鬼は鬼殺隊のスネをかじる   作:悪魔さん

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縁壱零式、普通にぜんまい式で動くんだ……。

今回はある意味ドリームマッチです。

この話では、呪符を用いた会話は《》で表記します。


第四十六話 何か宿ってんかね、あの人形。

 栄次郎を撃破した新戸一行は、無限城内で妓夫太郎と堕姫に遭遇した。

「へえ、あいつ死んだのね」

「まあ、その程度の腕っぷしだったってことだなぁぁ」

「少し危なかったがな」

 煙草いる? と新戸は箱を差し出すと、二人は無言で取り出し、火をつけて一服。

 紫煙を燻らせる。

「あの、師範……見せてよかったんですか?」

「ああ、あれか? いいんだ、あれは()()()()()()()()。〝ヒノカミ・ルカ〟の本質を見誤ってもらうためにな……全ての鬼を滅却するとは言ったが、あくまでも()()()()()()()()()()()()()()()()()()って話だ」

 新戸は不敵に笑う。

 彼の新形態である〝ヒノカミ・ルカ〟は、圧倒的な戦闘力を発揮した。それは栄次郎の視界を介して無惨に知られ、残った上弦達に共有されることでもあるが、それこそが新戸の目論見なのだというのだ。

「〝()()()()()を理解できてりゃあ、意味がわかるはずだぜ?」

「……師範、まさか!!!」

「おっ、勘づいたか。それでこそ一番弟子だ、獪岳」

「……確かに、()()()()()バレちゃマズいですね……」

 一同が首を傾げる中、ある可能性に辿り着いた獪岳は顔を青ざめた。

 もし事実なら、戦闘力の飛躍的向上なんかよりも機密にせねばならない。たとえ拷問されようと、頸を刎ねられようと、それこそ吸収されても口を割ってはならない。

「まあ、それはどうだっていい。梅ちゃん、例の人形は?」

「ええ、あるわよ」

 堕姫は帯を動かし、新戸の仕込み杖で斬ってもらう。

 そこからスルリと、腕が六本ある赤みがかった長髪の絡繰人形が現れた。

「師範、これは……?」

「刀鍛冶の連中を挑発して修理させた縁壱零式だ。二体目はまだ完成してなかったが、これだけでも十分だ」

 刀鍛冶の里が保管する、鬼殺隊士の訓練用の絡繰人形すらも戦場に持ち込んだ新戸。

 早速背中のぜんまいを回すと、カタカタ音と共に日輪刀を構えた。

 異音はないので、しっかり起動できているようだ。

「っ……いつ見ても、寒気が止まらないわ……」

「何つーか、近づいちゃいけねえような気がしてなぁぁ……」

「珠世さんの言う通りなら、数百年前に無惨を無残な姿にした剣豪とそっくりだから、記憶が体に染みついてんだろ」

 鳥肌が止まらない上弦兄妹に対し、新戸はご満悦な表情。

 その時、突如首がカクンッ! と右へ向き、その方向目がけて特攻。襖や障子を斬り倒していった。

「おい、どこ行くんだ人形!!」

「な、何が起こったんだぁぁ!?」

「縁壱を追うぞ! 壁にぶつかって壊れたら洒落になんねェ!」

 慌てて縁壱零式を追う新戸達。

 これを皮切りに、無限城での決戦は混沌を極めることとなる。

 

 

 その頃、無限城の深部で、無惨は珠世を取り込み肉の繭となりながら解毒を進めていた。

 そんな中で見た、新戸の新形態に度肝を抜いていた。

(何だ、あの姿は……!?)

 炎を纏ったその姿は、今までの鬼とは明らかに別格。

 禍々しさの対極である、一種の神々しさすら感じ取れるくらいだ。

(〝ヒノカミ・ルカ〟だと……? 神にでも成ったつもりか、異常者め……!!)

 こうなるくらいなら、初めて会ったあの日に全力で殺すべきだった――今更後悔する無惨だが、もう遅いとしか言えない。

 一方の珠世は、ヒノカミ・ルカとなった新戸の姿を視界共有で視て、言葉を失った。

(あの炎は、禰豆子さんと同じ鬼殺しの火……もしかして……!?)

 偶然にも、獪岳と同じある可能性に辿り着いた珠世は、希望を見出した。

 あの形態なら、本当に誰も死なずに無惨を討てるかもしれない。不可能と思われたことを、可能にしてくれるかもしれない。

(……まだ、死ねないわ……私は、まだ……!!)

 かつて殺してしまった家族への愛と後悔、そして新戸への一縷の望みの為、彼らが来るまで足掻いてやる――珠世は己を叱咤するのだった。

 

 

           *

 

 

「……何度来ても……同じことだ……」

「っ……クソがっ!」

 とある部屋で、実弥達は〝上弦の壱〟黒死牟と激闘を繰り広げていたが、本気を出した黒死牟の圧倒的な戦闘力に追い込まれていた。

 柱四名が死力を尽くしても決定打には至らず、余裕も失っていない現状に、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた。

(このままじゃあ全滅しちまう! どうすりゃあいい……!?)

「降伏か……それとも泣き別れか……好きな方を選ぶがいい……」

 三本の枝分かれした刃を持つ大太刀を構え、黒死牟が本気の一撃を繰り出そうとした時だった。

 

 バァン!!

 

 襖を賽の目にぶった斬り、人影が現れた。

 だが、それは人ではなく人形・縁壱零式だった。

「縁壱!?」

 黒死牟は信じられないものでも見たかのように、六つの目を大きく見開いた。

 ――なぜか腕が六本あるが、あの姿は間違いなく……!!

 そう一瞬だけ考えた時には、黒死牟の両腕は斬り落とされていた。

「なっ……!?」

 カタカタ音を鳴らしながら、六本の日輪刀を振るって斬りかかる縁壱零式。

 黒死牟の顔は、嫉妬や困惑、憤怒といった感情が入り乱れた表情となっている。

「え……あれって……」

「何だありゃあ!? 化け物かァ!?」

「一体、何が……!?」

 無一郎と実弥、悲鳴嶼は呆然とし、宇髄も口をあんぐりと開けている。

 そこへ、新戸達が殴り込んで合流した。

「!? 宇髄達か、死んじゃいなかったようだな」

「んなことより新戸、何だありゃあ!?」

「刀鍛冶の里の連中を煽って修理させた、訓練用絡繰人形の縁壱零式だ。見ての通り暴走している」

「「「「暴走!?」」」」

 新戸の説明に、無一郎達は驚愕。

 隊士の訓練用として使われていた絡繰人形が戦力として数えられているどころか、それが暴走して上弦の壱と互角に渡り合っているのだ。俄かに信じがたい。

「ウソだろ、俺達全員でも余裕だったってのに」

「何か……凄く戸惑いが隠せてないんだけど」

「何か宿ってんかね、あの人形。まさかの付喪神か?」

 その時、縁壱零式の動きが鈍くなった。

 ぜんまいを巻く必要があると察し、新戸はすぐさま黒死牟に斬撃を飛ばした。黒死牟は軽くないで相殺すると、意識が逸れた一瞬の隙に回収した。

 新戸は背中のぜんまいを巻くと、着物に呪符を張って退避。黒い柱の後ろに隠れ、先程張った呪符を己の額にも張った。

《兄上……》

 斬りかかる絡繰人形から発した声に、一同がハッとなった。

 ――あの人形、喋るのか!? それとも何か宿ってるのか!?

 呪符を使ってることを知らない柱達と黒死牟は絶句するが、新戸がただ呪符で声を当てているだけという小細工を知っている上弦兄妹と獪岳は今にも吹き出しそうで、玄弥は顔を引き攣らせた。

(こんな感じか……?)

 ゴニョゴニョと、珠世から聞いた感じの声色を意識しながら声を当てる新戸。

《お労しや、兄上……》

「縁壱……!!」

 本当なら全くの別人なのだが、声真似がいい線を行ってるのか、全く黒死牟は気づいていない。

 これはイケると確信した新戸は、極悪人のように笑った。

《お久しゅうございます……()()()()()ため、黄泉より戻ってまいりました……》

「化け物が……!! なぜお前ばかり……!!」

「あいつバカじゃねェの? よく考えればおかしいことに気づくだろ」

 獪岳は思わず声に出してしまった。

 どんだけ余裕ないんだよ、と引き攣った笑みを浮かべてしまう。

《いざ、参る……!》

「縁壱ぃぃぃ!!!」

「……いや、だからおかしいだろっつってんだろ」

 

 

 同時刻。

 猗窩座と戦っていた炭治郎達も、苦戦を強いられていた。

「杏寿郎、義勇、炭治郎……お前達は強い。だが人間である限り、鬼には勝てない。鬼になろう」

 斬り刻まれた肉体を再生させる猗窩座に、義勇は身体を震わせた。

 頸を斬ることはできずとも、消耗はしているはずなのに、限界が全く見えない。

 理不尽じみた再生力は、技量では互角以上でもじわじわと追い込んだ。

「鬼にならないなら、ここで若く強いまま――」

 

 ドォン!

 

 猗窩座が拳を構えた瞬間、襖を蹴破ってくる者が現れた。

 それは、あまりにも想定外の人物だった。

「猗窩座殿ーーー!! 入れ替わりの血戦をしようぜーーー!!」

『!?』

 何と、なぜか鬼殺隊の詰襟を着ている上弦の弐・童磨が殴り込んできた。

 突然の事態に、頭が追い付かないのか唖然とする一同。

「〝(ふゆ)ざれ氷柱(つらら)〟」

 無数の鋭く尖った巨大なつららを生み、炭治郎達に当たらないように落下させる童磨。

 猗窩座はバックステップで退避し、距離を取って睨みつける。

 そのすぐ後に、伊之助達が雪崩れ込んできた。

「おい、糞親父!!! 抜け駆けすんじゃねえ!!!」

「炭治郎、無事!?」

「伊之助!! カナヲ!!」

 同期達が五体満足で駆け付けたことに、炭治郎は顔を明るくした。

 そして、遅れてしのぶも駆け付けた。

「煉獄さんと冨岡さんでしたか」

「胡蝶!!」

「胡蝶、ついに……」 

 戦局が大きく動くことを悟り、杏寿郎と義勇は口角を上げた。

 そう、お待ちかねの童磨の寝返りだ。

「童磨ァ!!! ここへきて謀反かァ!!!」

「ごめんねぇ、猗窩座殿……親友を裏切るのは悲しいが、俺は15年も前から縁を切ってるんだよ……琴葉と伊之助の方が大事なんだ……!!」

(全く悲しんでる匂いがしない……)

 涙を流す童磨だが、悲しんでるどころか若干楽しんでる匂いを感じ取った炭治郎はジト目で見つめるのだった……。

 

 ――〝上弦の弐〟童磨、鬼殺隊氷柱(こおりばしら)として鬼舞辻無惨に反逆。




ちなみに現時点でお館様とあまねさんは別邸に避難し、竈門家と嘴平琴葉、宇髄と煉獄家と共にいます。
護衛は元柱の皆さんと、堕姫の分身と結晶ノ巫女です。

それと童磨が来ている詰襟は、直前に隠の皆さんに縫ってもらって堕姫が帯の中に隠してました。臨時で一日限りの氷柱・嘴平童磨の就任です。


最終決戦は無惨VS.鬼殺隊オールスターを予定しています。
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