鬼は鬼殺隊のスネをかじる   作:悪魔さん

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刀鍛冶の里編、来年の四月かよォォォォォ!!!

……失礼しました、つい荒ぶっちゃいました。楽しみですね。
そう言えば、お奉行様の声優も気になる。山路さんとかアリかも。

一応、今年最後の投稿になるかもしれません。


第三十九話 今の内に生前葬を済ましとけ。

 上弦の伍が討たれ、残る敵は上弦の肆のみ。

 新戸の策略に引っかかった半天狗は、必死に抵抗し、炭治郎達と一進一退の攻防を繰り広げていた。

(小賢しいマネを!)

 半天狗は(せき)()()(らく)(うろ)()(あい)(ぜつ)の四体に分裂し、鬼殺隊を攻撃するが、息の合った連携に四苦八苦していた。

 積怒が錫杖を鳴らして強烈な雷撃を放つと、獪岳が黒い雷を放って相殺し、その隙に宇髄が善逸を連れて斬りかかる。非常に冷静な判断力の持ち主である積怒は、的確に躱すが反撃も難しく苛立ちを隠せない。

 可楽が団扇で突風を起こすと、玄弥が新戸と同じ血鬼術を発現させて食い止め、禰豆子と伊之助が攻撃を仕掛ける。突風を起こす度に玄弥が剣圧――新戸より威力は遥かに低いが――で受け止めてしまうため、その間隙を縫う二人をまとめて吹き飛ばすことができず、決定打に欠けてしまう。

 空喜が飛行能力を活かして制空権を得るが、堕姫が無数の帯を伸ばして追撃し、その帯を足場に甘露寺が肉迫する。口から強烈な音波を放つ空喜だが、実体の無い物でも斬り裂ける〝参ノ型 恋猫しぐれ〟で翻弄され、帯の不意打ちもあって自慢の爪も肉体はおろか隊服にすら届かずにいる。

 哀絶は卓越した槍術で炭治郎と無一郎を狙うが、水の呼吸とヒノカミ神楽を合わせた炭治郎の斬撃と的確な足捌きで仕掛ける無一郎の必殺の一刀に、他の三体と同様に戦況が膠着している。

 それはすなわち――

(どうやら優れた戦術家がいるようだな……!)

 半天狗の持久戦特化の戦法が、封殺に近い形で対策を練られている。

 もっとも、本体を探し出して倒さない限り、どれだけ分身体を攻撃しようと全て無駄な徒労なため、優勢なのは半天狗ではある。

 が、それでも不安要素はある。

(あの御方が嫌う鬼と、妓夫太郎はどこにいる?)

 一番厄介な存在、新戸と妓夫太郎を見かけない。

 怖気づいたということは、まずない。新戸は一見はふざけてるが鬼殺隊随一の戦略家だとして無惨から警戒されてるし、妓夫太郎も妹を置いて撤退するなど天地がひっくり返ってもありえない。そう考えると、必然的に二人は別行動していることになる。

「……まさか!」

 司令塔の役割を担う積怒は、新戸の狙いを悟って血の気が引いた。

 凶悪無比な分身体を次々と生む半天狗だが、その本体は野ネズミと大差ない大きさで、戦線から離れたところで隠れている。見つかった場合は戦おうともせずに逃走し、窮地に追い込まれれば即席の分身体を作るので、攻略における厄介さは上弦随一と言って過言ではない。

 だが、それは新戸も同様。戦術家としての才覚を持つ彼が、一時しのぎの小賢しい仕掛けを見破れないわけがない。むしろ彼の場合、相手の奸計を先読みして罠を張る芸当にまで至っている。

 新戸は妓夫太郎と共に本体を捜索している可能性が高い……いや、それが真の狙いなのだろう――積怒はそう結論づけ、両手を掲げた。

 その瞬間、可楽と空喜が掌に引き寄せられ、肉が捻り潰されるように吸収された。積怒はすかさず哀絶も吸収し、肉体を変化させた。

「吸収した!?」

「分裂だけじゃねェのかよ!?」

 鬼殺隊が驚愕する中、積怒は新たな姿に変化した。

 背中に「憎」の文字が書かれた五つの太鼓を背負った、雷神を彷彿させる姿――(ぞう)(はく)(てん)だ。

「不快、不愉快、極まれり、極悪人共めが」

 

 ズンッ!

 

 憎珀天の凄まじい威圧感に、柱達は息を呑み、炭治郎達は心臓に痛みを覚えた。

 半天狗の最強の分身体は、歴戦の鬼狩り達をすくみ上がらせるには十分だ。

 ただ、それを待ち望み笑う者もいたのは、彼自身知る由も無かった。

 

 

(王手だ!!)

 新戸は離れた場所で、獪岳の視界を介して戦況を把握していた。

 そして、憎珀天が誕生した瞬間に()()()()()()()()()

 ――この時を待っていた!!

〈聞こえるか、獪岳!〉

〈師範!?〉

〈お前らは気づいてるかわからねェが、今のジジイは〝切り札〟だ! 相当強いだろうが、その分お前らが追い込んでる証拠だ。とはいえ、そいつも分身体に過ぎねェだろう。だから()()()()()()()()()()()!!〉

 新戸の奇策に、獪岳は虚を衝かれるが、すぐさま了承して念話を切った。

 師範の意図を、弟子は瞬時に理解したのだ。そのことに新戸はニンマリと満足げに笑うと、口に咥えていた煙草を立て、風向きを確認する。

 風は風上――紫煙は西から東へと流れている。今から使用する〝兵器〟の有効性を最大に発揮する条件を満たしていた。

「さて……天も俺達の味方をしてくれたぞ」

「旦那、一体何しでかす気だぁぁ?」

「ケヒヒッ……まあ見てりゃあわかるさ。せいぜい、いい実験台になってくれよ? クソジジイ」

 

 

           *

 

 

 憎珀天と鬼殺隊の全面対決は、苛烈を極めていた。

 憎珀天は樹木の竜・石竜子(トカゲ)を五本召喚する血鬼術「()(けん)(ごう)(じゅ)」で、竜の口から音波と雷撃を放って嵐のように攻撃。堕姫と獪岳と玄弥で対応し、禰豆子が爆血で焼きながら、炭治郎達は命懸けで戦う。

 だが、あくまでも頸は狙わず、本来人喰い鬼との戦いでは悪手である「消耗戦」に持ち込んでいる。消耗させて分身体と本体の弱体化を目的としているからだ。

「何という極悪非道……! これはもう、鬼畜の所業だ……!!」

「ハッ! それは褒め言葉だな!!」

 獪岳は黒い雷を飛ばし、石竜子に浴びせてひび割れを起こす。

 脆くなった巨木は簡単に斬り裂くことができ、炭治郎達は凄まじい剣幕で攻撃を続ける。

 最強の分身である憎珀天を相手に、一進一退の攻防を繰り広げている――そんな予想外の展開を、物陰から伺う半天狗は、人を喰って回復せねばと動こうとした。

 その時!

「――ギャアアッ!! な、何じゃこれは!?」

 突如、言葉には言い表せない臭気が襲い掛かり、半天狗は凄まじい吐き気と眩暈に苦しみ始めた。

 どうやら、西側から臭気が流れているようだ。その影響は憎珀天も受けており、見るからに気持ち悪そうだ。なぜか鬼狩り達も顔色が悪く見えるが。

 この地獄のような臭気から逃れるには、東へ逃げるのが一番だ。北と南は臭気が残っているが、東は唯一汚染されていない。だが、太陽は東から昇り西へ沈むもの。臭気から逃れるには、太陽へ向かわねばならない。

 そう考えていると、ある答えに辿り着いた。

(ま、まさか……!! あ、あの小僧……最初からこのつもりだったのか!?)

 半天狗は震え上がった。

 これはあの小守新戸の策略だと、ようやく気づいたのだ。

 

 新戸の最大の武器は、鬼の始祖と同じ異能でも、血鬼術でもない。人間時代から変わらない明晰な頭脳と狡猾さを軸とした戦略家の一面である。

 確かに、知識が豊富であったり頭の回転が速い鬼はいる。だが新戸は、それらとは一線を画していた。知識と頭の回転の速さを昇華させ、最小限の被害で敵を確実に殲滅することができる、災厄とはまた違った脅威。

 むしろ優れた知性を持っている分、そこらの災厄より質が悪い。

 

 ――ハメられた。

 そう気づいた時には、最悪の男が戦場に現れていた。

「〝爆血刀・炎虎〟!!」

「ギャアアアアアアアッ!!」

 轟音と共に爆血の炎を纏った斬撃が、石竜子を焼き尽くし、憎珀天を火達磨にした。

 新戸だ。鬼殺隊最凶が、半天狗を詰ませるために推参したのだ。

「新戸さん……!!」

「よくやった。もうこれで王手だ」

「それより、何で師範は平気なんですかこの臭い……!?」

「フグが自分の毒で死なないのと同じ理屈だぞ、玄弥。……さて……」

 新戸は紫煙を燻らせながら、臭気に悶える半天狗を見やった。

「また会ったな、老いぼれ。随分と小さいな、度量の狭さに比例してんのか?」

「ヒッ……!」

 凶悪な笑みを浮かべる新戸に、半天狗は縮みあがった。

「極悪人めが……儂を甚振って何がいいというのだ!!」

「いやいや、俺は感謝してるぜ? あのワカメを最小限の被害でボコボコにする方法を模索してたからな、いい実験台になった。この兵器の有効性もわかった以上、残るはあんたの頸だ」

 愉快そうに笑う新戸は、上弦の首は前座に過ぎないと吐き捨てた。

 この戦闘は全て、新戸の手の内にあったのだ。そして今、最後の仕上げである半天狗の頸に狙いを定めた。

「ヒッ……ヒイィィィィィィィィィィ!!!」

 半天狗は、とてつもない速さで逃げた。

 この里そのものが、新戸が仕掛けた巨大な罠。誘われた全ての鬼の命を根こそぎ奪う仕掛け網。

 そこから逃げるには、日の出の前に脱出する以外にない。あの悪魔のような策略家の前には、最強の分身体を捨てて逃げに徹するしかなかった。

「逃げるつもりよ!」

「あの野郎!」

「まあ、そう焦るな。無駄に体力を消耗すれば、それこそ奴の思うつぼだ」

 疲弊した身体に鞭を打つ一同を制止する新戸は、無造作に手を突き出す。

 すると掌からギョロッと目玉が出てきて、瞬きをした。

 その直後、半天狗の体を赤い矢印が貫いた。

「な……!?」

「フヒヒヒ……大人しく頸を刎ねられれば痛い目に遭わずに済んだものを。さすが上弦の鬼だと褒めてやりたいところだ」

 刹那、半天狗の身体が一気に新戸達の元へと引き寄せられた。

 矢琶羽から奪った〝紅潔の矢〟だ。あらゆる物体の力の方向を自在に操る矢を放ち、逃げられないようにしたのだ。

「正直な話、ジジイの頸は俺一人でも事足りた。でも俺は戦略家なもんでね、出張るより後ろであれこれ指示する方が好きなんだ……っと、そうそう、これは貰うぜ爺さん」

 新戸は紅潔の矢を発動させたまま、火達磨の状態で転げ回る憎珀天を抱き寄せ、そのまま彼の全身の骨を折り砕いた。かと思えば、憎珀天の肉体は新戸の肉体に沈み込んでいくではないか。

 憎珀天を吸収するズボラ鬼に、半天狗の恐怖心は最高潮に上り詰めようとしていた。

「さてと、ちょ~っと最期に実験に付き合ってもらうぜ」

 新戸がゴキゴキと首を鳴らした、次の瞬間!

 

 ――〝狂圧鳴波(きょうあつめいは)〟!!

 

「ひぎゃああああああああっ!!」

 凄まじい断末魔の叫びと共に、新戸の口から発せられた音波攻撃を食らって身動きが取れなくなる半天狗。

 新戸の肉体は無惨のような体質に変化しており、取り込んだ鬼の血鬼術を奪い操ることができる。以前に珠世が「新戸は無惨と同じ能力が開花し始めている」と語っていたが、すでにその能力は完全に覚醒しており、実質第二の無惨となっている。

 その様を見せつけられ、半天狗も鬼殺隊も呆然としている。

「フゥ……使い勝手はいいが、威力の制御が難しいな。帰ったら鍛えるか」

「おいおい、反則だろそりゃ……」

 新戸のデタラメな能力を目の当たりにした宇髄は、こいつが味方で本当に良かったと顔を引き攣らせた。

 頭は切れるし能力も凶悪すぎるチャランポランとは、これいかに。

「そういう訳だ、目を通じて見てんだろ? ワカメ頭」

 新戸はそう言いながら、半天狗と目を合わせた。

 まるで、視線の先にいる存在に言い聞かせるように、極悪人のような笑みを浮かべて口を開いた。

「そろそろ〝お迎え〟の時間だ、今の内に生前葬を済ましとけ。どこへ隠れても無駄だ」

 新戸は脅し文句を告げると、仕込み杖で半天狗の頸を斬りつけた。

 が、刃は頸の半分あたりまでで止まってしまった。

「……ちっ、締まらねェなァ。獪岳、玄弥、峰押して手伝って」

「「はい」」

 新戸は弟子二名を呼び、じわじわと半天狗の頸に刃を喰い込んでいく。

 頸の硬さが災いし、余計な苦痛を味わうハメになった半天狗は悲鳴を上げた。

「わ、儂は何もしておらんではないかァァ!! なぜこうも痛めつける!? この卑劣漢共めがァァァァ!!」

「ハァ? 何もしてなくても鬼はとりあえず斬るのが普通だろうが」

「鬼狩りはどこまで行っても鬼狩りなんだよ、クソジジイ。とっととくたばれ」

「地獄に行ったら閻魔に、小守新戸がよろしく言ってたと伝えてくれ」

 半天狗の哀れな姿を三人で共同作業し、ついにその頸を斬り落とし、半天狗は涙を流しながら消滅した。

 長く人々を貪った卑しい上弦の肆と伍は、新戸率いる鬼殺隊と鬼の連合軍の前に完敗を喫したのだ。

「や、やったぁーーー! 勝ったよおおおおお!」

「生きてるよおおおおおん!」

 上弦二体の襲来という、鬼殺隊の歴史上屈指の危機を乗り切ったことに、甘露寺と善逸は号泣。炭治郎達も思わず抱き合い、宇髄も感極まった表情で口角を上げた。

 が、新戸はまだ喜んでない。ここからが正念場なのだ。

(ついにここまで来た。あとは残った怪物達をどうするかだな。童磨もそろそろ動いてもらわねェとな)

 前代未聞の共同戦線の戦果は、鬼殺隊の士気を飛躍的に高めることとなるのだった。

 

 ――鬼殺隊が倒すべき鬼、残り五体。




【ダメ鬼コソコソ噂話】
宇髄の嫁達は、実は一足早く里を離脱してます。
守るべき対象第一が嫁である宇髄の判断です。

あと無惨様、前回の鳥島の件が気になって栄次郎を派遣してます。
無人島だと知らずに何やってんでしょうねー。
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