時雨の緊急任務 ~リベンジ~   作:雷電Ⅱ

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第23話 機密情報

 大本営

 

 会議室では新たに就いた国防大臣だが、横やりのお陰でややこしくなった。といっても、公表しないだけでない。明らかに責任をこちらに押し付けようとしている

 

「そうか。だが、人類の敵である深海棲艦の親玉である戦艦水鬼改、以前は戦艦棲姫と呼ばれていたが、そこにいる艦娘君二人に助けられた。敵と内通していたらしいが」

 

「それは──」

 

「それだけではない。深海棲艦は海域を縄張りとしてるが、陸地には攻撃しない。なら、こちらには用はないはずだ」

 

 国防大臣の意向はほぼ明確だ。毒ガスである施設を見つけたことで厄介払いしようと考えている。提督は何とか艦娘を擁護しようとしてるが、相手が悪すぎる

 

「大臣、何が言いたいのですか?」

 

「簡単な話だ。深海棲艦が現れた理由は君たちがいるからだ。浦田残党もお前たちを攻撃している」

 

 国防大臣の衝撃的な言いがかりに全員は驚いた。艦娘がいるから深海棲艦や浦田残党が日本を攻撃しているのだと

 

 勿論、そんなことはない。深海棲艦がワームホールから現れた時に人類とコミュニケーションを取らずトラック島やハワイ沖諸島を占領しているのは皆が知っている

 

 にもかかわらず、国防大臣は全て艦娘のせいにしているのだ

 

「大臣、流石にそれはおかしいのでは?」

 

「そうか? もし深海棲艦や浦田残党を全て駆逐したとしよう。その後は? 艦娘はどうなる?」

 

「妄想も甚だしいですよ」

 

 提督は怒りを押さえながら言った

 

「もし、艦娘と戦うとなるとこれは内戦になる。それは望ましくない」

 

「元帥は忘れてはおるまいな。我々には『切り札』があるというのを。浦田重工業の遺産で新兵器は実用化している。日本の国益を守るために脅威は排除しないといけない。その中には『弱腰の軍のリーダー』や『人類の敵になるであろう存在』も含まれる」

 

「総理がそんな事を許すと思うのか?」

 

「対策するのは当然の事。君ら陸海空軍は仮想敵国を決めて軍事を備えている。別に可笑しいところはない。我々には深海棲艦を倒せる兵器はある」

 

 元帥は怒りを押さえながら言ってたが、大臣の方が上だった。このままでは内戦になってしまう。その場にいた艦娘はどう反応していたらいいか分からず、時雨も反論が出来ない

 

 しかし、大和は落ち着いていた。それて、国防大臣に向かって静かに答えた

 

「分かりました。しかし、聞いておきたい事があります。私達艦娘が居ないと深海棲艦や浦田結衣は攻撃してこない保障はありますか?」

 

 

 

「疲れた」

 

 時雨は椅子に座りながら言い、他の艦娘も提督も同じようにした。会議が終わり、一同は別の部屋にいた。あの後、大和の反論で国防大臣は何も言わなかった。だが、眉を吊り上げていたのだから策はあるのだろう

 

 しかし、国防大臣が部隊を引き連れて襲ってきたら本当に内戦だろう

 

「本当に艦娘と人類が戦争をすると思う」

 

「まあ、今はそんな心配はないだろう。事態はもっと最悪だろう」

 

「それは何ですか、とても気になります」

 

 時雨の質問に提督は答えたが、別の声が聞こえた。全員が扉の方に顔を向けると、あの杉田刑事と鶴川巡査長がいた。追い出されたのにまだ居たのだ

 

「軍が毒ガスを作っていたのは事実でしょう。ですが、毒ガスを作っていた施設にしては大きすぎるんです。浦田重工業は何か別の研究を──」

 

「している」

 

 杉田刑事は持論を立てていたが、提督が遮るように言った

 

「な、なぜそんな事を思うのですか?」

 

「平文で脅迫状を覚えていないか? アイツラ『生物化学兵器』と言っていた。曹長曰く、生物兵器まで持っている可能性がある」

 

 矢矧は驚いたが、提督はあっさりと言った。時雨も他の艦娘も驚いた。生物兵器を持っているのなら更に危険だ

 

杉田刑事は微かに反応したが、冷静だ

 

「次に現在では総攻撃派は勿論、深海棲艦教という宗教団体までも出現しています」

 

「終末論者ですか?」

 

「ええ。ほとんどはそういったパターンですが、中には計画的で立ち上げた宗教団体はいるらしいです。注意してください」

 

 終末終末論者……浦田結衣が出現してから耳にするようになった宗教団体だ。宗教団体なので時雨達は気にはしないが、規模が大きくなれば警戒する必要がある

 

 

「最後にもう一つ。実は生き残った警察が極秘に創設していた特殊部隊。報道では全滅したと公表しましたが、一名は生き残っていました。彼の証言では、人間ではない何かがいたと。浦田結衣の死者蘇生に手伝ったと睨んでいます」

 

「突拍子もない話だな」

 

「そんな事はありませんよ。深海棲艦や艦娘のメカニズムは貴方の父親が開発したものです。浦田重工業がワームホールで未来技術を駆使して日本を支配しようとしていた事も。それに──」

 

 杉田刑事は調べたのだろう。時雨はこの刑事は頭の切れる者だと確信した。細かな疑問を長々と話している。そして、自分には知らない事も。リリという機械人形は浦田重工業が作り出したものだと思っていた。いや、皆は思っている

 

「写真を見てください。現場に機械の足がありました。ですが、警察の鑑識もどの大学も見たことない技術と答える始末です。浦田重工業ではない可能性があります。一部では宇宙人の技術だと言い張る人もいますが。にも拘らず、貴方は隠している。公表もしない。本体はあるのでしょ?」

 

「貴方が艦娘や502部隊を回収したのは分かっていますよ」

 

 杉田警部だけでなく鶴川巡査長まで乗り出した。時雨は提督を見た。提督はあれが何かを知っているのだろうか? 神通が破壊したが、頭部は動いた

 

 ──そう言えば、陸奥さんと博士が頻繁に話していたが、何か知っているのか? 

 

 提督は観念したかのように頷きながら言った

 

「そうですね。ただ、これが宇宙人だったらどんなに良かったかと思いますよ。リリとかいう機械人形……いや、ロボットを作ったのは人間ですよ」

 

「提督?」

 

 時雨は困惑した。ロボット? 何を言っているんだ?? 

 

「これからは話す。だが、俺が聞いた話だ。妄想と思われても仕方ない。そこは高度な文明を築き上げた世界でした。その世界である天才科学者がいました。彼は愛する者を失ったため必死に死者蘇生の研究に明け暮れていました。そんな彼が偶然、生命の起源である物質を手にし、それを使って妻を生き返らせようとした。だが、彼は科学者であって魔法使いでも神様でもなかった。そのため彼はどうでも良い人を蘇らせようとしました。彼が蘇らせようとしたのは、第三砲塔が爆発し爆沈したというミステリー事件を目撃した人だった」

 

 杉田警部も鶴川巡査長もさっぱりだったが、第三砲塔と聞いて時雨も皆も驚いた

 

「陸奥さん! まさか陸奥さんなの!?」

 

「最後まで聞け。──彼は軍艦の破片と生命の起源である物質を使って関係者、恐らく水兵だろう。当事者を蘇らせようとした。だが、蘇られなかった。別の形で生まれた。それが──」

 

「陸奥さん。そう言えば、リリとかいう機械人形を見てからかなり動揺していた」

 

 大和は驚きを隠していなかった

 

「予想外の事が起きたが、彼は実験を強要。しかし、死んだ者は蘇らなかった。陸奥は必死になって止めるよう説得した」

 

「説得は成功したの?」

 

 夕立は身を乗り出して聞いたが、提督は頷いた

 

「彼は死者蘇生の研究は止めた。陸奥は首を絞められたと笑って言っていたが。しかし、別のところでは恐ろしい事が起こっていた。リリは彼の親戚が作った特別製の機械人形だ。機械人形が上手く行くか悩んでいたが、陸奥の振る舞いを見て機械人形も人間と同じように生活できると思っていた。思っていたんだ」

 

「何があったの?」

 

「親戚と機械人形であるリリは海外の孤児院で暮らしていたが、その国は内政情勢が不安定だった。武装勢力に襲われてリリを残して死んだらしい」

 

 矢矧は恐る恐る聞いたが、衝撃的な発言で矢矧は両手を口で覆った。恐らく想像できたのだろう

 

「その時、リリはこう思ったそうだ。『人類は争う事が好きな生き物。なら、人類の敵を生み出せば世界は平和になる』という結論に至ったらしい」

 

「何でそんな事が思いつくの? 提督さん、流石におかしいよ」

 

 瑞鶴は悲痛な声で抗議したが、提督は首を振った

 

「残念ながらリリは俺や艦娘のような思考は持っていない。合理的な判断をすると陸奥は言っていた。そのため、リリは生命の起源の物質から怪物を作った。おぞましい生き物で交戦的で。だが、人類が絶滅しないように一昔前の兵器を与え、増殖する生体兵器を開発した」

 

「まさか、それが深海棲艦!?」

 

 時雨は啞然とした。こんな事を聞かされたのは初めてだ。だが、妙に納得はした。陸奥の行動がようやくわかったような気がした

 

「そ、それで? その世界はどうなった?」

 

「その時、アメリカが究極兵器を開発していたが、事件が起こった数日後には実戦で使った。その結果、陸奥と集まった深海棲艦を消し飛ばした。陸奥は異次元に魂を飛ばされたそうだ。恐らく陸奥を解体し魂を異次元へ送ったというのが親父は睨んでいるが、どうやってそんな芸当をしたのかは不明だ。しかし、その究極兵器は別次元に飛ばす兵器らしい。この世界にワームホールが出現して深海棲艦が現れた」

 

「陸奥さんはこの世界に建造された当初からその事実を知っていたんですか?」

 

「いや、彼に記憶を消されたらしい。動機は不明だが、彼は未来予知できたそうだ。レイテ沖海戦が行われた時に親父が、開発資材から作り上げた奇妙な物質を陸奥が手に触れるまでは。任務が終わって陸奥に呼び出されてから驚きの話を聞かされたよ」

 

 そこまで聞いて時雨は愕然とした。自分には知らない事だ。自分以外にも時空を超えた経験者がいたなんて

 

「陸奥さん以外に知っている人は?」

 

「工廠にいた明石と大淀と龍驤。後は俺の父だ。生命の起源の物質については、呼び名は様々だが、昔では『賢者の石』とも呼ばれていたらしい。今では形を変え『開発資材』と言っているが」

 

 提督の説明に皆は困惑した。時雨のタイムスリップについては理解できたが、この話は突拍子もない話だ

 

 時雨は杉田警部を見たが、以外にも杉田警部は平然としている。だが、内心では動揺しているだろう。鶴川巡査長は理解を超えていて固まっていた

 

「そこまで分かっているなら、なぜ公表しないんですか? 我々が追っていた正体不明の人物が全く別次元の世界から来たロボットと教えていれば──」

 

「言える内容だと思いますか? 冗談じゃない。ネタにされて笑い者になるだけがオチだ。仮に受け入れたとなれば大混乱する。皆はこう思うだろう。『深海棲艦も艦娘も人間が生み出したもの』だと」

 

「リリはロボットだと」

 

「そのリリは天才科学者の親戚が作った。それだけです。そして、これは先の会議で話した毒ガスとは比較にならない。この場にいる人は兎も角、誰も納得なんてしない。人間は真実よりも都合の良い話を信じるものです」

 

「では、鎮守府で発刊された漫画は……あれはまさか……」

 

 杉田警部が思い出したかのようにカバンから本を取り出した。それは、陸奥と秋雲が作った艦娘誕生の漫画だ

 

「あれは陸奥が体験した話を神話のように描いたものだ。いずれは世間に知らせるつもりでいた。誰もが疑問を持っているだろう。深海棲艦や艦娘がなぜ生まれたのか。だが、誰も納得しないだろう。1人の天才科学者が死者蘇生の研究という禁忌に触れた事で艦娘が生まれたことを」

 

「……」

 

 物事には理由はある。だが、その理由は誰もが納得するようなものではない。時雨も提督には不満があったが、提督の立場からすれば難しい問題だろう

 

 自分が未来改変のためにタイムスリップした事に当時の提督は信じていなかった。過去の提督は学生で軍に入隊していないのだから、信じなくて当然だ

 

 今ではそれが逆に起こっている

 

 長い沈黙が続いたが、時雨はある事を思い出して提督に聞いた

 

「早く鎮守府に戻ろう! 浦田残党が鎮守府に生物兵器を撃ちこむかも知れない! 化学兵器を使ったんなら生物兵器を使うと思う!」

 

「だろうな。結衣は軍人ではないからやりたい放題だ。結衣が撤退したのは、鎮守府攻撃するための準備だろうな」

 

 時雨の焦りに提督は平然としていた。どうやら、予想はしていたらしい

 

「生物化学戦の知識がほとんどない。こんなことは想定されていないからな」

 

「待って下さい。艦娘の部隊を分散させてしまえば被害は減ります。生物化学兵器が恐ろしいものでも、気候やガスマスクで防げるはずです」

 

 杉田警部が助言したが、提督が口を開く代わりにドアが開いた。聞いていたのだろう。提督の父親である博士と502部隊の隊長である大佐だ

 

「それは悪手だわい。もし分散してしまうとそれこそ奴の思惑通りじゃ」

 

「待って下さい。どういう意味です?」

 

「奴を倒すには膨大な戦力が必要じゃ。少数では倒せない。分散させるのが目的じゃ」

 

 博士はきっぱりと言った。杉田警部は困惑したが、時雨には分かった。他の艦娘も分かったのだろう

 

「もしかして僕たちは追い詰められている!?」

 

「そうだ。用兵にあたってもっともしてはいけないのは戦力を出来るだけまとめて使わないといけない。ちまちま小出ししても結衣には勝てない。だが、一か所に集めると今度は格好の的だ。ガス弾が入った砲弾を撃ち込まれたら艦娘の大半は戦闘不能になる。武蔵達は回復しているが、生物兵器になるとお手上げた。情報が無い」

 

 提督の説明に杉田警部は青ざめた。生物化学兵器は何も威力だけではない。心理戦にも使える

 

「生物兵器は軍が開発していないんですか?」

 

「していた。しかし、浦田重工業の反乱事件で生物戦専門部隊である731部隊などは爆撃されて全滅した。まあ、戦果については余り良い話は聞かない。昔はコレラで浦田重工業を打ち倒そうと言って浦田重工業の食堂に工作員が潜入し食事にこれらを混ぜたらしいが、報復として炭そ菌を送りつけられ大被害を受けた。皮肉が聞いた戦果だった」

 

(あの731部隊を平気で返り討ちにしていたんだ)

 

 時雨は大佐の話を聞きながら内心では驚いていた。731部隊の事は時雨も聞いたことがあったが、どうやら相手が上手だったらしい

 

「生物兵器が撃ち込まれたら──」

 

「ワクチンはあるが、未知のウイルスだったらお手上げだ」

 

 大佐は顔をしかめながら言った。もし、未知のウイルスでパンデミックを起こしたら大問題だ

 

「話は終わりだ。急いで鎮守府に戻るぞ」

 

 提督は話を切り上げた。これ以上は話をしても無駄だろう

 

 だが、提督はある事には話していなかった

 

(あの施設、生物化学兵器だけではない。何かを保管していた)

 

 実は大久野島にて502部隊は設計図の一部と見たこともないエンジンを見たという。明石が見た所、ジェット戦闘機のものだと判明。だが、何なのかは分からないという

 

「F-4でもミグでもないんだな?」

 

「分からない。何を保管したかは」

 

 アイオワは真っ青だった。地下施設の大きさからして数機だろうが、それでも十分すぎるほどの脅威だ

 

(こっちには火龍と橘花。そしてジェット機試作機である『月光』しかないっていうのに)

 

 提督がいう『月光』とは史実でいうF-86Dの事である。日本空軍が試作機を開発しており、数年後には実戦配備される予定らしい。それは人が乗る物なので大きいのは当たり前だが、浦田重工業が持っているのはF86D以上の高性能な戦闘機だろう。ただ、独自改修があるため本家と比べて劣るだろう

 

(対抗兵器はあるが……明石に注意喚起しないとな)

 

 提督は心の中で呟いた。これは祈るしかない

 

 

 

 ??? 

 

「よし、正常に動く! まさか動かせるとは思わなかったぜ!」

 

 ある場所においてパイロットは例の航空機の試運転であった。地上でエンジンを回しているので浦田残党の兵士たちは耳を抑えながら見守っていた

 

「しかし、お前の能力は凄いな」

 

『無駄口を叩くな。戦艦水鬼改が邪魔しなければ良いものを』

 

 戦艦水鬼改は無線で不満そうに答えていた。戦艦水鬼改は巻いたものの、自分では納得がいかない。だが、今は重要な事が先だ

 

「分散しないのなら、攻撃するまでだ」

 

結衣はニヤリとした。どうやって効率的に攻撃するか考えていた

 




次回は???
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