時雨の緊急任務 ~リベンジ~   作:雷電Ⅱ

13 / 76
皆さん、こんにちは。雷電Ⅱです
イベントも終わったと思ったら今度は節分任務です
飛龍をやたらと推して来るが、何かあったのか?
艦これアニメ二期は来年放送のようですが……どうなんでしょうね
アーケードは最近はやっていないです。コロナの影響で……


第13話 戦艦モンタナ追撃戦

 東京湾

 

「中々いい装備だ。H44よりも性能はいい」

 

 

 

 メアリーイザベラを乗っ取った浦田結衣が航行していた。レーダー、砲塔といった性能は良いものである。残念ながら、このモンタナ級戦艦に搭載されているガンは16インチ砲であったため、長門型なら兎も角、大和型となると厳しい。武蔵は超大和型戦艦に準ずる改二であることは先の戦いで知っている。また、艦娘や警察などが多数いるため、一先ず逃げるよう命じておいた。副社長とその一派は上手く逃げた事を信じるしかない。田中は別の任務を与えた。地下道で警察の手をまいたが発見されるのは時間の問題だ

 

「まずは東京湾から出よう。追って来ル者は……いや、1人居タナ」

 

 水上レーダーには一つの影がこちらに猛接近していた。誰なのか分かっていた

 

 あの姿を忘れた事はない。こちらの野望を打ち砕いた艦娘。それは

 

「結衣! やってくれたな!」

 

 白露型駆逐艦、時雨が結衣に猛突進してきた。単体という事は後先考えずに行動したな

 

 

 

 時雨は建物が崩壊して皆が逃げる中、途中で引き返した。村雨が何か言っていたような気がしたが、無視した。何を言っているのか分かる

 

 僕を止める気だろう

 

 だけど、僕は止まらない。モンタナ級の速度は高速。速度は兎も角、機動力や回避能力はこっちが上だ。だが、砲弾が一発でも命中されたら大破だろう。逃げられる保障がない。だけど、止めなきゃいけない。何が何でも。幸い、東京湾内だ。5年前と同じ、逃がすわけにはいかない! 

 

「結衣、やってくれたな!」

 

「時雨。お前は本当にシツコイナ!」

 

 時雨は突進した。相手の砲塔から火を噴いていない事から攻撃していない! なら、先制攻撃だ! 

 

 時雨は躊躇なく引き金を引いた。駆逐艦の主砲である12.7cm連装砲C型改二が火を噴き、砲弾は結衣に命中する。艤装や身体に砲弾が命中したが、弾かれるばかりだ! 通常の戦艦ル級どころか、鬼級や姫級でもダメージはあるのに! 

 

「深海棲艦と幾度と戦ったのに、結衣相手は効果無し……何で!?」

 

 時雨は舵を切り結衣から離れた。このまま砲撃しても無駄だろう

 

「ソンナモのか、時雨!」

 

 相手は主砲を一発だけ発砲した。その一発の砲弾は時雨の手前に着弾。巨大な水柱が立ち時雨は危うく横転しそうになった

 

『時雨、何をやってる? 奴はただの深海棲艦ではない』

 

「知ってる! 駆逐艦の主砲では戦艦にダメージを与えられないでしょ?」

 

 突如、無線から入ってきた提督に時雨は咄嗟に返答した。訓練や実戦で嫌ほど経験した

 

「この時のために訓練した! 実戦でも! だから主砲がダメなら次の手でやる!」

 

『時雨、何をする気だ?』

 

「何時もの手だよ。こうなったら急接近して至近距離から魚雷攻撃してやる!」

 

『な、何?』

 

 時雨は再び結衣に突進した。島風やタシュケントほどではないが、それなりに速度は出る。急接近して魚雷攻撃。実は時雨だけでなく、駆逐艦や巡洋艦など魚雷攻撃出来る艦娘がやるお家芸でもある。これは本来、夜間に行われる。真夜中に紛れ込んで、酸素魚雷をお見舞いする。接近してるため、回避は難しい。しかし、無誘導でもあるためかわされたら終わりだ

 

 本来はこのやり方は夜戦で行うものだ! 忍び込んで、魚雷を全弾発射する。それが駆逐艦巡洋艦などの必殺技! 夜間ではないが、条件に合っている! 61cm四連装(酸素)魚雷後期型はいつでも発射出来る! 念のため、魚雷を持ってきて良かった! 

 

「僕は君を倒す!」

 

「いいや、無理だね! 貴様ノ身体を貰ウゾ!」

 

 時雨は魚雷発射管を構え、結衣は主砲発射体勢に入った

 

 まだだ! まだ、この距離ではかわされる可能性が高い! 

 

(よし、今だ!)

 

 時雨が引き金を引く直前、モンタナ級の艤装が爆発した。突然の出来事に時雨は舵を切り、離れた

 

(弾薬庫の爆発? いや、違う)

 

 時雨は驚きながらも冷静に分析した。そして、爆発音に混じって木枯らしの音と発砲音が聞こえる。戦艦の主砲の砲声だ

 

 時雨は辺りを見渡すと遠く離れた所に山城がいた

 

「や、山城?」

 

『私が牽制するから時雨は逃げて!』

 

 無線では山城がワメいていた

 

 

 

 山城は時雨の無謀な行動に呆れていた。提督から時雨を連れてくるよう命じられたのだ。赤城加賀の艦載機は温存されたため、扶桑山城のうち、山城が救援することになった

 

 本来なら不幸と嘆く所だが、無線で時雨が怒り狂う声と結衣の嘲笑うのを聞いて真っ先に向かった

 

 瑞雲12型を飛ばした。爆撃するためではない。着弾観測するためである。瑞雲が搭載出来る爆弾なんて知れている

 

 牽制でも無視するだろう

 

「てっー!」

 

 試作41cm主砲が火を吹き、砲弾は結衣に命中。着弾率はまあまあであるが、これでダメージを与えるはずだ

 

 

 

「山城? 何で?」

 

『時雨、早く撤退して提督と合流して!』

 

 無線機から響き渡る山城の怒鳴り声に時雨は一瞬迷った。ここで頑張っても結衣を倒せない。恐らく提督なら作戦があるのだろう

 

「分かった。提督と合流する! 山城も急いで!」

 

 時雨は一目散に岸に向かった。これ以上、無駄な戦闘は避けるべきだ

 

 しかし、山城は動かなかった。動いても無駄と感じたのだ。あのメアリーイザベラに憑依した浦田結衣が山城に向きを変えたのだ

 

 16インチ砲全てが山城に睨んでいる

 

「不幸だわ……」

 

 山城が呟いたと同時に山城は爆発した。浦田結衣が放った砲弾全てが山城に命中、大破してしまった

 

 

 

「提督、ごめんなさい。勝手に突っ込んで」

 

「それはいい。罰則は後からだ。早急にあの戦艦を撃沈させるぞ」

 

 提督は時雨が岸に到着するや否や作戦会議を行った。満潮達も同じだ。時雨の無茶な行為には非難はしていない。夕張もいたが、どうやら提督の命令でこちらに来たらしい

 

「メアリー……いや、結衣だな。あの戦艦はモンタナ級だ。幸い、モンタナを知ってる艦娘もいるから武装も分かる」

 

 提督の説明に神通達は口を挟まず聞いていた。あの戦艦が東京湾から出すわけにも行かない! 

 

「何を企んでいるか知らんが、奴を逃がしてはならない。だが、奴は一人だ。あの頃と違って仲間は沢山いる! そして、奴を仕留める奥の手もある」

 

 提督は合図をすると夕張と提督の父親、博士が現れた。手には何かを持っている

 

「は~い。これが新型兵器です。対超人計画兵器。新型魚雷と結衣にトドメを刺す槍です!」

 

 夕張が持っているのは一見、普通の酸素魚雷だ。とても強力な兵器には見えない。しかし、よくよく見るとただの93式酸素魚雷ではない。

 

「えっと……これは?」

 

「これは93式酸素魚雷に音響追尾型(ホーミング)機能を取り付けたものじゃ。浦田重工業の残骸とドイツの技術の双方から得たものじゃ」

 

 夕張の代わりに博士は得意げに語り、他の艦娘は驚いた。ドイツの技術……U-511であるユーが持ってきたものか。FaT仕様である九五式酸素魚雷改という代物はあったが

 

「えっと……追尾機能がついているの?」

 

「そうじゃ。ドイツが使用しているG7TⅣ型の魚雷*1を参考にして作った。通常の魚雷と違って長距離で撃っても音を便りに自動的に追尾してくれるはずじゃ」

 

 博士の説明に皆は首をかしげた。はず? 

 

「ど、どういうことでしょう?」

 

「それは相手が対策されたら終わりなのよ。デコイ*2をばらまかれたら回避される。それに数が少ないの。だから無闇に撃たないで」

 

 神通の質問に夕張は答えた。現に未来ではホーミング機能を回避する方法は既にあるのだ

 

 こっちが強力な武器を持てば相手は対抗手段を使う

 

「だから、空と海の二面方向から攻撃する。ダメージを与えつつ、奴が浦賀水道に来たらトラップを作動させる。奴を大破させ航行能力を奪った所で、再生される前にこの槍を撃て」

 

 提督が長い槍を見せた。とても長い。天龍と龍田が持っているもの若干違う

 

「名前は付いていないが、管槍と呼んでいる。戦国時代にあった槍だ。コイツの刃にはあの時の解毒剤が染み込んでいる。本当は捕鯨砲のようなものが良かったんじゃが、解毒剤は熱に弱い。麻酔銃である注射針も威力が弱いから我慢してくれ。本来なら何らかの理由で深海棲艦になってしまった人や艦娘を元に戻すものだが、超人計画で使った薬品は違う。うまく行けば奴を仕留められる」

 

 提督の説明で皆はハッとした。時雨が思い付いたとはいえ、対抗策はある

 

「じゃあ、犠牲もなくアイツを倒せる!」

 

「まあ、相手はそんなに大人しいとは限らない。だから足止めとダメージを与えるために空と海の二面方向で挑む。航行不能になったところで拘束。お前らが槍を突き刺してやれ。艤装でも肌でもどこでもいい。理論上は薬品の関係で突き抜けるはずだ。ただ実際に効果があるかどうかは不明だ」

 

 どうやら、この槍は装甲関係なく特別仕様らしい。しかし、まだ分からないと言う

 

「東京湾の浦賀水道まで大破させるぞ。出撃しろ!」

 

 

 

 時雨達は結衣の後を追った。駆逐艦は速度が出せるため、追い付くことは可能だ。途中で倒れている山城を拾い、雪風が曳航退避した。結衣は艦娘をいたぶる性格があるのだが、今はそれどころではないらしい。別の艦隊と合流した。雪風、島風、由良など

 

「本当にこれが役立つのかしら?」

 

「今は提督達を信じよう」

 

 白露の疑問に時雨は答えた。本当に効果はあるかどうかは分からない。しかし、皆の練度は高い。普段はふざけあったり、遊んだりしているが、戦闘になると真面目になる

 

「あれをみて下さい!」

 

 雪風が上空に指を指した。上空には沢山の飛行機雲が引いていた。何なのかは分かる

 

「赤城さん達だ!」

 

 時雨は叫んだ。一航戦が放った艦載機だ。恐らく、足止めをさせるためだ

 

 時雨の予想通り、赤城加賀から発艦した艦載機だ。艦戦、艦爆、艦攻の大群である。しかも、機種も強力なものばかりで烈風改二、彗星二二型(六三四空仕様)、流星改(一航戦)の編成である。観測用に彩雲か数機混じっているのもいる。史実では活躍があまり活躍出来なかった機体がこの世界では稼働している。但し、艦娘仕様の艦載機ではあるが。だが、空母の艦娘が持つ艦載機は強力だ

 

「赤城さん、敵を目視で確認! 特徴からしてモンタナ級!」

 

『攻撃開始!』

 

「了解! 艦爆と艦攻は攻撃態勢へ!」

 

 攻撃許可を受け取った烈風改二の一番機の搭乗妖精は、各機に無線連絡した。艦爆は急降下爆撃をするため高度を上げ、艦攻は雷撃するために高度を下げる。烈風改二は敵機がいないが、警戒するために高度を取っている。一方、浦田結衣であるモンタナ級戦艦は対空砲火を盛んに発射していた。5インチ対空砲弾の1発が炸裂し、20mmや40mm機関砲が雨霰のように飛んでくる。レーダー射撃しているのか、狙いも正確だ! 彗星や流星改が対空放火に捕まり一機、また一機と落ちていく。しかし、妖精搭乗員は引かない。流石は一航戦である

 

「「「てっー!」」」」

 

 艦爆と艦攻の妖精搭乗員はモンタナ戦艦の近距離に近づくと爆弾や魚雷を投下した。結衣はジグザグに進んでいたため、ある程度はかわされたが、それでも大半は命中した

 

「全速力で回避!」

 

 爆弾や魚雷を投下したら、空母に戻る。だが、相手も何もしない訳ではない。逃げていく艦爆艦攻に対空放火を発射していった

 

『うわぁー!』

 

 次々と艦載機が撃ち落とされていく。距離をとればとるほど命中率は低くなるはずなのに、何故命中率はいいんだ? 対空ミサイルがないのはせめてもの救いだが、それが無くても全機撃ち落としている事も可能かもしれない

 

 しかし、そんなことを気にする余裕もない

 

「全艦、魚雷発射用意!」

 

 神通の号令と共に時雨達は魚雷を用意した。本来なら接近してから魚雷を発射するのだが、ホーミング機能があるので問題ない

 

「「「「「てっー!」」」」」

 

 時雨達は魚雷を一斉射撃した。酸素魚雷はロングランスとも呼ばれ、航跡も見えない優れものだ

 

 但し、誘導機能は無かったため当てるのは難しかったと言える。だが、威力は本物だ。現に命中さえすれば戦艦の撃沈も可能である。酸素魚雷の射程距離も長いため、問題ない! 

 

 必殺技とも言える魚雷全ては結衣に吸い込まれるように行き、水柱と爆音が立て続けに響き渡った

 

 

 

「ぐぁ! 魚雷だと!?」

 

 空からの攻撃を退けている中、後方で突然魚雷を受けた。慌てて反転したが、魚雷は吸い付くように来ている

 

「この威力……艦攻からではない! ホーミングだと?」

 

 魚雷をかわしながら結衣は考えた。音響魚雷なんて日本軍は開発していない。浦田重工業から技術を奪ったのか? しかし、半世紀先の未来の技術をモノにしたとは考えにくいが、不可能ではない

 

「チッ……技術進歩という奴か。なら、早めに深海棲艦を操らないとな。何処だ……」

 

 結衣はレーダーをフル活用して探した。そして見つけた。軽空母ヌ級を中核としている艦隊が関東近海に航行しているのを見つけた! 恐らく、この騒ぎで姫の誰かが偵察しているのだろう

 

(よし、コイツラと後は試作戦闘機で何とか時間を稼ぐか)

 

 早速、準備を開始だ。軽空母ヌ級と隠し隠し持っていた場所から戦闘機を飛ばす! 

 

 

 

『五航戦、攻撃開始!』

 

『目標は戦艦。やっちゃってー!』

 

 一航戦である攻撃隊が引くと同時に瑞鶴翔鶴を中核とした空母艦隊が攻撃を実施した。アウトレイジで戦艦の足を止めるためである。相手にダメージを与えるためである。これは当然の事で戦争はスポーツではない。何しろ、相手はフェアな事をする者ではない

 

「了解、攻撃開始!」

 

 瑞鶴翔鶴の攻撃隊は攻撃態勢に入った。艦載機である艦戦、零式艦戦53型と艦爆の零戦62型(爆戦)、そして艦攻の天山一二型が攻撃態勢に入っていた。中には橘花改も含まれている

 

「よし、攻撃開始だ!」

 

 隊長機である妖精搭乗員は無線で攻撃を合図したが突然、後続機が爆発した。慌てて辺りを見渡したが、何かが襲ってくる

 

 それは……

 

『深海棲艦の艦載機だ!』

 

『ケツにつかれた! 助けてくれ!』

 

『待ってろ、今助けにいく!』

 

 無線では混乱したものの艦戦である零式艦戦53型が応戦した。この機体は零戦だが、あのエースパイロットである岩本の力が宿っている。本人ではないが、それ相応の力はある。現にたこ焼きとあだ名がつけられている深海棲艦の艦載機の大半は落とされていた。

 

「空母ヌ級が近くにいる! 翔鶴さんに近くの海域に空母がいるのを知らせなくては!」

 

 妖精搭乗員である隊長は、翔鶴に無線で空母を叩くよう進言した。これでは、作戦に支障が出る。空母ヌ級改eliteが近くにいては厄介だ。恐らく、結衣に操られたのだろう

 

 しかし、その中にはとんでもないものまで混じっていた

 

『何だ、あの機体は? 米軍機か?』

 

『いや、全部黒色だ! サラトガさんのものではない!』

 

『あれは……まさか!?』

 

 たこ焼きに混じって何かが飛んでいた。それは飛行機の形をしていた。形はサラトガやイントレピッドが持っているF6Fに似ているが、どうも違う。どこかで見たような……

 

 そして、まさかと思い無線で慌てて瑞鶴翔鶴に連絡した

 

「大変です! 深海棲艦の敵機に混じってF8FとP51Dが複数います!」

 

『P51? F8F? あのムスタングとベアキャット!?』

 

 瑞鶴は素頓狂な声をあげていた。まさか、F6Fの後継機であるF8Fが飛んでいるとは思わなかった。P-51Dマスタングも少数だが確認出来るらしい。アメリカ艦娘でもまだ持っていないのに、なぜ結衣が持っているのか!? P51D*3は兎も角、F8Fについては聞いたことがある。『艦だった頃の世界』において、米軍が開発していたF6Fの後続機である艦戦だ。レシプロ艦上戦闘機として最高峰の性能を誇っていた。しかし、配備される途中で終戦となってしまった。それ以降はジェット機の登場により、F8Fは他国の空軍や民間に売却させられたのだ

 

 だが、飛んでいるのは紛れもなくF8Fだ。しかし、だからと言って呆気に取られてはいけない。翔鶴は直ぐにテキパキと指示を出した。

 

「新手の敵機接近! 空母部隊は警戒せよ!」

 

『いや、鎮守府にも来ている! 真っ黒なグラマンが!』

 

『Oh My God! P-51どころかグラマンまでコピーされるなんて!』

 

 蒼龍とサラトガの怒り声が聞こえた。どうやら、戦闘機の数機が鎮守府を攻撃しているらしい

 

『おい、何があった!?』

 

『提督! 敵機です! エネミーの空襲を受けています! F8FとP51Dがこっちに来ています! F6Fの爆撃戦闘機バージョンも数機います!』

 

『何だと!?』

 

 提督も驚愕していた。まさか、相手は戦闘機を隠し持っていたらしい。数は30機前後だが、機種は強力な戦闘機だ。超人計画の際に密かに作ったのか? それとも、結衣がリリに命じて作らせたものなのか? F5Uフライングパンケーキを作ったくらいだから、F8Fベアキャットを作れるくらい余裕だろう。結衣は空母ではなかったので五年前は作らなかった事か

 

『各隊、迎撃を開始! 制空権を維持するために敵機を叩き落せ! 艦爆や艦攻がやられる前に対空砲と艦戦を最大限に活用して雑魚を叩き落せ!』

 

 上空ではレシプロ機が入り混じっていた。空戦が発生した。レシプロ機の爆音と機銃音が鳴り響き渡った。いくつもの煙を引きながら落ちていく機体もある。数機がアメリカの艦娘もいるので、太平洋戦争とはわけが違う。敵の機体は黒く塗っているため、アメリカの艦娘の艦載機と同士討ちは無いだろう

 

「第二派、発艦準備!」

 

「雑魚に構っていないで敵を攻撃して!」

 

 赤城は攻撃隊を素早く艦載機を収容し、攻撃態勢に入る。いくら現場に離れたところにいるとはいえ、逃げられては意味がない。空では二つの勢力が張り合っていた

 

 

 

「ダメだ! ホーミング魚雷が反れてる!」

 

 時雨は苛立ちを隠せなかった。水柱が全て結衣の後方で爆発している。ホーミング魚雷は全て別のところに行っていると見て間違いない。空母ヌ級からの空襲は無いが、いつこちらを襲ってきても可笑しくない

 

「かといって無誘導の酸素魚雷ではあの距離では当たりません。それにダメージも致命的ではありません」

 

 神通は歯を食い縛りながら言った。ダメージを与えなければ意味がない。訓練を積んでも実戦で上手く行くとは限らない

 

 そんな中、提督からの無線が聞こえた

 

『神通、敵艦の様子は?』

 

「ダメです。敵の対空砲火と航空勢力がは強力でダメージを上手く与えられていません」

 

『このままだと夜になる。早められないか?』

 

「夜戦で挑むという手は?」

 

 急遽、川内が噛みついてきた。いや、本能で反応したのだろう

 

『無理です。損耗が激しくて速度を落とせません。敵機が邪魔をして上手くいきません』

 

 無線で加賀が答えた。別のところにいるのだろう。空母でも厳しいようだ。軽空母ヌ級は兎も角、F8FとP51が邪魔しているようでは中々ダメージを与えられない

 

「提督、案があるんだけど」

 

 時雨は思いきって進言した。このままだと厄介だ。なので、自ら考えていた事を上申した

 

『どうした?』

 

「陸攻隊をトラップではなく、今から攻撃すればいいと思う。このままだと小破すらならないからトラップが有効ではないかもしれない」

 

『空戦が行われている中に陸攻隊を出すだと? 危険すぎる。全滅したらトラップで大破出来ない可能性がある。それこそ作戦が失敗する』

 

 提督は即座に却下した。一式陸攻や銀河は双発の爆撃機だ。『艦だった頃の世界』でもイギリスの戦艦を仕留めるなどの戦果を出している。しかし、単発の航空機……彗星や流星改に比べたら機動力が劣る。敵機がいる。そして対空砲火も強烈な状況で陸攻を出すのは不味い。だが、魚雷や爆弾が命中したら相手にダメージを与えることが出来る! 

 

『危険な賭けだ 。運任せなんぞ……』

 

「僕は昔、危険な賭けをした。それに敵は深海棲艦じゃない。狂った戦艦だ。ソイツさえ倒せばこっちのもの」

 

 時雨は淡々と述べた。確かに敵は深海棲艦ではない。深海棲艦と艦娘の能力を兼ね備え、克つ超人的な存在だ。性格も危うい事から野放しにさせるわけにもいかない。増して、能力が開化されたら手に終えない

 

 今は普通の戦艦だが、とてもタフだ

 

『……分かった。確かにダメージを与えた方が勝つ確率は上がるな。手は全て打つべきだ。艦戦を出来る限り多く上げてF8FとP51Dを倒せ!』

 

『正気? でも、悪くないわ。確かにトラップ地点で失敗する確率は下がる』

 

 提督の決断に瑞鶴は驚いている。陸攻は消耗率が激しいのは知っていたが、それでも敵にダメージを与えてくれる

 

「ではお願い。敵を倒して!」

 

 時雨は願った。自分は駆逐艦だ。自身の能力なんて知れている。そのためにはバックアップが必要だ

 

『分かった。待機していた基地航空隊は直ちに離陸。陸攻隊は二式陸上偵察機の誘導に従って攻撃しろ! 空母機動部隊はこちらの動きを悟られないよう攻撃を続行。二航戦は基地防衛から攻撃に転じろ。防空は秋月達に任す』

 

 鎮守府の防衛は厳かになるが、敵は一人だ。幾ら強かろうが、数で圧倒出来る

 

『了解。一航戦及び五航戦は第二次攻撃隊を全て発艦。そのまま攻撃を続行』

 

 赤城の掛け声に妖精搭乗達は了承した。妖精は元からそのつもりだ。なので、VT信管の砲弾が来ようが、40mm機関砲が来ようが、怯まず突っ込んでいく

 

「うおおおぉぉぉ!」

 

 零戦62型に載っている岩井隊が雄叫びを上げながら戦艦モンタナに急降下して突っ込む。結衣は弾幕を張り、数機は叩き落としたが、ほとんどは無事に頭上に到着。爆弾の雨を降らせた。しかし、装甲が深海棲艦の仕様なのか中々ダメージを与えられない

 

 頭上では制空権争いは終わっていた。二航戦が近海にいる軽空母ヌ級を発見し攻撃をしかせた。軽空母ヌ級と随伴艦は抵抗したが、二航戦はヌ級を沈めるとさっさと引き上げた。コイツらだけを構う時間もない。F8FもP51Dも手強かったが、数が少ない事もあり、いくら高性能でも分が悪かった。数十分後には、全て叩き落とされていた。陸攻隊が飛来する前に叩き落とすことに成功した

 

『陸攻隊来る!』

 

『散開!』

 

 陸攻隊が到着したことにより、陸海の攻撃は中断した。味方の流れ弾で陸攻撃隊が撃墜されたら洒落にならない

 

 尤も、モンタナ戦艦の対空砲火は強烈ではあったが

 

『投下!』

 

『てっー!』

 

 二式陸上偵察機の観測により雷撃進路と爆撃進路に到着した一式陸攻と銀河は一斉に爆弾と魚雷を投下した

 

 だが、相手もそう簡単には逃さない。やはりVT信管や強力な対空レーダーを搭載しているのは間違いないらしく5インチ対空砲弾と対空機銃の餌食となって次々と食われていく

 

 ビスマルク追撃や大和武蔵のようにはうまく行かない。だが、小破まで持ってこられた

 

 

 

「陸攻だと!? あんなものまで用意していたとは」

 

 結衣は艦娘の力に驚いていた。五年前とは断然違う。艦娘も手強く、妖精とは言え、陸攻までいるのだ。ワンショットライターと言われた一式陸攻がいたが、こいつの火力は侮れない。何しろ、戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルスを撃沈した功績がある。当時の「作戦行動中の戦艦を航空機で沈めることはできない」という常識を覆したマレー沖海戦がそれだ。史実とは違い防御力も攻撃力も一新してるに違いない

 

「うまくメアリーの精神を幽閉したのはいいが、東京湾に出れるかどうか」

 

 あの時の敗戦は繰り返さない! 結衣は全速力で浦賀水道に向けて走った

 

 

 

『敵、浦賀水道に向けて速度を増速中!』

 

『よし、第三次攻撃隊で攻撃しろ! これで最後だ!』

 

 赤城と提督のやり取りを聞いていた時雨は手を握りしめた。今のところは作戦は順調だ。これなら勝てる! 速度は速いため、距離が縮まないが、トラップ地点まで

 

「よし、これで追い詰めた!」

 

「時雨、まだ油断しては行けません」

 

「うん、分かっている」

 

 顔に出たのだろう。神通に注意された。だけど、あんな強敵が倒せるのを考えると興奮を抑えられなかった

 

『敵、トラップ地点まで50メートル!』

 

『いいぞ。アイツの呻き声が聞ける!』

 

 報告の中、誰かが無線で呟いていた。恐らく、天龍だろう。今は療養中だから無線を聞いていたのだろう。しかし、提督も誰も咎める者はいなかった。時雨も同じだった。いくら作戦や規則だろうが、こうした緊張している状況で平常心を保てない。感情があるかぎり、それは難しいだろう。ある意味、艦娘も人間と同じである証拠でもあった

 

 

 

 トラップ地点まで後数十メートル。結衣が見破られるか、それとも成功するか

 

 

 

 それは誰にも分からない

 

 

*1
WWⅡのドイツが開発したG7の魚雷の種類は複数あるがTⅣ型である音響追尾魚雷は大戦果を挙げている。遣欧潜水艦(伊8)が運んだ酸素魚雷にドイツ海軍は大して興味を示さなかったのはそのためである

*2
但し、音響ホーミング魚雷であるTⅣ型は当初、成果を挙げたものの連合軍側もすぐに音響ブイを開発し、魚雷を回避している

*3
第二次大戦最優秀戦闘機といわれており、エアレースなどで現在でも空を飛んでいる。アメリカの俳優や資産家などが自家用機として所有している事もある




提督「雑魚を叩き落せ!」
赤城「雑魚に構っていないで敵を攻撃して!」

P51D「雑魚って……」
F8F「えー……」

時雨「何か敵の戦闘機が落ち込んでいるけど」
神通「そっとしてあげましょう」

F8FもP51Dも強いよ。でも、数が少ないから仕方ないね。艦これで実装もするんじゃないかな?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。