時雨の緊急任務 ~リベンジ~   作:雷電Ⅱ

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今度は曙が改二になるらしいですね


第19話 準備と救援要請

 航空基地から飛び立った攻撃隊が結衣によって呆気なく全滅されたという報告を受けてから一週間後、提督と時雨達は横須賀から呉に移動した。呉は海軍の鎮守府があったが、その場所を譲ってもらった。大移動になったが、時間が思った以上にかかった

 

「クラーケンである浦田結衣を捕らえるために呉へ移動する。全員だ」

 

「なんで?」

 

 艦娘全員は驚愕し時雨は驚いたが、それには理由があった

 

「結衣の性格からしてアイツの狙いは艦娘だ。最優先で狙うだろう」

 

「問題ねーよ! 返り討ちにしてやるぜ!」

 

 天龍が怒鳴ったが、アイオワは首を振った

 

「……No、それはダメ。多分、真っ先に狙われる」

 

「どういう意味──」

 

「結衣の恐ろしい所は、拷問してから沈めるの!」

 

 アイオワは叫んだ。アイオワも一周目の世界で嫌ほど味わったのだ

 

「天龍だけではないの。ユーも貴方も……全員、死んだの。私も一度は撃沈された……」

 

 アイオワの悲痛な叫びに皆は何も言わなかった。経験はしていないものの、自分たちが痛めつけられて撃沈されたことがあるのを聞かされたのだから

 

「結衣の能力が発達したら手が付けようがない。だが、性格は別だ。それを利用する。幸いなことに一周目と違い、浦田重工業という工業技術は奴等には無い。結衣ぐらいだろう。俺達は呉で迎え撃つ。そのためには関東地方を巻き沿いにさせるわけにはいかない」

 

「つまり、僕たちを囮に使うって事? それも鎮守府丸ごと?」

 

「そうだ。どんな手を使うか分からないが、深海棲艦と違ってお前達や俺を必ず襲うだろう。奴は過去に酷い目にあった事を理由に相手を徹底的にいたぶる性格の悪い」

 

 提督の説明に時雨は啞然とした。いや、他の艦娘も同じだろう。まさか、こんなことになるとは思わなかった

 

 しかし、冷静に考えてみると筋は通っている

 

「安心しろ。無暗な攻撃命令は出さない。その代わり、現れたら全力で倒せ。何か質問は?」

 

「……」

 

「分かった。直ぐに移動だ」

 

 鎮守府の移動は事前に上層部に知らせていたので問題ない。元帥は渋ったが、提督の父である博士の説得で何とか承諾を得た

 

 呉にいた兵力は横須賀に移動となった。つまり、交代となったわけだ。首都圏に行ける事で駐在していた軍人たちは喜んでいたが、それはどうでも良かった

 

 艦娘支援艦である輸送艦である『おおすみ』を使って移動を開始。平行世界である海上自衛隊のおおすみと同じであるが、荷物や艦娘を満載しているため喫水が深く沈んだ。鎮守府の資材や兵装や資源はコンテナに積まれたが、余りの膨大な量に貨物室だけでなく、甲板に平積みされていた。艦娘数人は甲板にてたむろしている。護衛として艦娘も並行して航行しているので、交代要員としている

 

 沢山の人数と物資におおすみの速度は20ノットを切ったが、別に遠方に行くわけでもないので問題なかった

 

 本来なら陸路や空路の方が良かったが、陸路だと運搬量は知れているし、輸送機も数が限られているため、渋っていた。それでも、2機の深山の輸送機を貸してくれたので502部隊はそれで移動を行った。神州丸もあきつ丸もまるゆも輸送機に乗った

 

 

 

 海路の輸送で大問題なのは深海棲艦の襲撃だが、艦娘の練度は高く、軽く追い払った。結衣が現れたら大問題だろうが、幸いにも呉につくまでは現れなかった

 

 だが、現れなかったのではなかった。別の用事で襲撃しなかっただけである事を提督も時雨達も思い知ることになる

 

 呉に移動し、艦娘達が長門の指揮の元で鎮守府を運用する準備している中、時雨は秘書艦の当番ために提督室へ行った

 

 提督はいなかったが、膨大な書類に時雨は眩暈がした。デスクワークは精神的にキツイ。それは艦娘共通の認識だ。報告書の作成もそうだ

 

 だが、提督は難なく作成する。一周目と比べてたくましくなったのか、業務もよくこなしている

 

 以前にはこんなことがあった。海防艦である佐渡の報告でも……

 

「あんな。今日は佐渡さま戦闘に先頭に大鷹さんとえととまつとで近海の海に見回りに言ってたぜ」

 

 任務報告でも佐渡の口調は変わらない。だが、提督は聞きながら報告書を書いている。それも……

 

『【戦闘報告】旗佐渡及び大鷹、択捉、松輪の四隻で対潜部隊を編成し、鎮守府近海で対潜哨戒作戦を実施』

 

 提督は、何と佐渡を聞きながら意訳して作成していたのだ。時雨が驚くのを他所に佐渡は話し続ける

 

「それでな。潜水艦がいやがったから皆でバーンってしたんだけどな。うっかり親玉を外してまつがドーンってなっちまったんだ」

 

『敵潜水艦部隊と遭遇したため、先制爆雷攻撃を実施。敵旗艦を確認するも、攻撃に失敗。反撃の魚雷攻撃を受けしまう。随伴艦松輪は被弾し中破』

 

「だかんな。佐渡さまがこんにゃろーっ! ってなってそいつ目掛けてバーンってやったら見事ドッカーン! いひひっ、活躍の大勝利だぜ! あっ、まつはえとが風呂に連れて行ったぜ」

 

『佐渡、再度爆雷攻撃を実施。敵潜水艦の撃沈を確認。これにより作戦を終了。対潜哨戒部隊は鎮守府へ帰投す。今作戦の武勲艦は佐渡とする。尚、中破した松輪は入渠【報告終了】』

 

 佐渡の報告を代筆した提督は頷くと筆をおいた

 

「よくやった。後で松輪と択捉と一緒に間宮へ行って休んで来い」

 

「いいのか!? やった!」

 

 佐渡は嬉しそうに提督室から出て行ったが、時雨は啞然とした

 

「なんであれで代筆出来るの? 僕には分からなかったよ!」

 

「何、それくらい出来て当然だろ」

 

 提督はあっさりと答えたため、時雨は驚きを隠せなかった。長く艦娘と交流したら、そんな芸当も出来るのだろう

 

 

 

 そんな事を思い出しながら書類を見たが、それは資料ではなかった。写真と数枚の手紙だった。手紙には英語とロシア語で書かれていたのだが、提督が翻訳して書いていた紙があったため読むのには問題は無かったが、どれも酷いものだ

 

 燃え上がる戦車と沈んでいく鋼鉄の船である空母が

 

 戦車には赤い星が、艦載機には丸い星がはっきりと写っていた

 

 時雨は生唾を飲み込みながら手紙を読んだ。書いたのはタシュケントだった

 

 

 

 

 

Здравствуйте(ズドラーストヴィチェ)、同志提督

 

 これを読んでくれたらうれしいかな。同志ガングートはいるけど、今は落ち込んでいる。あ、『艦だった頃の世界』よりも早くソ連崩壊した事ではなくて、別件で。提督は「クルスクの戦い」って知っている? 『艦だった頃の世界』……第二次世界大戦に、ナチスドイツとソ連との間で行われた史上最大の戦車戦。両軍合わせて約6000輌の戦車と約4000機の航空機が激突した戦いのを。ソ連もナチスドイツもいないこの世界でそんな事が起こらないと思っていたけど、そんな事は無かった。数日前、軍の上層部が奇妙な通信を傍受した。いや、正確にはロシア軍宛ての電文かな? 内容は知らないけど『今から新型の駆逐ナ級を多数引き連れてモスクワへ侵攻する』というような内容さ。当然、軍部は相手にしなかったけど、黒海艦隊の軍港、セヴァストポリ軍港が正体不明の敵から攻撃を受けて壊滅した事から、ロシア軍も慌てだした。しかも、今まで深海棲艦が陸に足を踏み入れる事はなかったのに、急に戦法を変えてきた。だけど、同志はそれを見越していたかは知らないけど、戦車軍団を差し向けた。確か『深海棲艦が上陸し侵攻した時の備え』があったはずだけど、驚きはしなかった。日本では総攻撃派という思想はあるらしいけど、こちらもいる。以前は皆は有難がっていたけど、今では「俺たちが倒すんだ! お前は引っ込んでいろ!」って言われる始末。あ、全員がそうではないから。だけど……

 

 ごめん……愚痴を書いてしまって。話を戻すと、軍部は私と同志ガングートの艦娘の力を借りずに戦車軍団を差し向けた。初めは反発したけど、圧倒的な数に何も言えなくなった

 

 戦車の量が半端なかった。T34、T76、T85、KV重戦車、スターリンの名を取ったスターリン重戦車まで動員していた。ロシアが保有する戦車をかき集めたかのようだった。5000輌は軽く超えていたかも? 航空機だって負けていない。戦闘機はYak-9を初め各種バージョン……『艦だった頃の世界』ではスターリングラードの救世主と呼ばれたLa-5、La-7。地上攻撃機イシューシンIℓ-2(シュツルモビク)に爆撃機Pe-2やイシューシンDB-3。B29をコピーした試作機であるTu-4まで動員された。

 

 最新の情報だと敵はクラーケンと呼ばれていた浦田結衣とそれを率いる新種のナ級でヴォルゴグラードを占拠していた。皮肉にも以前までは『スターリングラード』って呼ばれていたけど。私もガングートも戦車軍団に同行したかったが、少将からは済まなそうに言ってきた。『出撃許可が下りなかった』って。でも、私もガングートも手を振って戦車軍団を見送っていた。兵士達も艦娘の姿をみると手を振っていた。これなら、私や同志ガングートがついていなくても勝てるって。対深海棲艦の砲弾も爆弾も装備しているから大丈夫だろうって。そう思っていた。だから、その日はウォッカで乾杯して酔いつぶれて寝たけど、次の日に少将にたたき起こされた。直ぐにヴァルゴグラードに行けって。輸送機に乗らされてついたけど、目に映ったのは戦車飛行機の残骸と兵士の死体だらけ。少将に聞いたけど、全滅したって。初めは聞き間違えか何かだと思っていた。現実味が無かった。だって、ナチスドイツ相手を戦える軍団を深海棲艦の力を持った一人の人間と新型ナ級数隻だけで大軍団を一晩で壊滅させるなんて聞いたことがなかった。生き残った将校の話を聞いたけど、受け入れるしかなかった。『ヴォルゴグラード奪還に攻めようとしたら、いきなり赤い光が光った。赤い光に当たると戦車はまるで紙のように軽々吹っ飛ばされ、航空機はバタバタ落ちていった。運よく接近出来た戦車はいたが、アイツは重戦車を素手で殴り飛ばしたんだ。何を言っているのか分からないと思うが、私も分からない。頭がどうにかなりそうだ。あんなのは戦いじゃない』と震えながら言っていた。寒さで震えているのか、それとも恐怖で震えているのか分からなかった。幻覚を見て錯乱したと思いたいけど、あんなに勇ましい姿をしていたT34やYak-9がボロボロにされて鉄くずの塊になっているのを見たら信じるしかなかった。戦果は新型ナ級一隻撃破しただけ。死体が転がっているのを発見した

 

 浦田結衣は既に消えた。少将から浦田結衣を殺すよう命じられた。私は命令を受けたら躊躇なく殺すことも出来るけど、あれを殺すよりも遭遇しない方法を見つけるのが先のような気がした。あれだけ出撃したかったガングートもヴァルゴグラードの惨劇を見て放心状態に陥ったくらいだから。五年前、同志提督はどうやって倒したのか聞きたい。少将の許可を得て大使館経由で手紙を送った。異例な状況だけど、ロシアの艦娘とロシアを救ってほしい』

 

 読み終えた時雨は身震いをした。タシュケントが送った手紙だが、惨劇ともいえる内容だ。呉の移動の際に結衣はロシアを襲った? しかも、ロシア軍を相手に戦った後、逃げた? 報道はされていないから、報道規制されている? 

 

次の手紙は米艦娘であるイントレピッドだった

 

『Hi! Essexclass航空母艦、5番艦。Intrepidよ! アイオワからアドミラルについて聞いているわ! 色々と書きたいのは山々だけど……今はそんな気分ではない。数日前に中将から最優先任務が下されたわ。『クラーケンハント作戦』、浦田結衣狩り。ホワイトハウスは裏切り者のCIAを追っているけど、私もガンビーも気にしていない! でも、最近はおかしな思想が広まって。『艦だった頃の世界』であったレッドパージとは違う思想の総攻撃派。対深海棲艦の兵器が急ピッチに作られているから広まっていったんだと思うわ。サウスコンダは「私達にも向けるだろうか?」って心配しているけど、私は気にしていない。退役しても海上航空宇宙博物館を建てて見せるんだから! 

 

 But……この世界では難しいかも。ビキニ環礁を拠点にしていた深海棲艦の捕獲失敗に超人計画奪取に失敗したホワイトハウスは、浦田結衣の捕獲を命じられたわ。全軍にね。アイオワの進言通りにこちらには「決戦兵器仕様」に改装出来たの。中将の驚き顔が忘れられない。あ、でも艦載機はあげなかった。どうせ、数年後には本国も作れちゃうんだから

 

 だから、A-4スカイホークなど飛ばして探ったけど……全然見つからなかった。ガンビーも捜索機を飛ばしたけど、発見できなかった。深海棲艦は海底に潜んでいるのだから、結衣も攻撃は兎も角、水中に身を潜める事も出来るんじゃないかって思っちゃったの。ワシントンもサミュエルも青ざめていたけど。でも、海軍はそんな甘い考えは無かったみたい。海軍の中にも総攻撃派の思想はいたらしくて『艦娘よりも先にクラーケンを捕らえよ!』なんて言っちゃている。実際に、雑魚の深海棲艦を倒せる能力はあった。私はそんな考えはどうでもいいけど問題が起こった。……そのクラーケン狩りに警戒していた一個艦隊がワシントン州沖300キロで壊滅した。攻撃したのは深海棲艦ではなくて浦田結衣本人。壊滅した様子を私の艦載機、A-4スカイレーダーが見ていた

 

 空母ミッドウェイを中核に駆逐艦や巡洋艦で守られていた海軍の空母艦隊は、強力だった。防空網や対潜哨戒はこの時代の世界では高水準に達している。深海棲艦も容易に撃破出来ないよう作られている。『艦だった頃の世界』の大日本帝国海軍でも太刀打ちできないと思う。だけど、結衣は堂々と攻撃した。レーザー兵器で米海軍が建造した最新鋭空母を貫き轟沈させた。ミッドウェイは墓標のように艦首を突き立てて、F4UコルセアやSBWヘルダイバーの艦載機をボロボロとこぼしながら直角に海へ沈んでいった。私やガンビーが出来た事と言ったら艦から脱出した乗組員を救助させることくらいしか出来なかった。A-4スカイレーダーで追跡したけど、途中でアイツを見失った

 

 アドミラル……アイオワの言われた通り、浦田結衣はモンスターよ。あれだけの巨大な艤装を持っているのに、レーダーには小型艦にしか映らなかった。キーロフ級を真似たらしいけど、能力が高まればステルス艦に変貌しそう。どういう理屈かは知らないけど、レーダーの探知を不能にさせる能力を持とうとしている。赤外線対策までされたら現代兵器は有効ではなくなる。海中に逃げられたら探知は困難。

 

 どんな能力かは知らないけど、結衣の恐ろしい所は隠密性が優れている。隠密性と強固な防御力と大量破壊兵器並みの攻撃能力を兼ね備え、容易に補給でき、そして深海棲艦を操る能力まで持っている。深海棲艦とは明らかに恐るべき力を持っている。艦娘がどうにかなる問題ではない

 

 アドミラル、五年前ではどうやって倒したのか聞きたい。私やアメリカ海軍だけでなくアメリカが崩壊するかもしれない。アイオワに聞いてもアドミラルの方が詳しいと言われた』

 

 

 

 イントレピットの手紙だったが、途中から深刻な内容だった。こちらも大使館経由でおくられたものだろう。双方とも日付が横須賀から呉に移動した日時だ。襲ってこなかったのは幸運に過ぎない

 

「……そこにいたか」

 

 不意に後ろから声を掛けられ時雨は慌てて顔を上げた

 

「て、提督。これは──」

 

「いいんだ。どうせ、お前には見せたかったし」

 

 時雨は誤魔化そうとしたが、提督は気にしていないようすだった

 

「呉に移動できたのは良かった。その間に奴はスポーツ感覚で攻撃している。自分の能力や力を推し比べるという事も考えられる。しかも、能力を上げているらしい」

 

「でも、艦娘は襲われていないんだよね? ワザとかな」

 

「お楽しみを最後に取っておくのか、それとも偶然なのか? そこは分からない」

 

 提督はため息をつきながら椅子に座った

 

「でも、浦田の残党勢力はもうワームホールも工業力もないんだよね? 結衣さえ倒してしまえば」

 

「そうだ。だが、無人島の何処かに兵器や物資を隠しているかも知れない」

 

「それって不味いんじゃ……」

 

 時雨は不安そうになるが、提督は首を振った

 

「島という島は探索したし、何もなかった。ただ、拠点をおいているとすれば硫黄島だろう。あそこは深海棲艦が現れる前は基地が立っていたからな。今は放棄されているが、密かに改装して使えるようにしているかも知れない」

 

 硫黄島に基地を作る。確かにあり得るかもしれない

 

「だから、結衣を引き付ける代わりに陸軍の空挺部隊が硫黄島に降りる予定だ。肝心の結衣を引き付けないといけない。決行日はまだ決まっていないが、覚悟してくれ」

 

「分かったよ」

 

 時雨は頷いた。また、あの戦いが始まるんだ。敵は異様に強いけど、結衣の気を引いてさえいれば結衣のバックアップしている残党勢力は排除できるかもしれない。結衣がどんなに強くても組織が無ければ意味がない。深海棲艦は仲間とは言いがない。既に深海棲艦は確認できない。恐らく、戦艦水鬼改は異変を感じ取ったのだろう

 

「新型のナ級も確認されている。恐らく、結衣が改良したのだろう。攻撃能力や防御力は従来とは比較にならない」

 

「分かった」

 

因みにこの新型ナ級は、後に『ナ級後期型Ⅱ』と呼ばれることになる

 

「アイオワが言っていたウォーターカーテンを試すしかないが、やるしかないな」

 

 時雨は頷いたが、時雨も提督も気づいていなかった。アイオワもだろう。敵に対しては決して侮っていなかった。一周目で嫌ほど味わったのだ

 

 だから、対抗策は直ぐに思い浮かべるし、現代兵器が現れても驚きもしない。しかし、相手は時雨や提督を上回っていた。浦田残党はただのテロリスト集団ではなかった。それを思い知らされることになった

 

 

 

 

 

 提督の予想通り、武田を筆頭とする浦田残党は硫黄島に逃げていた。深海棲艦が出現する前までは、陸海軍の基地があったが、今は捨てられている。武田は五年前の事件から生き延びた後、僅かな部下と共に密かに硫黄島にたどり着き、拠点としていた

 

 滑走路一本と建物数件であるが、何も無いよりかはマシだ。物資も定期的に取り入れ、まだ深海棲艦を寄せ付けない小型の怪電波発生装置もある。奪ったタンカーと貨物船で密かに本土に行き来していた

 

 海上保安庁という組織が作られていたため、それが厄介だが、何とか降り逃げていた

 

 流石の海保も深海棲艦の縄張りである沖合にまでは追っては来ない。ワームホールの向こうの世界……対応自体、平行世界の海保と変わらなかったが、唯一違う所は警告を無視すれば放水ではなく銃撃される点である

 

 しかし、厄介な所はそれくらいなので特に気にはしていない。以前までは平和党や総攻撃派など上手いこと使ってはぐらかしていたが、もうダメだろう

 

 その代わり、浦田残党は最大戦力である浦田結衣を手に入れた。五年前と違って強力な武装を施している

 

 

 

「一個艦隊は操っておいた。まだ、姫級鬼級は操れないのでな」

 

 結衣は武田に伝えた。空母ヲ級を中核とする六隻の艦隊はテレパシーで操って配下におかせた。今はそれだけしか出来ない。時間をかければ能力を発達させることもできるが、今はまだだ。深海棲艦のボスである戦艦水鬼改は異常を察知していたが、今は隠れることにしていた。確かに強力な戦力はあるが、目的は深海棲艦の殲滅ではない

 

「そうか。復旧は早急に無理か」

 

 武田は落胆した。以前に繁栄していた浦田重工業は存在しない。機器類も平兵器も破壊されたか、政府の研究施設に持っていかれるかだ。ワームホールは破壊され、警備隊長はこの世に存在せず、博士である狂人は、もう超人計画に関わっていない

 

 相変わらず、艦娘計画に力を入れている。だが、今では数が多い。メアリーイザベラであるモンタナ級を介して見たが、連携して攻撃していた

 

「多勢に無勢は無理か。では、こちらの勢力が正義であることを知らしめるために政府と軍相手に戦いつつ、民間人に扇動を──」

 

「そんな事では時間がかかる」

 

 武田は提案したが、結衣は素っ気なく云った

 

「理想だけ掲げて目的なしに手当たり次第に無差別攻撃しては支持する者はいない。政府の連中と交渉するのはいいが、相手にされんぞ。前回は第二次世界大戦を止めるという理想があったからこそ出来た事だ。唱えてもいいが、相手にされん。テロ活動ばかりしても目的は達成されない。平行世界であった戦後にあった連合赤軍や日本赤軍がどんな末路を辿ったか知っているのか?」

 

「……しかし、私は君の兄ではない。志はある。だが、ワームホールも無く、未来武器も機械もない。今は地下活動が精一杯だ」

 

 武田は戸惑った。何を考えているんだ? リリというロボットがいたが、それだけでは意味がない

 

「だから私を死者の世界から連れ戻した。そうじゃないの?」

 

「そうだ。死者蘇生の話が無ければ──」

 

「待って? 武田、貴方は兄から何も聞いていないの?」

 

 結衣は眉を吊り上げながら言った。周りも何が言いたいのか、見当もしなかった

 

 いや、違う。数人は思い出したかのように手を上げた

 

「あ、あの! 浦田社長からあのプロジェクトは秘密にしろと。遺産として扱うよう言われまして」

 

「貴方は確かアフリカに一緒に同行した生物学者ね。他の人は?」

 

「……捕獲した深海棲艦、港湾棲姫を連れ出す際に戦艦棲姫に殺されました」

 

 五年前の戦闘で戦艦棲姫が捕らえた港湾棲姫とミイラ化した深海棲艦を運ぶ途中に戦艦棲姫に殺されたという。当の本人は、機材を取りに行く際に席を外していたため無事だったのだ。他の人、現地及び平行世界から来た人は戦艦棲姫に殺された

 

「そうか……本当は死刑になりたくないから言わなかっただけではないのか?」

 

 結衣の睨みに生物学者は後ずさりが、彼は首を振った

 

「違います! 話したとしても海軍がもみ消すまでです! 日本海軍の闇に巻き沿いされるのは勘弁だ!」

 

「だろうな。私が兵装の力を確かめるついでに探したよ。まだ、無かったことにしている」

 

 結衣は嬉しそうに話したが、周りはさっぱりだった。特に武田は困惑していた。浦田社長の極秘情報がまだ生きている? 海軍の闇? 何を言っているんだ? アメリカ艦隊とロシア軍相手に遊んだだけではないのか?

 

「あー……出来れば話してくれないか?」

 

「教えよう。行き場所はここだ」

 

 結衣が広げていた地図に指をさした。その場にいた全員が驚愕した

 

「ちょっと待ってくれ! 冗談はやめてくれ!」

 

「こんな時に冗談を言う必要ある?」

 

「瀬戸内海だぞ! 呉鎮守府に近い! 艦娘までいるんだ!」

 

「ああ、知っている。あの『狂人の息子』は私を警戒して移動したのは知っている。私の性格を知っていての行動だろうな。尚更、好都合だ」

 

 武田は反論したが、結衣はあっさりと受け流した

 

「大丈夫ですよ、武田さん。これは確かですから」

 

「どういう意味だ?」

 

 武田は困惑したが、結衣の説明により全員が驚愕する

 

「まさか……本当にそんな事が」

 

「まあ、太平洋戦争が無くてもこれは大問題(・・・)になるから今も隠しているのだろう。艦娘も知らないだろうなぁ。私に挑んできた陸軍の艦娘、神州丸も知らんだろう」

 

 武田は放心状態になっていた。結衣からまさかこんな真相を聞かされるとは思いもしなかったのだから

 

「強奪した貨物船であの島に向かう」

 

「分かった。何時?」

 

 武田は頷きながら言った。これなら地下活動から武装組織に発展出来る。上手く行けば浦田重工業は再建するかもしれない

 

 そう考えていたが、結衣が呆れた目で見ていたため恐る恐る言った

 

「……まさか今から?」

 

「当然だ。準備しろ。但し、上陸は真夜中だ。田中、指揮を取れ。兵士の指揮は専門外だ」

 

「喜んで」

 

 浦田副社長は啞然としたが、これには一理あると思った。グズグズしていては、あの場所がばれてしまうかも知れない。提督や艦娘が感づかれる可能性も否定できない

 

 




元帥「新種のナ級を『ナ級後期型Ⅱ』と呼ぶ」
時雨「え?アイツが作ったの?」
摩耶「道理で強いはずだ」
神通「なんてものを海に放ったの?」
提督「本当に最悪だ。元凶は運営ではなくてアイツだったか」
元帥「……本ゲームのイベントでの恨みつらみは知っているが、取り敢えず落ち着こう(気持ちは分かるが)」

ナ級後期型Ⅱが嫌われる理由は嫌ほど分かるよ。こちらも散々、嫌な目にあった事か……


因みにロシア(旧ソ連)の兵器を調べるのに苦労しました(汗)
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