時雨の緊急任務 ~リベンジ~   作:雷電Ⅱ

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新年あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします

恒例の新春任務がありましたが、選択報酬の内、1つが四式重爆 飛龍。
表記は重爆となっているけど、四式は双発の爆撃機。重爆とは一体?


第3章 侵略
第11話 蘇る悪夢


 アジト

 

(おかしい……)

 

 メアリーと集積地棲姫が一悶着している間、博士は必死に考えていた。いくらテロリストでもここまで派手にする必要性があるのだろうか? 通常、テロやゲリラなどは目立たないよう戦うのが普通だ。例外はあるが、そういう者ほど長生きは出来ない。まして、警察や軍が来ているというのに、余裕そうである。

 

「副社長。超人計画は葬ったはずじゃ。どうやって蘇らせた?」

 

 博士の疑問は正しい。超人計画は深海棲艦の力を人間に取り込める計画である。深海棲艦は地球上の生物とは違う生態系を有している。それは核となる元素を取り込んでいるから、が定説である。深海棲艦は未知の元素を巧みに利用し超人的な能力を持っている。人類の武器が通用しないのも未知の元素が関係しているらしい。但し、海水がないと力を発揮できず、内陸だと力を失ってしまう。博士は、未知の元素を別の元素に組み替えて、それを基に兵器を作り出し深海棲艦に立ち向かうという案を見つけた。結果的に『開発資材』等と呼ばれ後に『艦娘』が誕生したことになった

 

 だが、『超人計画』は未知の元素をそのまま取り入れる計画だ。艦娘とは違い、猛毒を取り込む事になる。普通の人間……通常の生命では死に至る。運が良くて生きられたとしても醜い化け物になってしまい数日で死ぬだろう

 

 但し、克服すれば超人的な能力を身に着けるのだ。浦田結衣が第一号だが、あれは条件が良かったのと1万分の1という確率で成功しただけだ

 

「そうだな。世界各国は『超人計画』は非現実的だと判断した。破棄したか、倉庫に眠っているかだ。再開する訳がない。だが、運は私の味方をしてくれた。殺人鬼と機械人形が教えてくれたよ」

 

「機械人形?」

 

 武田は得意げに話したが、博士はさっぱりだった。大佐も同様だ。なぜ、放棄したはずの超人計画を復活させたのか? 無から生み出した? 

 

 

 

 鎮守府

 

 制圧組が行っている間、残された艦娘達は居残りである。長門が提督代理であり陸奥はサポート役をしている

 

「何かあったら連絡してくれ」

 

提督は出発する間は、艦娘を纏めないといけない

 

 ただ、ここの艦娘は結構自由である。テレビで野球観戦してるのもいれば、趣味に没頭している者もいる

 

 海外艦娘はもっと自由であり、ポーラは二週間禁酒命令を言い渡されたにも関わらず、無視して呑む始末である。ザラは必死になって止めていたが

 

 そんな中、鎮守府に客が来た。例の二人組の刑事だった

 

「提督は不在なのだが」

 

 長門はうんざりしていた。提督は警察と調整したはずだ。不在の間、来られてもこちらが困る

 

「すみません。気になった事を納得するまで調べるのが私の癖です」

 

「刑事の鏡ね」

 

 杉田刑事の謝罪に陸奥は朗らかに言った。鶴川巡査部長は数枚の写真を取り出し、机の上においた

 

「実は数週間前、田中容疑者と一緒に行動している人物が居ます。協力者と思い我々警察官は協力者の身元を割り出していますが、身元不明者です」

 

 写真に写っているのは、田中容疑者と共に歩いている女性の姿だ。その女性は黒いスーツを着ている。しかし、顔は整い過ぎており、何だか不気味だ

 

「何だ、この人は?」

 

「私の推測ですが、これは新型の深海棲艦。それも鬼級かと思います。身元が不明どころか、生きていた痕跡が無い。尾行しても簡単に振りきられる始末です」

 

「警察の怠慢を隠すための言い訳ではないか? 深海棲艦は陸地に留まれない」

 

 長門は呆れながら言った。新型の深海棲艦は目撃されているが、ほとんどは海上だ。陸上型もいるが、それは海辺の近くか島のどちらかだ。人間に紛れる深海棲艦はいない。浦田結衣は深海棲艦とは言いがたい。深海棲艦でありながら艦娘の能力を兼ね備えているため例外扱いになっている。だとすれば、警察の怠慢だろう

 

「しかし、浦田社長は深海棲艦を使って世界を攻撃しようとしました。思想が受け継がれているなら実験を初めているのもおかしくない。そのため──どうかしましたか?」

 

 杉田刑事は説明を中断した。それも陸奥の方向に顔を向けながら。鶴川巡査部長もである

 

 長門は2人の目線を追いながら陸奥に振り向き、驚いた

 

 陸奥が真っ青になっていた。目は見開き、身体は石像のように固まっていた。ここまで陸奥が動揺しているのは始めてみる

 

 何時もは落ち着いた性格をしている陸奥が、ここまで動揺しているのだ

 

「陸奥、お前はこの人を知って──」

 

「な、何で……何でリリが……」

 

 

 

 陸奥は刑事が持っていた写真を見て驚愕した。見間違える訳がない。あれはリリだ! 警察が捕まえられないのも納得がいく! あれは人間ではないもの! ロボットだ! 尤も、この世界にロボットなんて存在しないから深海棲艦と間違えられるのも無理はない! 深海棲艦の産みの親が何で!? 

 

『艦だった頃の世界』で……いや、『陸奥が元居たの世界』とも言うべきか。その世界で一人の天才はある実験を行っていた。もし、あの実験情報を持っていたのなら……

 

(待って待って待って! 何でリリが田中なんかに。まさか……まさか……まさかそんな!)

 

 陸奥は最悪の事態を思い浮かべた。リリは『ある世界』において深海棲艦を産み出した存在だ。そして、ある天才は死者蘇生を研究していた

 

陸奥は小さな悲鳴を上げながら、長門の制止を振り切り廊下を走っていった

 

 行く場所は無線室。扉を思いっきり開き、無線機の前に座っている大淀からマイクを奪い取ると提督を呼んだ

 

本来ならコールサインを使うべきだ。本名階級だけでなく『提督』もである

 

「提督、聞こえる!? 陸奥よ! 応答して!」

 

「陸奥さん! 貴方は何をしているんですか!?」

 

 大淀は抗議したが、陸奥は無視した

 

 不味い! 非常に不味い! 

 

 軍の規律をほとんど無視しているのだから、罰則を食らうのは必須だ

 

 だけど、思い過ごしなら陸奥が罰を受けるだけだ。本当に不味い状況ならそうもいってられない

 

『私が人類の敵になる事で人間は互いに争いを止めるのです』

 

 リリが言っていた事をこの世界で実現するとなるととんでもない事が起こる

 

 あれは人類の敵ではない! それ以上だ! あろう事か、リリはかつての敵を甦らそうとしている! 

 

 

 

 装甲車では提督が無線で指揮を取っていた。提督は超人ではないため、仕方の無い事だった。指揮官がやられると現場は混乱する。隊長や旗艦は居るが、指揮する者が居ないとどうしようもない

 

 組織の運用はそう単純ではないのだ。かといって現場軽視は論外である。提督もテロリスト相手をこの目でみたいため後方支援でいる。それでも、長門達に止められた。指揮官は重要ポジションである

 

 提督が報告が来るまで待っていると無線機からけたたましい声が鳴り響いた

 

『提督、聞こえる!? 陸奥よ! 応答して! 提督!!』

 

 突然の出来事に提督どころか運転手も驚いた。無線で名前を呼ぶのはあまり宜しくない

 

「こちらネスト・ワン! 無線で名前を呼ぶな!」

 

提督は怒鳴った。陸奥は何をしているんだ? 

 

しかし、この後に続く報告に提督は愕然とした

 

『リリがいた! 提督、リリが居た! 総攻撃派は国を転覆させるためのテロじゃない! 田中はアイツを死者蘇生するつもりよ!』

 

「なっ?」

 

『あの副社長は、総攻撃派も平和党も興味ない。結衣が復活したら警察も軍隊も壊滅するわ!』

 

「おい、いい加減にしろ! ……人を蘇らせる事は不可能だと言ったよな?」

 

 提督はきっぱりと言った。どんなに化学が進歩しても死んだ人間を蘇らせることは不可能。艦娘でも不可能だ

 

だが、陸奥の意見は違った

 

『結衣は……元人間よ。深海棲艦と艦娘の力を手に入れた化け物に私達の常識や自然の法則が通用すると思う? それにリリは、死者蘇生を研究していた天才科学者を知っている! もし、何らかの形で研究データを盗んだのなら……』

 

 陸奥の言葉に提督は固まった。陸奥から聞かされた『以前いた世界』の話である。ある天才科学者が妻を甦らそうと研究していた事だ。彼がたどり着いたのは未知の物質と賢者の石である。しかし、蘇る事はなかった。誕生したのは、陸奥だった。艦娘の開発資材などは未知の物質から由来している。ただ、作り方は難易度があるものの、何なのかハッキリと分からない

 

しかし、高度な技術を持つ者なら可能だ

 

 人を蘇生させるのは無理。だが、怪物は別。メアリーの能力はモンタナ級戦艦だ。いくら強かろうが、結衣のようなバカげた能力は無いだろう。戦艦なら対処しやすい。しかし、結衣は別だ!狂ってはいるが、力は本物だ!

 

「まさか、テロ計画は全て噓。全てフェイク。武田の本当の目的は……。あいつは超兵器か超生物とでも言うのか!」

 

 無線の向こうで何やら揉め事が聞こえたが、提督は周波数を変えた。もう暗号化する必要もない。こんなことがあってたまるか! 

 

「全部隊に通達! 兵器使用は自由! 繰り返す! 兵器使用は自由! 標的の生死は問わん! 全員、奴らを止めろ!」

 

 無線や周波数のやり取りは決められている。提督は全部隊に聞こえる一般の周波数で呼びかけているのだ。当然、超人計画で力を手に入れたメアリーもテロリストも聞いているだろう

 

だが、そうも言ってられない

 

『提督、どうしたの!?』

 

『何なのよ、あんた頭でもおかしくなったの!?』

 

『提督さん、どうしたっぽい?』

 

時雨達は混乱しているのも当然だ

 

『おい、何をやっている? 作戦中だぞ』

 

『提督、この周波数を使うのは危険です。相手は軍隊相手に出来るほどの──』

 

 502部隊の曹長も沖合で待機している加賀も戸惑ったり抗議する声だったが、提督は

 

間髪入れず送信ボタンを押しながらマイクに怒鳴った

 

「田中の野郎、本当に浦田結衣を蘇らせる気だ! 奴は他国や過激派と協力しながら密かに死者蘇生の技術を確立させたのだ!」

 

 本当は少し違うのが、長く無線でダラダラと説明する訳にもいかない。なので、簡潔明瞭に伝えた

 

『そ、そんな。H44改は殺したは──』

 

「赤城、加賀! いいから攻撃準備をしろ! 鎮守府の全艦娘を戦闘準備させろ! 東京湾を封鎖しろ! いいな!?」

 

『いや、でも──』

 

「責任は俺が取る! 資源枯渇していいから戦闘態勢を取れ! アイオワは決戦兵器を身に着けて待機させろ! 基地航空隊に待機している一式陸攻と銀河の陸攻隊の大半の機体を爆装から雷装に兵装転換させろ! いいな!」

 

 

 

「どういう事?」

 

 建物に入った時雨達は困惑した。先に入った502部隊も同様だろう。なぜ、提督が無線であのような命令を出していたのか? 

 

 無線で問いただそうとしたが、命令は同じ。こちらの質問には答えない

 

 あれほど動揺している提督を聞いたことはあまりない。いや、時雨には聞いたことがある。だが、それは『失われた未来』だ。今は世界なんて崩壊していない

 

「提督、死者蘇生って言っていたけど?」

 

「いくら何でも無理です」

 

 川内は首を傾げたが、朝潮はきっぱりと否定した。艦娘でも無理である。いくら超人的な能力を身に着けても生命の呪縛からは逃れることは出来ない

 

 艤装を付けていない状態で心臓が止まれば艦娘も死ぬ。いや、艤装が完全に破壊されたら軍艦の力を失う

 

 死者蘇生は無理と明石も断言している。しかし、なぜ提督は浦田結衣を蘇らせると言ったのだろう

 

 時雨ですら困惑した

 

「そのはずだ。僕は見た。結衣が木端微塵になっていたのを」

 

「ええ。確かにあり得ません。死人が蘇るなら──」

 

 時雨も神通も偽の通信であると確信している時、銃声が聞こえた。弾は時雨の足元に着弾し、床に穴をあけた

 

 その場にいた者達は議論を止め、銃声がする方へ振り向いた

 

 人がいた。扉の方にニヤニヤとしながら立っている1人の男が。田中秦だ! 

 

「待って!」

 

 時雨が動き出す前に田中はすでに逃げていた。他の艦娘も慌てて後を追うが、田中はポケットから何かを取り出していた

 

 ドカーン

 

「きゃああぁ」

 

 後ろで爆発音と悲鳴が聞こえたが、時雨は分かっていた。あの部屋に爆発物を仕掛けていたのだ。後ろを振り向くと夕立達どころか床がない

 

『時雨ちゃん! 私の事はいいから、あの男を追って!』

 

 神通が無線で怒鳴ったが、時雨は止まらなかった。あの爆発程度では艦娘は傷すら追わないだろう。艤装を付けたらの話だが

 

 提督の無線から聞いて死者蘇生の現実味が帯びてきた

 

 なら、止めなくては! あの爆発は足止めだろう! 

 

 時雨は田中の後を追うが、中々追い付けない。兵器自由の命令は受けているので、手に持っておるゴム弾のライフルを使わなず、艦娘の主砲を使用した。主砲を発砲したが、相手は後ろにも目があるのかかわされる始末だ。壁や物置きが破壊されるだけで終わった

 

 廊下を走り、階段を下り、いくつもの部屋をかけた。そして、広い部屋にたどり着いた

 

 電気は通っているのか、ここは明かりがついている

 

「田中、手を上げて!」

 

 広い部屋には男が1人、背を向けて立っていた。田中であることには間違いない。かといって逃げるのを諦めた訳でないだろう。時雨は辺りを見渡したが、複雑な機械と化学の実験道具が置いてある

 

 研究室だろう。だが、今はそんな事で感傷に浸る訳にも行かない。どんな実験をしていたか知らないが、駆逐艦の主砲で破壊してやる! 

 

「従わないと撃つよ! 駆逐艦の主砲を受けたくないなら降伏して!」

 

 田中は手を上げない。ゆっくりと振り返る。時雨は威嚇射撃しようと引き金に手を掛けたが、時雨は凍りついた

 

 田中は右手に何かを持っていた。大きなガラスケースである。ガラスケースの上に取手があり、田中は時雨に見せびらかせるよう付き出した

 

 時雨は思考停止状態に陥った。ガラスケースに入っていたのは生首だ。だが、時雨は生首で驚いたのではない。それが誰なのか嫌でも知っている! 

 

『失われた未来』と五年前に艦娘を恐怖に陥れ、世界を攻撃した者。時雨に恐怖を与えた者

 

 しかも、生首なのに生きている! 本当にこの状態で生きている! 

 

 目は動き、口も開いた! 

 

「時雨、久しぶりだな」

 

「ゆ、結衣!」

 

 怨念が混じるような声が声が部屋に響き渡った。忘れようとしていた記憶が無理矢理掘り起こされ、時雨は金縛りにあったかのように動かない。攻撃しないといけないのに、動けない! 

 

 固まっている時雨に対して結衣は生首のまま喋り出す

 

「見ろ、私の姿を。まだ再生途中とはいえ、こんな情けない姿を敢えて見せる。それは、世界は私を必要としているからだ。死んでも世界にとって私が必要なのだ。生き返る技術や能力を手にしたからには、私はやるべき仕事がある」

 

「そんな事はない! お前は──」

 

「違わない。私や兄が死んでから年月は過ぎたが、艦娘は周りからどう思われている? 機械人形から得た情報からは面白いものだったぞ。艦娘不要論や総攻撃派など面白い思想があるではないか」

 

 時雨は何とか反論しようとしたが、結衣が生き返っていることへの衝撃で上手く話せない。結衣が行った非道な行いが蘇ってくる

 

「なんで……生きて……」

 

「ああ、俺が H44改の残骸を拾ったんだ。頭部の一部と左腕が」

 

 時雨の疑問に田中が答えた。左腕……もしかして、僕が結衣の左腕を撃って吹っ飛ばしたのを拾ったのか!? 

 

 確か提督からは石化したのを武蔵さんが攻撃して跡形もなく吹っ飛ばしたというのを聞いたが……田中はどさくさ紛れて残骸を拾ったのか!? 

 

「結衣、僕はお前を──」

 

「再び殺すのか? だが、安心しろ。私はそう簡単には死なない。そしてお前をただ倒しただけでは私は面白くもない。艦娘計画……いや、艦娘や深海棲艦がいなければ私はこんな力を手に出来なかったのだろう。そして、私を必要としている者もいる。どんなに危険な力であろうが、人はその力を欲するものだ。特に世界を制する者や国にとっては」

 

 時雨は否定しようとするが、中々反論できない。時雨の頭は既に混乱している

 

「だから時雨。お前のエネルギーと艤装と強運を奪う。私の肉体と艤装を再生する糧となる! それが宿敵の礼儀!」

 

 その時だった。結衣が言い終わらないうちに田中の背後から何かが飛んできた。姿形からして人だ。しかし、時雨はそれが人ではない事に気づいた

 

 両腕は金属製になっている。これは何だ!? 機械なのか? ジャンプしたらしいが、どうみても人の飛びかたではない

 

 しかし、時雨はこんな不意打ちな事は既に慣れていた。固まっている身体を無理矢理動かしてこちらに飛んでくる敵を迎撃した。

 

 だが、対空砲火ではないため、引き金を引いたものはいいものの、弾は外れてしまった。相手は着地した所にすかさず機銃でお見舞いしたが、相手は平気だ。血すら出ていない

 

 女性らしいが、撃たれた所からは血は出ていない

 

(生き物じゃない?)

 

 時雨は持っていたライフルで殴ろうとしたが、相手は蹴りで銃を弾き飛ばすと時雨の喉に手をつかんだ

 

 呼吸が出来ないため時雨は振りほどこうとするが、相手の力は凄まじい。感触からして機械だ。駆動音も聞こえる

 

 こんなものはみたことがない! 

 

(な、何?)

 

 時雨は意識が薄れていくのを堪えながら抵抗したが、相手は力を緩もうともしない

 

「世界平和のために人類共通の敵を生み出すしかないのです。そのためには浦田結衣を蘇らせる必要性があります」

 

「それは……違う」

 

 時雨は淡々と語る相手に対して否定した。だが、とても振り払うことが出来ない。相手の力は強力だ

 

「どうする? このまま窒息させて肉体と資源でお前の身体を作るか? それとも生きたまま解体でもするか?」

 

 田中は嘲笑ったが、なんと結衣が2人に非難したのだ

 

「リリ、田中。誰の許可で拷問を行っている?」

 

「ええ!?」

 

 意外な事に結衣は口走った。機械人間……リリというらしいが……も表情はないにしろ、驚いているらしい

 

「どうせ敵が来ているんだろう。それならやるべき事は1つ。あの肉体を乗っ取る必要がある。さっさと首を切断しろ。肉体だけでなく、パワーと強運も手に出きる。肉体は傷1つすらつけるな」

 

(マトモな人はここには居ないの!?)

 

 時雨は怒り狂ったが、本当に自分の首を切断されるかもしれない。決してハッタリではないだろう。結衣の首だけで艦娘を乗っ取りそうだ! 

 

 一方、田中は怖じけづいた。予想外なのか、それとも結衣から涌き出る殺気と睨みからなのか

 

「あ……ああ。分かった。リリ、さっさと切断しろ!」

 

「分かりました」

 

 リリは片方の腕を剣に変える。時雨は剣を見て戦慄した。本気だ。この人、僕の首をはねようとしている

 

 相手の手が首から離れた直後、鋭利な刃物が時雨を襲う。剣が振り落とされ首に到着する寸前、時雨は右手で剣を止めた。正確には艤装を盾にして止めた。右手には主砲が嵌まっている。装甲もあるため、いくら剣でも斬れる事はない。

 

 しかし、凄まじいパワーだ。右手に嵌めた主砲が不吉な音を立てている! 下手すると切断され右腕にまで達するかと思うほどだ

 

(不味い!)

 

 時雨が慌てたその時、剣が突然宙を舞った。いや、変形した剣が持ち主から離れたのだ

 

「艤装を使うまでもありません。誰なのか知りませんが、やるまでです」

 

 何と、神通が助けに来てくれた。あの爆発で穴に落ちても素早く登り、駆けつけたらしい。普段は大人しくても、実戦や演習時の教官は勇ましいものだ。しかも、いつもは左に差している魚雷発射管は刀に変わっている

 

「人でないなら、破壊するまで!」

 

 神通はリリを躊躇なく刀を振り下ろす。リリは応戦しようとしたが、呆気なく切断された。全て機械なのか、血ではなく歯車と金属の塊がバラバラになった

 

「居ない!」

 

 時雨は掴まれた金属の手が破壊されるのを確認すると振り払い田中に向けて砲を向けた

 

 だが、田中は既に姿を消していた

 

「何処へ行ったの!?」

 

「落ち着いて。……あれが貴方の悪夢ね。一人で動くとアイツラの思うつぼです」

 

 神通は乱射しようとする時雨を止めた。敵が逃げたのなら、弾薬を無駄に使う必要はない。その時、後ろから足音が複数聞こえる。誰なのか分かる。川内達が来たんだ

 

「時雨、あんた大丈夫?」

 

「僕の事はいい。生きている。田中と結衣を追わないと!」

 

 満潮は時雨に聞いたが、時雨はそれどころではなかった。生首とは言え、何が起こるか分からない

 

「待って、アイツは……結衣は生きていたの!?」

 

 川内は驚いた。驚くのも無理はない。川内も結衣が死んだ様子を見ていたからだ

 

「せっかく倒したなのに! また、あいつとやり合うなんて」

 

 いつもは夜戦ではしゃぐ川内だが、今は顔を曇らせている

 

「報告しましょう。提督、敵は──」

 

 神通も非常事態であることを認識したらしく、無線でありのまま伝えた。時雨も割り込んで状況を伝えている一方、他の艦娘は神通が倒した物を観察していた

 

「これは何でしょう?」

 

「機械っぽい?」

 

 朝潮と夕立は首を傾げた。見たことないものだから無理もない。それは『陸奥が転移する前の世界』において陸奥が出会った人型ロボットであった。神通が反撃されないよう斬ったため、今ではバラバラになっている

 

「無事なのはこれだけね~」

 

「いや、流石にそれを持っていても」

 

「人間のではないから大丈夫~」

 

 荒潮はリリの首を掴むと満潮達に見せびらかした。機械とはいえ、人間に真似て精巧に作られたことから皆は気味悪がっていた。ただ機能は停止しているらしく、動く気配もないことから問題は無かった

 

 

 

(再起動……現状把握)

 

 夕立たちが騒いている中、リリは気づかれないように再起動させて状況を把握した。どうやら、超人的な力を持つ人間に切断されたらしい。恐らく日本刀だろう。達人らしい。なので、今はおとなしくしておこう

 

 バッテリーは完全に破壊されたため、修復は不可能だ。数時間で機能は完全に停止するが、まだ挽回は出来る。人類の敵を生み出すために!




神通「一刀三拝。修練の果てに無限に至る」
時雨(何処かで聞いたことがあるような……Fateで……)

新年早々、敵(オリ敵)が蘇ってしまいました。しかし、まだ頭部しか再生できていないから倒せるはず……
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