状況はどうあれ、皆さんはゴールデンウイークをどのように過ごしていますか?
私は何時通りです
ただ、忙しさは倍増していますが
「何!? ロサンゼルスがロケット攻撃を受けて甚大な被害を受けただと?」
『クラーケン』である浦田結衣と深海棲艦のボスである戦艦水鬼改を攻撃した数時間後、大統領はロサンゼルスから次々と舞い込む情報に耳を疑った
ハウニブで始末したと思いきや、敵は健在処か、報復してきた
アメリカ本土では常に深海棲艦については警戒していた。P-51、P-47、F8FやB17など史実で活躍、もしくは惜しくも活躍できなかった戦闘機や爆撃機に加えて多数の空母や巡洋艦駆逐艦はサンディエゴに揃えていた。更にはB-29の機体をベースに改造し作り上げたE-13電子偵察機*1も巡回させている
艦艇の防空能力は高高度の航空機に対して撃墜するように作られていない。仮に陸上の姫級が高高度戦闘機を持っていたとしても高速で逃げられる
アメリカは対深海棲艦である兵器も実用化していることに加え、大量生産することも可能である。また、ロサンゼルスは深海棲艦が上陸作戦する事も想定して海と隣接している都市は要塞化を行っていた。未完成ではあるが、海岸は鋼鉄の防壁が設けられ、兵力が迅速に展開できるように設計されている。市民を守るための地下シェルターもあり、大規模な砲兵陣地もある。備えは万全。訓練は抜かりなくやっている
それだけ国力や準備があるのだから艦娘不要論どころか総攻撃派が生まれるのは仕方のないことである
だが、敵はやってのけた
高高度に飛行するE-13を熱線で呆気なく撃ち落とすと、ロサンゼルスやサンディエゴに向けてロケットのようなものを複数撃ち込んできたという
ロケットの雨の前に防衛陣地は崩壊。街のあちこちで爆発がおき炎上。ロサンゼルスは現在パニックに陥っている。だが、恐らく本当の狙いはサンディエゴだろう。海軍基地は徹底的に叩かれた
「戦艦から多数のロケット? どう言うことだ?」
大統領は首を捻ったが、浦田結衣がコンバート改装でアーセナルシップ型であるのを知らない
結衣は米東海岸まで接近するとアーセナルシップに変形。持てる全ての巡航ミサイルや弾道ミサイルを撃ち込んだ。巡航ミサイルはトマホーク、弾道ミサイルは対艦弾道ミサイルである。対艦弾道ミサイルはDF-21の改良型であるが、トマホークは違う世界からとは言え、元はアメリカの兵器である。もし、アイオワが一連の流れを見ていたら皮肉に感じるだろう
「報復だ! アメリカの威信をかけて駆逐せよ!」
米大統領は将軍に伝え国防長官や将校は頷いたが、分析官である海軍少佐だけは違った。アーセナルシップの事はアイオワから聞いている。しかし、どうも実感が沸かなかったために頭の片隅に置いておいた
それのツケが払わされたが、例え信じたとしても他の人は過小評価していただろう。特に軍事に疎い者にとっては……
実は少佐は以前から深海棲艦の事には研究していた。敵と戦うためには敵を知るためには当然の事だ。でなければ、死んでいったキングやミニッツやハルゼー達には申し訳がない。インピトレッドの空母娘からの偵察写真は大いに役に立った。艦娘との交流も何回もしていたため不要とは考えてもいない
結衣の出現には、勿論警戒はした。しかし、悲しきかな。海軍大将はクラーケンである結衣を『新種の深海棲艦の姫級』としか見ていなかった
認識を改める必要を感じたのはミッドウェー級空母が撃沈した辺りだ。そして、連合軍とも言える艦娘が沢山いる呉鎮守府に敵は躊躇いもなく生物兵器を撃ち込んできた
しかも、未知のウイルスらしい
コイツは別扱いにした方がいいのではないか? 陸地まで攻撃したとなると常識が通用しなくなる。「日本は何をやっている?」などという対日感情は捨てるべきだ。嫌な予感がした
「あの……大統領。失礼ながら広大な太平洋からクラーケンを探すのは、砂漠で針を探すようなものです。E-13電子偵察機でも捕捉出来るか怪しいものです。闇雲に探しても意味がありません。艦娘のホーネットが敵を捜索していますが、まだ何も──」
「何を言ってる、少佐。姫級鬼級が確認されたのなら攻撃するまでだ。いずれは出てくるだろう」
大統領は素っ気なく言った。恐らく、深海棲艦はどれも同じと考えているだろう。無差別攻撃するつもりだ。しかし、深海棲艦は結衣を警戒していて敵対している。敵対する相手を潰してどうするつもりか?
だが、彼は何も言わなかった。もし、この場にアイゼンハワーが生きていたら何というだろうか? だが、彼はいない。全員、数年前に殺害されたのだ
このままでは、自分の努力が無になる
「では、フィリピンにいる艦娘達は戻ってきて貰います。指揮は私が直接、指揮することでよろしいですね?」
「いいだろう。活躍出来ないと思うが」
皮肉たっぷりに答えたが、彼はどうでもよかった。問題はアイツが日本で暴れたようにこちらで言いようにされるのではないかと思ったのだ
数日後
「私達を呼び戻して何の用?」
サウスダコタは輸送機から降りるや否や海軍少佐に対して不機嫌そうに言った。他の艦娘もそうだ。まさか、B-29の輸送機に乗らされ呼び戻されているとは思わなかっただろう。高高度を飛んでいたため、深海棲艦の攻撃は受けていない
「それは──」
「クラーケンをここで迎い撃つ」
近くにいたホーネットは言った
「Why? だって、ここに来るまでUFO型戦闘機が戦果を挙げているって聞いたわ」
サラトガは呆れていた。対深海棲艦の兵器登場によって勝利したとラジオは大々的に伝えている。艦娘の事は一切なし
「そうだ。多分、出番は無いだろう。海軍大将は掃討作戦を決定した」
「結衣を倒すため?」
「無差別だ」
少佐の言葉にその場にいた米艦娘は驚いた
無差別? それって──
「ああ。分かっている。深海棲艦全てだ。だが、結衣は洗脳している深海棲艦は隠すだろう」
少佐の言葉に全員は愕然とした。深海棲艦では結衣の洗脳で支配下に置かれた個体と戦艦水鬼改を中核とした集団と争っているのは分かっている。だが、こちらが無差別に攻撃すれば結衣の集団に抗う抵抗勢力は弱まる
相手の思うつぼだ
「殴り込みする気か。上等だ」
サウスダコタは心配する必要性はない。相手は誰であろうと戦うつもりだろう
「いや、上層部はお前達に待機命令を出した。『新兵器』の効果を試したいそうだ」
「そんな!」
少佐の命令でサウスコンダは愕然とした。これでは、本当にお払い箱ではないか! 人類が対深海棲艦の兵器を完成させたらこれか!?
「都市を攻撃したのだから、反撃するのは当然だ。待機命令だが、私は違う。恐らく、何かしら行動を出すだろう」
「生物兵器か化学兵器を使われると?」
イントレピッドは恐ろしそうに言った。確かに使われたら国はパニックになる
「だから、何時でも出撃できるように研究しておけ。あれを倒す方法を」
少佐は違っていた。裏をかいて攻撃するだろう。その時には参戦するかもしれない。いや、待機命令を裏切っても倒すべきだと考えていた
……第一、悪魔を蘇らせるのを手伝ったのは人間じゃないか。アメリカも手を貸しているのは事実だ
その日、米軍は強硬手段に出た。今までは観察し艦娘による少数でハンティングしていたが、今は全軍突撃だ。深海棲艦が現れたら問答無用で攻撃を開始していた
ミッドウェイ級空母からは多数の艦載機が飛び立ち駆逐イ級一匹相手でも爆弾を投下していた。今では対深海棲艦用も通常爆弾と同じくらいコンパクトになっている
E-13電子偵察機のお陰で相手が特定されるとミッドウェイ級空母から艦載機が飛び立つ。退役間際と言われているF6FやSBDドーントレスやTBFアベンジャーに加えて、本来なら数年早く登場しているであろうF86Fセイバーまでも飛ばしている。ハウニブ型は少ないためだ
深海棲艦の集団を発見すると爆弾の雨を降らした。海に潜って逃げる深海棲艦には、対潜爆雷を大量に投下していった
「本当ニ何モ分カッテイナイ!」
湾港棲姫を含む姫級は反撃したが、あの円盤型戦闘機にはこちらの艦載機は役に立たない
対深海棲艦の兵器の存在は知っていたし、防御力を上げるなどの対抗手段を出していたが、大量に投下されると被弾してしまう。従来の通常兵器には効かない、というアドバンテージが失われる
戦艦水鬼改は負傷していたため、戦えない。南方棲戦姫や戦艦レ級も応戦しているが、あの円盤型航空機は厄介だ! どういう訳か、あの円盤型戦闘機も熱線攻撃は出来るらしい。そのおかげで戦艦レ級は大破される始末だ
あの浦田結衣は不快だ! 恐らく、ワザと国を怒らせたのだろう! 自分と操った集団は安全に隠れているに違いない!
「撤退シテ! 別ノ島ヲ──」
湾港棲姫が撤退命令を出したその時、北方棲姫が驚きの声を上げた
「エ?」
湾港棲姫は間抜けな声を出していた。信じられない光景を見たからである
米軍は基本的には航空機作戦で対処している。その方が効率良いからである。撃ち漏らしたら巡洋艦駆逐艦で倒す
しかし、湾港棲姫は信じられないものを見た。何も無い所から突然、スパークを放つ船が幽霊のように現れた。あまりの眩しさに湾港棲姫は目を覆った。まるで船が発光しているようだ。大きさからして駆逐艦だろう。デッキには人影は見当たらない
幽霊のように駆逐艦が現れたのを見れば驚くのも無理もない。だが、この駆逐艦は実在している。さっきまではその方角にレーダーは映っていないのに、軍艦が現れた直後、反応があるのだから
思考停止状態になっている北方棲姫と湾港棲姫に対して駆逐艦は、主砲を向けると発砲した
「危ナイ!」
南方棲戦姫は二人を助けるために駆け込んだ
ホワイトハウス
「大統領、作戦は成功です。掃討作戦で深海棲艦が拠点としているハワイ島を攻撃しました」
「奪還は出来るのだな?」
報告を受けた米大統領は元気そのものだった。もし、大統領という肩書きが無かったら、喜びの余り踊っていただろう
「例の特殊駆逐艦の成果は? 確か瞬間移動が出来、レーダーどころか視界も映らない特殊艦だったような」
「駆逐艦エルドリッジ*2ですか? 深海棲艦は驚いていましたよ。強力な主砲を積んでいます。多分、死んでいるでしょう」
将校は答えたが、実はそうではない。攻撃目標である湾港棲姫や北方棲姫の死体は見つかっていない。それどころか、姫級鬼級の姿は居なかった。駆逐イ級や雷巡チ級や軽空母ヌ級ばかりである。後は散り散りになって逃げた。全員、殺す事は出来なかったのは仕方ないが対深海棲艦の兵器に効果はあったのは間違いない
「では早速、反撃プランを立てたまえ」
米大統領はそう命じた。対深海棲艦の兵器の効果が分かれば、後は楽だ。兵器を大量生産して戦地に送るだけだ。自分は英雄だ
硫黄島
「奴等、深海棲艦を攻撃している。洗脳されていない軍団を攻撃するとは」
浦田残党である武田はニヤリとした。彼は何もしていないわけではない。東南アジアや南米に賛同する者に声をかけている。中国大陸やロシア周辺の国もである
帝国主義国家を倒すためには、これが一番だ。特に南米では革命が起こり周辺国を統一した南米連合国家、コロンビア帝国が設立した
指導者は「北へ向かってもいいか?」「北米へ侵攻するのに手を貸してくれ」と催促が来る始末である
アフリカ大陸もいたが、こちらは余りよろしくなかった。未だに紛争が続いている。これは後回しだろう
「日本で田中湊が革命と称して東京を制圧するよう仲間を募った。テロ攻撃でデモは起きている。これで我らは日本を制圧できる」
「下らん」
「え?」
武田は状況を説明していたが、結衣はあっさり言った
「面白くないという事だ。なぜ、アイツらは喜んでいる?」
結衣はテレビに指をさしていた。それは日本の国防大臣が、国会で艦娘不要論を唱えている。本来なら喜ぶはずだが、結衣は違う
「アメリカもロシアも喜んでいる。新兵器とやらを」
「えっ……と? どういう意味だ?」
「簡単な話だ」
結衣は立ち上がった。今は普通の人間の姿だが、威圧感は半端ない
「新兵器を残らず破壊する」
「はっ?」
武田は啞然としていた。浦田社長もだが、妹である結衣の思考には辛うじてついてはいける。が、これは予想外だった
「お言葉だけど、混乱に乗じて乗っ取る計画だ。成功したら、好きにしたらいい。生物兵器に侵された艦娘を『標的艦』にしたり、どこかの国のトップについたり──」
「いいや。私が不満なのは、この計画で喜ぶ人間がいる事だ」
結衣の主張に武田副社長はようやく理解した。米大統領や日本の国防大臣など多く主張している集団……総攻撃派が手を叩いて喜んでいる事だ
漁夫の利を得ている組織や国が気に食わないらしい
「兄の理想を築くためには、戦争が起こしそうな人物や組織は排除するのが第一。あんな輩のために国家転覆したり、第二次世界大戦の参戦国を攻撃したりなんかしていない」
「いや……これは想定内で……」
「気が変わったのだよ。不快だ。アイツらは私を倒せるとでも思っているらしい。なら、恐怖を味合わせてやる。私に歯向かうどころか笑ったりしたらどうなるか。思い知らせてやる」
武田は愕然した。結衣は本気だ。艦娘不要論や総攻撃派など排他的思考を持つ集団を攻撃するつもりだ! 確かにこちらとも戦わないといけないのだが
「ちょっと待ってくれ。──そう睨むな。別に止めたりしない。だけど、アイツらは対深海棲艦の兵器を持っている」
「それで?」
殺気を当てられたため、武田は怯みながらも言った
「お前もやられるだろ? 幾ら超人計画で力を入れたとしても敵わない。それに、相手は連合軍だ。史実の規模とは違う。分身出来る訳でもないし」
「確かにそうだな。だが、私がそこまで考えていない愚か者だと?」
必死に説得したが、結衣は通じそうにもない
「そうじゃないく……まさか?」
「そうだ。リリの力は凄いものだ。一瞬で対レーザー装甲を作り上げたんだから」
結衣は既に進化していた。あの状況で? 戦艦水鬼改だって重傷を負った兵器だぞ?
「それだけじゃない。リリは超科学力が集まったものだ。全部ではないが、私でも扱える。肉体再生した際に取り入れたからな。それか、騙したというべきか。だが、私でも能力がどれほどか未知数なんだよ。力比べに丁度いい」
「どうするのだ? 連合軍が一か所に集結なんて無理に……に……決まって……」
武田は結衣が行おうとしているのが何なのか分かったらしく口にしなかった。余りにも馬鹿げている。しかし、彼女は本気だ
「私が言った言葉を全周波数で流せ。重要都市を失いたくないなら、全力で守って見ろとな。生物化学兵器を使わずに倒すと」
「……コロンビア帝国に連絡はしてもいいよな? 北米侵攻したがっているから」
「それは構わん。アイツらの勝手だ。だが、邪魔はするな、と伝えろ」
結衣はそう言うと部屋から出た。武田とその場にいた数名は呆然としていた。妄言と思いたいが、彼女は実績がある
「これで第二次世界大戦どころか参戦国は地図から消えますね」
「ああ。計画の前倒しとしよう」
早速、準備をしなくては……
呉鎮守府
時雨は松葉杖をつきながらもフラフラとしながら歩いていた。向かう場所は提督室。提督は隔離されている。時折、意識を失う事もあるが、その度にアイツが蹂躙する夢を見る。どこかの都市を攻撃する夢を見た。本来なら夢と割り切るのだが、鮮明過ぎる。幻覚ではない
自分は何かの病気になっているが、なんか違う。何しろ、意識がはっきりしているのだ。だが、PTSDは再発しているのか、コップに水をついだだけでも震えてしまう。のどが渇いているのに……
この事を報告するために、ベッドから抜け出しマスクなしでバッテリーを手に持ち歩いた。人工心臓が埋められているため、電池切れしたら終わりだ。身に着けた艤装が、こんなに邪魔になったと思うようになったのは初めてだ。しかし、外したら死ぬだろう。仲間も同じで艤装を装着しているため病死者はいない。逆を言えば外せば、あの世だ。妖精が感染している艦娘たちを看病しているが、持つかどうか
やっとのことで提督室に着いたが、提督は簡易ベッドに横になっている。身動きはしていないが、隣には大淀がいた。感染しているらしく、咳をしながら座り込んでいる
「何が……あったの?」
時雨は聞いたが、大淀は答えない。代わりに手に持っていた紙を時雨に見せた
「これは通信文……え? ……これって……まさかそんな……」
時雨は座り込んだ
『私は浦田結衣だ。今から一週間後にニューヨークを吹き飛ばす。失いたくなければ、全力で守ってみろ。連合国を崩壊させてやる。私はお前達が喜ばせるために生き返ったわけではない。お前達を生物化学兵器を使わず正々堂々と壊滅させてやる。例外は無い。力比べをしようではないか。噓ではない証拠にプレゼントをやる。尚、この時から七日後は一切、攻撃をしない』
英語で訳したであろう通信文らしいが、どうやら全世界で流しているらしい。全世界に喧嘩を売っている。しかも、艦娘不要論を唱える総攻撃派に!
確かに国防大臣は嫌な人だが、これはやり過ぎだ!
「違う……結衣がこんな事をするのは当然なんだ」
時雨は壁にもたれながらうわ言のように呟いた。結衣は学生時代にいじめられた。それに根を持っているのか、いじめた人全員をなぶり殺しにした。家族持ちの者は全員殺された。子供も含めて
しかも、殺し方も残酷だったらしい。いや、アイツに残酷は普通か……
(真綿で首を絞めるように殺すのがアイツのやり方……だから生物兵器を使ったんだ……僕たちが艤装を付けるのを知っていて)
艤装を付けていれば死は免れるが、苦痛は別だ。苦しさの余り発狂して死を選ぶため外す艦娘もいるかも知れない。今は居ないが、時間の問題だ
「大和さん……上手く行けたらいいな」
時雨は大和たちに希望を託しながら呟いた。旅立ったのはつい先ほど
これで上手く行かなかったら……
タイムスリップ作戦はもう出来ないのだから……もうこれは賭けだ
ホワイトハウス
「大統領閣下。失礼ながら、あの女にコケにされています」
「分かっている! ハウニブで仕留められなかったのによく言えるな!」
米大統領は怒り狂っていた。こんな通信文は今までない。しかも、プレゼントとやらも最悪なものだ。何しろ、ロケットのようなものがホワイトハウス数十キロ手前で落ちて爆発したのだ
「報告ではイギリス、フランス、ドイツ、イタリアの政府の建物付近でもロケットのようなものが落ちて爆発したとあります。ロシアも日本も中国もです。オーストラリアは政府建物に直撃して政府高官数十名もの死傷者が出たと」
「もういい!」
米大統領は怒り狂っていた。こんなに不愉快な気分は初めてだ
「ニューヨークを失う訳に行かない! 早急に連合軍を結成してアイツを殺せ! 喧嘩を売ったらどうなるか目にもの見せてくれる!」
写真に写っている浦田結衣を叩きながら米大統領は怒鳴った。もし、失敗したら対深海棲艦の戦略に大きく影を落とすどころか、次の大統領選挙で負けてしまう
人類は一つになっている事を証明してやる!
某米軍基地
サウスダコタはウンザリしていた。意味不明の通信文を受信したと思ったら、今度は出撃命令が下った。任務はニューヨーク防衛のためだそうだ。状況は少佐から聞いている。しかし、納得がいかない。上層部の思惑はどうでもいいが、手のひら返しは腹が立つ。さっきまでは艦娘不要とか言っていたのに、今では国のために戦え、と勝手だ
だが、今回は本当にヤバいらしい。噂だと、米大統領は他国にも軍隊派遣するよう要請しているとか。英国のネルソンやロシアのガングートまで参戦するらしい
「本気で殴り合いが出来そうだ」
しかし、サウスダコタは内心ではにんまりしていた。アイオワの敵を討つことが出来る。状況はどうであれ、クラーケンと戦えるのだから
大本営
「ニューヨーク防衛に参戦?」
「そうだ。奴を倒すことが出来る」
元帥は国防大臣の命令にパチクリしていた。浦田結衣の挑発ともいえる通信文を見て応えるらしい
「しかし……」
「何だ? アメリカの要請だ。総理も同意した。日本は国際協調を取らなければならない」
元帥は困惑した。呉では未知の病原体で対応に追われていると言うのに、アメリカに派兵しないといけないのか?
「今は未知のウイルス対策が先です。また生物兵器が使われる可能性も」
「防護服も持っていく。この時のために使うのだ。元帥には悪いが、私の独断で止めた」
元帥は啞然とした。呉鎮守府付近は隔離し、防護服が無いことに嘆いていたが、まさか隠していたとは。しかも、こちらの管轄を無視するとは!
「国防大臣! いくら何でも対応が可笑しすぎます! 未知のウイルスが蔓延するときに」
「いいか! 浦田重工業の遺産の中に別次元の未来である歴史書があった。それによると日英同盟が解消された理由はアメリカの妨害でも何でもなく、日本側に非があった! 第一次世界大戦で欧州に兵力を送らなかった事と中国大陸の利権を得ようとしたことがきっかけでイギリスは不信感を得たからだ! 日英同盟の解消の原因は我々だ*3。国際協調を得なければ、日本は孤立してしまう! 今更だが、浦田重工業が日本を見限った理由が分かったよ」
これを聞いて元帥は不味い! と思った。あの時の資料だ! 浦田重工業は平行世界とは言え、近代史を知っている。博士も提督も日本に役立つために送った歴史資料なのだが、どうやら別の問題が出てしまった
「我々は人類の敵ではないと行動を起こすべきだ。浦田重工業と戦う抵抗勢力であると。だから参戦する。新兵器も送る。幸い、数機の高高度飛行可能な富嶽もある」
「分かりました」
不満だが、これは命令だ。どうすることもできない
そんな中、一緒にいた中将が国防大臣に意見を述べた
「大臣。派兵は構いませんが、疫病対策のために502部隊は派遣しないでくれませんか? 広島で万が一、ウイルスが蔓延してしまうと……」
「そうだな。ウイルスの封じ込めが無理と判断したら爆弾で焼き払ってもいい」
国防大臣はそれだけ言うとそのまま部屋に出て行ってしまった
「そっちは任せる。……済まない。こんな事になって……先輩として情けない」
「いい。感づいておったから。じゃが、これで治療に専念できるわい」
元帥は疲れていた。未知のウイルスであるため、呉は隔離施設となった。周辺住民からは家に帰れないと批判はあったものの、謎の伝染病が蔓延しているという説明を説明すると批判の声は消えた
「ウイルスの正体は?」
「わからん。じゃが、決戦前までには治療させて見せる」
「いや、出来る事なら完治は決戦後でいい」
元帥は意外な事を言っていた。いや、もう既に結果は分かっていたに違いない。口には出していないが
「勇気と無謀は違う。丁度、傲慢な輩が1つの都市に集まるんだ。過小評価している奴らの反応が楽しみだ。もし、浦田結衣が倒せたのなら褒めてやる。今は出来る事をするまでだ。田中湊が中核とする革命軍は、警察……特にあの杉田警部に任せるとして、お前は現場に行っていい」
博士は頷くと部屋を出た。まずは502部隊の大佐を呼び寄せないと!
世界各国は浦田結衣を見つけるために必死になって哨戒機や偵察機を出したが、何一つ発見できなかった。また、謎の電文を発信した時から深海棲艦は反撃すらしていない。付近に船が通っても知らん顔だ。こんな事は普通有り得ない
だが、逆を言えば奴は本気だって事だ。連合軍は続々とニューヨーク防衛のために軍を送り込んでいた
七日は短いが、各国は必死になってピストン輸送していた。浦田結衣の賞金首は今や一生暮らせる金額まで増額されている
『親愛なる合衆国国民に、いや、現在この放送を聞いている全人類同法諸君に申し上げます。現在、日本の過激派組織である浦田残党が我々に宣戦布告しました。彼らは深海棲艦の技術を使って世界の覇者になろうとしている。既にロサンゼルスは大ダメージを受け、国民を守ろうとしていた兵士達は殲滅されました』
アメリカ政府はラジオやテレビを使って声明を発表していた。全世界に流しているので、日本にも届いている
『本来の深海棲艦とは違ってかなり手ごわい相手のようです。人類の敵と呼ばれる『クラーケン』は艦娘でも歯が立ちませんでした。しかし、我々には新兵器があり、対深海棲艦の戦術は確約されました』
『例え、敵がどんな力を持っていたとしても、心配することは無く、今も勇敢な兵士たちが脅威に立ち向かい戦っています。例え、怪物でも人類が団結した連合軍には敵わないのです』
人々は熱心にラジオやテレビを聞いている。呉鎮守府では、まだ動けるものはテレビをつけて見ていた
「あのプレジデント……何も……分かっていないわ」
「仕方ないよ……僕たちの行動は無駄だったんだ」
アイオワは落胆し時雨は項垂れた。新兵器があるため、ここまで言い切れるからだ
『ですから、皆さん。どうか安心なさってください。我々は戦争の達人です。特に我が国の航空機や大砲は世界で最も優れています。今回の事で不安に感じる者もいますが、1つ申しあげておきます』
テレビでは米大統領は力強く言った。発言の度にカメラのフラッシュが多く光る
『浦田残党と呼ばれる最大戦力と言われる『クラーケン』は一体しかいない。対する我々の兵士の数は数百万人!』
ニューヨーク沖
輸送艦が列をなして航行しているのを戦艦ル級はにんまりとしていた。燃料補給は必要としないため、こうして偵察できる。E-13と呼ばれるB29の電子偵察機からも擬態能力は見破る事は出来なかった
(破壊するのが楽しみだ)
結衣はニンマリとしていたが、ある航行する集団を見つけた
(あれはアメリカの艦娘……全戦力を集めるつもりか)
米艦娘は深海棲艦の集団を無視してニューヨークへ向かっている。命令により、交戦してはならないと通達されているのだろう
「あれは戦艦サウスダコタか……面白そうだな」
結衣は口角を吊り上げた。あの自信を挫けるには持って来いだ
上層部の命令でニューヨークへ向かっていた米艦娘の一団だが、サウスコンダはいきなり立ち止まり深海棲艦へ砲を向けた
「
ホーネットはサウスダコタに警告したが、サウスコンダの様子がおかしい。息が荒い?
「いや、嫌な視線を感じた!」
サウスダコタは周囲を警戒している。数十キロにいる深海棲艦の集団に今にも攻撃しそうなだ
「ここで弾の無駄にしないで。
「OK……分かったよ」
ホーネットの批判にサウスコンダは引き下がった。しかし、あの集団に何かがいた。だが、証拠が無いため無理に交戦は出来ない
サウスダコタは再びニューヨークへ向けて航行を開始していった
かつてない強敵が攻めてくる。しかし、人というのは体験しないと性格を改めない生き物である
何処かで深海棲艦は下等生物と思っている節もあった。なので、兵士たちの間では『金属を纏った野蛮人』とさえ思っている節があった
「しばらく眠った方がいいかな?」
時雨は再び眠りについた。のどがカラカラで呼吸もしずらくなっている
一層、艤装を外して楽になれるかも知れない。しかし、あの夢は正夢だ。結衣が時雨の心臓を体に取り込んだお陰で結衣が何をしているか垣間見る事が出来るらしい
どういった原理なのか分からない
「だけど、情報収集は……大事だ」
時雨は瞼を閉じた。次が目覚めた時は体が回復していますように。大和たちは帰って来れる。僕も成功した
「僕はまだ……諦めていない」
次回
戦闘勃発
余談ですが、駆逐艦エルドリッジはアズレンでも出ましたね
なぜ瞬間移動や姿を消したりする能力が無いのか謎だ