時雨の緊急任務 ~リベンジ~   作:雷電Ⅱ

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皆さん、こんにちは
梅雨時期なので結構雨が降っていますね。イベント兼クォータリー任務併用で進行している最中です
それに加えてウマ娘とモンハンもやっていて忙しいです
え?普段は何をしているかって?
それは秘密です

今話の時系列は30~31話辺りです


第35話 治療と呪い

 宇宙の外側のある空間では、大和は座り込み落ち込んでいた。陸奥が言っていた天才は、ウイルスの正体を知ってはいたものの、治療法は無いとまで言われた

 

 実際にそうなのだろう。嘘はついていない。実際にエボラウイルスの猛威は目の当たりにしたからだ。彼の説明は説得力もあるし、辻褄があう

 

 念のため、大和たちは柳田の感染を調べるために採血をした。柳田は調べているが、大和は興味が無かった

 

「大和さん、落ち込むのは早いです」

 

「大丈夫よ」

 

 雪風は励ましていたが、大和は既に心身ともに限界が来ていた

 

 敵は生物兵器を使い、しかも治療法が無いウイルスだ。手も足も出ないウイルスは切り札として取っておいたのだろう。それを使ったのだ

 

(どうすれば……)

 

 しかも症状も時間が立てば立つほど死亡する可能性が高くなる。激しい下痢や嘔吐による脱水症状か複数の臓器が連鎖的に機能不全に陥る多臓器不全というものになるらしい。そして、このウイルスに対して根本的な治療法はない。絶望的だ

 

 柳田は何かをしているが見学しようという気力すら無かった

 

「心配しないで下さい。何か手があるはずです」

 

「ええ……」

 

 大和はニコリとしたが、内心は違っていた

 

(治療法? このウイルスに有効な治療法は無い)

 

 柳田の説明が大和の頭の中を何回も駆け巡っていた。治療法が無いのなら……ほぼ絶望的だ。浜風と磯風は涼月を診ており、朝霜は例のTBMアヴェンジャーの写真を撮りに行っている。霞は柳田教授と何か会話はしていたが、大和は会話に入ろうとしなかった

 

『落ち込むのはまだ早い。治療法はある』

 

 不意に柳田のロボットの声が聞こえた。ターズがこちらに来たのだろう

 

「慰めなんていらない! もうじき仲間が死ぬかも知れないのに、そう簡単に!」

 

 大和は勢いよく立ち上がりターズに詰めよった。出来れば破壊したいくらいだ

 

『落ち着いてくれ、大和。私は嘘は言っていない』

 

「そうよ! 治療法が無いのならこんな……え?」

 

 大和はターズの言葉に固まった。嘘は言っていない? 

 

 大和は作業をしている柳田に向かって駆けつけた

 

「ああ、来たか。ターズは壊すなよ」

 

「治療法はあるの!? さっき治療法は無いって!」

 

 大和は柳田を詰めよった。あの説明は何だったんだ!? 

 

「大和さん、待ってください! 話を最後まで!」

 

「落ち着け。嘘ではない。僕が言ったのはあくまでエボラ出血熱感染症に対して有効な医薬品などは確立されていない公式の話だ。しかし非公式や試験段階ならある*1。一部の者からは疑問を呈しているが、手段が無いわけではない」

 

 霞は大和を止めようと必死になり、柳田は大和に掴まれても冷静だった

 

「非公式?」

 

「そうだ。治療法が無いからと言って諦める程、バカではない。十数年前にアフリカでエボラウイルスが流行していた時*2、僕は社長命令で特効薬を作れと命じられてね。抗ウイルス薬は作った事がある。認可されていないが、これなら行ける*3。治験は問題なかった」

 

「……っ! それを使えば!」

 

 大和は柳田を放して喜ぼうとしたが、柳田は首を振った

 

「いや、ここではダメだ。作るには材料や機材が必要だ。それに時間がかかる。1から作る事になるからどんなに急いでも間に合わない」

 

「解決出来ていないじゃない!」

 

 大和は愕然とした。どれくらいの期間が必要か分からないが、今必要なのだ! こうしている間も症状が悪化して死んでしまう! これではぬか喜びだ! 

 

「だから古典的なやり方で治療させる。血清を知ってるか?」

 

「ええ……聞いた事はあります。確か毒蛇に噛まれた際に使う治療法ですよね? 抗体を持った人や動物から血を採取して使うものだったはず」

 

 大和はうろ覚えで答えた。あまり詳しく知らないが、確か明石や博士が言っていた。フグ毒の件があり、今後毒を使ったテロ行為を想定して知識を学んだ。蛇毒には血清が有効であると学んだことがある

 

「まあ、それくらい知識があるなら問題ない。血清療法とも言う。ポリクローナル抗体での抗血清関連の話をするとお前の頭がパンクするからすっ飛ばす」

 

「え、ええ……」

 

 大和は取り敢えずは頷いた。言い方に棘があるが、仕方ない

 

「抗血清はエボラウイルスに唯一有効な治療法だ。ある医師が回復した患者から血を取り出し調べた所、抗体を発見。その血を元に血清を作り他の患者に投与したところその患者は回復した。異論や疑問を呈する学者はいるが、現時点でこれが有効な治療法だ」

 

「……つまり、エボラ出血熱から回復した艦娘から血を取り出して血清を作れば!」

 

 大和は歓喜した。この話が本当なら全員助かる! 

 

 しかし……

 

「だが……聞く限り鎮守府の中で回復した者はいない。君たちは逃げて感染していないから抗体は出来ていない。もう確認した」

 

「……っ!」

 

 柳田の指摘に大和は狼狽した。確かに無事に逃げることが出来たお陰で感染していない

 

 しかし、柳田教授の話によると抗体を生み出すのは一度感染しないといけない、という矛盾点が生まれたのだ

 

「……血清って1から作れる?」

 

「それは無理だ。基本的に血清を作るには馬や羊などに少しずつ弱めた毒を注入し半年以上かけて抗体をつくらせて血を取って精製するんだ。他のやり方もあるが、複雑すぎるから今からやっても間に合わない」

 

 大和は目の前が真っ暗になった。最早、八方塞がりだ! 古典的なやり方でも間に合わない! 

 

「ど、どうすれば!」

 

「ん? 陸奥は僕がどんな人か教えてくれなかったか?」

 

「奥さんを亡くしておかしくなって暴走したマッドサイエンティスト」

 

 大和はさらりと言ったが、柳田は呆れていた

 

「アイツ、人の悪口を……まあ、いい。僕はデザイナーベイビーでね。詳細は省くが、簡単に言うと普通の人とは違って賢い人を産み出したいためにだけに勝手に改造された子の事だ。勿論、これは倫理に反するが、僕の母はとてつもなくクズだったから実行した。だから自分の父親が誰だったのかは知らない。知能向上といっていたが、あのクソババァは治癒能力まで付け加えた。そのお陰で僕の免疫力は強力だ。だから大抵の病原体には耐性がついた*4。生まれてから病気になった事は一度もない。大流行した年もあったが、へっちゃらだ」

 

 大和は柳田の説明を聞いていたが、病原体の耐性という言葉に飛び付いた

 

「大抵の病原体の耐性って……まさか!」

 

「それに加えて僕も何処まで限界なるか知りたくなった時期があったからね。実験の最中に僕の抗体はエボラウイルスに効果あるか調べてみたんだ。僕の免疫力はエボラウイルスも殺せる。それは今でも健全だ」

 

 柳田はモニターを大和に見せた。顕微鏡の映像だろう。そこには細長い不気味な色をしたエボラウイルスがあった。そのエボラウイルスが何かから攻撃を受けて線切れている

 

「だから、僕の血から血清を作っている。量産するよう血清を作っているから人数と名前と年齢を紙に書いて教えろ。僕の抗体は普通の人よりも強いから身体に負担を与える。副作用もあるが、今はそんなことを言っている場合ではない。後はその腕に付いているオモチャを直してやるから寄越せ」

 

「ウ……ソ…………嘘じゃないよね!」

 

「嘘ついてどうする?」

 

 大和は泣きそうになった。本当に……これで本当に皆が助かる! 

 

「今は遠心分離機を回して作っている。ターズ、後は任せる。血が必要なら言え。大和、早く腕に付いているワームホール発生装置を寄越せ。こちらが時間がかかる」

 

「出来るの!?」

 

「ブラックホールの中に入って特異点のデータは取れたんだ。電力も必要だが、ワームホール発生させる事は容易だ。そして──」

 

 柳田は独り言のように呟き弄っていたが、大和は聞かなかった。目から涙が溢れそうだ

 

「本当に……良かった!」

 

 神がいるのなら感謝したい

 

 

 

 502陣地

 

 神州丸は博士が作った装置……重力波探知装置を睨んでいた。一昨日、ワームホールが発生したのは間違いない。大和ほか九名と連絡が取れない。呉鎮守府は汚染地域なので確認しようがない。防護服はまだ届かない

 

「え?」

 

 神州丸は重力波が発生した値を検知したのかアラームが鳴り響いた。数値も昨日と同じ

 

「まさか……早く隊長殿に!」

 

 神州丸は急いで曹長の方へ駆け出した。大和たちに帰って来たのを知らせるために! 

 

「間違いないのか?」

 

「はい!」

 

 曹長は驚き無線機に向かった。帰って来たなら無線機で応答するはずだ! 

 

「こちら502の隊長だ。聞こえるか! 応答してくれ!」

 

 無線で呼びかけていたが、返事はあった

 

『こちら大和です』

 

「お前らワームホールを作ったな。何をしているのか分かっているのか!」

 

 曹長はワームホールで並行世界に帰ってこれないと思っていたからだ。提督の父親である博士の言葉が正しければ無関係な世界に飛ばされると警告したからだ

 

『処分は幾らでも受けます! しかし艦娘の治療が先です!』

 

 大和の応答に曹長や神州丸は目をパチクリしていた

 

『必要なものを書いた紙を水上観測機に乗せました! 受け取ってください!』

 

「あ、ああ……おい、軍医を呼べ! 忙しくなるぞ!」

 

 こうして502陣地は慌ただしくなった

 

 

 

 数日後……

 

 浦田結衣がアメリカに堂々と挑発したその日、呉鎮守府では息を吹き返しつつあった。柳田が作った血清は確かに有効だった

 

「大和さん……この人は……何で防護服を着ていないの?」

 

 夕張は意識を取り戻していた。まずは工作艦明石と夕張、そして提督を優先的に治療した。提督は普通の人であるためだ。また工作艦明石の力も必要だ。夕張もである

 

「病原体の治療法を手に入れた。除染したし、ワクチンも打ったから大丈夫」

 

 大和は安心するように言った。柳田が血清も兼ねて作ったお陰だ。普通なら時間がかかるが、柳田は予防接種まで作ったのだ

 

 勿論、彼が作ったものであり、認可されていないのだが、緊急用であるため仕方ない。ウイルスは結衣が撃ち込んだ不発弾の砲弾から採取して作った。エボラウイルスのワクチンの作り方は知っているらしく、ターズは柳田の指示の元で行われた

 

「エボラウイルスのワクチンは作った事はある。これも残念ながら試作段階のものだ。しかし治験も問題ないし国から認可されていないだけだ。具合が悪くなったら言ってくれ」

 

「それしかないわね……」

 

 霞は渋々同意した。流石にこればかりはどうしようもない。短時間でワクチンを作る事自体凄いが、彼曰く特殊な薬剤でエボラウイルスが不活性化するらしい

 

「ただ、エボラウイルスが変異したら効果は無くなる。万が一、発病したら言ってくれ」

 

「分かりました」

 

 涼月は血清が入った製薬を持って走った

 

 

 

 その日を境に事態は急転換を向かった。柳田教授が502陣地に対応策と機材を請求し、502部隊は即座に行動を起こした。機材は輸送機から投下する形になったが、それで十分だった

 

 血清や抗生物質が作られ、今まで瀕死状態だった艦娘は徐々に回復していった。数名、頭痛や吐き気を訴える艦娘もいたが、エボラウイルスの症状では無いため問題はない。どちらかというと抗生物質の副作用である

 

「まだ認可されていないものだから仕方ない。副作用はどうしても出てしまう」

 

「命の危機でもないのなら構いません。全員を助けて下さい」

 

 大和はきっぱりと言った。エボラウイルスを駆逐出来ないと意味がない。副作用程度なら明石が上手くやれそうだ

 

 更に提督の父親である博士が駆けつけた事で除染作業が進んだ

 

「貴方が中将ですね。息子さんの容体は安定しています。エボラウイルスの資料を矢矧に渡したので受け取って下さい。消毒には弱く、空気感染はないので、呉鎮守府一帯を消毒し終わったらもう解除しても結構です」

 

『わ、分かった。……もう一度聞くが、パンデミックはしないのじゃな?』

 

「そうです。このウイルスは致死率が高いため、感染拡大しにくいものです。致死率があまりにも高すぎるからです。宿主が死ぬとウイルスも死ぬ。この点は他のウイルスと変わりない」

 

『うーむ』

 

 博士は唸った。大和たちは的外れな世界に行ったのが、まさか陸奥から聞かされた教授と出会うとは思ってみなかった

 

 因みに資料だが、ターズが3千枚もの記入した紙とウイルス株などであったため、矢矧は浜風と磯風を呼んで運んだ

 

 危険なウイルスであると分かっていたため、運ぶのは気が気でなかった

 

 作業は3日かかり夜になっても続けられた。ターズが簡易的ではあるが、工廠で必要最低限の医療機器を作り治療に当たっていた

 

 今のところは血清便りだが、抗ウイルス薬の製造のデータもあるので、エボラウイルスが変異しても対処出来る

 

 ただ副作用はどうしようもない。柳田教授の抗体は強力らしく回復した者はいたが、副作用で頭痛や吐き気を訴える者が居たため別の治療が必要だ

 

 しかし、それも時間経過で治まるので今は安静にするのが大事だ

 

「はぁ……はぁ……」

 

 大和は医療の手伝いをしていた。主に薬品の搬入や博士との連絡で大忙しだった

 

 外では、浦田結衣がアメリカに宣戦布告しニューヨークを攻撃すると宣言し、各国はニューヨークに軍隊が集結しているという。日本軍も1個中隊は派遣され、国防大臣自ら行ったのだ

 

 そのため、博士は呉鎮守府に来れたらしいが……

 

「ターズ……資材が届いた」

 

『ありがとう。大和、暫く眠ったらどうだ?』

 

 ターズは眠っている武蔵とアイオワに血清治療を行っていた

 

「武蔵は……大丈夫?」

 

『37.0℃まで下がったから命の別状はない。後遺症の心配はあるが、本人次第。流石は艦娘です』

 

「そう……」

 

 大和はホッとした。事態が急転換してくれて嬉しかった。バイオハザードも問題ないらしい

 

『人は眠らなければならない。私は必要ない。断っておくが、私は機械だ』

 

「私だって……兵器よ」

 

『艦娘と違って私は血も涙も流さない。流れているのは電気信号だ。有機物と無機物は大いに違う。無理しなくていい』

 

「いいえ。皆が安心するまでは……そうでないと安心できない!」

 

 大和は首を振った。ロボット相手にここまで言われるのは癪だが、ターズの主張は事実だ

 

 

 

 工廠

 

『──現在、ニューヨークでは続々と軍隊が集結しています。人類の絆が試される時です』

 

 テレビではクラーケンである浦田結衣の襲撃に備えてマスコミは盛んに報道している。艦娘全員に血清は行き渡った。結構な量の血は流したが、水と食堂にあった肉を食べていた。鉄分が必要だからである

 

 血液は科学の発展により成分や効能や生理的な役割は解明されたが、ゼロから人工的に作り出す事は出来ないためだ

 

 柳田は食事を食べ終えるとあるものを凝視していた

 

「リリ……これがお前の望んでいた世界なのか?」

 

 柳田はリリの残骸を見ながら軽くため息をついた。完全に破壊されているため、データは復元出来ないが、リリが何をしたかは大和から聞いた。人類共通の敵を生み出せば、人類は一致団結する。しかし、それは一時だ。倒せば人類は団結なぞしないだろう。いや、勝てばの話だ。負ければ……

 

 不意に後ろで足音がした。柳田は振り返ると壁にもたれ掛かった夕張がいた。息が荒いため毛布から抜け出して来たのだろう

 

「ありがとう……私たちを助けてくれて」

 

「まだ礼を言うのは早いぞ。全員が完治してからだ」

 

「そうね……時雨の方は?」

 

「臓器の方は何とかなるが、まずは症状を特定しないとな」

 

 艦娘を治療している時に泡を吹いて倒れている時雨を発見したため、こちらは別の治療を施した。エボラウイルスに感染はしていないため、別の感染症にかかった可能性がある

 

 大和の話だと臓器移植のためだけに臓器が奪われたと言う。人工心臓を埋め込まれていたが、あの人工心臓は明らかに三浦会社が作った代物だ

 

 本来は心不全などの心臓の病気のために作られたものだが、まさか心臓を奪われ時雨に絶望を与えるために埋め込まれるとは思いもしなかった

 

「時雨は結衣から解放されて戻って来たときはおかしかった。PTSDが再発して水も飲まず、何かに怯えていた。あんな恐ろしい目にあったのだから無理もない。助けてあげて」

 

「分かっている。しかし……時雨の症状は何処かで聞いたことがあるな」

 

 柳田は思い出しながら言った。現在は昏睡状態なのだが、余談は許さない。酸素吸入器を繋いだが、意識が戻らない

 

 だが、症状が何なのか分からないため迂闊に手を出せない。検査する機材が無いため手探り状態である。血液検査など出来る範囲で調べたが、肝心の病原体が見つからない

 

 柳田は別のチャンネルを変えた所、終末論を唱える過激組織のリーダーらしき者が声明を発していた

 

『人類は過ちを犯した! 深海棲艦や艦娘が現れたお陰で人類は地球の支配者ではなくなった! それを取り戻す時がきた!』

 

「田中……アイツ!」

 

「大和が言っていた殺人犯か?」

 

 夕張が怒りを露にしていた。夕張にとっては敵である。今回の騒動の首謀者とも言うべきか

 

『我々は革命を起こす! 東京を占領して新たな国家を築くのだ! 旧体制を倒し新世界建設に! 日本が第一歩を踏み出す! やがて世界は浦田重工業を称えるだろう! 我々は正しかった! 人類のために戦おうではないか!』

 

 その場にいた信者や観客は感化されて熱狂していた。マスコミの一部も持ち上げているのだろう

 

 警察が駆けつけているが、小競り合いしている

 

 田中はコップを手に取り飲み物を飲もうとしたが、突然咳をして水を吐いた

 

『大丈夫ですか?』

 

『心配ない。これは艦娘の呪いだ! 最近、体調が悪いのだ! 私は過去に艦娘と戦ったことがある! 教祖も熱を出している! アイツらは卑怯にも──』

 

「信じられない! 体調が悪いのを私たちのせいにするなんて! こっちは浦田結衣に生物兵器を撃ち込まれたのを棚にあげて!」

 

 一連のやり取りを見た夕張は怒ったが、柳田は呆れていた

 

(水が飲めないほどの病気がかかっても病院に行かないとか滅茶苦茶だな)

 

 少なくとも演技ではない。それはどうでもいいが、そのお陰で柳田はある事を思い出した

 

(……まさか時雨の症状は!)

 

 柳田は駆け出し時雨が寝込んでいる所まで走った。他の艦娘が寝ているのを邪魔しないように。ターズが妖精と共にぐったりしている艦娘を診ていたので彼女達が起きないよう小声で言った

 

「ターズ、聞こえるか。時雨をもう一度検査をするぞ」

 

『お言葉ですが教授。PCR検査出来る機材がまだ製造出来ていないため、特定はできません』

 

 時雨の病原体が何なのか突き止めるためにはPCR検査する必要があるが、この時代の世界ではそんなものは無い

 

「時雨がかかっている病気は分かった気がする。唾液と髄液を採取して調べるんだ」

 

『唾液と髄液ですか? 分かりました』

 

 ターズは作業を中断して時雨のところへ向かった

 

 作業をきている際に夕立が心配そうに見ていた。何しろ、昏睡状態の時雨を無理矢理体を海老のように丸めて横向きになり、背骨に針を刺しているのだから

 

「時雨は助かるっぽい?」

 

「ああ、助かるさ」

 

 柳田はニコリとしていたが、内心は違った

 

(間違いであってくれ)

 

 無事に髄液を採取し工廠へ行き検査を実施した

 

 そして……

 

『教授、ウイルスを検出しました。しかし、このウイルスは』

 

「最悪だ。ある意味、エボラウイルスよりも厄介なものじゃないか」

 

 柳田は腰を卸した。大和にどう伝えればいいのか? 

 

 

 

「急に呼び出して何ですか?」

 

 大和は柳田に呼び出された。誰もいない部屋に入り二人きりになった

 

「時雨の症状が分かった」

 

「っ! 助かるんですか!」

 

 大和は喜んだ。病原体を特定すれば、治療出来る! エボラウイルスでも柳田のお陰で艦娘たちは回復しつつある。副作用で症状を訴える者はいるが、命に別状はないため問題ない! 

 

 だが、大和は柳田の表情を見た。とても真剣だ。そのため、大和の顔から笑顔が消えた。大和は恐る恐る聞いた

 

「治療出来ますよね?」

 

 大和は質問をした。彼はイエスと言うはずだ! 材料も資材も博士や 502部隊に連絡すれば調達してくれる! 

 

 だが、柳田の口から信じられない事を告げられた

 

「時雨は助からない。数日後には死ぬかも知れない。万が一、目覚めたとしても助かるかどうか」

 

 大和は目の前が真っ暗になった

 

 

 

 時雨が死ぬ?

*1
かつては特別な治療法は存在しなかった。しかし科学者の絶え間無い努力によってワクチンや特効薬などは開発されつつある。まだ認可や臨床試験などの段階であるが、開発しているのは確かである

*2
これは2014年の西アフリカでエボラウイルスの大流行を差す。この大流行を期に世界各国で治療法やワクチン開発を模索している

*3
実際にカナダではエボラウイルスの治療薬を開発されている

*4
病原体に耐性を持たせるデザイナーベイビーは現代の技術では生み出す事は可能である。例えば2018年で中国が生み出したデザイナーベイビーではエイズに耐性を持つよう遺伝子操作されたという




柳田「補足としてエボラウイルスは生物兵器として利用される可能性が高い病原体ではあるが、感染力や致死率が高いと逆に扱いにくい。治療薬もワクチンも無いとなると生物兵器として論外。感染拡大して自軍どころか自国にも影響を与えられたら意味がない。ただこれは正規軍に限った話で命知らずのテロ組織が使われる可能性もゼロではない」
時雨「理想の生物兵器ってどんなの?」
柳田「(時雨は昏睡だったような……いや、気にしたら敗けだ)そうだな。短期間で限定的に大流行すること、安全に克つ持ち運びできること、簡単に後始末できることだな。まだそんな都合がいい生物兵器は無いが」
時雨「短期間で大流行(ウィルスを体内に呼吸或いは皮膚から取り入れられると数十秒以内に発病し肉体を腐敗させる)」
大和「安全に克つ容易に持ち運べる(小型のカプセルに詰まっており、スタンドで管理)」
夕張「簡単に後始末(室内ライト程度の光に数十秒程度当てれば完全に死滅)」
時雨、大和、夕張「パープル・ヘイズって滅茶苦茶強かったんだ」
柳田「あー、うん。そうだな(確かに強いもんな)」


エボラウイルスは恐ろしい病気で治療法はないものの、抗血清など有効であろう治療法は複数存在する。日本でもエボラウイルスの治療薬を開発している者もいる
創作でも取り入れられている所はあり、ゴルゴ13もエボラウイルスに感染した際、発病していない猿から血清を作って生き延びた描写がある
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