟った麻沙音は思案顔を浮かべてから意を決してダンボール箱から飛び出し、さながら気紛れな猫のように那須の左側へと座った。
妙なアイコンタクトをしているなと思ったら両側から柔らかいサンドウィッチをされた那須は目を瞬かせて困惑していた。そして、隙を晒している那須の両腕へ幸せな柔らかさが押し付けられ、左右からの心地良い人肌の温もりとやけに甘く感じる匂いを鼻孔に感じた。大と小によるツープラトンラブラブアタックの威力は底知れない物であり、受ける側の愛しさによって比例するという特効能力付きであった。
「あ、麻沙音さん? ゆきかぜも……」
「麻沙音」
「え?」
「私も麻沙音って呼び捨てにしてください。……那須、さん」
「あら、ならその呼び方は止めてアッシュにしときなさいな。その那須ってのは老害が悪態の意味を込めて強制した名前だから。篝火より出でる灰色の残滓、そこから発想したのがアッシュって言うニックネームなの」
「……アッシュ、さん!」
ゆきかぜの後押しもあったものの、異性の名前を気軽に言える程麻沙音のコミュ力は高くない。だが恋慕する相手であるのでいつか恥ずかしがらずに呼び捨てにしてみたいとは思っているようではあった。小さくその名前を連呼して練習する辺り、そのいつかの日は近そうではあるが。
「あ、あはは、はは……。いや、うん、ごめんね。碌な名前付けられてなくて。説明した瞬間にゆきかぜがキレちゃって、それからその名前を呼んでくれてるんだ。だから、その……麻沙音もそう呼んでくれると嬉しいな」
「う゛っ」
「麻沙音? 麻沙音!? 胸を抑えてどうしたんだ、顔も赤いし……、もしや持病があったりする?」
「あははー、馬鹿ねアッシュ。照れ隠しに決まってるじゃないの。愛しい男から名前を連呼されちゃったらそりゃそんな反応するわよ。ほーんと、女たらしなんだから♥」
「たらしこんだ覚えが無いんだが……?」
「まぁ、凛子さんは正直怪しいし、実害を受けたのは多分私だけでしょうしねぇ」
「あ゛っ、そういやあの人も居たっけ。大丈夫だったかな、貫いた感じあったし……」
「ああ、大丈夫よ。元々、実の弟に欲情するブラコンのやべー人だったし。ある意味正常に戻ったんじゃないかしら、あれからずっと悶々してたみたいで無事ふうまに引っかかったみたいよ」
「何がどうなってそうなったんだ……? いやまぁ、ふうま、ふうまか。えぇと……、あのクーデターの首謀者の息子か。正直、詳細上がってこないし、秀でた話も聞かないから特段知らないんだけど……」
「色々あったのよ、色々とね。今では野郎の尻を追いかけるために部隊長になってて、色々と巻き込まれたりしてるみたいね」
「ふぅん、そっか。もしかして、ボクの居た位置を埋めてくれてたりするのかな。そうなると今後の話のオチの付け方も変わってきそうだなぁ」
「そもそも何をするつもりなのよ。……まぁ、あんたの事だからえげつない事なんでしょうけども」
「嫌な信頼もあったもんだね」
「そりゃね。一人救うために敵を全員ステルスキルして帰って来るような奴だし」
それを言われると何とも言えないと那須は口を閉じて黙した。何せ、基本的に那須の任務で潜入する場所は敵地であり、人質や誘拐された対魔忍の奪還さえ出来れば手段を問わない。故に、発見が遅れるようにモニタールームを潰してから端から一人ずつ殺していき、通信網をしっかりと潰してから慰み者となっている要救助者を救出する事が多い。既に数日嬲られているのだから数時間程度なら誤差だろと言う塩対応であるが、他の対魔忍の脳筋正面突破回収と比べても成功率が段違いに違うため重宝される理由となっている。そして、何よりも敵勢力の人員を減らしている事が高評価に繋がってるあたり脳筋の代名詞に対魔忍が挙がるのも仕方が無いのだろう。
「あーうん、ゆきかぜ? あんまりそういうのは暴露しないで欲しいなって……」
「あ、そう? でも案外そんなに気にしてないでしょ麻沙音」
「え? えぇと、聞く分なら、ですかね。流石に見るのはちょっとですけど」
「……そういうものなのかな?」
「そりゃねー、今のゲームって割と殺伐してるの多いし、映像技術の発展もあってゴア系は結構グロいのよ。たまに配信すると結構反響多くて楽しいけどね」
「えっ、配信されてるんですかゆきかぜさん」
「まぁね、名前でバレちゃうだろうから詳しくは言わないわ。……とまぁ、あんまり身構えなくても良いわよ。今時の女の子は強いのよ、色々とね」
「そ、そうですよアッシュ、さん。その、そういう職業だって言うのは理解してますから……」
「……ありがとね。それ聞けただけでも少し心が軽いよ。何せ、今夜はそういう場面ばっかりだろうからね……」
「魔族絶対殺すマンの本領発揮ね。ま、後ろには私も居るから伸び伸びやりなさいよ」
苦笑した那須が小さく頷いて、頼りにしてると微笑みを返した。数ヵ月前の彼とは段違いな反応に肩を竦めたゆきかぜも微笑み混じりの苦笑を返した。そんなつーかーな様子の二人にやや嫉妬しつつも、麻沙音もまた苦笑した。
此処だけの話、おかげさまでUAが20000を越えました!
二万人のナマハメイトとマダハメイトに見られたと思うと嬉しさが込み上げてきますね。
ぬきたし小説増えろー、増えるんだ、もっと、孕めオラァするんだよ……。
(原作検索で一般5、R18で13と言う少なさ)2021/5/29現在