抜きゲーみたいな島に派遣された対魔忍はどうすりゃいいですか?   作:不落八十八

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むべむべ救出作戦。

「おっと、危ない」

「んにゃぁっ、な、那須さん?」

 

 それは何気ない動作だった。夕方と夜の間の時間帯に差し掛かり、段々と夜の帳が落ち始めた頃だった。他愛の無い雑談を交わしつつも辺りを警戒していたNLNSメンバーでさえ気付けない程にそれは神掛かった行ないであった。麻沙音は頬の横に一陣の風が通り過ぎたのを、真後ろの木に着弾した乾いた音で漸く気付く事ができた。

 

 何を――、そう一同が麻沙音を見やれば、那須に片手で抱き締められている姿があった。そして、彼女らの後ろに見えた木に刻まれた弾痕が続いて視界に入ると怖気が走る。

 

「流れ弾かな。弾丸の大きさからして自動拳銃のそれだ。――全員木の後ろに身を隠して!」

 

 そう声を荒げた那須は左手で抱えていた麻沙音を更に抱き寄せて、自身のベルトに触れると金属部分から何かを引き抜いた。それを人差し指と中指の第二間接付近に挟み込み、虚空を一閃した。甲高い音が聞こえたかと思えば、那須の右手に挟んでいたそれは姿を変えていた。

 

 対魔粒子力ブレードと銘を受けたそれは、さながらロボットアニメのビームサーベルのように紅の刀身を伸ばしている。対魔忍大久那須が用いる仕込み武器、自身の対魔粒子を吹き出すようにして刀身を生成し、その後は粒子コントロールによってそれを維持すると言う何とも力業な武器である。とある理由で自身の対魔粒子を完璧に操る必要があった事から生まれた訓練用の武器であった。鉄すらも切るその刃が鉛玉を切り落とす事は造作もない事だ。

 

 事態を把握した淳之介は冷や汗を感じながら、咄嗟の判断で太い木の後ろに隠れた面々の様子を確認する。流れ弾と称したように、彼らへ向けての発砲でなかった事から誰も被害を受けている様子は無かった。唯一、その状況からして流れ弾の一つを切り落としたらしい那須の姿にとてつもない違和感を抱いたものの、それどころではないと思考を切り替える。

 

「おい待てごらぁあああああ!! てめぇ、すっぞごらぁあぁぁああああああ!!」

 

 遠くから響く怒声、明らかにそれはSHOガードマンのそれではない。テンプレートなヤクザの下っ端が発するような怒声であり、剣呑な雰囲気を込められたものだった。そしてそれは段々と近付くに連れて、複数の叫声が聞こえた事で一人ではないことも分かってしまった。

 

「アサちゃん!」

「オッケー兄、いつでもいけるよ!」

「――“アリアドネー・プロトコル”起動!」

 

 淳之介が眼鏡を外し、鞄から取り出した顔半分を覆うような大型のゴーグルを付けて、起動ワードを口にする。数秒の起動コードが流れた後に親しみ慣れた画面が映し出された。森の中ではSHOが取り付けるスパイカムと呼ばれる監視カメラが無いためIFFは無視し、即座にレーダーによるスーパーサーチをかける。しかし、最大にまで拡大した筈のサーチに映るべき敵影は存在しなかった。

 

「レーダーに感なしだと?」

「多分、淫スタを入れていないか電源を入れてないんだよ兄」

「つまり、相手はSSやSHOじゃない……。マジもののヤクザって事か」

「どうするの淳。確実にこっちに近づいて来てるわよ」

「……あいつらは誰を追ってるんだ?」

「ちらっと見えた。淡い髪の着物を着た女の子だね。三、いや、四人の男が追ってる」

「淡い髪、だと?」

 

 遠目を睨むようにして状況を伝えた那須の言葉に淳之介はまさかと逡巡する。胸騒ぎのような直感が、あの時自身を救ってくれた少女の姿を脳裏に浮かび上がらせる。淡い髪の着物の少女だなんて、きっと彼女しか居ないだろう。そう考えている間にも状況は進んで行く。

 

「獣道から正道に入ったみたい。このままだとボクらとは鉢合わせないけど、実銃を持つ彼らに追いつかれる可能性は十分に高いよ。距離にして約百メートルちょいってところだ。行ける距離だよ、橘先輩」

「――――! 那須君、追いつけるか?」

「無論だね、ボクより早い奴はそうそう居ないよ」

「よし、攪乱のため先行。続いて奈々瀬はEggで補助、わたちゃん先輩と畔はアサちゃんを守ってくれ」

「おいこら淳、本気なの!?」

「そうだよ兄! というか那須さんもなんでノリ気なのさ! あいつら本物の銃を持ってるんだよ危ないよ行っちゃ駄目な奴だよ!」

 

 奈々瀬と麻沙音の疑問の声に淳之介は一瞬だけ逡巡する。しかし、胸の奥で滾る血潮が叫ぶのだ。間に合わなくなって後悔するのは誰だ、と。また、あの時のように見捨てるのか、と。そうさせないためにチームを作ったんじゃないのかと轟き叫ぶ。そして、自分の声を待つ後輩の視線が自身のそれと重なる。覚悟は決まった、後悔をしない生き方をするための行動を始めよう。

 

「行くぞ、那須君!」

「御意――」

 

 それはまるで一筋の矢であった。期待を込めた言葉を背に受け、地面を蹴った那須の姿がブレて消える。そして、対魔粒子力ブレードが残す紅の軌跡だけが彼の道筋を示していた。目の前で百メートル走の世界新記録が出ている事に気を向ける事も無く、続いて走り出した淳之介を見て溜息一つ吐いた奈々瀬も表情を変えて追走した。

 

 四人のヤクザに追われた少女は巧みであった。距離と言う地の利を得た状態で時折正道に飛び出した枝を避け終えた瞬間に振り返り、ボルトアクションのスナイパーライフルの銃口が追うヤクザの一人を捉え、同時に引き金を引いた。

 

 その流水の如く洗練された一連の動作によって、自身に向けられていた自動拳銃の一つを握る指を撃ち抜いた。撃ち抜かれた人差し指は繋がっているものの、暴徒鎮圧用のライオット弾をスナイパーライフルによる中距離射撃という相乗効果により、射貫かれた指の骨を砕かれていた。その男は痛みによって落とした自動拳銃を拾う事もせずに怒りによって痛みを誤魔化して追走の足を速めた。

 

 しかし、その判断はミスであった。何故なら彼の落としたその自動拳銃を拾い上げる手があったからだ。整備されていない山の正道は走るにも一苦労な環境であるが、一歩宙に浮かべばそれらの障害は数瞬の間において無かったものとなる。左手で構えた自動拳銃のグリップを右手で抑えながら那須は足首に狙いを付けて偏差射撃を行なう。撃鉄に打たれた弾丸は二発が地面に刺さったものの、続く一発が右足首の筋へ無慈悲に突き刺さった。

 

「ぐぁあっ!?」

「なっ、後ろから撃たれただと!?」

 

 崩れ落ちた一人の悲鳴を聞いた隣の男が振り返れば、既に夜の帳が下りた暗闇の道を駆ける紅の軌跡が見えた。そして、速度を緩めてしまったが故に、その紅の軌跡を受ける事となる。

 

 一瞬の交差。男は目の前に突如として現れた蠅を振り払うように自動拳銃を持つ拳で打ち払う。しかし、動く筈の腕は糸が切られたマリオネットのように沈黙を続け、やがて遅れてやってきた熱い感覚によってそれを知覚した。右片足と振るった右腕の筋が切られた事で体勢を崩してその場に崩れ落ちる。

 

 盛大に地面に顎を打ったその男は一瞬で視界が暗転し続く痛みを感じる事なく気絶した。地面に落ちた自動拳銃のトリガーへ刃を一瞬差し込んで使い物にならないようにしてやり、唖然とした顔で見上げるその顎へ痛烈な蹴りをお見舞いして意識を刈り取る。その間約十秒の出来事であり、対魔忍という生き物の格の違いを見せつけていた。弾丸の入ったマガジンを引き抜いてポケットに仕舞い込み、再び着物の少女を追う男たちの背を追った。

 

「くっ!」

 

 これまで酷使された草鞋の尾が悲鳴を上げて切れてしまったのと同時に少女は倒れ伏してしまった。その際に手に持っていたスナイパーライフルのグリップへ顔を打ち付けてしまった事で視界が一瞬暗転する。

 

 意識を取り戻して立ち上がろうとした瞬間に、切れた草鞋に足袋が滑り、背に迫るヤクザのタックルをもろに受けてしまった。そして、怒り心頭な男の両手がその細い首へと伸びる。万力の如き力任せの暴力が少女の意識を奪い去ろうと両手に込められた。

 

「てこずらせやがってこのクソガキぃ! 意識落として静かにさせてやらぁああ!!」

 

 曲がりくねった正道を、獣道を用いて最短距離の直線で走って来た淳之介と奈々瀬はヤクザに首を絞められた少女へと先に追いつく事ができた。四人と言っていたうちの二人を那須が排除したのだと理解した後、淳之介の投げるジェスチャーに頷いた奈々瀬は鞄から引き抜いていた黄色のEggをヤクザたちの前の木へ投げつけた。ぶつかる音に反射的にそちらを見た二人のヤクザの視界が弾ける。フラッシュバンによって夜目になりつつあった目が光に焼かれて視界を失う。

 

「はぁああああああああっ!!」

「なっ、くそ、がっ!?」

 

 両手を少女に使っていた事で顔側面へ放たれた渾身の横蹴りを受けざるを得なかった男はそのまま視界を暗転させ気絶して倒れ込む。明滅する視界の中、吶喊の声がした方へ残った男が反応を示し、蹴りを放って無防備な淳之介へ向かって自動拳銃を向け――。

 

「悪い事をするその手はいらないね」

 

 追いついた那須が対魔粒子力ブレードを一閃し、男の手首を切り裂いて落とす。拳が付いたまま自動拳銃が地面へと落ちるまでの時間で、掌底を顎に叩き込まれた男が気絶して倒れ伏す。落ちる一歩手前の自動拳銃を足の甲を使って器用に受け止めた那須は、汚い物を触るように指を剥がしてから拳だけを倒れ伏した男へ投げ捨てる。

 続いてマガジンを引き抜いて自動拳銃二つもまた追加で放り投げた。木々の静寂の中、重たい金属音が地面に転がる音と首を抑えてえづく少女の痛ましい声だけが響いた。

 

「げほっ、けほっ、……ふはぁ、こほっ、……え?」

 

 暗視機能が付いているゴーグル越しにそれを見てしまった淳之介は、口元を抑えて吐き気を飲み干した。それから息を整えてから目をぱちくりさせて唖然としている少女へ掌を差し出す。恐る恐るという様子でその手を取った少女は、勢い余って筋トレによって鍛えられた淳之介の胸板へと顔を埋める形で受け止められた。線の細い少女の体が軽過ぎて力を入れ過ぎたのも要因であるが、普段なら踏み止まれるものの草鞋が切れているが故にふんばりが効かず流されてしまったらしい。

 

 先程の惨状も忘れて腕の中に納まった小さな体を淳之介はそっと抱き締める。大丈夫だ、今度こそ助けてみせる、と体が反射的に動いてしまったようだった。その大きな腕に優しく抱き留められた少女は顔を真っ赤にして、恥ずかしさから顔を俯かせてしまっていた。

 

 夜目の効く那須はその様子を見て肩を竦め、クールに足元に転がっていたヤクザ一人の衣服の首根っこを掴んで木々の奥へと消え失せた。その直後、布を噛み締めてから絶叫したような悲鳴が幾度か聞こえ、淳之介の元へ集まって来たメンバーが戦々恐々とした様子でそちらを見ていた。

 余りにも容赦が無さ過ぎる後輩及び友人に若干背筋が震えてくる始末であった。

 

「え、ええと橘さん。そちらの子が追われていた子ですか?」

「ん、ああ、そうだよ。っと、疲労が溜まってたのか寝ちゃったみたいだな……」

「うわぁ……、お人形さんみたいにきれーな子だな。かわいいな」

「あら、ほんと……。というかこの子、よく着物でこんな山道を走ってたわね。靴じゃなくて草鞋みたいだし……」

「何というか時代が違うっていうか……」

「と、取り合えず場所を移動しようよ兄。さっきの奴らの増援が来るかもしれないしさ」

「それもそうだな。…………。おーい、那須くーん、行くぞー」

 

 遠くから「はーい」と言う返事が返って来てから数十秒後に何かが木の根元にぶつかる音がした。それから那須が藪を抜けて走って行く前の時と同じような調子で戻って来た。色々と聞きたい事があったものの、麻沙音の言う通りこの場所に残るのは危険を感じる。

 

 GPSで場所を確認し、満場一致で一番近い橘家へと向かう事となった。先程まで実銃を持ったヤクザと戦っていたという事もあり、警戒に警戒を重ねた慎重なクリアリングをしながらだったため、道中は無言での行軍であった。場所を知らない那須ではなく、家事代行で通い慣れ始めた奈々瀬が先導する事によって、無事NLNS一同は橘家へと帰還する事ができた。

 

「はぁぁぁああああ……」

 

 靴を脱いでリビングへ上がった途端、ソファへ着物の少女を優しく置いた淳之介が崩れ落ちる。過度な緊張の糸が家に帰って来た事で切れてしまったようで、ソファを背にするようにずるずると床に座り込む。そして魂が口から抜けたかのような大きな安堵の息を吐いた。それに続くように冷や汗を拭った面々が安堵の息を吐き始める。

 

 最後尾に付いて辺りを睨むように見渡していた那須は、試案顔で顎に右拳をやって何か考えているようであった。全員の息が整った頃にけろりとしていた那須は場の雰囲気を緩めるため、苦笑しながら口を開いた。

 

「状況終了、ですね。お疲れ様です皆さん。随分とハードな帰宅部ですね?」

「あ、あはは……、笑えない、笑えないから……。こんな帰宅部があってたまるか」

「ふぅ、ほんと肝が冷えたのだわ。良かったわね淳、即戦力の仲間が来てくれて」

「那須くんが居なかったら今頃流れ弾で大変な事になってたかもですし……」

 

 美岬の一言で場が凍り付く。那須の超人具合やヤクザとの戦闘が思考に焼き付いていたが、その始まりは麻沙音が救われたところから始まるのである。当事者である麻沙音は改めてあの時の頬を撫でた、死神の鎌が如く流れ弾の事を思い出して身震いし始めた。あの時の位置からして那須に抱き寄せられていなければ顔に着弾していたに違いなかった。

 

 誰もが那須を見た。一騎当千染みた芸当に加え、流れ弾を察知するような第六感。唯一ヤクザたちに恐れる事無く、人の手首を切り捨てられる強過ぎるメンタル。何処からか出した非科学的なブレードをこの島で持ち運べているその事実が、那須という少年の異常さを物語っていた。

 

「……なぁ、那須君。君は……」

「橘先輩。正直手遅れかもしれないですが、今なら選択肢があります。秘密を守るために命を賭けるか、命を守るために秘密を聞かないか、です。ボクは先輩たちの意向に従いましょう。それぐらいの義理はありますから」

「……対魔忍だから、ですか?」

 

 その単語を聞いた那須は信じられないという表情を浮かべた。言葉を発した先はネットカルチャーに通じたプログラムの申し子たる麻沙音であった。ソースコードを自在に書き綴って作られたプログラムを幾つもネットの海に放流している。人の口に戸は立てられぬとは言ったもので、その存在を軽口に乗せて話す者も確かに居てしまうのだ。

 

 それが即座に火消し部隊によって消されていると言えども、ネットの海には波紋が浮かんでしまう。その波紋の一つをオナニー用のエロ収集プログラムの一つが拾い上げてしまったのであった。闇の住人たちが下卑た歓声を上げるカオス・アリーナと呼ばれる東京の地下で行われていたその映像が個人の手で残ってしまっていた。

 

 そしてそれは何でもありの残虐ファイトの末路、女性ファイターが無残にも犯されていくものであった。そう、麻沙音の性癖の一つである、可哀想なのじゃないと抜けないに引っかかってしまった映像であった。

 

「……はぁ。そうだ、ボクは対魔忍の一人だよ。この島には潜入任務として来てる」

「な、那須君?」

「NLNSに入ったのはそのため、なんですか?」

「いいや、違うと言っても信じてもらえないかもしれないけどね。大体、潜入任務なのに地元のチームに入るだなんてメリットないからね」

「確かにそうだな? 忍者さんなら忍ばないといけないもんな」

「……ボクは性行為に対してトラウマを持ってる。だから、この島に居るのなら、それを回避できるなら、このチームに入っても良いかなと思ったんだよ」

「信じて良いんですね?」

「……ボクみたいな奴の言葉を信じてくれるなら、ね」

 

 真剣な表情で問い掛ける麻沙音に真摯な態度で返していた那須は、最後の問いに視線を逸らして答えた。自分自身に対する自傷めいた言葉に、性行為のトラウマとは別の何かがあるように感じられた。麻沙音が同性を愛するコンプレックスを持っているように、彼もまた、誰かに非難されたコンプレックスを抱えているのだろう。その壊れてしまいそうな雰囲気に後ろめたさを感じた麻沙音は続く言葉を紡ぐ事はできなかった。それを見た那須は寂しげな表情で口を開く。

 

「今後顔を見せるなって言うなら――」

「――俺は処女厨でインポだ」

「……兄?」

 

 話をぶった切るように真顔で言った淳之介に視線が集まる。それは奈々瀬たちには見慣れた顔だった。突拍子の無い、自身の芯を貫くための行動をする時の格好良い顔だった。突然のカミングアウトに那須は唖然として言葉を止めてしまう。

 

「イカれたメンバーを紹介するぜ! 外見がギャルだったから誤解されているが実は普通な片桐奈々瀬! 見た目がロリにしか見えないが年上の渡会ヒナミ! 影が薄くてお腹の体型を死ぬ程気にしてる畔美岬! 女の子が好きというアイデンティティを持ってるアサちゃん!」

「おいこら淳」

「ロリじゃないんですけど!」

「な、何で暴露されたんですか!?」

「……えっ、なんで全員の秘密のカミングアウト? ま、まさか兄……」

「それだけじゃないんだろ? 対魔忍だからだなんて関係無い。こいつらは、それでもしっかりと受け止めて君を見てくれる最高の仲間たちだ! 俺が保証しよう!!」

「橘先輩……。随分と無理矢理で熱血なノリなんですね……」

「はっはっは! そうでもなきゃこんなチームのリーダーをやってないからな!」

 

 無理矢理にでも場を明るくしようと虚勢染みた空元気を見せた淳之介に那須は微笑を浮かべる。分かる者には分かってしまう。同じように秘密を晒す事で君もまた同じチームの仲間なのだと励ましている事を。こんなにどうしようもない自分を信じようとしてくれているのだと、那須は心を打たれる想いで目尻から涙を零した。同情ではなく、誰かのために思い遣る暖かな言葉だからこそ胸に響いたのだった。

 

「実は此処だけの話なのですが、ボク、先天的なふたなりって奴なんですよ」

 

 突然の涙に驚いた一同であったが、続く晴天のような笑顔に射止められてしまった。




此処だけの話、ぬきたし本編みたく通常とグランドみたいな√画策してます。

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