後方師匠面したい系転生者   作:TATAL

5 / 48
寝て起きたら滅茶苦茶伸びてる……なぁにこれ(戦慄)

ランキング1位とかマジですか……。完結させられるように頑張ります。


自称弟子第五号、見習い騎士シャーレイ

 フェアハウト領を出た俺はのんびりと首都への旅を続けていた。ノックスの師匠やって稼いだ分と行き掛けの駄賃とばかりに頂いたお金で俺の懐はかなり温かく、ルンルン気分だった。

 そうして旅を続けることしばし、立ち寄った村でもうすぐ首都、というか王都というらしい街が近いと聞き、俺は期待に胸を膨らませていた。やっぱり首都と言えば今までの娯楽もほっとんど無い村や街に比べて物も人も多いんだろうと。

 

 そして何より、人が多く、国の中心と言うことはまさにこれから羽ばたいていく前途有望な勇者の卵も転がっているだろう。出来ればまだ孵化もしていない状態で残ったりしていてくれないだろうか。俺のなんちゃって剣術で誤魔化せるレベルの勇者候補が都合よく転がっていたら言うことは無いんだが。

 そう思いながら森の中、馬車が頻繁に通るためか深く轍の刻まれた獣道を歩いていると、顔の前に突然ハエが飛んできた。それにびっくりして立ち止まったら頭上の木から何かがボトリと落下。よくよく見てみればそいつは濁ったドブ川にゼラチンを入れて固めたような不定形のゲル。工業廃水でわらび餅作ったらこんな色になるんだろうか、なんて思っているとそいつはのそりのそりとこっちに近づいてくるではないか。

 

 こ、こやつ……! まさか始まりの街の周辺で出てくるお約束のスライムというやつではないか!? 

 

 しかも生意気にもこのスライム、不定形の身体から触手を伸ばして俺を叩こうとする。スライムの分際で生意気な奴め、そんな不届きものはノックスから貰ったこの名剣でずんばらりんしてくれる! ひのきのぼうしか持たない駆け出し勇者でも倒せるスライム如き敵ではないわ! 

 そう思ったのだがこのスライム、剣で突こうが斬ろうが不定形なので全く意に介さない。やだ、俺のレベル低すぎ……? こんなに良い剣貰って気分的には今までより攻撃力五倍くらいになってたつもりなんですけど? 

 スライムの動き自体は遅いので逃げるのは容易い。だが、今までリスや熊、狼の魔物を倒してきた俺がたかがスライム如きに背を見せてたまるかという謎のプライドが邪魔をし、結果として俺は斬りごたえの無いゲルをひたすら細切れにする不毛な作業に身を投じることになった。俺は人間ミキサーか何かかな? 

 

 そうやって斬り続けていくうちに、剣に今までとは違うものを斬った感覚、具体的にはちょっと固い骨みたいなのを斬った感触があり、その直後にスライムがじゅうじゅうと音を立てて形を保てなくなり、地面に溶けてしまった。スライムの粘液が地面にしみ込んだ後には、真っ二つに割れた赤色の玉。これはあれかな、スライムの核みたいなものなのか。なるほど、さっきの感覚が俗にいう「かいしんのいちげき!」というやつか。今までカスダメージしか与えられてなかったけどこの核に攻撃が当たればダメージが倍、みたいな。

 なるほど、俺は始まりの街周辺に現れるスライムですら会心の一撃を与えられないと満足に倒せないというのか。えぇ……、熊とか狼の魔物の経験値効率が悪すぎる……。俺はここまで旅をしてきてまだひのきのぼうを装備した駆け出し勇者以下の攻撃力しかないの……? 

 

 スライム初討伐記念に割れた赤い玉を懐にしまって俺は先ほどまでのルンルン気分はどこへやら、トボトボと王都へと歩を進めた。スライムと出くわしてから程なくして森を抜け、抜けた先には見上げる程に立派な白亜の壁。やっぱり王都のすぐ近くのレベル上げ用の森だったじゃないか! 

 いや、腐るな俺! 俺が弱いのは今に始まったことじゃない。取り敢えず気分を切り替えて王都を楽しもうじゃないか。

 

 そう思っていたら門のところで兵士さんに拘束されました。なんでぇ……? 

 

 衛兵さんの詰め所と思しき所に連れていかれた俺は、そこで厳つい顔のおじさん達による集団圧迫面接を受けることになった。

 

 街に入る目的? 旅行気分ですが……、ダメ? 

 

 なんでこんなに大金を持ってる? いや、剣を教えたお礼に貴族のおっちゃんから気前よく頂きまして。

 

 街に入るのにその貴族からの紹介状は無いのか? 紹介状がいるんですか!? 特に何も貰ってないんですけど!? 

 

 この赤い玉は何か? さっきそこの森でスライムを倒した記念に拾ったんですけど。

 

 ところでその剣めっちゃ良いね、くれないかだと? おい馬鹿やめろ! 

 

 金を取り上げられ、スライム討伐記念の赤玉も取り上げられ、最後には俺の持っていた剣まで取り上げられそうになった。だけど、圧迫面接を主導していたおじさんが剣を手に取ってじっくり見ると、急に顔を真っ青にして俺に持ち物を全部突っ返すとあっさりと門を通してくれることになった。なんでぇ……? 

 訳も分からないままに門を通してもらう。ぺっ、いきなり人を捕まえやがって! 椅子に脛をぶつけて苦しむがいい! 通りを歩いて衛兵さんが見えなくなったくらいのところで振り返り、ジロリと人波の向こうにいるであろう俺を圧迫面接した衛兵さん達を睨みつける。見えるところで睨んだらまた捕まっちゃうかもしれないからね……。

 さて、気を取り直して衛兵のおっさんから聞いた王都でも最高級の宿に向かい、意気揚々と乗り込む。ようやくフワフワのベッドで寝れるー! なんて考えていたが、宿の主人から目玉が飛び出る金額を提示されてしまった。あの、もう2ランクくらい下の宿ってどこになりますかね? 

 呆れ顔の宿の主人に見送られながら、俺は目抜き通りから少し外れたところにある別の宿を拠点にすることを決めた。まあ食事もあるし、藁だけどちゃんとベッドもあるから良しとしよう。

 

 こうして拠点を得た俺は、そこから数日に渡って王都の散策、観光を存分に楽しんだ。なんだこの天国は、賭場もあれば風俗街もあるやんけ! 今まで娯楽らしい娯楽も無かった上、前世の記憶基準で娯楽に飢えていた俺はどっぷりとはまり込んだ。賭場はサイコロとカードくらいだけどそれだけでも十分楽しいし、何より風俗街にいるお姉さま方最高や! というかなんでこんなに綺麗なお姉さま方がいつ来ても空いてるんだろう? この街にはロリコンしかいないのか? 

 そんな感じで毎日が酒池肉林のウハウハライフをしばらくの間過ごしていた俺だが、そんな生活もやがては終わりを迎える。そりゃ毎日賭け事して夜には風俗街に繰り出して最後は酒飲んで帰ってりゃお金も尽きるよな。

 とはいえこれは非常にマズい、どれくらいマズいかと言うとこのままでは次の日に宿代を払えなくて宿を追い出されてしまう程度にはマズい。売れるようなものも何も無く、このままじゃいよいよノックスから貰った剣を質に入れるしかないかと思い詰めていた矢先、そういえばスライムの赤玉があったじゃないかと思い至る。真っ二つに斬れてるからあんまり高値にはならないだろうが、せめて宿代の頭金くらいにはなってくれないかな。そうすりゃ明日には森に行って目につくスライムを狩りつくして稼ぐんだが。

 

 そんな一縷の望みをかけて王都の冒険者ギルドに顔を出す。これまでと同じであれば別に冒険者にならなくても魔物の素材くらいは買い取ってもらえるだろうとカウンターにいるお姉さんに赤玉を見せたのだが、まさかの買取拒否。望みが断たれたぁ! 

 聞けば、王都では冒険者の数も多く、魔物を安定して狩ることが出来ているらしい。そのため、冒険者以外が持ち込んでくる魔物の素材は不要であり、むしろ盗品の恐れもあって後から冒険者とトラブルになるのを嫌って一律買取拒否しているとか、その上こんな赤玉見たことも無いから買わないときた。やっぱりスライムの素材なんて売れないんじゃないか! これなら皮とか角とか牙が売れるだけリスの魔物の方がよっぽど良いじゃないか! 

 

 だが捨てる神あれば拾う神あり。あんまりな事態に陥り、王都に来てまさかのホームレスになるのかとカウンターで呆然としていた俺に声を掛けてくれた人がいた。振り返れば白銀に輝く鎧を身に付けた赤髪赤目の美少女が怪訝な顔で俺を見ていた。聞けば、王都の騎士団に所属しているらしく、見回りも兼ねて冒険者ギルドにはよく顔を出すらしい。見慣れない人間がいてカウンターでしょぼくれているのを不憫に思ってくれたのだろうか、めっちゃ良い人じゃないか。

 俺はスライムの赤玉を見せながら冒険者ギルドに買取拒否されたことを赤裸々に明かす。もはや恥の概念など無い。ギルドがダメならこの美少女騎士様に買い取ってもらいたい。そんなクッソ無様な俺の状況を聞いた騎士様は、しばらく考え込んだ後、この赤玉が本当にスライムから出たものだったら買い取ってやると申し出てくれた。なんだこの女神は……。でも今から森に行かないとダメ? もう昼過ぎだし帰って寝たいんですけど……、ダメ? ですよね。

 

 その後、シャーレイ、と名乗った騎士様と連れ立って俺は森へと再び足を踏み入れていた。シャーレイは森に入るや否や抜刀して周囲を警戒しながら進んでいく。いや、別にそこまで警戒しなくても良いんじゃない? なんて言いながら俺はホイホイとスライムを見つけたときの道へと向かっていく。だが、道中も、かつてスライムと出くわしたところまで辿り着いてもスライム一匹見えやしない。始まりの街にあるまじきエンカウント率じゃないですかね……? 

 

 空振りか、まじで野宿するしかないかもしれないと途方に暮れていると、俺の横の茂みがガサガサと音を立て、そこから額に立派な角を持ったリスの魔物が姿を現した。角も皮も全部売り物になる有能リス君! リス君じゃないか! 

 俺はシャーレイの手前はしゃぐのは程々に、ただ内心嬉々として剣を抜き放つと、リス君が動き出す前にその首をさっぱりと斬り落とした。やっぱりこの剣の切れ味凄いよぉ! しかも全然血も付かないから切れ味が鈍ったりもしない優れもの。これをくれたノックスには足を向けて寝れない。

 俺がリスの魔物を倒したのを見たシャーレイはポカンと口を開けている。どうやら雑魚魔物を嬉々として狩った俺を見て呆れているらしい。仕方ないだろ! コイツの素材をどうにかして売り捌かないと今日の寝床が怪しいんですよ! などと内心言い訳をしていたら、シャーレイの頭上の枝が揺れる音。ハッ、これは俺のときと同じ! そして頭上から落ちてくるスライム。粘液まみれの美少女というのも乙なものだが、これは恩を売る絶好のチャンスだ! 

 俺はシャーレイを咄嗟に突き飛ばし……、やばい、思った以上に力一杯突き飛ばしちゃった。背後の木に激突したシャーレイが俺を怒ったように睨みつけている。だけどその直後に地面に落ちてきたスライムを見て目を丸くしていた。そうだよ、俺は君があられもない姿になるのを止めたんだから木にぶつかったくらいは許してね? いや、デカいわらび餅にぶつかるのと木にぶつかるのだったら前者の方がまだマシかもしれない……。

 

 とはいえやってしまったものは仕方ない。とりあえず今はこのスライムをずんばらりんして赤玉が本物だという証明をせねば。最初の一匹でゲルみたいなお前の身体の真ん中あたりに急所があることはお見通しなのだ。今回はゲルを細切れにするような不毛な作業なんてしてられるか! 

 一撃必殺、会心の一撃とばかりに俺はスライムを綺麗に等分する。前回と同じように何か固いものを斬ったような感触と共に、じゅうじゅうと音を立てて溶けていくスライム。そして地面に残るのは俺が持っているのと同じ両断された赤玉だ。

 俺はそれを拾い上げると、シャーレイに差し出す。ほら、本物だったでしょ? なら買い取ってよ、役目でしょ。

 そう言うとシャーレイは驚いた表情のままぎこちなく頷いた。よっしゃ言質取ったぞ! 絶対買い取ってもらうからな! 

 

 そして冒険者ギルドに戻ったシャーレイが放った第一声は、

 

「彼の話は本当だ。私の名において特例でこの方が持ち込むものを買い取ってやって欲しい」

 

 コイツ……! 自分が金払うの嫌だからって権力使ってギルドに買取を強要しやがった! 見た目が超絶美少女だから思ってたけどやっぱりコイツも貴族のボンボンだな? 

 目を剝く俺をよそに、シャーレイはカウンターのお姉さんと何やら手続きを済ませる。査定が終わったのか、俺が渡したスライムの赤玉二個(両断済み)とリスの角と皮はそこそこの金額で引き取ってもらえたので、これで今日の宿は確保できて一安心だ。明日も森に行って狩ろう。今の俺は金を稼ぐモチベーションに溢れている。

 何はともあれ、金稼ぎの目途が立ったのはシャーレイのお陰なのでお礼だけは言ってさっさと冒険者ギルドを後にする。これ以上騎士様に目を付けられるのも怖いからね! なんて考えていたのだけど、俺の後を追って来たシャーレイに呼び止められた。まだ何か用があるんですかね……? 

 

 何? 弟子にしてほしい? 断る! 

 

 なんで自分より強いであろう相手を弟子にしなきゃならんのだ! 俺はスライムすら満足に倒せなかったクソ雑魚だぞ! 断っても縋りついてくるシャーレイを何とか振り払おうともがく。

 

 え? 自分は魔法が使えるから実力に不足は無い? じゃあ猶更俺が師匠する意味無いじゃん! 

 

 しかもシャーレイもノックスと同じように剣と盾を使う流派だ。俺のなんちゃって剣術に騙されたということはどうせ騎士になりたての新米なんだろうけど、そんな新入りが騎士団の主流な流派じゃない剣を習おうとするとか絶対ダメなやつじゃん! 怒られるから止めときなって! というか教えた俺が騎士団の偉い人から怒られるじゃないか! 魔法を使える有望な新入りにクソみたいな剣を教えるんじゃないって。

 何とか誤魔化して諦めさせようとしても、シャーレイはそこを何とかと食い下がり続ける。しつこい、しつこくない? この子騎士団に入ったのにそんなにへっぽこなの? 俺のなんちゃって剣術にも縋りたいくらいにポンコツなの? ポンコツ美少女は可愛いけど君絶対主人公じゃないじゃん。俺は主人公っぽい奴を探して鍛えるのに忙しいからダメ! 

 そんなことを十重二十重のオブラートに包んで言ってやれば、シャーレイは覚悟を決めたような顔で俺を見る。

 

「じゃあ弟子にしてくれとは言いません。私が勝手にあなたについて剣を学ぶ」

 

 こうして俺に騎士を名乗る一般不審ポンコツ美少女な自称弟子が出来たのだった。えぇ……? 

 

 翌日から、シャーレイは本当に俺についてくるようになった。朝は俺の滞在してる宿に迎えに来て、森で日銭稼ぎの魔物狩りをするのに同行する。それが終われば、俺の剣を見様見真似でこれ見よがしに素振りする。

 その素振りは宿の親父に頼まれた薪割りを俺がこなしてる横でも続くものだから辟易した。ちょっと余裕も出来たしこれが終わったらいつものお姉さま方に癒してもらおうと思ってたのに! 

 そして隙あらば俺と手合わせしようとしてくる。何なら薪割りしてたら背後から斬りかかられたこともある。まぁ俺がその直前に「騎士様が流れの怪しいやつに剣を教わるってマジ? ザぁコザぁコ」みたいに煽ったせいだと思う。何とか回避出来てカウンターしてやったけど。というか避けられたは良いものの結構ギリギリだったんですけど。あなたの振ったそれ真剣ですよね? 当たったら普通に死んじゃうんですけど……? 

 

 ちょっとむかついたので罰ゲームとしてシャーレイに俺式修行(拷問)の体験版をさせることにする。手始めに手の皮が擦り切れて指紋も手相も見られなくなるまで剣を振りましょうねぇ。

 俺が止めるまで俺と一緒に素振りをし続けるように命じる。弟子になるって言ったんだから当然師匠より先に鍛錬を終えたりしないよなぁ? 

 ということで俺は日課の感謝の素振りを行う。ノックスの剣はこれまで使っていた剣よりも軽いので素振りが捗る捗る。今日はいつもの二倍くらいやっちゃおうかな。ヒーヒー言いながら剣を振り続けるシャーレイを横目に俺は内心ニヤニヤしながらノックスの剣を見せつけるようにたまにゆっくりと剣を振る。ほれ、門番のおっさん達が見た瞬間青褪めるくらいの高級品ぞ? 

 

 その日からシャーレイの扱い方が何となく分かるようになってきた。とりあえず煽って俺に手を出させ、それを俺が回避して罰ゲームとしてぶっ倒れるまで素振り。そうすれば後は俺の自由時間という寸法だ。

 

 えー? スライム如きに魔法使うってマジ? 剣に魔法を付与する? そんなことしないとスライムすら斬れないとか騎士辞めたらぁ? 俺の弟子だったらそれくらい簡単に出来ちゃうんですけどぉ? 

 

 とか煽っていればそのうち心が折れたりしないかなぁ、とか思ってたら予想以上の根性でシャーレイは食らいついてきた。中々やるじゃないか。俺を見る目はこれまでの弟子の例に漏れずやべー奴を見る目になってきたけど。まあ気にしないことにしよう、もう慣れた。お前がぶっ倒れたら俺は風俗街に行くからな! お姉さま方が俺を待ってる! 

 たまにシャーレイからは俺が風俗に行っていることについてお小言が飛んでくることがあったが、あのお姉さま方を馬鹿にするのは許さんぞ。俺のように娯楽を知らずに生きてきた野郎共の心のオアシスなんだからな。俺みたいな奴の相手してくれるとか聖女だろ……。

 

 そうしてシャーレイにお小言を言われつつ森で雑魚魔物狩りをしながら彼女を煽ったり苛めたりしていることしばし、彼女はついにビビらずに魔物を討伐することに成功した。そのときにぴょんぴょん跳ねて喜んでいたのは大層可愛らしいのだが、返り血塗れでスプラッタ過ぎるのといかんせん胸が……いや、これ以上は言うまい。きっと胸当てが悪いんだ。着痩せするタイプだと思っておこう。

 

 魔物を討伐したシャーレイはますます俺に付き纏うようになってきた。何コイツ、なんでこんなに俺にくっついてこようとするの? もしかして俺のこと好きなの? 

 

 なんて暢気なことを考えていたある日のこと、俺は目撃してしまった。俺のことについてシャーレイが他の騎士にタレこんでいる姿を! 

 

 なるほど、コイツもようやく俺が本当はクソ雑魚底辺野郎だということに気付いたらしい。あんだけ引っ付いて来ていたのは俺が逃げないようにという拘束のためか、小癪な! 

 シャーレイの狙いを悟った俺は、その次の日にはこの街を逃げ出すことを決めた。とりあえず逃げたと悟られるまでの時間を稼ぐために宿の親父に手紙を託す。俺は野暮用でちょっと街を出ます、君は自分の仕事をきっちり頑張るように、と。

 

 さらばだシャーレイ! お前は主人公じゃないかもしれないがポンコツ美少女騎士として主人公のパーティの一員くらいにはなってることを期待してるぞ! 具体的には魔王を討伐する勇者パーティに加わって四天王を単身足止めし、命辛々討ち取って勇者伝説に華を添えるくらいにはなっていてくれよ! 

 

 


 

 

 私、シャーレイ・ウル・エクレシアと師との運命的な出会い、そしてその後の日々を語るには一日や二日では済まない。

 

 だが敢えてかいつまんで話すとしよう。あの御仁を最初に見たのは王都の冒険者ギルドだった。私は当時、王都の騎士団に所属し、騎士になって二年という異例の早さで十人隊長となっていた。その理由は、私が魔法の才能を持っていたことが大きい。騎士には前衛騎士と後衛騎士がおり、前衛騎士が剣と盾で魔物を牽制し、その間に後衛騎士が魔法で打ち倒すという役割分担が完全に出来ていた。その中でも私は剣も魔法も使え、剣に魔法を纏わせることで魔物を直接斬り払うことが出来た。それは騎士団の中では上級騎士、遊撃騎士の一握りしか出来るものがいない貴重な才能だ。それもあって私は多くの人々の期待を一身に背負っていた。

 貴族に生まれた者の責務として、この魔物が跋扈し、人類の生存圏を脅かすこの世界で一筋の光となるべきだと思っていたし、そのための鍛錬を欠かしたことは無かった。

 だが、それでも魔物に立ち向かうのは恐ろしかった。意に反して身体は震え、詠唱の言葉は喉に貼り付いて出てこない。

 

 それに悩み、何かきっかけが欲しいと日々の警邏も兼ねて冒険者ギルドにも顔を出していた。王都の冒険者ギルドは魔物を安定して討伐出来るクランも在籍しており、彼らの経験談は私を勇気づけてくれた。

 その日もいつものようにギルドに顔を出したのだが、カウンターの前に見慣れない人物がいるのに気付いた。

 その人は一見すると粗末な皮鎧に、身にそぐわない上等な拵えの剣を腰に佩いていた。そしてカウンターに両断された赤い玉を置き、魔物の素材だと言って買取を要求していた。周囲でそれを見ていた冒険者たちの反応は冷ややかだった。いつもの死体漁りで小金を稼ごうとする奴だと、田舎から出てきて食い詰めてこうなる者はまれにいる。この男もその類だろうと皆は思っていた。

 しかし、私は何か言葉に出来ない予感めいたものに導かれるようにその男に声を掛けていた。

 

「そこの方、一体どうされましたか? 何かお困りでしたら出来る範囲でお力になろうと思いますが」

 

 私の声に振り向いた彼は、内心の読めない無表情のままだった。

 

「これを買い取ってもらえなくて困っている」

 

 そう言って私に赤い玉の欠片を差し出してくる。それは彼が魔物を討伐したときに手に入れたと言う。だが、私も周囲の冒険者もこのような素材に見覚えは無い。

 

「見たところ騎士か。ギルドでダメなら騎士様に買い取ってもらえると助かる」

 

 この時点で私は彼がただの死体漁りか詐欺師であるという可能性を捨てていた。そのような小悪党が王都の騎士を前にしてここまで落ち着き払って詐欺を続けられるわけが無い。ということは、これは本当にこの男が魔物を討伐して得たものか、あるいは心の底からそう思い込んでいる気狂いか。

 

「なるほど、そこまで言うのなら、それが本当に魔物を討伐して得たものだと証明してくれ。例えばその魔物を探してもう一度討伐する、などしてな」

 

 私は彼の要望を叶える代わりに条件を出した。これで彼が本物か、あるいは偽物かがはっきりとする。

 彼は私の言葉にしばらくの間考え込むように黙っていたかと思うと、

 

「なら今から狩りに行くとしよう」

 

 そう言って歩き出した。まるで散歩に行くかのような気楽さで言うものだから、私も周囲の冒険者達も呆気に取られていた。そうしているとギルドの入り口まで歩いた彼はこちらを振り向き、

 

「どうした? 証明をするんだろう?」

 

 と言って私を促す。このギルドでクランを募り、きちんと安全を確保した状態で証明をするのが常識だ。だがこの男はそんなものを全て破り捨てていく。私が慌てて彼について行くと、彼は門を出てそのまま森へと歩を進めていく。騎士団が時折大々的に魔物の間引きを行っている森だ。私は森に入るなり剣を抜き放って周囲を警戒する。

 

「こんなところで肩に力を入れてると疲れるぞ」

 

 だが、私を見た彼の反応は私の常識をまたしても破壊した。彼は散歩と変わらぬと言わんばかりに剣も抜かずに森に分け入っていくではないか。それに置いて行かれないようについて行けば、彼は赤い玉を手に入れた場所だというところまで私を案内してくれた。しかし、当の魔物は姿を現さない。空振りか、でたらめかと私が落胆していると、彼のすぐ隣にある茂みが音を立て、そこから現れたのは額に大きな角を持つ魔物、鼠獣(そじゅう)と私達が呼ぶ魔物。熟練したクランならば討伐出来ないことはないが、単身であればまず逃げることを考えろと言われる魔物だ。その角と、体躯に見合わぬ俊敏さは騎士の鎧を容易く貫く。増してや粗雑な皮鎧ならなおさら。私が焦りから声にならない声で彼に呼びかけようとした時。

 

「目当てとは違うが、まあいい」

 

 その言葉と共に目で追うのも難しい速度で彼の剣が抜き放たれ、気付けば鼠獣(そじゅう)の首は地面に落ちていた。今、何が起きた? 確かに彼の剣は上等なものだろう。恐らくは希少な鋼だとも思う。だが、たった一太刀で魔物の首を落とすなど見たことが無い。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 呆然としている私を尻目に、彼はいそいそと魔物の解体に取り掛かろうとする。だが、何かに気付いたように顔を上げると、次の瞬間には私の身体は背後の木に叩きつけられていた。

 

「がっ!? なにを……!」

 

 油断させて私を謀殺するつもりか! と責めようとする前に、私が先ほどまで立っていた場所にボトリ、と濁った川の水を固めたようなものが落ちてくる。

 

「ね、粘獣(ねんじゅう)……!?」

 

 私は戦慄した。一匹で街を飲み込むとまで言われているほど、この付近では危険度最大クラスの魔物だ。その不定形の体液は斬撃も打撃も牽制にすらならず、むしろ剣も肉も骨も溶かしつくす体液で全てを食い尽くす。冒険者ギルドや騎士団に所属する魔法使い、後衛騎士が魔法で焼き尽くすことでのみ討伐可能な魔物。彼が私を突き飛ばしてくれなければ、私は今頃頭からあの魔物に喰らわれていた……? 

 一命を取り留めたとは言え、まだ油断は出来ない。この魔物には剣は通じないのだから。今は逃げてこの窮状をギルドと騎士団に伝えに行かなければ……! 

 そう彼に伝えようとすると、彼はニヤリと顔に笑みを浮かべて剣を構えていた。

 

「ようやく目当てがお出ましだ」

 

 そう言って迫りくる触手を搔い潜り、粘獣(ねんじゅう)に肉薄した彼が繰り出したのは、ただ剣を縦に一閃するだけ。ただそれだけの動作なのに、私の眼にはその光景が強烈に焼き付いた。こうして話している今でも鮮明に思い出せるほどだ。

 剣だろうと何だろうと溶かしつくす魔物の体液を意に介さず、彼の剣は煌めきを失わなかった。それどころか、彼の斬撃は魔物を真っ二つに切り裂き、そして魔物はぶくぶくと泡を立てて地面に溶けていく。その後に残されたのは、彼がギルドで見せていた赤い玉。

 

「これで証明になるか?」

 

 そう言って差し出されたそれを見て、私は何と答えたのか。気付けば冒険者ギルドに戻って来ていた。

 

「彼の話は本当だ。私の名において特例でこの方が持ち込むものを買い取ってやって欲しい」

 

 私の言葉にギルド内がざわついた。だが、私自身、先ほど目にした光景が未だに眼前に焼き付いていて心ここにあらずなのだ。許してほしい。

 ギルドがおずおずと換金に応じると、彼は用は済んだとばかりにさっさとギルドを後にしてしまった。……何故私はここで突っ立っているのだ。彼こそ、壁にぶつかり、燻り続けている私を導く光に違いないというのに! 

 私は彼を追いかけ、宿へと向かっているであろうその背に声を掛ける。

 

「待ってください! あなたの剣に心奪われました。どうか、私を弟子にして頂きたい!」

 

 そう言って頭を下げる。だが、待てど暮らせど返事は無い。不思議に思って顔を上げれば、彼は私を醒めた目で見つめていた。

 

「断る」

 

 そして告げられる無慈悲な否定。だが、この程度で諦められるわけが無かった。そこを何とか、お礼もすると彼に縋りつく。

 

「私は剣に加えて魔法を使うことも出来ます! 教えを受けるに足る実力くらいはあると思っています!」

 

「剣に魔法はいらん。お前に剣を教える意味は無い。お前は既に王都の剣術を修めているだろう。そこに俺の剣は必要ない。それに俺は俺の目的の為に旅をし、弟子を取るだけだ」

 

 何を言おうと、彼の首が縦に振られることは無かった。今思い返してみれば、私には魔法も剣も、というどっちつかずな気持ちがあった。魔法も剣も使える、ではなく、魔法も剣も極めていない。そんな私を師が拾い上げてくれるわけが無かった。

 当時、愚かだった私はそれに気づくことも出来ずに愚直に頼み続け、ついには彼に勝手に付き纏って剣技を学ぶとまで言ってしまった。

 

「……勝手にしろ」

 

 それを聞いた師匠の返答はたった一言。甘ったれた私の、覚悟とも呼べぬ覚悟を彼は見抜き、故に弟子とは最後まで言ってくださらなかった。

 だが、その言葉は確かに私が師の傍に侍ることを許されたきっかけとなったのだ。

 それからというもの、私は騎士としての仕事にしばしの暇をもらい、彼に師事した。彼は私に何かを教えてくれることは無かった。ただ、彼は毎日魔物を単身で討伐し、ギルドで金に換えては宿に帰り、剣を振り、宿の主人の頼みだからと薪割りに精を出す。私はそんな師の後ろに付き従い、師の剣を目に焼き付け、それをなぞるように剣を振った。

 

「素性も知れぬ男に師事し、元より修めた剣を蔑ろにする。騎士というのは随分と高潔な人間だな」

 

 ある日、薪割りをしていた師が、私を嘲るようにそう言った。私はその言葉に理由も分からぬまま激しく動揺した。師の言葉が何一つ否定出来ぬことに対する動揺だということに気付けぬまま、私は私以外の騎士をも愚弄されたと、師に向かって剣を向けてしまった。けれど、そのような曇った剣が届くわけもない。師はあえて私の剣を寸前で避けると、私を冷たい目で見下ろす。師だから避けられたものの、一歩間違えば罪もない人を斬ってしまっていたかもしれない。師の醸し出す威圧感と今更になって湧いてきた後悔で私は剣を取り落としそうになっていた。

 

「そうやってすぐに我を失う。その剣のどこに頂きがある? その剣のどこに矜持がある? お前の剣には心が無い。心の無い剣には芯が無い。芯が無い剣には鋭さが無い。鋭さの無い剣では魔物は斬れん」

 

 師の言葉一つ一つが私を打ちのめし、私はついに剣を取り落として地面にへたり込んでしまった。ここで私は師によってついに高くなっていた鼻を、無意識に持っていた愚かしいプライドを完膚なきまでに打ち砕かれたのだ。

 そんな私の前に、師は剣を放る。

 

「それでもなお魔物を斬りたいと言うなら剣を振れ。手が爛れ、足腰が立たなくなろうと休むことは許さん。俺が振り終えるまで、剣を振り続けろ」

 

 そう言って師は私の横で素振りをする。これが師を師と呼ぶための最後のチャンスだと私は死に物狂いで剣を振る。だが、迷いなく、音すら置き去りにする師の剣に比べ、私の剣は醜く、どこまでも遅い。そんな私を見かねたように、師は敢えて私でも見えるように遅く剣を振ってくれる。私のような半端者の師になどならぬと言いながら、師は私を気に掛けてくれていた。そのことに気付いた私はそれからいくら掌から血が滲もうと彼の軌跡をなぞるように剣を振る。

 

 その日から、師は私を弟子とは言わないまま、けれど私に修行をつけてくれるようになった。言葉によって私の弱い心を突き、剣を以て脆い技を指摘する。そして魔物に立ち向かう心と技を私に授けてくれた。

 

「魔物を斬るのに魔法などいらん。魔法を唱えれば呼吸が止まる。呼吸が止まれば剣もまた止まる」

 

 私の理解を遥かに超えた師の剣理は、しかし実践してみれば身体に馴染む。呼吸のように自然に剣を振る。剣が身体と同一化するように、そうすれば詠唱などせずとも剣は魔力を纏い、魔物を断つ。師の剣に返り血が付かないのは極薄く、均一に纏わせた魔力がそのまま刃となるから。師の剣は師の魔剣を引き出す触媒、ただの手の延長に過ぎないのだ。

 その理を私の身体に落とし込めば、いつしか魔物を前にして身体が震えることは無くなり、魔法に頼らずとも魔物を断てるようになっていた。それを見て師はようやくか、と小さく笑ってくれた。

 そのように師はまるで剣の神か精霊と思うような浮世離れしたところを見せたかと思えば、私が疲れ果て、倒れている間に女を買うような世俗的な面もあった。師に求められれば、この身体程度いくらでも差し出すというのに、何故商売女のところに行くのか、疑問半分嫉妬半分で師に聞いたことがある。

 

「俺のような人間すら受け入れようとする彼女らをそう見るか。そう思っているうちはまだ青いガキよ」

 

 このときに師から言われたことが理解出来ず、後から実際に風俗街に足を運んで師が買っていた女に話を聞いた。

 

「あの人? あの人はあたしみたいな年増を何人も救ってくれた救世主さ。春売りに身をやつして、それも()()が立ったあたしらをどこまでも優しく抱いてくれたのはあの人くらいのもんだよ。相場の何倍もの金まで払ってね」

 

 師はどこまでも人への愛に溢れていたのだと思わされた。師の目はいつでも弱い者に向けられていた。魔物に怯える人々に、王都でその日の暮らしにも事欠きそうな人々に。

 それを聞いてからは私は浅ましくも師に近づこうと考えてしまった。今ですら恵まれているというのに、それ以上を求めようとしてしまったのだ。けれど子供の憧れのようなその感情は師にはお見通しであったらしく、あっさりと流されてしまっていた。そんな対応にますます躍起になってしまったのだから師に相手にされない子供なのも当然だった。

 

 私は師の素晴らしさを他の騎士にも知ってもらうべきだと、ついには同僚にまで師のことを話すようになっていた。そこには師の素晴らしさを知らしめようとする心以外に、私の幼い欲望も含まれていたことに気付いたのは、師が宿の主人に私宛の手紙を託して王都を発ったと知った時だった。

 

『野暮用を片付けに北へ向かう。お前が俺の弟子を名乗るのなら、騎士として人々を導く灯くらいにはなっていろ』

 

 師はどこまでも私の心を見透かしていたのだった。

 

 それからというもの、騎士に復帰した私は師の教えを守り、騎士として弱者を守り、そして私の部下にも師から得た剣理を伝えることに腐心した。人々を導く灯。それは師が私にしてくれたように、人々が行く道を照らす道しるべとなり、そのような道しるべを増やしていくことだと私は解釈した。

 私が上級騎士となった頃に師の剣理をほんの僅かなりとも身につけられた部下はたったの四人しかいなかった。だが、その四人は二人一組であれば危なげなく粘獣(ねんじゅう)すら狩れるようになったのだ。

 そして私は騎士団の歴史上初めてである遊行騎士となった。騎士団を率いることが出来る地位にありながら、単独で動くだけの実力を持ち、独断行動すら許される騎士となったのだ。

 

「これが私と師についてとなります。最後まで弟子と呼んでもらえなかった不出来な妹弟子で申し訳ございません、ノックス様」

 

 私はそう言って目の前に座る人物に頭を下げる。この方は貴族としても、師の弟子としても私の目上であるが故に。

 

「今のあなたを見て誰が責められるでしょう。それに、師に認められていないと言う意味では我々も皆一緒ですよ。誰一人として師に同道することを許されなかったのですから。長兄であるソーンやアルシェ、ノルンですらね」

 

 穏やかに笑うノックス様。そんな彼の周囲にはソーンと名乗る赤毛の青年、鏡写しのように顔の似たノルンとアルシェという白黒の双子、更にはフェアハウト辺境伯家の精強な騎士団でも随一の実力を持っており、王都でも筆頭騎士間違いなしとまで噂されたローエン殿までいる。皆、師の薫陶を受けた私の兄弟子となる。ノックス様達が私を訪ねてきた瞬間、彼らの放つ強力な気配が師の薫陶を受けたことを悟らせたのだ。

 

「それにしても、やはり師は北へ向かうと仰っていたか。僕の読み通りだな」

 

「ということはノックスの言う通り、師匠の目的地は極北山脈ってわけか」

 

「なら早く出よう」

 

「今この瞬間も師匠は私達の先を行っている」

 

「まぁ落ち着きなってお二人さん。ノックス様もお考えがあってのことだ」

 

 ノックス様とソーン様の言葉に私は師の野暮用に思い至る。

 

「そういうことか。師は、やはり人の世を導く光となるおつもりか」

 

「シャーレイも気付いたようだね。そう、そして僕らは師の剣理を身に付けた者たちでクランを結成した。僕らは未だ師の足元にも及ばない。そんな僕らが師を支え、師を助けようと思えば結束するしかない」

 

 そこまで聞いて私はノックス様の言わんとしたところを理解した。そして私にとってそれを断る道理など存在しない。そのような道理の存在を私は許容しない。

 

「では私もクランに加えては頂けませんか? 皆様と比べるのもおこがましい恥晒しですが、露払いくらいはこなしてみせましょう。騎士団に関しては私の部下に任せられます。師の剣理の一端を垣間見た程度ですので同行は出来ないでしょうが、王都近辺の魔物を討つくらいであれば安心して任せることが出来ます。そして部下たちもその剣理を更に下の騎士達に伝えようとしてくれていますので、王都の守りは万全でしょう」

 

「やはりあなたは立派に師の志を継いでいますよ。僕達では出来なかった師の剣理を繋ぐことまでしようとしている。そんなあなたを穿神一刀流のクランに迎え入れられるのは僕らにとって願ってもない申し出です。僕らはあなたを歓迎しますよ、シャーレイ。共に師を支えましょう」

 

 私とノックス様は笑顔で握手を交わす。

 

 ああ、師よ。どこまでも浅ましい性根を捨てきれない不出来な弟子ですが、どうかあなたのお傍でお仕えすることをお許しください。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。