鬼は鬼殺隊のスネをかじる   作:悪魔さん

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そろそろ刀鍛冶ですね!

一応ですけど、念話は〈〉で表記します。


第四十四話 全裸で飛びついてくんじゃねェよ。

 闇夜を切り裂かんばかりの大爆発。

 狼煙を上げた新戸は、堕姫の帯の上でのんびり見物していた。

「あっつ!」

「あっついわね! ちょっと新戸、爆風こっちまで来たんだけど!?」

「あちちち! (わり)(わり)ィ、火薬の分量間違えた!」

 アハハと笑い飛ばす新戸に、鬼の兄妹はカチンと来そうだった。

 先程の爆発は、宇髄特製の爆薬を使用したのだが、テキトーに調節したせいで想像以上の破壊をもたらしてしまったようだ。

「まあ、これであのバカも再生に手間取るだろうよ。……ほら、出てきたぞ」

「「!」」

 爆炎の中から、肉塊一歩手前の無惨が吹っ飛んできた。

 剥き出しになった目がギョロリと動き、新戸達を捉えると、無惨は怒り狂った。

「貴様らァァァ!!」

 

 ――〝血鬼術 黒血枳棘(こっけつききょく)〟!!

 

 身体を再生させながら、無惨は伸ばした腕から黒い棘だらけの触手を生やして振るった。

「おいおい、全裸で飛びついてくんじゃねェよ」

 新戸は抜刀した仕込み杖から〝積怒雷〟を射出。

 無惨を感電させ、瞬間的に動きを鈍らせたが、当の本人はほとんどダメージを受けてない。

「これで私を仕留める気でいるなど、片腹痛いわ!! 私が血鬼術を吸収できることを忘れたか!?」

「お前こそ、余所見していていいのかい?」

「何だと?」

 

 ズッ!

 

「!?」

 直後、誰かの腕が無惨の腹へと突き刺さる。

 新戸と妓夫太郎、堕姫は手を出してない。とすれば、新手が無惨に攻撃をしてきたのだ。

 何者なのかと見下ろすと、そこには珠世の姿があった。

「珠世!!」

「おいおい珠世さん、注射ってのは注射器を使うもんじゃねェか?」

「この男には腕ぐらい太くないと私の気が済まないんですよ!」

 茶化す新戸に、珠世は晴れ晴れとした笑顔で返事をした。

「無惨、私の拳を吸収しましたね! 拳の中に何が入っていたと思いますか? 鬼を人間に戻す薬ですよ!!」

「バカな、そんなものできるはずが――」

「できなかったら言わねェっての。ねェ、珠世さん」

「ええ!! 状況が変わったんですよ!! お前をも超えた存在となった新戸さんのおかげで!!」

 無惨は珠世の自信に満ちた表情や新戸の悪い笑みから、ハッタリではなく真実と判断し、体内に打ち込まれた〝鬼を人間に戻す薬〟を分解すべく、珠世を引き離そうとする。

 だが、そこに堕姫の帯が襲い掛かって妨害を始めた。

「堕姫……!!」

「気安く呼ばないでくれない? この()()()()()

「貴様っ……!!」

「ダーッハッハッハ! 梅ちゃんに愛想尽かされてやがんの!」

 無惨を見下した発言をかました堕姫に、新戸はゲラゲラと笑った。

 その直後、分厚い手斧と大きな棘鉄球を持った巨漢が念仏を唱えながら無惨の頭を砕いた。新戸の指示で待機していた岩柱・悲鳴嶼だ。

「おお、ピッタシ登場!」

「新戸、お館様は!?」

「おいおい、そいつァもうわかり切った答えだろ?」

 飄々と語る新戸に、悲鳴嶼は何とも言い難い表情を浮かべる。

 その間にも、無惨は肉体を修復させて元通りになる。

「しっかし随分と人気者だな。お前の葬式の参列者、こんなに来てくれたぞ。香典代わりに心を込めた斬撃を受け取りな」

 その言葉と共に、怒りに満ちた表情で炭治郎達が斬りかかった。

 同時に帯の上で待機していた妓夫太郎も動き出し、斬撃を飛ばした。

「――これで私を追い詰めたつもりか?」

 

 ベンッ

 

 無惨が不敵に笑った途端、琵琶の音が鳴った。

 それと共に足下に障子が現れ、無惨も含めて全員が落ちた。

「貴様らがこれから行くのは地獄だ! 目障りな鬼狩り共。今宵、皆殺しにしてやろう!」

 高笑いする無惨を睨みながら落ちていく炭治郎達。

 すると新戸は帯から飛び降り、無惨の根城――無限城へと突入する。

(バカが、()()()()()()()()()()()()()

 自分に釣られ集まってきた鬼殺隊を嘲笑う無惨に対し、新戸はその無惨を嘲笑いながら落ちていった。

 

 

           *

 

 

 無限城に突入した新戸は、〝紅潔の矢〟を駆使して着地。

 上下左右の入り組んだ階段や廊下が縦横無尽に連なる異空間を見上げてから、懐に仕舞った懐中時計を取り出す。

 夜明けまではまだ遠い。それまでに兵力をどこまで減らさずにいられるかが、この戦いの鍵となる。

(さて、どうすっかね)

 煙草を取り出して咥え、火を点けた時だった。

「「師範!!」」

「おう、無事だったか」

 新戸の弟子である獪岳と玄弥が馳せ参じた。

 二人共、白目と黒目が反転しており、鬼化して臨戦態勢になっている。新戸の血を大目に取り込んだ二人に飢餓感はないように見えるが、念の為にと煙草を渡す。

「「「フゥー……」」」

 三人で仲良く紫煙を燻らせる。

 新戸の血を取り込んだ者は、煙草と酒で体力の回復ができる。すでに煙草の味に慣れた二人は、純粋な鬼狩りの剣士ではないため、肺が毒されることはないのだ。

「……師範、あの……さっきの爆発って」

「ああ、産屋敷邸が吹っ飛んだの見えたのか」

 新戸は「誰もいないから特別に先に伝える」と前置きし、二人にとんでもない秘密を打ち明けた。

「これはごく一部の面子にしか伝えてないが……耀哉(アイツ)とあまねさんはピンピンしてるぞ」

 さらっと口に出た言葉に、二人は唖然とした。

 ――あの大爆発で生きている!?

「あのアホ、どうしてもワカメ頭に一矢報いたって駄々捏ねてな。自爆って形で囮役を申し出たんだ」

「そうなんですか?」

「ああ。だがそれじゃあ、炭治郎達の心がへし折れた時の対応ができねェ。そこで俺は、梅ちゃんに分身で二人を回収するように頼んどいたんだ。取り込んだ人間を保存できる帯は、日輪刀以外では傷一つつかないという利点がある」

 つまり新戸は、堕姫に彼女が操る分身に産屋敷夫妻を取り込んで撤収するよう、事前に手を回していたのだ。

 まさか堕姫の帯に鬼狩りの総大将が避難しているなど、誰も思わない。新戸じゃなければ思いつかない、奇策の中の奇策だ。

「ってことは、他の連中は……」

「ああ、あの夫妻は爆死したと思い込んでるだろうよ。あの爆発に巻き込まれてると、敵味方問わず誰もが考えてるはずだ」

 それが狙いなんだけどな、と新戸は笑った。

 知力も駆使して敵を追い詰め、さらに万が一の事態にも備えるのが新戸のやり方だ。

「さて……ちょっと状況整理と行こうかね」

「「?」」

「念を飛ばす。お前らは反応しなくていいぞ」

 新戸は煙草を吹かしながら念を飛ばす。

 すると早速、あの兄妹から返事が来た。

〈聞こえるぜ旦那ぁぁ……梅と猪頭と一緒だぜぇぇ〉

〈今、雑魚共を蹴散らしてるわ。下弦より弱いんじゃない?〉

(いいぞ、予想通りだ。短期決戦という選択肢は連中には絶対ねェからな)

 二人の言葉から、無惨が上弦を筆頭とした城内の鬼達をぶつけさせ、鬼殺隊を一網打尽にする算段だと新戸は見抜いた。

 だが、今の鬼殺隊は「無惨から離反した鬼との共闘」という前代未聞の戦術を実行中。しかも妓夫太郎と堕姫の元上弦の陸に加え、現役の上弦にして凶悪な血鬼術を使う童磨まで寝返っているのだ。災厄そのものといえる上弦を相手取れば、即席強化の鬼など一捻りだろう。

 すると、今度は童磨からの念話が来た。

〈新戸殿! こちら童磨! 今、美味しそうなしのぶちゃんとカナヲちゃんと合流したよ!〉

〈お前この期に及んでやめろよ。冗談に聞こえねェから〉

 洒落にならない冗句を口にする童磨に、新戸はキレそうになった。

〈……で、ワカメはお前に何か言ったか?〉

〈それが全然言ってくれないんだよ~〉

〈どこに誰が待機してるのかがわからねェな……愈史郎に訊いてみるか〉

 ここへ来て無惨達から嫌われている状態の弊害が来てしまい、今度は愈史郎に念を飛ばした。

 愈史郎は汎用性が極めて高い呪符を駆使するため、無惨討伐の要となる存在だ。はっきり言って、無惨を弱体化させる薬を作った珠世以上に死守せねばならない人材なのである。

〈愈史郎、聞こえるか〉

〈ああ。今、鎹鴉に貼った呪符を介して戦況把握をしている。一度しか伝えないからよく聞け〉

 愈史郎は現在の状況を簡潔に説明した。

 

 上弦の参・猗窩座は炭治郎、義勇、杏寿郎と交戦。

 上弦の壱・黒死牟は悲鳴嶼、宇髄、実弥、無一郎と交戦。

 上弦の肆・鳴女は伊黒、甘露寺、善逸と交戦。

 

(童磨はしのぶとカナヲ、上弦兄妹は伊之助と行動中か。やはり鳴女を優先するべきだな)

 新戸は()()()()()を最優先事項とし、愈史郎に指示を送ろうとした。

 その時、か細い女性の声が頭の中に響いた。

〈……さん……新戸さん……〉

(珠世さん!?)

 何と、無惨と共に落ちた珠世の声が届いた。

 新戸はすかさず珠世との念話に集中する。

〈新戸さん……今、私は無惨に取り込まれてます……〉

 珠世は途切れ途切れに情報を伝える。

 無惨は投与された人間に戻る薬を分解するため、繭のようなモノの中に籠っているという。どうにか抑え込んでいる状態だが、その内部に取り込まれつつあり、自分も吸収されるのも時間の問題とのことだ。

 それを聞いた新戸は、事前に教えられた薬の情報を思い出す。

(確かあの薬、俺の血と禰豆子の血を元にしてたよな? 分裂阻害と細胞破壊、老化促進だったか?)

 仮に四種類の薬を全部分解できても、いかに鬼の首魁とて相当体力を消耗するだろう。

 そうなると、柱と炭治郎達以外は近づけないようにするのが一番だ。下手にぶつけさせて喰われれば、その努力が水泡に帰すからだ。

〈……珠世さん、もし余裕があったら定期的に俺に念話してくれねェか? こっちも臨機応変に策を打ち出す。幸い、柱は誰一人として欠けてねェ。俺の計画通りに攻略が進めば、救助に行けるはずだ〉

〈……お願いします……もしもの時は……必ず、夫と子の仇を……!〉

〈そういうあんたこそ諦めないでくれよ? 愈史郎うるせェから〉

 珠世との念話を切ると、新戸は童磨に念を飛ばした。

〈童磨、少し早めに種明かしだ。しのぶ達とすぐにどっかの助太刀をしてくれ〉

〈新戸殿、いいのかい?〉

〈珠世さんからの念話で、無惨は解毒に手間取ってるらしい。今の内に上弦を全て殺し、なるべく兵力を揃えときたい。出し惜しみしないで全力で潰せ。手段は任せる〉

〈りょうか~い〉

 童磨との念話を終えると、新戸は弟子達に向き直った。

 二人は煙草を吹かしつつも、顔を強張らせている。

 新戸は「耳の穴かっぽじってよく聞け」と前置きし、次の動きを伝えた。

「今からお前らは、俺と一緒に敵戦力を削りながら無惨のところへ向かう。俺と戦うとなれば、奴もすぐには動けねェだろう」

「一番憎まれてると同時に一番警戒されてますもんね」

「よくわかってんじゃねェか。……だが、その前にやらなきゃなんねェことがある」

 その言葉に、二人は首を傾げた。

 新戸はゆっくりと背後を振り向くと、襖の向こうへ声を投げ掛けた。

 襖はゆっくりと開き、そこから漏れ出る禍々しい気配に、玄弥は青褪め獪岳は息を呑んだ。

「神様ってのァ残酷だが、時々粋なことをする……そうだろ? 栄次郎」

 現れたのは、新戸と決して相容れない存在――栄次郎だった。

「もう許さねェ……簡単には死なせねェぞ、新戸!!」

「おーおー、お怒りだねェ」

 荒ぶる栄次郎に対し、新戸は至って冷静。

 お互い、今は鬼なのにまるっきり正反対の状態だ。

「何か言いたげだな。忙しいからすぐ済ませてくんねェか?」

「ああ、言ってやるよ!! てめェ、あの方を騙しやがったな!! あんな無人島に産屋敷の拠点があるとかほざきやがって……!!」 

 栄次郎の言葉の意味を察した新戸は、涙目で爆笑した。

「ダーッハッハッハッハッハッ!! こいつァ傑作だ、あんな真っ赤なウソをマジで信じてやんの!! 連中の間抜け面が目に浮かぶぜ!!」

 ゲラゲラと腹を抱えて笑う新戸。

 刀鍛冶の里にて、半天狗についたウソを無惨達は真に受けたようだ。しかも口ぶりからして、無人島に派遣されたのは栄次郎らしい。

 無惨のことなので、何の成果も得られなかった栄次郎を八つ当たり気味で制裁しただろう。

「どこまでもコケにしやがって……!!」

 栄次郎は風の呼吸で斬りかかるが、獪岳が黒い雷を纏った斬撃を繰り出したことで、寸でのところで回避した。

 彼の血鬼術の効果の凄まじさを知る分、迂闊に手を出すと思わぬ反撃を食らうと判断したようだ。

「……そんじゃあ、三分ぐらいで因縁に終止符を打つとしようや」

「そこは男らしく一騎打ちじゃねェのかよ!」

「いつも言ってたろ? 俺ァ話し合いは一対一(サシ)でやっても、殺し合いは一対一(サシ)でやらねェって」

 新戸と栄次郎の、長年に渡る因縁の終止符から決戦は始まったのだった。




念話もこうやって使えばよかったのに。
無惨様は宝の持ち腐れですなァ。(笑)


そう言えば最近、人工太陽光照明とかいう自然太陽光と同じ光を発する照明灯が売られてるそうですね。
あの世の無惨達が、もし人工太陽光照明が開発されたこと知ったらどうなるんでしょうね。色んな意味で鬼の尊厳破壊ですよね。
まあ、新戸だったら迷わず買うでしょうけど。
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