時雨の緊急任務 ~リベンジ~   作:雷電Ⅱ

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前話では敵であるモンタナ戦艦をやっつけましたね
メアリー・イザベラという敵はね


第15話 正体不明の敵艦出現

 メアリー・イザベラであったモンタナ級戦艦が大爆発を起こし撃沈する様子を艦娘達は見ていた。姿形は違っても五年前と同じように倒せた。それも仲間と共に

 

「やった……今度も撃沈する者がいなくて」

 

「時雨はあの後、消えたでしょ」

 

 川内が訂正していたが、時雨はどうでもよかった。大破する者はいたものの、被害はそこまでではない

 

「あいつ、本気で殴って痛かったわ」

 

「村雨、大丈夫?」

 

「そんなことより、もう無茶しないで」

 

 村雨の指摘に時雨は頷いた。もう無茶するほど、必死に戦わなくていいだろう

 

 

 

 その後、時雨達はテロリストがアジトに使っていた港施設へ向かった。正確には、元施設といった所か。結衣が暴れて施設をほとんど吹き飛ばしたため、今は瓦礫と化していた。警察と軍が現場検証をしている。提督と数名の艦娘は其処にいた

 

「やり遂げたな。モンタナ級戦艦を倒せるなんて」

 

「皆が信じてくれたから」

 

 時雨はホッとした。あの後、接近していた補給ワ級や軽空母ヌ級を掃討するために赤城達が対応した事。大破した者は入渠した事は言うまでもないだろう

 

 残りは鎮守府に留まるように伝えた。長門は数人の艦娘を引き連れてモンタナ級戦艦のサルベージを行った。浦賀水道だったため容易だった

 

 

 

 メアリー・イザベラ本人は既にいない。艤装は既に動いていないが、艤装は化け物としか言いようがなかった

 

「モンタナ級の戦艦を改造した感じね」

 

「H44の残骸と似ている」

 

 アイオワと明石は打ち上げられたモンタナ戦艦の艤装をマジマジと見ていた。モンタナ級戦艦は建造中止された軍艦だ。それを『超人計画』を使って建造したのだから、米艦娘にとっては複雑だ

 

「そういえばテートクは何処ネ?」

 

「まだ現場にいる。念のため、陸奥たちが迎えに行っている」

 

「Shit。私も行きたかったです」

 

 金剛は残念そうにしていた。大破したため、入渠していたのだから行く暇が無かったのだ

 

 

 

 

 提督が時雨達と提督の父親である博士、そして502部隊が話している最中、陸奥を初め複数の艦娘がやってきた。陸奥が現場に来るのを進言したのだから。他にもいた。それは……

 

「時雨!」

 

「山城、ごめん。僕が──」

 

「無事で良かった」

 

 山城は特に怒っておらず、寧ろ抱き着いてきた。扶桑山城も駆けつけてきたらしい。最上も来ていたらしいが、オロオロとしていた

 

 そんな中、陸奥はあるものを見ていた。確かめたかった。刑事たちには後で話すようはぐらかした。説明するのが大変だから

 

「リリ……本当にこの世界に居たんだ。動かせないの?」

 

「残念だが、無理じゃ。神通が身体をバラバラに斬ったため、ここで修理復元は不可能。お前さんと一緒にいた柳田という人は、一体どうやってこんな機械を作れるのやら」

 

 頭とバラバラになった金属の破片をみて陸奥は落胆した。平行世界とはいえ、2030年代の科学技術を復元なんてほぼ不可能。浦田重工業でも無理だろう。完全なオーパーツといえるだろう

 

「全くバカな事をしたものね」

 

 陸奥は呟いた。死者蘇生という技術はこの世にあってはならない。しかし、副産物として艦娘や深海棲艦が生まれたのだから陸奥としては複雑なものだ

 

しかし、陸奥は知らない。リリの頭部が再起動していることに……

 

 

 

 

「提督、田中や浦田副社長はどうなったの?」

 

 時雨は扶桑山城から離れると提督に質問した。肝心の殺人鬼が捕まらないと意味がない

 

「警察が追っているよ。地下室には警察の特殊部隊が突入した。いくら結衣の生首がいるにしても何もできない。流石に逮捕出来るだろう。寧ろ、集積地棲姫をどうするか悩んでいる。当分は捕虜だ」

 

 集積地棲姫が不満そうにうずくまっているのを見ながら提督が言った。集積地棲姫は逮捕されている。深海棲艦はこちらが対応するだろう。一方、田中秦がどこにいるのかは不明だが、地下にいるのは確かだ。問題は地下道が長く掘られていた事だ。落盤した箇所も所々にあり、提督は警察に任せた。警察は既にこの一帯に非常線を張っているため、逃げるのは難しいだろう。現に手下たちが逮捕されている。中にはあのアメリカ人もいた

 

「提督、翻訳しましょうか?」

 

「フレッチャー、別にいい。何を言っているのか大体は分かる」

 

 フレッチャーは悪口雑言をまき散らしながら警察に連行されるのを見ていた。フレッチャーもアメリカから派遣された艦娘だが、まさかモンタナ級戦艦と交戦するなんて思いもしなかった。アイオワから敵の事をよく聞かされていたが……

 

「人間って良い人も悪い人もいるのは分かったけど、この戦いはまだ続くのかな?」

 

 メアリー・イザベラが超人計画を使用したことにより、第二の浦田結衣が現れたことが現実味を帯びていた。操られていたとはいえ、明らかにモンタナ級戦艦の能力を超え居ていた。下手したら、人類と艦娘が戦争する可能性もある

 

「心配するな。危ない綱渡りとはいっても、対処は出来た。それに、暴走するようでは誰もこんな代物を扱えない」

 

「次は超兵器が出て来て、僕たちはそれと戦う事になるかも知れないのに?」

 

 時雨は深海棲艦を撃破できる超兵器の存在だ。まだ現れてはいないものの、実用化や量産は時間の問題だ

 

「いや、戦う必要はない。国を守る者同士で争うのは阿保がする事だ。総攻撃派は何を考えているかは知らないが」

 

 時雨はまだ心が晴れていない。世界を救った事があるのに、問題が出てくる。提督も察したのか付け加えた

 

「まあ、楽観的な考えも出来るんじゃないか。俺達はお払い箱になったけど、第二の人生を生きられるチャンスを得たという風に考えればね」

 

「提督は楽観的過ぎるような気がするけど。でもら深海棲艦と和平交渉もまだチャンスはあるから」

 

 時雨が言ったその時、爆発音が響き渡った。浦田副社長と警察の特殊部隊が戦闘でも起こっているのか? 

 

だが、警察が何かから慌てている。刑事が無線を取り困惑しているのだ

 

「な、何?」

 

 時雨は不安になった。警察は浦田副社長らを逮捕し損なったのか? それにしてはおかしい

 

「これは一体?」

 

「提督……大変です。SG レーダーに反応があります」

 

 フレッチャーは、声を震わせながら報告してきた。SG レーダーは初期型とはいえ、低空警戒・対水上捜索用レーダーだ。何か補足をしたのか? 

 

「何か探知したか?」

 

「そうなんですが……what? 故障? それにしては……」

 

「いいから何が映っている!?」

 

 提督は怒鳴った。時雨も皆もこのやり取りに不安を覚えた。フレッチャーは普段はおっとりとした感じの艦娘だ。そんな艦娘がここまで狼狽えているのは初めてかもしれない

 

フレッチャーは500メートル先のまだ破壊されていない施設に指を指した

 

「あの方角から探知。レーダー反射からして大型艦」

 

「規模は?」

 

「……」

 

「規模は!?」

 

「け、計測不能です! こんな反応は見たことない! 大きさは大和やアイオワ……NO! 武蔵改ニクラスよりも大きい!」

 

 フレッチャーの叫びに全員は身構えた。敵か? だが、今度はなんだ!? 武蔵改ニよりも大きい? 超大和よりも大きい戦艦なんて

 

「戦闘態勢入れ! 今すぐ──」

 

 提督が無線機のマイクを取り指示を出した、その時……フレッチャーが指を指していた建物が崩壊した

 

 建物は轟音をあげ、辺りに土煙と土砂が辺りを降り注いだ

 

 そんな中、何かが降ってきた。それは人だ。ヘルメットと短機関銃を持ち服装に『警察』と書いてあることから警官隊だろう。しかし、手足は不自然な方向に向いており、胴体には大きな穴が空いていた

 

「あ、あれ!」

 

 死体をどうにかしないといけないが、時雨は建物跡から何かが出てくるのを見た。真っ黒な巨大な砲塔が出現するのを。武蔵が持っている51cm砲塔に似ているが、とてもデカイ! 

 

「あれが兵器? ふざけるな! なぜ、巨大な砲塔が出現する! なぜ、戦艦がまだ生きているんだ!」

 

『それは人類のため』

 

提督の怒鳴り声に誰かが答えた。それは艦娘でも博士でも502部隊でもない

 

「リリ? 貴方……まだ動けるの?」

 

 陸奥の反応に時雨も他の者も頭部だけになったリリを見た。ロボットなのだから、まだ動けるのだろう

 

「どういうつもりだ?」

 

『宗教や民族や人種を1つに団結するには人類共通の敵を生み出す事です。それはどんな犠牲を払っても』

 

「どういうつもりじゃ! 世界を敵に回して平和を口にするな!」

 

リリの言葉に博士は反論した。ロボットの考えなぞ誰も共感はしない

 

だが、今はそんな事で論争するつもりはない

 

「何をやった!? 浦田結衣の生首に何をした!? あのメアリーは囮か!」

 

『あなた方が『超人計画』と呼ばれる技術を使って、モンタナ級の武装を近未来まで進化させました。あの艦は無敵。21世紀において君臨していた米海軍の空母打撃群を難なく壊滅させる事が出来るでしょう。私に反逆した戦艦棲姫と違って彼女は、世界平和という役割を果たせます』

 

 提督の質問にリリは淡々と答える。感情は無いため、リリの計画がとても恐ろしかった。21世紀の米海軍の空母打撃群を壊滅させる? 冗談でも言っているのか? 

 

「人類共通の敵を作って世界平和? そんなの戯言だよ!」

 

『時雨……貴方は世界を……歴史を……世の中を知らなすぎる。深海棲艦や艦娘が消えても人は争う。人類の敵がいるからこそ、一致団結出来る』

 

「そんな事は──」

 

『人間は争うことを好む生命体です。私と一緒に暮らしていた石塚博士も子供たちもある日突然、武装勢力によって殺されました』

 

 突然の告白に全員は唖然とした。何があったのかは知らないが、どうやら人間の悪を見てきたらしい

 

『エネルギー切れまで後少し。これで私の願いは叶えられる。しかも、枢軸国と連合国を1つにする状況を作りました。これで人類の過ちは消えます』

 

「リリ! それは間違っている!」

 

 陸奥は悲痛な言葉を投げた。確かに人類共通の敵が現れれば団結するだろう。しかし、これは見方によっては過ちも生むかもしれない

 

 もし、誰かが艦娘は脅威と考える者がいれば……艦娘はある日、迫害されるかもしれない

 

『もう話すことはありません。人類共通の敵を生み出すには目に見える形にしなければなりません。あなた方には歴史改変する前の恐怖を味わう事になりますが、それは平和のためです。陸奥も時雨も……英雄になって……平和のため……』

 

 エネルギー切れなのだろう。リリの頭部は完全に停止した。だが、今はそうも言ってられない! 

 

「ハーッハッハッハッハッハッハッハ! アーハハハハハハハハッ!!!」

 

 遠くで浦田結衣が高笑いをあげていた。それは人の笑い声ではなく、まるで悪魔の笑い声のように聞こえたため、時雨は全身の毛が逆らった。他の艦娘も同じだろう。全員が恐怖で金縛りでもあったかのように固まっているのだ。集積地棲姫ですら身震いした

 

「何をしている!? 全員、緊急退避! その場から離れろ!」

 

提督の一喝で全員は我に返った。そうだ! この場にいてはダメだ! 

 

「でも、提督は──」

 

「俺は陸路で逃げる! 何人から装甲車に乗れ! 乗れないものは海路で逃げろ! どんな手段でもいい! 急げー!」

 

 無線でオープンチャンネルしていることから鎮守府だけでなく、軍や警察も聞いているだろう。全員、蜘蛛の子を散らすように逃げる。トラックやパトカーは急発進し、置いていかれた警官も兵士も走って逃げる始末だ。艦娘の大半は、東京湾に逃げた。集積地棲姫は曳航する事にしたが、当の本人も必死に逃げてようとしているため問題は無かった。本能で逃げているのかどうか不明だが

 

 装甲車は定員オーバーになるため、提督と時雨村雨が乗っていた。と言っても負傷者優先であったため、暁達と天龍龍田は負傷していたため、載せることになった。502 部隊と博士が乗車すると装甲車は急発進した

 

『一体何があった? 応答しろ!』

 

「こちら502部隊。大変です! 敵は──」

 

 元帥も聞いているのだろう。502 部隊の将校である大佐は状況を説明していたが、時雨たちはそれどころではなかった

 

相手がどんな能力を持っているか不明だからだ

 

「何だ、あれは!? 元は人とはいえ、生物や兵器が短期間であんな姿に進歩するのか? リリの技術で首だけの結衣があんな怪物に」

 

「いや、兵器としての立場なら正しいじゃろう」

 

 提督が頭を抱えていた。誰も信じられないからだ。フレッチャーのレーダー情報が正しいなら、モンタナ戦艦よりも厄介な存在だ

 

 だが、提督の父親である博士は違っていた。皆が思っている事とは逆だった。そのため、皆の視線は博士に向けられた

 

「博士、どういう事?」

 

「兵器は科学技術の結晶体の1つじゃ。倫理や対効果費用、そしてドクトリンなどというのを無視して合理的なやり方を行えば、科学はいくらでも進化するし短期間で済む。もし、リリが深海棲艦と艦娘の能力に科学技術を向上させたとしたら?」

 

「え? そんな事──」

 

「出来るじゃろう。奴は武蔵やアイオワ以上の能力を持ってるかも知れん」

 

 時雨は博士が言っている理論はどうでも良かった。しかし、現代兵器を保有しているアイオワと超大和戦艦である武蔵改ニ以上の能力だったら、どう対処するんだ? 

 

殺せない。撃沈出来ない

 

その言葉が脳裏にかすめた

 

「冗談じゃ無い!」

 

 提督は装甲車の上部ハッチを空けた。本来なら銃座なのだが、今はテロ対策で撤去されている。しかし、銃座があったとしても意味がないだろう

 

 

 

『俺は陸路で逃げる! 何人から装甲車に乗れ! 乗れないものは海路で逃げろ! どんな手段でもいい! 急げー!』

 

 提督からの無線で陸奥と神通達は東京湾に逃げた。今は動いていないが、全体がよく分からない。フレッチャーの言う通り、大和武蔵よりも大きいかも知れない

 

 だが、あの黒い艤装から発する殺気は凄まじかった。陸奥は冷たい手が心臓に掴まれたかのような恐怖を覚えた

 

(威圧感が戦艦レ級や南方棲戦姫と比べ物にならない! リリはなんて事をしてくれたの!)

 

 リリの思考に対する怒りよりも結衣の殺気に逃げる気で頭が一杯だ。赤城加賀から何が起こっているのか無線で聞かされたが、彩雲からの報告で分かるだろう

 

無線妨害すらされていないのだから

 

「陸奥さん、敵が動きました!」

 

 扶桑の怒鳴り声に陸奥はハッとして後ろを向いた。ゆっくりではあるが、確かに動いている。ゴツゴツとした黒く塗られた艤装、51cm主砲らしき砲塔6門がこちらを向いている。そのなかに真っ白な姿をした結衣がいた。見た目からして年齢は20前半なのか? いや、年齢は分からないか

 

ソイツがこちらをしっかりと見ている。こちらを狙っているんだ! 

 

 空母娘も気づいたのだろう。艦娘達を逃がすために急行している。上空を警戒していた加賀の航空隊も赤城航空隊もエンジンを轟かせながら結衣に向かっている

 

 ふと、相手は動きを止めた。だが、主砲を動かしているのではなく小さな筒のようなものだった。筒のようなものと言うのは、まるで望遠鏡のようで砲塔とは違う代物だ。大きいのが2つ。それよりも小さいのが4つだ

 

 皆は身構えた。何かをしてくる! 陸奥は動きをやめ、41cm連装砲改二を向けて発砲した

 

「陸奥さん!」

 

「皆、私が牽制するから逃げて! 早──」

 

 陸奥はそれ以上言わなかった。いや、言えなかった。何か鉄の熱いものが体を貫いたのだ

 

 しかも隣に居た山城が突然、爆発した。

 

「え? な、何?」

 

陸奥は何も分からず気を失った。意識を失う前に見たのは自分の体を貫く赤い光を

 

 

 

 艦載機は何があったのか分からなかった。突然、結衣の艤装から赤の閃光が光ったと思ったら流星改や彗星の数機が散華した。赤い糸のような光が機体を貫通したと思ったら機体が爆発した。今まで見たことない対空砲火に怯んだ

 

 アイオワや時雨からは現代兵器の事は聞いてはいたが、ミサイルとは違う対空砲火には流石に怯んだ。中には勇敢に挑んだ機体も居たが、赤い光線はどれも貫き全て爆弾や魚雷を投下する前に撃墜してしまった

 

 謎の攻撃に赤城加賀は撤退命令を命じた。とてもではないが、敵う相手ではない。無駄になる

 

 

 

 装甲車でも外を見た者は赤い閃光が見えた。赤い光が赤城加賀の艦載機を撃ち落としたのだ。初めて見る光景に

 

「あれは殺人光線か?」

 

 博士は驚愕した。光線を使った兵器という思想は昔からあったが、実用化は出来ていない。浦田重工業によって日本が栄えたとはいえ、1940年代でも無理だ

 

「What? レーザー兵器!?」

 

 フレッチャーも装甲車から顔を出したが、閃光を見てその正体が分かった。フレッチャーは『艦だった頃の世界』では第二次世界大戦後も生き抜いた駆逐艦だ。それでもレーザー兵器はまだ架空の兵器だ。精々、SF映画のポスターなどで見た程度だ。それを浦田結衣が手に入れた。レシプロ機とはいえ、一瞬で撃墜したとすると出力は相当なものだろう

 

 時雨は装甲車から出て車体の屋根に乗ると主砲を構えた。時雨が何をしているのか分かった提督は、時雨を呼び止めた

 

「何をする気だ?」

 

「撃ってアイツの気をそらす!」

 

「そんな手がアイツに通用すると思うか!」

 

「でも、仲間が──」

 

 時雨が言いだそうとした時、妙な金属音が聞こえた。既に見えないが、ガチャガチャという音が結衣のいた場所から聞こえたのだ

 

 

 

 沖合ではパニックになっていた。不幸艦とはいえ、戦艦が謎の光で一瞬に無力化したのだ。深海棲艦でも無理だろう。現に集積地棲姫が真っ青になっていたのだから

 

「何あれ?」

 

 そんな中、最上は意識を失った陸奥を曳航しようとしたが、金属音が聞こえた方に目を向けた。結衣の艤装が変わっている。変形しているらしいが、最上は変形の仕方がどこかで見たことがある。そして、ようやく思い出した。鈴谷と熊野の時と同じだ! 

 

「そうだ! あれはコンバート改装だ! 間違いない!」

 

「工作艦や工廠無しで改装って……」

 

 最上の叫びに神通は真っ青になった。コンバート改装……それは艦娘の一部で新たに付けた力の一つだ。資源や資材を消費する代わりに艦種や能力傾向を変更させることが出来る。最上の姉妹である鈴谷や熊野は航空巡洋艦から軽空母にコンバート改装できる。だが、あくまで明石や工廠妖精などのバックアップが必要不可欠だ。浦田結衣には必要ないのか? 

 

 最上が混乱している中、浦田結衣は艤装を変形させていく。だが、完成されたものは砲塔も対空砲も無く、あるのは艦橋とレーダーらしきアンテナだけ。あるのは空母のような平べったくなっている。だが、飛行甲板ではない。その代わり、平べったい甲板に無数の四角い奇妙な箱がびっしりと並んでいる

 

 だが、それらは恐ろしいものであったのを最上は知らない。甲板に多数の四角い奇妙な箱とは無数のVLS発射機であった。その軍艦は未来世界においては存在していないものだった。計画段階のものだ。分かる者ならこう答えただろう。アーセナルシップと。VLSには対艦ミサイルや対空ミサイルが格納されている。それらが一斉に火を噴いたのだ

 

 轟音とともに複数のRIM-7 シースパロー(艦対空ミサイル)RGM-84 ハープーン(艦対艦ミサイル)が上空に舞い上がりターゲットに向けて突進していく

 

 最上を初め、艦娘も何が起こったか分からなかった。いきなり対艦ミサイルを食らって大破したからである。結衣は付近一帯を無差別攻撃したのだ。ハープーンミサイルは、対地用にも調整されているのか、陸地にもミサイルが飛来した。艦娘はおろか、軍人警察どころか民間人関係なしに攻撃した。母艦に帰ろうとした艦載機もである。多数の爆発音が陸海空で響き渡り、収まった頃には瓦礫と火の海であった

 

 動くものは勝ち誇っている浦田結衣以外に何もなし。沖にいる艦娘は全員、大破して意識を失った

 

 

 

 時雨達が乗っていた装甲車も例外ではなかった。ミサイルの直撃はないものの、爆風に煽られて転覆した。ミサイル攻撃直前に提督が時雨を装甲車の中に入れたため奇跡的死なずに済んだ。だが、それだけだ

 

「提督! ダメ、死んでは!」

 

 装甲車から提督を何とか引っ張り出して生死を確認する。提督は頭から血を流してぐったりしているが、意識を失っただけで無事だ。他の者も無事らしい

 

だが、被害は大きい

 

「僕は……僕はお前を……」

 

 時雨は歯を食いしばりながら海岸の方向を睨んだ。ミサイル攻撃で辺りが吹っ飛ばされたお陰で建物がなくなり、海が見えていた。その人影に動く者がいた

 

 遠いため分からないが、誰かは分かる

 

浦田結依(敵艦)

 

 




敵艦の状況

敵:浦田結衣
艦種:戦艦(?)

艦名……モンタナ級?
能力……不明
兵装……不明

現状分かっている事

巨大な砲塔と高出力レーザー砲を確認
支援なしでコンバート改装を自在に変形可能
戦艦←→アーセナルシップ型になるらしい
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