ハイっ!こちら営業部『サイラス私設傭兵部隊』課【30mm非公式小説】   作:あきてくと

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第13話 未知との遭遇(からの撤退)

 突如、空から飛来した地球外の産物と思わしき未確認巨大構造物。

 

 その中から現れたエグザマクスによく似た巨大人型兵器の軍団。

 

 彼らが交信する異文化の会話は解読できないが、『バイロン』と『ポルタノヴァ』という単語が散見されるとAI支援機(ロイロイ)のシズクは指摘する。

 

 それを聞いたアメリカ第9海外派遣中隊( ナインズ )のリーダーであるショート・ホープは、持ち前のリーダー性を遺憾なく発揮し、彼らの勢力を『バイロン軍』、黒いエグザマクスを『ポルタノヴァ』と勝手に命名した。

 

 『バイロン』はラテン語で『外から来たもの』を意味する。仮に『バイロン』の呼称が彼らの種族名や軍団名なのであれば、その名称は僕たち地球人からみてもふさわしい呼び名だ。

 

 『ポルタノヴァ』の『ポルタ』はラテン語で『城門』、『ノヴァ』は『新しい』を意味する。もしかしたらスカイフォールは外宇宙もしくは異世界と地球とをつなぐ扉なのかもしれない。もっとも『バイロン』も『ポルタノヴァ』も、彼らの言葉で何を意味しているかは現段階では検討もつかないが。

 

 その黒く禍々しい巨大人型兵器は増えに増え続け、今では50機をゆうに超えている。敵は軍事パレードのように編隊を組んで行進し、黒い壁のようこちらに迫る。そして、彼らは僕らを視認するなり攻撃してきた。

 

 炸薬で撃ち出される実弾に混じって、光線のようなものも放たれる。粒子ビームだろうか。そんなものは兵器として実用不可能な空想の産物だと思っていた。けれどもビームライフルらしきものはどうやら実現可能であるらしい。ただし、防御不可能な粒子ビームは大気による減衰で射程はそれほど長くないのが幸いだった。

 

 あんな訳がわからないものと戦ってなどいられいない。僕とサニー・バニー、シズクとホノカは、ついさっきまで敵として戦っていたアメリカ第9海外派遣中隊( ナインズ )のリーダーであるショート・ホープを臨時の指揮官に据えて撤収作戦を開始した。

 

 逃がさんとばかりに敵編隊のなかから十数機のポルタノヴァが踊り出し、バイロン軍は僕らの追撃に動く。そのなかには速力のある空戦機もいた。それを確認した僕らは牽制射撃を加えながら全速力で逃げ出すしかなかった。

 

 サニー・バニーは無限軌道式の脚部を逆転させ、後退しながら後方にガトリングガンの段幕を張って追撃隊の進路を阻む。空戦機に搭乗するショート・ホープは空中を飛びまわりながら両腕のライフルを放ち、敵空戦機と編隊を攪乱した。

 

 僕は、前を向いたまま背中ごしにライフルを構えてスナイパーライフルで狙撃を敢行する。後ろ向きであっても、照準は自立支支援機(ロイロイ)であるシズクとホノカが自動で合わせてくれるため、僕自身は指示されたタイミングで引き金を引きながら、ひたすら前を見て走って逃げるだけだ。

 

《奴ら戦い慣れているな。サニー・バニー、もっと広く段幕を張れ!》

 

《ったく、人使いの荒いリーダーだ。おたくらとの戦闘でこっちも消耗しているんだぜ。ナインズの隊長さんよ。___レイ、あいつ撃っちまえ》

 

《外部からの命令指示を検知。マスター、あのアメリカ軍所属機を攻撃対象に加えますか?》シズクが律儀に確認する。

 

《マスター、撃っちまえ♪》それをホノカがあおる。

 

「だめだめだめ。あのアメリカ軍所属機はターゲットから除外。サニー、余計なことを言わないで」

 

 昨日の敵は今日の友。これほどわかりやすい構図はないな。それはお互いが共通の敵がいることで生まれる。僕らとナインズは地球人としての運命共同体だ。しかし、そうであっても多勢に無勢だった。せめてアマギ隊長やアーニャやジェイクがいてくれたなら。

 

 通信異常は回復しただろうか。僕は通信機に向かって、聞いているかどうかわからない仲間たちに必死で呼びかける。

 

 しかし、アーニャの強気な声色も、ジェイクの皮肉も、アマギ隊長の仲間を気遣う声も通信機からは返ってこない。

 

 不意にポルタノヴァが放ったビームが僕の左肩装甲をかする。装甲の端っこは蒸発して一瞬にして消え失せた。いったい何度あるんだ。かすった右肩装甲は赤熱してに数秒間もの間オレンジ色に輝いていた。

 

 もしあれがコックピットに当たったなら、僕の身体は一瞬にして蒸発するだろう。そのときのことを思い浮かべると手足が震え出す。機体の揺れとは異なる周期で奥歯が勝手に鳴りだす。体中に悪寒が走る。下半身から力が抜けそうになるのを必死でこらえて、ただただ前に進むことだけを考えて全速力で走り続けた。

 

 敵の本体からはだいぶ離れたけれども、20機弱で構成された追撃隊が執拗にこちらを追ってくる。ビーム兵器の運用や、惑星間を移動できるほどに発達した技術力がある種族なら、高い知性や精神性を有しているはずだ。しかし、問答無用で攻撃してくるような野蛮な侵略は知性的な行為とは言えない。

 

 僕が彼らの立場だったなら、まず地球の環境が自分たちの生存に適するか入念に確認したうえで、先住民の生態を観察する。そして言語を共有して意志疎通の手段を模索し、歩み寄りの姿勢を見せたうえで主張を述べるなり交渉に移るなりする。それが知的文明同士が取るべき常套手段ではないか。

 

 にもかかわらず、彼らは親の(かたき)とばかりに攻撃してくる。いったい僕らが何をしたっていうんだ。最初から侵略が目的なのだろうか。

 

 ___あ、そうか。まずは彼らから見て異星人である僕らのサンプル採集か。その答えに行き着いた僕は、宇宙人から受ける想像もつかないような尋問方法やら検査方法やらを想像してしまってゾッとする。このまま奴らに捕まってしまったら、きっと触手のようなものが穴という穴から僕の身体のなかを徘徊して◎△$♪×¥●&%#?!___。

 

 自分の想像に、思わず身の毛がよだつ。加えて、機体の鹵獲(ろかく)も目的だろう。おそらく僕と同じように、エグザマクスとポルタノヴァの類似性には、彼らも驚いているはずだ。

 

 ポルタノヴァはエグザマクスとは異なり、曲面で構成された装甲を装備しているものの、間接部の形状や全体的なプロポーションは奇妙なくらいにエグザマクスと似通っている。ほぼそのままといってもいい。

 

 パーツを組み替えたとおもぼしき地球上には存在しない生物を模したポルタノヴァも少数ながら混在しているから、おそらくモジュール機構も備えているのだろう。エグザマクスおよびポルタノヴァのモジュール機構はイカ型星人だろうがタコ型星人だろうが組み替え次第で構成可能だ。しかし、敵のほとんどは人型だった。

 

 人型兵器を象徴的に運用する行為は、彼らバイロン星人(仮)も僕らと同じヒト型の生態であることを意味する。さらにポルタノヴァのサイズやプロポーションを見るに、彼らは巨頭星人でも手長星人でも足長星人でもなく、僕ら地球人に酷似した種族であると思われる。おそらくバイロン星(仮)の重力は地球と同じくらいであり、彼らの神も同じく人型だろう。

 

 僕は無神論者だからこう思う。神が人間をつくったのではない。人間が象徴として自らと同じ形をした神をつくったのだと。人の意識の根底は肉体に支配されている。それは種としてのナルシズムであり思考限界の障壁であると。

 

 人型に近い神や仏を崇める宗教も、擬人化される神話の物語も、人型ロボットに憧れる気持ちも、すべて根底にあるのはヒト型である自種族を投影しただけの偶像崇拝にすぎないのだ、とも。

 

 宇宙の知的種族はヒト型に落ち着くのか、それとも、僕らと彼らの最大公約数的存在。すなわち僕ら地球人とバイロン星人が誕生するに至った環境、もしくは創造主に該当する共通する何かは同じなのだろうか。

 

 逃げながら、色々なことが頭の中を駆け巡る。ただ、これだけは言える。地球人類の記念すべきファーストコンタクトは最悪なかたちで終わりそうだ。

 

《参謀君、すまん! 1機逃した。そっちへ行くぞ》

 

 ショート・ホープからの通信で思考が中断させられる。側方から、足が速い空戦型ポルタノヴァが迂回して、迫るのが視界の端に写った。

 

 僕の喉からは意図せずヒッと声が漏れる。

 

《マスター、射撃照準合わせ完了しています( Terget setting all clear. )。Ready___》

 

 シズクとホノカがいち早く敵機を捉えて自動で照準を合わせてくれるけれども、僕は恐ろしさのあまり指示タイミングよりも早く引き金を引いてしまう。

 

 発射タイミングが適切ではなかった弾丸は敵機をかすめただけだった。慌てて次弾装填のためにライフルのボルトを引くが、その間に敵機はさらに迫り、こちらにライフルの狙いを絞る。

 

《マスター、トリガータイミングを厳守してください。死にますよ》

 

 シズクが起伏のない物言いで先ほどのミスを言及する。そんなことを言われてたって、いつ撃たれるかも知れないこの状況下でそんな器用なことができるか。 

 

 その間にもシズクとホノカによって制御される僕のエグザマクスの腕部は敵機を捉えるべく腕を繰る。

 

《次弾発射。Ready___》

 

 突如、眼前まで迫ったポルタノヴァが構えるライフルが爆散した。それによってバランスを失った空戦機は墜落し、砂煙を上げて地面を滑りながら後方に流れる。僕は撃っていない。

 

《ー30点だ、レイ。全くなっていない。もっと引きつけてから撃て》

 

 最後に声を聞いてから、ほんの1時間ほどしか経っていないのに、ひどく懐かしく思えるジェイクの叱責が通信機から届く。

 

《状況が掴めないが、とりあえず黒いエグザマクスは撃っていいな? ショート・ホープは味方か?》

 

《あああ、ジェイク! そう!(Yes!)黒い奴らは敵だ。僕らは東へ撤退してカミオンと合流する。ショート・ホープはとりあえず味方だから撃たないで》

 

《だから言ったでしょう、ジェイコブ。____リーダー、ごめんなさい。遅くなりました。撤退を援護します》

 

 ジェイクに続き、彼と戦闘状態にあったはずのナインズのNo.3、ダブルロック・エイミーが遥か遠方から敵陣にライフルでの狙撃を仕掛ける。ジェイクとエイミーによって横っ腹から撃たれる格好になったポルタノヴァの追撃隊は狙撃に対応するためにすぐさま散開し、その一部が彼らの方へと向う。

 

《よく無事でいてくれたエイミー。だが、敵部隊の一部がそちらに向かった。気をつけろ。___参謀君、通信が回復したようだぞ。シャルマ、シャルマ! 聞こえるか》

 

《___イエス、リーダー。聞こえます》

 

《サイラスの傭兵たちと共同でこの砂漠を離脱する。意中の相手(アーニャ・リーズヴィエ)は射止められたかね》

 

《残念ながらノーです。現在、共同で黒いエグザマクスを迎撃中》

 

 追撃隊から分離してジェイクとエイミーの方へ向かったポルタノヴァの小部隊が慌ただしく散る。撤退しながら望遠カメラで確認すると、アーニャの赤い機体と、アロン・シャルマのカーキー色の機体が黒い機体相手に白兵戦闘を演じていた。

 

「アーニャ! 無事でよかった」

 

《レイ。アンタなんでそこにいるんだい。あのデカいのと、コイツらはなんなんだい?》

 

「悪いけど答えている暇はない。とにかく東へ逃げるんだ」

 

《あいさ》状況を悟ってか、アーニャは珍しく素直に僕の指示に従う。

 

 後退を始めたアーニャとアロン・シャルマをポルタノヴァの小部隊が追いかけるが、それらはジェイクとエイミーの遠距離狙撃によって阻まれる。ジェイクとエイミーは交代しながら狙撃と移動を繰り返して東に向かって移動した。

 

《でも、レイ。コイツらをこのまま街まで引き連れていく気かい?》

 

 アーニャがもっともなことを言う。確かにこのまま逃げてもだめだ。追撃を完全に振り切らなければ、この悪魔の軍団を民間人のいる場所まで案内する結果になりかねない。

 

 かといって、これだけの大部隊を倒すことは、サイラス私設傭兵とナインズが協力しても難しい。追撃部隊をいくら倒しても、後から後から本隊から補充される。さらにこちらの武器弾薬には余力はないし、エグザマクスの稼働時間にも限界がある。

 

 早朝からの稼働で、あまり動いていない僕でさえもエグザマクスの残り電力が1/3を切っている。他のメンバーはそれ以下だろう。ナインズの連中は僕らよりマシだろうけれど、仮に機体が万全の状態であったとしてもどうにかなる問題ではない。ショート・ホープはどうする気なのだろう。

 

(らち)があかんな。参謀君、ここで問題(Qestion)だ。敵の追撃を諦めさせるための最良の手は何だと思う?》

 

 ったく、こんなときになんだっていうんだ。そんなの敵の追撃を上回る速力で逃げ切るか、敵の追っ手が届かない場所まで逃げるしかない。けれど現状ではそれすら難しい。

 

《正解は、圧倒的な力を見せつけて追撃する気を失わせるのだよ。___アラビア海のノーチラス、聞こえるか。こちらショート・ホープだ。現在、未知の敵と遭遇(Encouneters of the unknown)。違う。映画のタイトルじゃない。現実だ。コード999発令。僕の権限により命ずる。潜水艦載の弾道ミサイル( S.L.B.M. )を発射させろ。いますぐだ。目標はこちらのレーザーで誘導する》

 

 その会話はこちらにも聞こえた。ショート・ホープが要請したのは『Submarine Lanched Ballistic Missile(  S. L. B. M.  )』。つまり潜水艦発射弾道ミサイル___それってつまり核ミサイルじゃないか。この男は、なんてことをしでかしてくれるんだ。

 

《諸君、喜べ。心強い援護射撃を要請した。もう1分もしないうちに、ミサイルが飛んでくるぞ。核といっても2キロトン程度の低出力核だ。放射能汚染も心配いらん。それでも総員、敵からできる限り離れて爆発に備えろ! ___ところで参謀君、エグザマクスは核に耐えられるようになっていたかな? もう遅いが》

 

 知るか、そんなもん。製造元の社員である僕だって、そんな細かい仕様までは知らない。

 

 この場所はアラビア海からほんの数百kmの位置だマッハ10もの速度で飛ぶ弾道ミサイルは、一度成層圏近くまで上昇して飛来したとしても、ほんの数十秒で飛来する。

 

 そうこうしているうちに、青空に白っぽい点が現れる。それは徐々に大きくなり、陽光を反射させて塗装された金属面が鈍く煌めいた。遥か上空から高速度でミサイル弾頭が降下してくる。

 

 ショート・ホープは上空からライフルにアタッチメントされた特殊パルスを発するレーザー照準器をポルタノヴァの追撃部隊中央に向け続けて、ミサイルを誘導し続ける。

 

《聞こえるかエイリアンの諸君! これは要するに(in short.)歓迎の花火だ。我々の星に土足で踏み入ったことを後悔するがいい。ようこそ地球へ!(Welcome to the earth! ) ヒーハー!(Yee Haw!)

 

 ショート・ホープが一切言葉が伝わらない相手に対して無遠慮に言い放つ。バイロン軍も狂っているが、ショート・ホープもいろいろ狂っている。僕は核ミサイルの着弾タイミングを見計らって前方へ飛び、機体を伏せさせる。

 

 機体後方を捉えたモニターが白く瞬いた。次の瞬間に爆心地から円周上に広がった白い雲が恐ろしい速度でこちらに迫る。強烈な衝撃波が30tもの機体を弾き飛ばす。

 

 ショート・ホープの機体が激しい爆風によって糸を失った凧のようにあおられ、姿勢を乱すのが見えた。そして、シズクとホノカの機体がコロコロと転がっていくのを一瞬だけ捉えると、すぐさま視界は砂塵で真っ暗になり僕は上下感覚を失う。

 

 遅れて爆発の轟音が鼓膜を振るわせた。計器は狂った数値を指し示していて損傷状態はおろか、どんな姿勢でいるかも定かでない。幸いだったのは気絶しなかったことぐらいか。

 

 肩にハーネスが食い込むのがしっかりと感じられる。強い耳鳴りがするものの、音はしっかりと聞こえていた。爆発の余波で巻き起こった砂嵐のものであろう暴風と、砂のつぶてが機体の外板を叩く音を聞き取れることから、鼓膜が破れていることもなさそうだ。

 

 いつの間にか、エグザマクスのオペレーションシステムがダウンしており、再起動シークエンスの画面に切り替わっていた。爆発による放射電磁ノイズからの自動保護システムが働いたのだろう。再起動は滞りなく行われ、数分経ってようやくカメラが捉えた画像がHUD上に描写された。その光景に僕は唖然とする。

 

 眼前は砂の地面が数百mにも渡って深々とえぐれていた。その向こう側ではバイロン軍の本隊が黒くたむろし、こちらの様子伺っている。

 

 追撃部隊は全滅したらしい。辺りには溶けた金属片やら、黒い塗装面が炭化してさらに黒く焦げ付いたポルタノヴァの手足やらが散乱していた。

 

おい、レイ! 無事か!?( Hey.Rey! Are you OK!? )

 

 こうしてサニー・バニーに声をかけられるのは、今日だけで何度目だろう。サニー・バニーの機体にも大きな損傷はないようだ。

 

「うん。大丈夫。機体に異常なし」

 

《爆発の電磁波の影響で、また通信がきかねぇ。とっとと撤退するぞ。アーニャやジェイクもそうするはずだ》

 

「了解___」と、言いかけたところで、敵機接近のアラートがコックピットに鳴り響く。視界には、1機の飛行型ポルタノヴァが巨大なクレーターを飛び越えるように接近する様子が映った。

 

 その空戦機は、他のポルタノヴァとは少しだけ形状が違った。背面には4枚の大型ウィングスタビライザーを備え、頭部にはトサカのような飾りがついている。左腕には円形の盾、そして右腕には長い柄の棍棒のようなものが握れられていた。

 

 敵機はこちらを捉えると、盾を前面に構え機体を加速させた。それと同時に、右腕に携えた棍棒の先端から粒子ビームと思わしき赤い光の束が延びてブレードを形成する。

 

 それは槍だった。穂先はエグザマクスの装甲など何の抵抗もなく貫けるほどの超高温だ。(バックラー)粒子ビームの槍(ビーム・ランス)を構えて突進する敵機は、まるで黒騎士のようだ。おそらく、あれがポルタノヴァの大将機だろう。

 

 単機で打って出るのは、再度撃たれるかもしれない核ミサイルへの警戒か。同時に、たった1機で僕らを殲滅できると指揮官自らが判断したのだろう。

 

《そう簡単には逃してくれねぇか。レイ、行け。ジェイクたちと合流して逃げろ》

 

「だめだよサニー。あれはヤバい。あいつは、たぶん他のポルタノヴァと違う」

 

《だからさ。二人じゃ絶対に逃げ切れねぇ。お前は裏方で、俺が戦う。それがサイラス私設傭兵部隊だ。目的を見失うな。俺たちの計画は東へ撤退することだ。全員が共有するその計画は、仲間が死んでも、リーダーを失ったとしても変わらない。それが傭兵の仕事だ。さあ行け、できそこないの弟( Little Brother. )

 

 サニー・バニーは、僕を押しやるように右腕部で僕のエグザマクスの肩を叩く。そして、すぐさま反転すると敵の指揮官機に向けて突進しながら左腕のガトリングガンを射かけた。

 

 それまで静寂につつまれていた砂漠に連続した発破音が響き渡る。

 

 サニー・バニー機が撒き散らす弾丸の前に、手練と思われる敵の指揮官機であっても容易には近づけないようだ。右へ左へ黒い機体を翻し防戦に徹している。カラスのように飛ぶポルタノヴァは、速力と三次元機動で優位なポジションを取ろうと動き回るも、サニー・バニーの制圧射撃がそれを許さない。

 

 けれど、サニー・バニーの弾幕が途切れたほんの一瞬を敵機は見逃さず、黒騎士は弾かれるように肉薄して槍を突き出す。

 

 砂漠に溶け込むサンドブラウンカラーのサニー・バニー機の背面から、赤い光が漏れだした。同時にサニー・バニー機はそれきり動きを止めた。

 

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