時雨の緊急任務 ~リベンジ~   作:雷電Ⅱ

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迎春任務もイベントも終了した私です
今回のイベントは鬼畜でしたが、アーケード版では面白いことになっています
アーケードでも現在はイベント期間ですが、集積地棲姫を倒すための新装備『カミ車(特二式内火艇)』が実装されました。しかも、これ……動くんですよね(大発動艇(八九式中戦車&陸戦隊)も同じ)
水飛沫を上げて陸に向かい、上陸して砲を動かすと敵に向かって砲撃(しかもダメージが大きい)。集積地棲姫はアーケードでも泣いてもいい


第12話 動き出した敵

「田中を確認したんだな!」

 

『うん、確かに見た! そして浦田結衣もいた!』

 

 指揮車である装甲車の中では、提督が無線で指揮をしていた。田中がいたことには驚きはしなかった。想定内だからである。しかし、陸奥が言っていたリリと結衣が生き返った事には驚いた

 

(リリというロボットが死者蘇生のやり方を教えたのか? だが、やる事は変わりない)

 

 提督は無線からの報告を聞いても動揺はしなかった。それは、対策はしっかりとしていたからである。浦田結衣や浦田重工業を潰しても、超人計画は完全に消せない。過去にはアメリカがやろうとしていた。となると他国の諜報機関が何らかの方法で入手していると考えてみていい

 

(だが、超人計画は高度な技術と開発資材である未知の元素を開発しないといけない。特殊な方法無くしては無理だ)

 

 小国は無視していい。難易度が高いのとコストが割に合わないのが分かれば、研究は放棄するだろう

 

 となると手につける国は限られている

 

 幾ら人が艦娘や深海棲艦みたいに超人の力を手に入れようが、所詮は武器を持った生物。完全無敵ではない

 

「今度は死者蘇生しないよう死体は灰にしないとな。長門、誰か寄越せ!」

 

『もう送った! 数人が向かっている!』

 

 無線から長門は答えた。向こうも大騒ぎだろう。だが、首だけなら問題ない

 

(あれで生きているとは信じられんな)

 

 しかし、首だけなら問題ない。高度な知能を持つリリも神通が破壊した。後はしらみ潰しでテロリストを倒すのみ

 

 だが、敵の行動は提督の予想を超えていた。相手は既に準備はしていたのだと

 

 

 

「おい、これからどうする気だ?」

 

 地下の中を走る田中は瓶の中に入っている結衣の首に聞いた。逃げるのはいい。しかし、このままでは艦娘と軍に捕まってしまう。

 

 田中は数ヵ月前にロボットであるリリから死者蘇生について話を聞いた。内容はちんぷんかんぷんだったが、リリは高度な文明を持つ世界から来たらしい。そして、深海棲艦を産み出した世界でもあるという。その世界である科学者が、死者蘇生の実験を行っていたという

 

「G元素は不可能な事を可能にする物質。勿論、正確なやり方を行うことが条件」

 

 リリはあの日、死者蘇生の研究を教えた。聞くことによると、その元素やらは宇宙から来たものであるということ。その元素は生命を生み出すだけでなく、身体に取り込む事でその生物に多大な力と能力を与えるものであること。そして、水と結びつける事でパワーは更に増すものであるということ。その代償として、内陸ではパワーが落ちてしまうということ

 

「賢者の石の製造データは私がハッキングで入手しました。浦田結衣はG元素と結び付いているため、身体に負荷はかからないでしょう。成功確率は90%以上」

 

「深海棲艦みたいに撃沈しても蘇るって事か?」

 

 田中は何とか説明を飲み込むと思い付く限り聞いた。聞いた話によると深海棲艦は、未知の元素によって生まれた生命体との事だ。武装も第二次世界大戦をモデルにしたらしい。何でも人類共通の敵であるためにはそらくらいの武装が相応しいだとか

 

「そう捕らえても結構です。教授は死者蘇生に失敗しました。ただの人間を蘇らせる事は無理です」

 

「つまり、深海棲艦の力を持った結衣なら出きるって事か!」

 

「頭部の一部が無ければお手上げでした。脳を再生しなければ意味がありませんから」

 

 リリは一欠片の石を掲げた。その石は脳の一部が石化したものだという。腕はおまけである

 

「艦娘が死者蘇生は出来るのか?」

 

「いいえ。G元素の含有率が低いので、死んだものを蘇らせる事は無理です。建造ユニットは無機物に命を吹き込みますが、魂までは復元出来ません」

 

 つまり、もしある艦娘が撃沈しても建造ユニットでその艦娘が建造したとしても別人との事だ。姿形は似ても中身は別人

 

「生き返らせるにはG元素を大量に投与する必要があります。しかし、G元素はパワーがある。人の体に耐えられるものではありません。仮に出来たとしても深海棲艦のように水中生命体として生きるしかないです。この世界でG元素を製造し加工する技術があるのには驚きましたが」

 

 リリは提督の先祖達が拘わったとされる『艦娘計画』に驚いていた。教授と同じく元素の力とその恐ろしさに気づいたらしい

 

 

 

 田中がそのような事を走りながら数ヵ月前の事を思い出していた。副社長が生きていた事には驚いていたが、一番重要なのは結衣だ。彼女がいれば、私の身も安全だ。軍隊警察を潰せば法律なんて無いようなものだ。倫理はとっくに捨てた

 

「そうカリカリするな。例の場所を行け。どうせ、一か八かだ。お前達だけでは無傷で艦娘を捕らえる事は不可能だ」

 

「じゃあ、どうする!?」

 

 田中は焦った。このままでは無意味ではないか! 

 

 結衣も田中の焦りに感じ取ったのか、落ち着かせようも宥めた

 

「いいか。お前はリリの指示で私の左腕をメアリーとかいう女に移植したな」

 

「あ、ああ……」

 

 メアリーイザベラは米露が産み出した『超人計画』の産物だ。武田はアメリカと接触し結衣の残骸ともいえる左腕を嵌めたのだ。その理由は1つ。米露は超人計画に手こずっていたのだ。結衣の力に魅了された両国は諦めず研究したが、成果は無しだ。そのため、武田は平和党と通して協力する事を持ち出した。交渉の末、米露は了解しニ大国の国家プロジェクトに参加できたのだ。メアリーの左腕は切り落とす事になったが。だが、結衣の左腕を移植した結果、メアリーイザベラは、深海棲艦と同等の力を手に入れた。米露は手を叩いて喜んだ

 

「リリは居ない。だが、アイツはやり方を残した。私の指示で動け。時間稼ぎも私がしよう」

 

 田中は結衣の言葉にはさっぱりだったが、無意味な計画ではないものらしい。無理だったら、結衣を見捨てる。その程度の人物だったということだ

 

 だが、違っていたら……

 

「分かった。何をすればいい」

 

「無線機で武田を呼び出せ。そして、連絡しろ」

 

 

 

「分かりました。皆さん、今から二分割します。川内姉さんは朝潮型を率いて田中を追跡。私と白露型で天龍達救出とメアリー殺害を実行します」

 

「殺し屋のようなことをするの?」

 

 提督からの無線を聞いた神通はテキパキと命じた。ここからは二手に分かれることになった

 

「川内姉さんは生首を持った田中を。私は502部隊を援護、モンタナ級の能力を持ったメアリーと天龍達を救出します!」

 

「分かった!」

 

 いつもははしゃいでいた川内が、今回は素直だった

 

 兎に角、時雨達は502部隊の方へ行った

 

「神通さん、どうして田中を追わないのですか?」

 

 走りながらも時雨は神通に質問した。確かに超人計画に成功したメアリーを倒さないといけない

 

 だが、神通は違っていた

 

「多分、田中と武田副社長は総攻撃派と手を組んだだけ。利用しているのよ」

 

「利用? 確かに平和党や総攻撃派は艦娘までも敵視しているけど……え? まさか!」

 

 時雨は憶測をたてていたが、まさかと思い声をあげた

 

「利用したのは平和党ではない。副社長の方よ! 艦娘である私達をおびき寄せただけ!」

 

「じゃあ、メアリーという人ももしかして……」

 

 何時もは穏やかな口調をする村雨も青ざめた

 

「浦田結衣を蘇生させることが目的! 軍隊警察はダシよ。デモンストレーションかも知れない。目的を達成したら用済み!」

 

 時雨達は走った。普段から持久走で足を鍛えていたことに今回は感謝している

 

 もうすぐしたら、広場に付くはずだ! 

 

 

 

(結構いやがる)

 

 物陰に隠れながら曹長は、心の中で悪態をついた

 

 見張りを一人一人、隠れながら倒していたため、こちらの存在には気づかれていない。その代わり、予定よりも時間がかかってしまった

 

 広場には人が多い。攻撃は出来るが、メアリーがいる。真っ黒い艤装も装着していることから、浦田結衣と同じ超人計画で成功した一人なのだろう

 

 どうしようか判断に迷っていると、艦娘を閉じ込めた檻は突然浮いた。いや、クレーンにつり上げられていた。ホッとしたのも束の間、動く方向の先に目をみた曹長は驚愕をした

 

「なっ! 何を考えているんじゃ!」

 

 拘束された博士は喚いていたが、曹長も同じことを叫んでいただろう

 

 檻に待ち受けていたのは、廃車となった自動車や粗大ゴミを破砕する為としか言いようがないオーバースケールな大きさの黒々と黒鉄色に輝くライオンシュレッダーだった。突然の出来事に暁達は泣き、天龍は怒り狂っていた

 

「テメー、俺達にこんなことをして只で済むと思うな! 地獄に送ってやる!」

 

「その前にお前達をスクラップにしてやる。不要な兵器は、そうやって捨てる。後で集積地棲姫も送るから地獄で仲良くやってくれ」

 

「フザケルナ!」

 

 集積地棲姫は怒り狂っていたが、何重にも鎖を巻かれた状態では、身動きも出来ない。武田は指を弾くと一人のテロリストがクレーンに向けて十を銃を向け引き金を引いた。弾はクレーンに当たったのか、檻はライオンシュレッダーに向けて落下していき……突然、広場から何かが勢いよく飛んできて檻は横へ吹っ飛ばされた。檻はひん曲がりなかにいた天龍達は悲鳴を上げた

 

「何をするんだ、人殺し!」

 

 檻に突進していたのは時雨だった。誰かが投げたのだろうか? それとも勢いをつけて走った? 

 

 皆が唖然とする中、時雨は艤装に搭載されている火器を全て発射した。照準を会わせていないため、命中率は低い。その代わり壁や物置に命中して破片がテロリスト達に降りかかる。少し遅れて神通達が突進していた。兵士ではないため、銃撃戦はあまり得意ではない。しかし、辺りを破壊するのは得意だ。特にここがアジトなら問題ない

 

「今だ、応戦しろ!」

 

 怒号の展開に部隊は呆気にとられていたが、曹長は気を取り直すと部隊に指示を出した。銃撃戦が発生したが、時雨が滅茶苦茶に撃ったお陰で制圧しやすかった

 

 優先的にメアリーに攻撃したが、メアリーは砲塔を動かす前に左腕を抑えた。そして、床に倒れ込み悶絶したのだ。何があったのか? 超人計画の副作用か? 参戦しないのであれば、他を制圧させるだけ

 

 時雨は怒っていた。武田とメアリーを捕らえるために広場に向かったが、なんと天龍達をひき肉にしようとしていたからだ。余りの残酷な処刑に時雨は咄嗟に動いた。人生でこれまでに無いくらい走った。島風との駆けっこに勝っていたかもしれない。火事場の馬鹿力とはこのことだろうか? 

 

 走りに走ってこちらに気づいたテロリストを体当たりで吹き飛ばし、そのままライオンシュレッダーの手前でジャンプをし、落下している檻を体当たりしたのだ。檻は破壊され、なかにいた艦娘は目を回していた。生きているから問題ない

 

 神通達は兵士ではない。しかし、制圧させることは可能だ。幸い、奇襲したお陰で味方に被害はない。あるとすれば、夕立がテロリストに放った犬に噛まれた

 

「夕立……痛い!」

 

 夕立の右腕に噛みつかれた犬を追い払おうと時雨が掛けよったが、犬は時雨にも襲った。左腕に噛まれたため振り払おうとしたが、銃弾が犬に命中。犬は悲鳴を上げたと同時に絶命した

 

 広場では、既に502部隊が動いていた。スタングレネードを投げ込み、テロリストを包囲した。抵抗する者や人質を盾にする者は射撃をしていて無力化に成功した。天龍は暁達を庇うようにして守っていたが。テロリスト達は敵わないと感じたか、武器を捨てて降伏した。その場にいたアメリカ人も平和党首もである

 

 しかし、一人だけ違っていた。メアリーは床に倒れ込んで動かなくなったままだ。気絶したのだろう。呼び掛けにも全く反応しない

 

「ここは包囲した! 全員、武器を捨てろ!」

 

「おい、来るのがおせーぞ!」

 

「無事じゃ!」

 

 曹長は広間に響き渡るように怒鳴った。テロリストの戦意を喪失させるためである。返事した者はいたが、知り合いだ。縄で縛られた博士と大佐を解放し檻に閉じ込められた天龍達も外へ出した。中から出てきた天龍は不平不満を言っていたが

 

「遠回りしていた。怪我はありませんか?」

 

「まさか部下に助けられるとは」

 

 大佐は感謝していた

 

「龍田が怪我を、あきつ丸もボコボコにやられて気を失って……あの変な戦艦に酷い目にあった」

 

 天龍は何故か突然倒れたメアリーに指を指した。隊員が銃でつついたが、反応がない。一方で気を失っていた龍田は意識を取り戻していた。怪我はあるものの、歩けるらしい

 

「そうか……ところで、まさかお前が生きていたとはな。浦田元副社長」

 

「生きて悪いか?」

 

「いや、嬉しいよ。お前を牢獄に送り込めるからな」

 

 曹長は降参している武田に近づいた。両者はにらみあっていたが

 

「よくまあ、バカな事をしたものだ。これから警察に引き渡す。超人計画であるメアリーイザベラは、人に戻す。集積地棲姫はこちらが引き取る。それでいいな?」

 

 曹長の言葉に米国人が動いたが、隊員な止められた

 

「超人計画は危険な代物だ。拒絶反応したお陰だろう」

 

「フフフ……そうかな?」

 

 武田はニヤリとした。何か名案でもあるのか? 軽く身体検査をしたため、隠し武器は持っていない

 

「気を付けろ。気を失っている隙にメアリーを封印しなくては」

 

「いいぜ。手伝うよ」

 

「暁も頑張るから!」

 

「艤装を外す手伝いをする」

 

 動いていないとはいえ、巨大な艤装は鉄の塊。時間はかかるらしい。隊員はテロリスト全員に手錠をかけた。

 

「おい、私を誰だと思っている!」

 

「政治家がテロリストと組んではいけないと習っていないようだな」

 

 大佐は呆れたようにため息をついた。まさか、平和党首という政治家がいるとは思わなかったからだ。野党とはいえ、国会では結構過激な事を言っていたが、裏でこんなことをしていたとは

 

 そんな騒動の中、曹長は浦田元副社長に聞いた

 

「さて、1つ質問がある。なぜ、こんなバカな事をした? 日本が嫌いになったのか?」

 

「いいや、これは一歩前進だよ。何しろ、ここにいるテロリストや平和党は使い捨てだからな。そこにいるアメリカ人も」

 

 予想外の回答にそこにいた皆は唖然とした。使い捨て? 

 

「どういうことだ!」

 

「黙ってろ、平和党首! ……何が言いたい?」

 

 武田はハッキリと言った。手錠をかけているのに平然としている

 

「私からしたら、総攻撃派や艦娘不要論なんてどうでもいいのだよ。私の目的は1つ。浦田重工業の再建だ。以前は宗教みたいな存在だったが、今は違う!」

 

 武田の演説に皆は唖然とした。何を言ってるんだ、この男は? 

 

「ところで、そこのアメリカ人。なんで今回の超人計画が成功したか知ってるか? いや、いい。お前は下っ端だからな。答えてやろう。時雨が吹き飛ばした浦田結衣の左腕をメアリーに移植したからだ!」

 

 衝撃的な内容にその場にいた者達は驚愕した。アメリカ人も驚いたことから知らなかったのだろう

 

「だから、今回だけは成功した! いや、それ以上だ! 死者蘇生も可能だということが分かって私は狂喜したよ! 田中とリリのお陰だ! これでまた活動出来る! 世界平和のために!」

 

 何を言ってるか皆は分からないだろう。だが、曹長よりも早く博士は気づいた

 

「まさか!? ヴェールヌイ、ソイツから離れるんじゃ!」

 

「え?」

 

 ヴェールヌイが艤装についていた砲塔に手を掛けた途端、動き出した。砲塔が動きだし、メアリーも勢いよく立ち上がった。ヴェールヌイは何が起こったか、分からなかっただろう。メアリーの手がヴェールヌイに鷲掴みすると、勢いよく床に叩きつけられた。床はひび割れ、艤装は不吉な金属音をあげながら破壊された。響であるヴェールヌイは艤装を纏っていたため頭部は潰れはしなかったものの、脳震盪を起こして床にうつ伏せになったまま動かなくなった

 

「ひび──」

 

「下がって!」

 

 暁が掛けようとしたが、神通は引き留めた。響の近くにいた龍田も助けようとしたが、殴られたお陰で広場の壁まで飛ばされ、龍田は気を失った。神通は攻撃命令を出したが、メアリーの鋭い一言で固まった

 

「やっと、この身体を乗っ取レタ。ところで、久シブリだな。時雨、お前ハさっきぶりダガナ!」

 

「!?」

 

「分からないか? 私ダヨ!」

 

 神通は感じ取っていた。この人からとんでもない殺気を放っているのを。メアリーがとんな人か知らないが、如何に犯罪者でもこんな事は言わないだろう

 

 しかし、一部の者は違った。天龍は驚愕し、博士も502部隊も唖然としていた。一番驚いたのは時雨だった

 

 知っている人物だ! 

 

「まさか……浦田結衣!?」

 

「ソウサ。やっと戻ってきた。私ハこの身体を乗っ取ッタ。首だけと安心しきっただろう。だが、私にはテレパシーで深海棲艦を操るという能力がある。無論、コイツもな。これでこの世に生きていられる。左腕を吹っ飛ばしてくれて感謝しているぞ、時雨」

 

 メアリー……いや、浦田結衣は左腕を見せた。微かだが、腕の途中から肌の色が違っている。左腕を吹っ飛ばした? あの時に?? 

 

 時雨は引き金を引こうとしたが、結衣は突然呻きだし、右手で左腕を強く押さえた

 

「下がれ、亡霊め! 貴様、騙したな!」

 

「騙してなんかいないぞ。超人計画を成功させてやる、と言ったのだ」

 

 恐らく、メアリーの自我だろう。武田は銃を突きつけられてもトボけている。この状態を楽しんでいる。近くにいたアメリカ人も武田を睨み付けていた

 

 しかし、その一悶着も一瞬だった。メアリー……いや、浦田結衣はメアリーを完全に乗っ取ったらしい

 

 目はこちらに向けてしっかりと見据えていた

 

「これで私は自由ダ。副社長、ここを破壊してイインダナ?」

 

「構わんぞ。平和党もここにいるテロリストも全員用済みだ」

 

 恐ろしい提案に皆は戦慄した。テロリストは使い捨て? 平和党首も驚愕していた事から、これは知らなかったらしい。恐らく、利用されていたのは平和党とテロリストだ。狸と狐の化かし合いみたいなものだろう。騙されたのは平和党だ。

 

「生きたければ私と結衣についてこい。強いものが生き残る! 艦娘や深海棲艦を超える力で世界を変えるのだ!」

 

「黙れ!」

 

 曹長は怒鳴り射殺しようとしたが、結衣の方が早かった。18インチの主砲や副砲、対空機銃が一斉に火を吹き、辺りを破壊したのだ。戦艦の火力なので、あっという間に建物内は滅茶苦茶になった。その直前、時雨も他の艦娘も502部隊も一目散に逃げた。浦田結衣の狂気は知っていたからである。まして建物内である所だと戦いにくい。一旦、引くべきだと考えていた。曹長は浦田結衣が攻撃したため、咄嗟に逃げた。対空機銃の銃口がこちらに向いていたのを察知したからである。博士も大佐も隊員に守られながら脱出した。一方、テロリスト達は困惑した。思想と信念で銃をもって日本を変えるという意気込みで革命軍に入ったのに、まさか本物の怪物を目覚ませるとは思わなかったからである。

 

 そのため、反応が遅れてしまった。大半は崩れ落ちる瓦礫に下敷きになってしまった。逃げたものがいたとしても数名だろう。砲声と破壊音が響き渡る中、不機嫌そうなどなり声が聞こえた

 

「おい、少しは手加減しろ。私まで殺す気か!」

 

「すまない。だが、敵を集めてくれたことには感謝する。これでデモンストレーションが出きる!」

 

 メアリーを乗っ取った浦田結衣は、破壊された建物から出ると海に出た。もう用済みだ。これで自由だ! 

 

 

 

 外では大変な騒ぎとなっていた。テロリストの拠点を周り包囲していた警察官は突然、何が起こっているのか理解出来なかった。爆発音が聞こえ建物が破壊されたと思ったら、こちらに砲弾の雨が降ってきたのだ。パトカーの群れが爆発炎上し、警察官が爆風で飛ばされた。騒ぎに駆けつけたマスコミや野次馬もである

 

「避難しろ!」

 

 最早、テロリストを逮捕するどころではない。新設した特殊部隊が、この砲撃で全員殉職されたらたまったものではない。実は警察庁はこの事件で世間に向けてある披露を行うつもりだった。それは特殊急襲部隊の存在を公表するものである。五年前の浦田重工業の騒動を受けて、警察庁もテロ対策として特殊部隊創設*1を極秘に進めていた。今回のテロで裏切り者がいたが、汚名返上という名目で今回のテロ一掃に力を入れていた。横槍が入らないために軍を締め出した。深海棲艦の力を持った人がいるのは知っているが、艦娘の手を借りるなどと考えてもいなかった。理由は単純で手柄を横取りされるのを嫌ったからである。しかし、手柄をくれてやるという鎮守府の電話を受けて警察庁は困惑したが、本部長も了承した

 

 しかし、まさか砲撃を受けるとは思わなかった。いや、知識はあったが、ここまで熾烈とは思わなかった。重火器の存在はあったものの、どう見ても威力が違う。テロリストに戦車やカノン砲なんて持っていたという情報なんて無いし、聞いてもいない。それはメアリーに操っていた浦田結衣の仕業だが、警察官が知る由もない。結果的に警察の特殊部隊の披露よりも敵の強さをアピールする事となってしまったからだ。警察官もマスコミも野次馬も悲鳴を上げながら一目散に逃げた。そのなかには必死に逃げていたテロリストまで含まれていた。後になって勿論逮捕されたが、事情聴取で事実を効かされた刑事が驚いたのは別の話である

 

 建物崩壊で驚いたのは提督もである。装甲車が揺れたと思ったら、複数爆発音が響き渡ったと思ったら建物が崩壊したのである。装甲車に乗っていたため提督と同乗していた運転手は怪我をしなかったものの、装甲車は横転してしまった

 

「しっかりしてください!」

 

「何が起こった? 瓦礫の山は何だ?」

 

 運転手に引っ張り出された提督は外を見て驚いた。建物が崩壊してあちこちで瓦礫だらけである。火もあがっており、遠くではサイレンと悲鳴が響いていた

 

「最後の通信では浦田がどうの、としか聞こえなかったが」

 

 提督が悪態をつき辺りを見渡すと瓦礫の山から腕があった。よく見ると突き出している。もしかして……

 

「生き埋めになっている! 引っ張り出すんだ!」

 

 提督と運転手は駆け寄り、瓦礫をどかす作業を行った。すっぽり抜けなかった事から腕だけが飛ばされたのではない。しかも、手が小さいことから艦娘の誰かだろう

 

 提督の存在に気づいたのか、瓦礫から声がした

 

「提督ですか!? こっちです!」

 

「しっかりしろ! 引っ張りだすぞ!」

 

 提督と運転手は朝潮の手を掴むと無理やり引っ張りだした。普通の救助ならこんな行為はあり得ないのだが、艦娘だからこその対応だった。但し、擬装が付いている場合であるが

 

 数十秒後、土埃を被った朝潮が咳き込みながら現れた

 

「あ、ありがとうございます」

 

「ピンピンしている所を見ると、怪我はないな。何があった?」

 

 朝潮は提督の質問にハッキリと答えた。川内と朝潮達は田中を追跡。しかし、田中は地下道を掘っていたらしく、そこに逃げた。迷路であり、通路も狭かったためすぐに見失った。迷っていると、突然建物が崩壊したため、下敷きになったという

 

「──ということであります。田中はどうなったか分かりません」

 

「地下を爆破したのか! 川内達は何処だ!?」

 

「ここ……だよ……提督」

 

提督が慌てて辺りを見渡すと、別の瓦礫の山から声が聞こえた

 

「川内か!? 大丈夫か?」

 

提督が駆け寄ったが、川内の反応は予想外なものだった

 

「大丈夫……じゃないよ。こっちに来ないで。危うく……」

 

 川内は弱々しく言っていたが、その直後、瓦礫が大爆発した。提督達は慌てて離れたが、土埃と爆炎が収まると川内、荒潮、満潮、山雲が立っていた

 

「「「「危うく死ぬところだった!」」」」

 

「よし、川内達は生きているな」

 

「普通は死ぬか意識不明の重体で病院送りでしょう」

 

 川内達は生き埋めされた事への怒り声を上げ、提督は無事なのを確認した。このやり取りを近くにいた運転手は呆れていた

 

「神通達は!?」

 

「分からない」

 

 川内の報告に提督は焦った。砲声が聞こえていない事から攻撃はないだろう。遠くではサイレンと怒号が聞こえているが、自分達が駆けつけてもどうすることが出来ない

 

「神通達を探せ! 早く!」

 

 提督は川内に命令した。川内達が捜索している間、提督は現状を知るため装甲車から

 

 無線機を持ちだした。無線で知らせてくれればいいのだが……

*1
これはSATである。史実では1972年に発生したミュンヘンオリンピックでのイスラエル選手団人質事件で警察庁が重大事件に対処できる特殊部隊の編成を行う事が初めとされている。本作品では史実よりも早く誕生したことになる




私用のため少し遅れる事があります
早くて17日の週には投稿することになります
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