しかし……特務艦として実装は思いきったやり方ですね
大和も改二実装という噂も
ウマ娘も始まって約4ヶ月経ったけど、本格的に無課金微課金勢と重課金廃課金勢の差が開いてきましたね
ガチャは苦手だ……
「死んだのに生き返った? 何を言ってるんだ?」
提督は混乱していた。時雨の容体は夕立と大和から聞かされたが、泣きながらだったためよく分からなかったからだ
取り敢えず時雨は無事……らしい。明石に柳田を支援するよう伝え、一行は医務室に向かった
「親父、来て早々に済まないけど、具合が悪い艦娘達を頼む」
「いいぞ。……どんな抗体を持っていたんだ、あやつは」
消毒を終え502部隊と博士は呉鎮守府に入ることが出来たが、やることが多い。生物兵器の危険性は無くなった。問題は血清の副作用だ。身体の怠さや頭痛、そして吐き気などだが、取り敢えずは命に関わるものではないらしい
とはいっても大半は駆逐艦娘と海防艦であり、博士と軍医は対応に追われた
「エボラウイルス……こんな恐ろしいウイルスがこの世に存在していたとは」
軍医は柳田が作成したウイルスを一読したが、エボラウイルスの内容に戦慄した。下手をすれば呉鎮守府付近に住宅街の民間人は全滅していたかもしれない
いや、呉鎮守府の艦娘に死者が出ていないのが奇跡的だ。艤装や艦娘の身体能力のお陰もあるが、恐ろしいウイルスに対応出来た教授も凄い
時雨は別の場所に移された。と言っても、別部屋である。再生した臓器を時雨の身体に埋め込むのだから手術しないといけない。生憎、手術室は無いため無菌室を作らないと行けない
回復した明石が急ピッチで容易してくれたが、本人自身も時雨が臓器を抜き取られた事に驚いていた
「輸血と手術は何とか用意しましたけど、執刀は誰がやるんです?」
明石は恐る恐る聞いたが、答えは分かっていた
「僕しか居ないだろ? 他にいるか?」
「デ、デスヨネ」
明石は工作艦とか言え、外科医の、手術経験はない。軍医も博士も同じだ
「でも、法律違反では──」
「だから報酬としてこの世界で発行する医師免許などをくれと言ってるんだ。いままでやった医療行為の法律関連は免除、そして僕を保護すること。終わって逮捕されたら洒落にならないからな」
「ぬ、抜かり無い」
明石は安心した。確かに報酬としてはまだマシなものだろう。不正だが、エボラウイルスという病原体にかかった艦娘を治療したのだから問題ないはずだ
「手術器具は揃えましたが、助手は居ません。助手は必要ですよね? たった一人で──」
「ターズ、お前がサポートしてくれ」
『分かりました』
ターズは背中から何かを生やした。いや、展開させたといった方が正しいのだろう。別のもう2本の腕を出したのだ
これなら大丈夫だろう
「麻酔と輸血は指示通りにしろ。臓器と高速修復材は用意したな。他に質問は?」
明石は首を振るしかなかった。取りあえずは彼に任せていいかも知れない
部屋の前では回復した艦娘が待っていた。手術中であるため、入れない。仮に見れたとしても内臓を見ることになるため、大半の人はダメだろう
手術中であるため、流石に艦娘たちは静かにしている。大淀も提督も待っている
「時雨……」
夕立は落ち着かず廊下を行ったり来たりしており、白露も無事を願っていた
扶桑山城や最上などの西村艦隊組も時雨の安否を気にしていた
しかし、彼女よりも気にかけている者もいた
「大和……流石に寝たらどうだ?」
「私の事はいいです」
武蔵は大和の事を心配していた。ワームホールをくぐっていてから、ずっと柳田の手伝いをしていた。時雨の荒治療には抗議する艦娘を止め、扉の前では何時間も時雨の無事を祈っていた。既に目にクマができており、長門もアイオワも心配していた
「私の事は気にしないでください」
「大和……」
時雨が酷い目にあった事を聞いたのだから祈らずにはいられなかったのだろう。皆は休むよう言ったが、大和は耳を傾けようとはしない
数時間が経ち、まだ終わらないのか焦燥していた時、ドアが開いた
柳田が出てきたのだ。小難しい表情で
「時雨はどうなった?」
提督は詰めよった。他の艦娘も息を呑んだ
柳田は何も言わない。しかし、柳田は後ろを振り返りドアの奥から手を招くような仕草をしていた。何も言わないことに他の艦娘は不審がっていたが、ドアの前に少女が現れた。それは皆が知っていた艦娘だ。のラインが入ったセーラー服を着た三つ編みの髪をした時雨がいた
「皆、心配してゴメン! でも僕は治ったよ!」
時雨ははっきりと言った
数日前までは昏睡状態に陥り、荒治療の痛みで悲鳴をあげていた時雨が、今では元気な姿で現れた。皮膚には傷跡すら無い!
一瞬、間が空いたが次の瞬間は歓声が上がった
「信じられない! 拉致されて臓器取られて不治の病にかかって死にかけていると聞いたときは時雨はダメかと思っていたけど!」
「凄い! 本当に! 完全に治ってる!」
「信じられない! 人間……いえ、艦娘の成せる業ではないわ!」
矢矧達は驚き、他の艦娘も驚愕していた。艦娘は時雨を駆け寄り抱き合っていた
「じぐれ! 無事でよがっだね! むらざめもよろごんでいるよ!」
「白露! 泣かなくて良いから!」
白露は時雨に抱きつくと号泣した。村雨が結衣によって撃沈されたことは聞いたのだろう。白露にとっては気が気でなかったのだ。夕立などの妹達も泣いていた
「時雨! 本当に良かった! 大和も嬉しいです!」
大和も駆け寄り近寄ろうとしたが、大和が数歩歩いたと思ったら、よろめき糸が切れた人形のようにそのまま床に倒れてしまった
突然の出来事に艦娘たちは混乱した
「大和! おい、どうした!?」
武蔵は慌てて大和に近寄ったが、大和はピクリとも動かない
「大和さん、一体……」
「過度の疲労のせいだ。数日間、ずっと手伝いをしていたから無理もない。ドクターストップしたのに無茶しやがって」
時雨は振り向くと自分を治療してくれた担当医が呆れたようにしていた
「あ、あの……助けれくれてありがとうございます!」
「礼を言うなら……大和に言え。正直に言ってこちらも手を焼いた。他の医師なら匙を投げるレベルだ。試験段階の抗ウイルス薬も生存確率を僅かながら上げるものだ。しかし、大和は何時間も何時間も時雨が無事に治るよう祈っていた。君がどんな人生を歩んだかは知らないが、大和は時雨が今後も幸せにしてあげたい、と言っていた。時雨の命を取り留めた事に何の影響も無かったとは思えない」
柳田の説明に武蔵を初め何人かの艦娘はハッとした。大和はずっと時雨の回復を祈っていた。苦しむ時雨に身を案じていたのだろう
「大和さん、ありがとう!」
時雨は大和に礼を言った。寝ているため聞こえているかは分からない。しかし、大和の寝顔は微かに微笑んでいるように見えた。その後、大和は武蔵と長門によって医務室に運ばれた。暫くは安静にしないといけない
「柳田教授……ありがとう。この鎮守府を救ってくれて」
提督は柳田に礼を言ったが、柳田は壁にもたれていた。長い時間、治療に専念していたのだろう。疲れが見てる
「生物兵器にやられたのに死者が一人もいないなんて奇跡だ」
「奇跡? それどころじゃない。特に時雨という艦娘は」
柳田は時雨が他の艦娘に胴上げされている光景を見ながら言った
「奇跡……奇跡の度を超えている。あんな奴、始めてみた」
柳田の言葉に提督は理解出来なかったが、取りあえずは生物兵器という恐ろしい病原体から皆は救われたことに安堵した
「──あの人、手術のやり方が素早いのよ。臓器を入れた後、縫合せずに高速修復剤で切り開いた皮膚を元通りにしたの。教授という人は『大和を安心させるためだ』って。確かに怪我等は治るけど、やり方が豪快」
明石は興奮しながら言った。手術は初めて見たのだが、それよりも柳田のやり方に驚いているのだろう
一方、他の艦娘はターズに興味があった。半分は興味津々、半分は警戒だろう
「機械人形リリみたいな行動をしない保障はあります?」
『機械人形ではなくてロボットです。今のはジョークですか?』
「神通、そんなのはいいじゃない! ……ねぇ、何か必殺技とか出ないの。ロケットパンチとか目からビームとか! 人の姿みたいに化けられる?」
アイオワは神通とは違い、ターズに目を輝かせていた。恐らく『艦だった頃の世界』の創作による影響だろう。フィクションではロボットものは多数あるからだ
『シンプルに作られたため、戦闘用ではないです。それに余り注目されるのは苦手です。あがり症ですから』
「感情あるの!?」
夕張は驚愕した。夕張もアイオワと同じで興味津々である。リリが動いているのを見たことがないのもあるが、工廠で明石の手伝いをしていたこともあり、目を輝かせていた。しかし……感情を持つ機械? そんな事が出きるのか?
『ええ。感情はあります。教授が脳を培養して埋め込んだからです』
「嘘でしょ!?」
『ええ。嘘です』
「嘘かよ」
『正直度は80%ですから』
夕張は笑い、他の艦娘も笑った。警戒していた神通も呆気に取られ冗談も言えるようになるとは中々のものである
「人気だな。あのロボットは。お前が作ったのか?」
「暇潰しで作った。宇宙の外側のある空間には色んなガラクタが流れてきた。色んなものがあったぞ。見たこともない多数の乗り物や人骨が。TBFアベンジャーとかいう米軍の雷撃機も超常現象に巻き込まれた」
「人骨って……しかし、数十年も孤独だったんだろ? 大変だったはずだ」
「それが違うんだ。あそこでの体感は大体1ヶ月くらいの時間だ。時間の流れが違うらしい。僕は半月でターズを作った。コンピュータ部品は無人機や車などから使えるものを取り出して組み立てて作った。帰る手段を考えていた所、大和達が来た」
提督室では柳田と提督が話していた。ただどちらかというと取り調べのような感じである。数名の艦娘がいる。扉から聞こえる艦娘の反応を聞く限り、特に悪い印象はない
「あれは暴走しないわよね?」
「しない。リリは余計なシステムを入れた事もあるだろう。わざわざ人に近づける必要性なんて無いのに」
陸奥は不審そうだったが、柳田は苦笑いした。陸奥と柳田は再会はしたが、お互いぎこちなかった。陸奥の心情は複雑だろう。記憶を消してこの世界に送られたからだ。しかし、生物兵器や時雨の不治の病には治療を施したのも事実なので陸奥は複雑な心情である
「僕は感謝してるよ。心臓も機械ではなくて本物なことに」
「ああ、それは良いさ。それよりも寝ておけ。身体が回復しただけだ。2、3日寝る必要がある」
柳田は無愛想に言ったが、時雨は気にしなかった。何故なら、時雨は夢で見たことを伝えないといけないからだ
「提督、僕から云って置きたい事があるの。信じて貰えないけど……」
時雨は夢で見た事を話した。自分はお花畑で川を渡ろうとしたら撃沈された村雨たちに止められた事。そして、ニューヨークで浦田結衣が暴れサウスダコタという戦艦の艦娘が拿捕された事を話した。浦田社長が時雨をあの世に引きずり込もうとしていた事は言うべきか迷ったが、それも付け加えて置いた
「……それで目を覚ましたら、柳田教授が目の前にいたんだけど」
時雨は段々と小声になっていた。生々しかった事もあり、伝えねばと思っていたが、冷静になって考えると余りにも荒唐無稽だ。提督も大淀も呆気に取られていた
「ゴ、ゴメン! 夢だよね! 僕、何でこんなことを言おうと──」
「時雨、米艦娘を指揮している米海軍少佐と話していないよな?」
時雨は慌てて言ったが、提督は真剣だった
「ど、どうしたの?」
「内容が一致しているからだよ。ペンタゴンの知り合いから連絡が来たが、サウスダコタは結衣に捕らえられた。何処にいるか不明だが……それよりも連合軍は壊滅してしまった」
提督は予想に反して驚いており、時雨に新聞を見せた。燃え盛るニューヨークの写真が1面を飾っていたが、写真が夢と同じだ!
「私は倒れながらも連絡していました。対深海棲艦である切り札が同時出撃したのは確かです」
「もしかして正夢? そんなことあるの?」
大淀は驚いていたがら時雨は真っ青になった。正夢なら結衣は5年前よりも強くなっている事を意味する!
「あ、あの……教授はどう思っているの?」
「臨死体験という奴だな。中々興味深いが、こういうのも初めて聞いた。だから何とも言えない」
柳田は首を振った。どうやら、彼も分からないらしい
「そう言えば、時雨が罹っていたウイルスは何なんだ? 敵が新たな生物兵器を時雨に打ち込まれたのなら厄介だ」
提督は思い出したように切り出した。本来は時雨に罹ったウイルスの説明だ。そのために柳田を呼んだはずだ。時雨も自分が罹っていたウイルスの正体を知りたかった。結衣が打ち込まれたのならこれは許してはならない!
時雨を初め提督と大淀の視線は柳田に集まったが、彼は冷静だ
「あー、勘違いしてはいけないけど、これは生物兵器でも何でもない。多分、不測の事態という奴だ」
「では、何だ? 時雨はいつの間にか変な病を貰って来たというのか!?」
「落ち着けって。君の気持ちは分かるけど、こちらも聞きたい事はあるから。頼むから生物兵器という概念は捨ててくれ」
提督は柳田に飛びかかりそうな勢いであり、柳田は困惑した。大淀も不振な目をしていた。時雨が死にかけていたのに、不測事態?
「艦娘を殺す程の強力なウイルスだから生物兵器ではないの?」
「それは違う。どうしてそういう概念が生まれるんだ? 涼月だって恐竜に噛まれて、傷口から病原菌が入り倒れたというのに」
「恐竜に噛まれた? 何をいっているんだ?」
時雨の問いに柳田は何とか説明していたが、恐竜という言葉に提督は驚愕した
「大和が平行世界へ行こうとした時に迷った世界の内の1つが恐竜世界。詳しくは朝霜という艦娘に聞いてくれ。それはいいとして、艦娘は人外だが、生物学的の範疇からは逸脱しない。風邪は引くし熱で倒れる事だってある。スーパーマンのように無敵という概念は捨ててくれ」
「僕は日本に流行っている病原体に罹ったって事?」
時雨は考えながら聞いた。それしか思い付かない。しかし、軍医でも分からなかったと聞いている。自分は何に罹ったのか?
「そうだ。潜伏期間を考えればそれしか考えられない。このウイルスは──」
柳田は説明しようとした時、提督室のドアが思いっきり開いた。勢いよく開いたため凄い音がしたお陰で柳田の説明は中断された
「提督! 浦田残党が潜伏している拠点を攻撃したい!」
「ちょっと待ってくれ。──どうした、武蔵? 何をそんなに怒っている?」
武蔵は今では烈火如く怒っていた。後ろには長門も摩耶も天龍もいた
「テレビを見てくれよ! アイツら、こちらの悪口ばかり言っているのだから!」
天龍は怒りの頂点に達していた。何があったのだろう?
待機室ではテレビはあるため、艦娘は集まっていたが、集まっていた艦娘からは怒号と罵倒ばかりだ。提督たちが駆け寄ると鳥海はテレビを指差していた
『──ある情報によると田中秦が倒れたのは生物兵器によって倒れたという情報が入りました。催涙ガスを撃ち込まれただけで未知のウイルスを撃ち込んだとの事です。呉鎮守府では生物兵器の開発を極秘に開発したという情報を我々は確かに入手しました。この卑劣な行為に──』
「生物兵器を受けたのは私達よ! 何でこんな事を言われないといけないのよ!」
陸奥は机を思いっきり叩いていた。テレビではあり得ない事が行われていた。○○県の山荘で田中秦を初めとする浦田残党は立て籠っているが、警察と激しい銃撃戦が行われているらしい。しかも、山荘にはマスコミがおり山荘内部で中継しているが、明らかに事実を曲げている
「催涙ガスも化学兵器の一種なのに、それすら知らないのか、アイツらは」
提督は呆れていたが、時雨は不味いと思った
時雨の臓器が田中秦に移植されたのいうのは聞いている。そして倒れたというのも。しかし、倒れた原因が艦娘が開発した生物兵器?
これを聞いて怒るな、という方が無理である
「提督! 46cm主砲で木っ端微塵にしていいか!」
「流石にこれはダメだな。警察は当てにならない。こちらで制圧する」
流石に山荘を木っ端微塵にするのは問題だが、陸上戦は負けない
502部隊もいるし、あきつ丸や神州丸もいる
「曹長に出撃すると伝えろ。どうせテロリストだ。相手が弱っている隙に倒すんだ」
「いいぞ、そう来なくっちゃな!」
武蔵は艤装を取りに部屋から出ようとしたが、彼女を止める者が居た。柳田だ
「待ってくれ」
「止めるな! 時雨や仲間を助けた事は感謝してるが、これは戦争なんだ! あれは敵だ! 人命が尊いなどと理由に止めるというなら──」
「違う。僕も連れていってくれないか?」
予想外の柳田に武蔵は一瞬、思考が停止した。一緒に行く?
「戦争は遊びじゃない」
「邪魔はしない。話を聞く限り、アイツらは田中秦とかいう人や教祖が重い病に罹っているのをこっちのせいにしているらしいな。なら、こっちは事実を伝えるだけだ。丁度、宗教団体にベッタリなマスコミがいるから利用出来る」
武蔵はピシャリと言ったが、柳田は冷静だった
「どうせ乗りかかった船だ。事実を曲げているなら黙るわけにはいかない。だから、僕をあそこまで連れていってくれないか。勿論、戦闘には口を挟まない。カメラを奪って事実を伝えるだけだ。案外、周りは拍子抜けるかもな」
「僕はそんなにヤバい病気ではないの?」
時雨は柳田が何を考えているのか分からなかった。事実を伝えるにしろ、それを受け入れる人がいるかどうか
何しろ、艦娘が生物兵器を開発して撃ち込まれた、と主張すれば浦田残党を養護する者は必ずいる。事実を曲げる事はそんなに難しくない。勿論、裏付けは大事だが、見てる人の大半は検証なんてならないからだ
「ヤバい病気だ。ただ、昔から知られているものでね。多分、田中秦の症状を知ってる者がいるはずだ。だけど、対処出来ないから艦娘のせいにしてるだけだろうな」
「それなら、尚更許せない!」
武蔵は怒鳴ったが、柳田は制した
「だから僕が奴らを公開処刑という形で事実を晒す。浦田残党とやらも世間から信用も失うし、笑い者になる。どうだ?」
「それは確実なんだろうな?」
提督は念を押した。確かに面白い話だが、うまく行かなかったら空振りだ
「そうだ。僕のモットーは『世の中は狐と狸の化かし合い。相手が狸ならこっちは一歩上を行く狐になる』だからさ。汚名返上に事実の伝達。悪い話ではないはずだ」
時雨は柳田は何をしたいのか分からないが、恐らくこちらの味方だろう。それが事実なら自分に罹った病気は実は特異なものだと思った
「情報戦か。こちらも昔はやったことがある。田中秦を殺してもお前が止めようは考えないことだ」
「殺す? 殺す必要はない。アイツはもう助からないさ。寧ろ、苦しみながら死ぬんだから殺す必要性はないと思うが」
柳田の言葉に周りは困惑した。助からない? どういう事だ? 時雨は治ったのに?
「あの場で教えるさ。君達にヒントをやろう。あのウイルスはヒトヒト感染はしないからマスクは要らない。そして昔から知られている病気だ。夕張が診断していたPTSDは全て病原体の症状だ。それでは出発する準備していく。ターズ、来てくれ」
柳田はターズを連れていって部屋から去っていった。結局、最後までウイルスの正体は言わなかったが、どうやら彼のいう不測の事態というのは本当らしい
「提督、どうする?」
「確かに滅茶苦茶な意見を言うあの報道を何とかしないとな。事実がこちらに有利なら尚更嬉しいが。取りあえずは出撃するぞ。待機しておけ」
提督はそう命じるしかなかった
取りあえずはこちらに協力してくれるらしい
時雨は柳田の部屋に入った。ノックしても返事はなかったため、扉を開いたが、柳田は紙を書いていた
『どうしました?』
「僕、心配なんだ。事実を流しても周りが信じるとは思えない。浦田重工業は情報戦は得意なんだ。だから──」
『心配要りません。誰もが聞いても呆れるウイルスです』
ターズはそう答えたが、時雨はピンと来ない。僕に罹ったウイルスは何なんだ?
「教授、結衣が僕に未知のウイルスを打ち込んでいないという根拠は?」
「潜伏期間だ。お前は臓器を奪われ田中秦ともう1人の教祖に移植されたと言ったが、田中秦が発症した時間を考えると辻褄が合わないんだよ」
「でも、本当に不測の事態ならこんな偶然──」
「いや、偶然だ。特に君の場合は奇跡の度を超えている」
ますます時雨は混乱した。そんな病があるのか? 柳田は書きながら答えている。診察書だろうが、専門用語が多すぎて時雨は内容が分からない
ふと視線を落とすと顕微鏡で撮ったであろう写真があった
「お前が罹っていたウイルスだ。苦労したぞ。僕にはお手上げのウイルスの1つだ」
「ウイルスって円く無いの? 何か銃弾みたい」
時雨は写真を見て驚いた。ウイルスは丸いというイメージがあったが、写真の方は違う。銃弾みたいものが5つある
「お前はそれにやられた。別の見方をすれば田中秦を殺したのはお前になるな」
「そうだけど……不測の事態で医者も匙を投げる病にかかるものなの?」
時雨は困惑した。確かに不測の事態なら、田中秦に報復出来たと言えよう
しかし、そんなに恐ろしい病なら分かるはずだ。歴史を見ても感染症は猛威を奮うと国1つ滅ぼす程の力を持っているはずだ
「まあ、後の解説は今度で。それでは行くか」
移動には二式大艇改が使われた。水陸両用の飛行艇である。岐阜基地に向かい、車を借りて現地に向かう事にした
「よっしゃあ! 今度こそ敵を倒してやる!」
「アイツらは許せないっぽい! 時雨に酷い目を合わせた人を許せないっぽい!」
天龍も夕立もやる気満々だ。二式大艇には艦娘も数人連れていった。最早、世間に配慮する事はしない
浦田副社長が本土に上陸したという情報もあるため、合流したら不味い
なら、立て籠っている山荘を叩かないと行けない!
皆は殺気だっていたが、柳田は冷静だった
「本当に汚名返上してくれるのか?」
「任せておけ」
柳田は自信満々で答えていた
争いが起これば国内紛争になるのは避けられない。浦田結衣が連合軍を倒してから日本社会は大混乱している
しかし、彼は平常だ。何か策でもあるのか? 事実を報道して皆が呆れられるというウイルスなんてあるのか?
「明石には伝えたの?」
「心配ない。医務室に君の診断書と病原体の図鑑に付箋をはって置いたから」
時雨は明石に伝えたのか聞いたが、どうやら心配無用だ。明石は気付くだろう
何なのか知りたかったが、どうやら彼のお楽しみタイムらしい
「行ったわね……時雨も無茶よね。疲れを入渠で治すなんて」
医務室では明石は呆れていた。倒れた大和を診ていた。長門は提督代理で留守番だ。他の艦娘はテレビに釘付けだ。何が起こっているのか見届ける必要がある
武田が何処にいるのか不明だが、呉鎮守府は奇跡的に復旧したという事実はなるべく伏せていた
浦田結衣が何処にいるかはしらないが、最新の情報だとヨーロッパを攻撃しているという
ふと、医務室の扉が開いた。陸奥と矢矧と長門だった
「大和は?」
「寝ている。穏やかなにね」
長門は明石の報告を聞いて安心した。大和は必死だったのだろう。特に不治の病で死亡宣告された時雨を治すよう願ったのだから
大和のお陰で時雨が生き返った
柳田教授はそう言っていた
「そうか……それで時雨は何の病気に罹っていたんだ?」
「聞いていないわ。……あら、あそこに診断書が。これは時雨のもの」
明石は首を振ったが、ふと見ると机の上に診断書と図鑑が置いてあった
それは柳田が置いていった時雨の診断書である。医学の図鑑に付箋をはっていることから時雨が罹った病原体が載っているのだろう
「柳田の仕業ね。あの人、性格は変わっていないわ」
「何だかんだで心配するんですね、陸奥さんは」
「そ、そんなこと無いってば!」
陸奥は慌てて言った。確かに性格は難があるものの、悪人とは言い難い
愚痴をこぼしている割には何だかんだと言って手をつけているのだから問題ないのだろう
「ハイハイ……さぁーて、時雨を殺そうとしたウイルスはっと……え? ……え?」
明石は診断書を広げ書いた字を目で追っていたが、明石は血の気が引いて青くなった。診断書は明石の手に無意識に力が込められ、用紙に皺が出来ていく
「どうしました? 不治の病でも治ったウイルスですから大した事は無いですよね?」
矢矧は医学の図鑑を開いたが、少しの時間が経つと彼女も凍りついた
「お姉さんにも読まして」
陸奥は矢矧の後ろ越しから図鑑を読んでいった。図鑑には所々書き込みや写真が挟んでいることから柳田の仕業だろう
陸奥はため息をついていたが、記載されたページを読んでいる内に彼女は毛が逆立つのを感じた
「え! 嘘でしょ!?」
陸奥の驚愕に大和は目を覚ましてしまった
朝霜「恐竜の写真を撮ってきたぜ!」
青葉「スゴいです!鎮守府の新聞に飾っちゃいましょう!」
朝霜「タマゴももってきたぜ。暖めて孵化させよう」
青葉「良いですね。名前も付けないと」
加賀「ダメに決まっているでしょ(ゴゴゴ)」
次話でいよいよウイルスの正体が