時雨の緊急任務 ~リベンジ~   作:雷電Ⅱ

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こんにちは、雷電Ⅱです
現在はイベントにおいて長鯨が出ないこととE2の第三ゲージであるラスダンが中々割れない事に悩まされています
というか、集積地夏姫は回避能力をいつの間に身に付けていたんだ?
素直にこんがりと焼かれなさい


第47話 不穏な未来

 日本・某所

 

「硫黄島が攻撃を受けただと!?」

 

 浦田副社長である武田は驚きを隠せなかった。呉鎮守府を空爆するため要請したのだが、何者かが拠点としていた基地が攻撃を仕掛けてきた。しかも、それは陸軍の特殊部隊ではなく、艦娘らしい

 

「本当に艦娘だったのか?」

 

「そうです。現に捕虜も連れ去られたとのことです」

 

「クソ……フィラデルフィア実験の事も知っていた! 特殊部隊のような作戦を実行するなんて!」

 

 部下からの報告に武田は頭をかきむしった。田中秦は狂犬病によって死亡し、虎の子であるF-14は全滅した

 

 今あるのは、地上部隊である武装勢力と深海棲艦を操っている浦田結衣だけだ。何者かが生物兵器であるエボラウイルスに感染した艦娘を治療したのを考えると生物化学兵器は艦娘には通用しないと見ていい

 

 世界を攻撃して混乱しているのはいいが、思わぬ反撃を受けて戸惑いを隠せずにいた

 

(奴らを見くびっていた?)

 

 武田は一瞬、そう思ったが、直ぐに否定した。こんな事があってたまるか! 

 

 そのため、直ぐに浦田結衣に連絡した。硫黄島の攻撃を報復しなければならない。何故か様子見をしている。本人曰くタイミングが重要だ、と言ってはいたが、そんなのは関係ない! 

 

 だが、返信は同じだ

 

『まだだ』

 

「何故だ!? こうしている内も奴等は強くなっている。最新の情報だと艦娘は画期的な大改装をするらしい! お前よりも強くなったらどうする?」

 

『それはないし、寧ろそれが狙いだ』

 

 武田は困惑した。なぜ、ここまで自信満々に言えるのか? 

 

『心配するな。リリの能力を組み込んでから色んな事が出来るようになった。永遠に強くなることは決してないのだよ』

 

 武田は困惑したが、返信する前に向こうは通信を切った

 

(例の科学者、柳田という人を誘拐するのが目的だが、結衣は無傷で取れるのだろうか?)

 

 武田は首を捻った。確かに一般人を誘拐するには手荒な真似をしなければならない

 

 人質交換などがあるが、切り札となる人物は現在のところいない。また、戦闘となれば勝敗は兎も角、こちらの貴重な戦力を削る事になる。浦田結衣は深海棲艦を操る事が出来、超人的な能力はあるが、こちらにはそんなのは無い。F-14が壊滅してしまった今、ハイテク兵器は僅か。後は生物化学兵器くらいである

 

(こちらも動くとするか)

 

 武田は腰を上げた。どんなことであれ、浦田社長など死んでいった人達が生き返れるのなら、それを最優先しないといけない。浦田重工業再興は必須だ。第二次世界大戦や冷戦は何としても止めなくては

 

 

 

 鎮守府

 

 戦艦ワシントンは手土産を持って医務室へ向かっていた。目的はサウスダコタのお見舞いである。他にも霧島も長門陸奥もコロラドも一緒に付いていった。ジャーヴィスやアトランタ、そしてホーネットである

 

「全くあいつは心配をかけやがって。私が旗艦ならこんな目にならなかったのに」

 

 ワシントンは独り言のようにブツブツと呟いていた。実はワシントンとサウスダコタは犬猿の仲であり、いつもはニコニコしているが、それは皆が見ている場合であり、誰も見ていない場合は険悪ではある

 

 だが、コロラドは違っていた

 

「それなら、見舞いにいかなくていいじゃない」

 

「違う。同胞である負傷者を見舞うのは当然だ。決してSoDakのためではない」

 

「素直では無いのね」

 

「違う。決してない。Black Princeのためではない!」

 

 ワシントンは否定はしていたものの、口で言っていることと行動に矛盾がある

 

 少なくとも、重症患者に手荒な真似はしないだろう

 

「おい、ワシントンはあんな感じなのか?」

 

「ええ。何時もの事よ」

 

「前世の因縁って奴」

 

「そう? 私はサウスダコタと仲は良いですよ*1

 

 長門、アトランタ、コロラド、そして霧島は小声でわざとらしく言っていた。実は2人の関係は2年前の米艦娘との交流でサウスダコタとワシントンの関係は知っていた

 

 そのため、皆は知っているのだ

 

「ケンカするほど仲が良いとはこの事かしら?」

 

「口論はしていますけど、喧嘩したことはないです~」

 

 陸奥とジャーヴィスのヒソヒソ声にワシントンは我慢の限界が来た

 

「言っておくが、私はあいつが嫌いだ。あいつ、入院中でも好き勝手言ってくれちゃって、まったく失礼しちゃう! あの馬鹿ほんと酷いのよ。いつかガツンといってやんないと!」

 

「ハイハイ、分かったからいきましょう」

 

 ワシントンはキッパリ言っていたが、怒りや殺気は全く発していないため説得力がない。そのため、ホーネットはやれやれといった感じで反応していた

 

 医務室に付くとワシントンは扉を思いっきり開けた

 

「おい、Black Prince! 見舞いに来て──」

 

 開けると同時にワシントンは大きな声で言ったが、彼女は何かを見てらしく固まった。彼女が絶句するほどの光景を見たのか? 

 

「どうしたの? さっさと中に早く──え?」

 

 アトランタは呆れて医務室の中に入るよう促したが、アトランタもワシントン同様に固まっていた

 

 皆は何事だろうと医務室に入ったが、皆は信じられないものを見た

 

「これは?」

 

「左よ。もう良いでしょ? 目は見えたし、回復した。退院しても良いんじゃないの?」

 

 柳田教授が視力検査用の表に指揮棒を指したが、サウスダコタは答えている。近くにはゴトランドもおり、彼女は当てられたことで拍手をしていた。しかも、指している場所は視力1.2のところだ

 

「確かに退院は認めるが、前線に復帰するかは息子次第じゃ」

 

「中将なんだから、そこは階級を使って強引にだな。──あ、マイティか。嫌な奴が来た」

 

 提督の父親である博士は困惑したが、サウスダコタはワシントンの姿を見るや否や露骨に不機嫌を露にした

 

 だが、ワシントン達はそれどころではない。こちらの姿を確認して言っている

 

 信じられないのも無理はない

 

 サウスダコタは目が見えている!? 

 

「貴方……目が見えるの?」

 

「そうよ、霧島。そこの魔法使いが私の目を治してくれた」

 

「魔法使いじゃない。医者だ。医学に基づいた、れっきとした再生治療法だ」

 

 霧島は驚き、サウスダコタは自慢していたが、柳田は呆れていた。だが、他の艦娘は信じられなかった。失明した目を治すのは難しいのではなかったのか? 

 

「どうやって治したんだ?」

 

 長門は聞かずにはいられなかった。彼にとっては視力を戻す方法は簡単なのか? 

 

「あー、普通なら手術で治るのだが、彼女の場合は出力の高いレーザーを照射された。そのため目の表面の角膜や付近の水晶体が大きく損傷して無理だ。だから目を取り替えた」

 

「え? 目を取り替えた?」

 

「サウスダコタの組織を培養して目をつくり、手術で交換し視神経を繋いだ。簡単なことだ」

 

「簡単なことなのか?」

 

 長門は唖然とした。目を取り替えた? 

 

「そ、それって艦娘だから出来たってことなのか?」

 

「なに言っているんだ? 人にも出来るぞ」

 

 柳田の淡々と説明したが、陸奥以外の艦娘は驚愕した。目の交換は兎も角、視力を回復させる手段があるらしい

 

「じゃあ、彼女の目は何処に?」

 

「ちゃんとホルマリン漬けにしてとっているぞ。見るか?」

 

「いや……結構だ」

 

 長門だけでなく、ワシントンも少し引きながら答えた。長門にとっては信じられない事だ

 

「す、凄いわ。そんな腕があるならステイツにも貢献して欲しいわ」

 

 ホーネットはそう言ったものの、柳田の腕に驚きを隠せずにはいなかった。彼の頭脳は先取りしている。艦娘だけでなく、世の中に貢献出来るのではないか? 

 

 そう思っていたが、柳田は分かっていたらしく紙を渡した

 

「何を考えているか大体は分かるが、これは提督との取引だからやったまでだ。普通なら医療費は請求させる。今回はそれくらい高度な技術を使ったんだ」

 

「え? これは領収書? ……What!?」

 

 ホーネットは紙を受け取りながら言ったが、ホーネットはそこに書いてあった金額に目の玉が飛び出そうになった。他の艦娘も領収書を見たが、反応は同じだ

 

「ご丁寧に円だけではなく、ドルで書いているのね」

 

「いや、陸奥。そういう問題ではないような気がするが」

 

 陸奥は呆れていたが、他の艦娘はそれどころではない。5の後に0が沢山並んでいるため、眩暈がするのも無理はない

 

「驚く事はないだろ。言っておくが、これはサウスダコタの眼の治療だけの金額だ。本来ならエボラウイルスの治療から金額は発生して請求するはずなんだ。研究を重ねれば安くはなるだろうが」

 

「一軒家が買えるほどの金額が安くなるのか!?」

 

「保険に入っていたら多分、一般人出来るだろ」

 

 長門は愕然としたが、柳田は違った。医療行為をしているのだから、本来なら治療費は発生するのは当たり前である*2。ただ、今回の場合は提督との取引であるためであって、ボランティアでやってる訳ではない

 

 そんなやり取りを他所にガンビアベイやアトランタや霧島、そしてジャーヴィスはサウスダコタはサウスダコタの周りに駆け寄り祝福した

 

「わ、私が見えます?」

 

「見える! 霧島、元気そうだ!」

 

「ほ、本当に治っだんでずね。心配じまじだ!」

 

「ガンビー、泣くなよ。私は治ったんだ」

 

 サウスダコタは笑っていたが、認識している辺り、本当に視力は回復した。ガンビアベイもジャーヴィスも喜んでいた

 

「そういえば、ゴトランドは何故居るんですか?」

 

「先にお見舞いに来ていただけだ。ゴトランドと付きっきりなんだ」

 

 サウスダコタはそう言っていたが、陸奥は嫌な予感がした

 

 海外艦娘の寮長であるビスマルクやイントレピッドから聞いたが、ゴトランドは催眠術師らしい。敵兵士を眠らせるというとんでもない能力の持ち主だ。そんな人がなぜここに? 

 

「結衣からの拷問……もしかして」

 

「どうした?」

 

「いえ、そんなことより帰りましょ。元気そうだから」

 

 ワシントンは陸奥の呟きに疑問に思ったが、サウスダコタはシッシッと手で追い払っているため、ワシントンはムッとしていたが、素直に従った

 

 ワシントン達が医務室から出て廊下を歩いている時もワシントンはサウスダコタに対して不満を口にしていた

 

「あいつ、魔法で目が見えるようになるなんて心配して損した」

 

「ワシントン、流石にそれは本人の前では言うなよ」

 

「長門、Black Princeに気を遣う必要はない。それに陸奥、何故あの時に医務室に出るように言った?」

 

 ワシントンは陸奥に目を向けたが、陸奥だけはいなかった。何処に行ったのか? 

 

 

 

「なあ、退院を認めてくれよ。痛みもないし、やる気はある」

 

 ワシントン達が帰った後もサウスダコタは退院を認めるよう迫ったが、博士も教授も困っていた

 

「はぁ……ガンビアベイが変なことを言うかヒヤヒヤしていたが、無理して強がる必要はない」

 

「違う。あいつを倒すために」

 

「あいつとは誰の事だ。ワシントンか? それとも浦田結衣か?」

 

 柳田教授が質問した時だった。サウスダコタは過剰に笑い始めた

 

「なに言っているんだ。あいつなんて敵じゃない。私の敵ではないんだ! 敵はワシントンだ。そうだ。負けるわけがない。今度砲撃して沈めてやる」

 

 サウスダコタは笑っていたが、その笑い顔を無理矢理作っているようにも感じ、しかも目がギラついている。だが、何故か目から涙を流しており手が震えている

 

 まるで戦いを楽しむサイコパスのように見えるが、それは何も分からない人であって博士も教授もそれが何なのか分かっていた

 

「また発症したな。ゴトランド、眠らせてやれ」

 

「分かりました」

 

 ゴトランドは近寄るとサウスダコタの耳元で何かを囁く。次の瞬間、サウスダコタは糸が切れた人形のように倒れた

 

「明らかに精神崩壊しているな。そんな状態で戦わせるなんて無理だ」

 

 柳田は呆れるように言った。PTSD……心的外傷後ストレス障害を起こしていた。しかも、サウスダコタは珍しい事に本人の意思とは無関係に笑みを浮かべている。本来なら投薬での治療をするが、催眠療法でやった方がいいと柳田は判断した

 

「第一次世界大戦では、本人の意志とは関係なく笑った写真ならみたことがあるが、まさかこの娘も同じになるとはのぉ*3

 

「それだけじゃない。夜中隠れて貯蔵庫にある酒を飲んでいた。現実逃避のためにアルコールを過剰に飲もうとしていたのだろう。その前に止めて良かった。アルコール依存症になってもおかしくない。まあ、あの時はポーラとかいう艦娘も酒を飲んでいたから、誤魔化せたが*4

 

「ポーラは別に良いんですね。アル中であるポーラは放っておくんですね」

 

 博士と教授の議論にゴトランドはツッコミをいれたが、本人は聞く耳を持たなかった。まあ、何時も通りザラが泣く羽目になるが

 

「それはそうとして、治療出来ないんですか?」

 

「医者が出来るのは病気や外傷であって、心の傷は治せない。出来ることといったら薬物投与かカウンセリングだ。一応、治療法自体は確立はされているが、完治出来るかは別問題だ」

 

「症状は違うが、時雨の時は大変じゃった。あそこまで回復出来たばかりでなく、結衣に酷いことをされてもPTSDが再び発症しない事が奇跡じゃ」

 

 ゴトランドはすがるように聞いたが、2人の反応は同じだった。時雨もPTSDにかかり、白露達は立ち直らせるために苦労した。村雨が撃沈したことで時雨が再発するという危機感もあったが、今のところは発症していない。しかし、白露姉妹が村雨だけでなく如月や吹雪の墓を作って手を合わせている

 

「まあ、1940年代でPTSDが世間に認識されたこと自体、凄いと思うよ。正史通りだったら味方からも酷い目に合わされていたか退役して孤独に過ごすか自殺しているだろう*5

 

 柳田はため息をついたが、実はシェルショック……PTSDは当時では理解されていなかった。一番有名なのは第二次世界大戦時にアフリカ戦線や欧州戦線で活躍したアメリカ陸軍の将軍であるジョージ・パットンがシェルショック(戦争神経症)にかかった兵士を殴った事だろう。ただ、これはマスコミに知られてアメリカ国民の怒りを買う羽目になったが*6

 

「それにしてもここまで精神を破壊するとは浦田結衣はどんなことをしたのやら」

 

 眠っているサウスダコタをベッドに運びながら博士は言ったがゴトランドは知っていた

 

 実はゴトランドは逆行催眠でサウスダコタに何が起こったか調べたが、どれも酷い有り様だ

 

 足に鉄の重りを括り付けて海へ放り投げ溺死寸前まで放置したり、大量の熱湯を浴びせたり、高圧電流を何度も流したり、艤装の耐久性を調べると称して重機関銃を浴びせたり、などと正気を疑うような拷問を受けていた。しかも、サウスダコタは正気を失い首を吊って自殺しようとしていたが、自殺しようとするのを浦田結衣に見つかってしまい、あろうことか自殺を手伝おうとしていたらしく、首を絞め殺す手前までやっていたらしい。恐らく監視していたのだろう。そして、浦田結衣はサウスダコタの両目にレーザーを照射してサウスダコタを失明させた

 

 流石にこれは不味いと考え提督と相談し催眠で記憶を封じたが……どうやら一筋縄ではいかないらしい

 

 記憶は封じても心の傷は深く残っている。ゴトランドはまだ教授と博士にこの事は伝えていないが、正直言ってどうやって対処すればいいのか分からないが本当である。それに柳田教授のいう通り、医者は心の病は治せない

 

 もし、何らかの拍子で記憶が蘇ったら……

 

 

 

 医務室の外ではワシントン達が聞き耳を立てていた。陸奥は直感で何があったのか分かったが、サウスダコタが予想よりも重いPTSDに罹っていた

 

「明らかに時雨の時よりも酷い。あのままだと廃人になる」

 

「どうして? 私達の前では普通だったのに」

 

「無理にしている。いえ、精神が破壊されてサウスダコタ本人も自分が何をしているか分かっていない」

 

 ガンビアベイは再び泣きそうになった。サウスダコタは完治した。目も見え、身体中の傷は消え左腕も再生療法という手段で元通りだ

 

 しかし、身体の治療は終わっただけで、心までは治っていない

 

「もう一度、あいつと話す」

 

 ワシントンは静かにいい、医務室のドアのノブを触ろうとしたが、陸奥は止めた

 

「止めて。恐らく、今のサウスダコタは貴方を殺すわ」

 

「何を言って……」

 

「サウスダコタは『あいつ』と言っていたけど、あいつが誰のことを指しているのか分からない。恐らくワシントンと浦田結衣を混同している可能性があるわ。下手をすると襲うかも」

 

 ワシントンは陸奥の指摘に目を見開いた。サウスダコタの『あいつ』は誰に対してなのか、分からない。だが、下手をしたらワシントンを攻撃するかもしれない

 

「今の状態だと、ただ喧嘩どころでは済まないわ。殺し合いまで発展しそう」

 

 陸奥の言葉にワシントンは歯を食いしばった。敵はライバルまでも壊すのか? 

 

「そう言えば、柳田教授はサウスダコタが担当してるなら工廠で大和達の大改装は誰がやっているんだ?」

 

 長門はふと疑問を持ったが、陸奥は分かっていた。柳田教授の側近のターズや柳田教授の娘がやっているのだろう

 

 

 

 工廠

 

『完成です。F-14も運用は出来るはずです』

 

「やったわ! これこそが米海軍よ!」

 

 工廠で機器を操作し終えたターズの報告によりイントレピッドは喜んだ。艤装の大きさは変わらないものの、飛行甲板はアングルド・デッキに様変わりし、艦載機も大きく変わった。F-14も浦田重工業の仕様ではなく、アメリカ海軍のマークと塗装が塗ってあった。F-8クルセイダーやA4スカイホークなどのジェット機が他にもあるが、どれも米海軍のマークがある

 

「早速、試験運用してくるわ」

 

「気を付けろよ。しかし、初めて知ったが、エセックス級は太平洋戦争の後もそんなに魔改造していたのか?」

 

 イントレピッドは嬉しさのあまり工廠を飛び出したが、提督は止めはしなかった

 

 寧ろ、魔改造した事が信じられなかった

 

「Yes。まあ、本来ならF-14を運用出来る能力は無かったけど、艦娘だから出来る技よ」

 

 アイオワはやれやれといった感じだが、実はエセックス級空母は汎用性はとても高く第二次世界大戦の後も改造されていった*7。ボクサー級と呼ばれる強襲揚陸艦になった艦もある

 

 ガリバルディも無事に大改装は終え、ミサイル巡洋艦へと変貌した。発射試験のみの運用だったためか、ポラリスの弾道ミサイルは持ってきてはくれたものの、核弾頭は付いてこなかった。だが、浦田結衣には何らかの手段で核を耐えているため、今は不要かもしれない

 

「後は時雨と大和武蔵さんね」

 

「うん。正直、どうなるか分からないよ」

 

 優子の言葉に時雨の胸は高まった。自分は『艦だった頃の世界』において、戦時中に撃沈された。大和武蔵もだ。『もしも』の状態は何だったのだろうか

 

 明石とターズの指揮の元、艤装に真っ赤な石を当てて反応を起こす。特異点の力により艤装を進化させるためだ

 

 今のところは資源の消費は赤い石くらいだ。通常の大改装とは違うが、何があってもおかしくはない

 

「それではいい? 艤装が進化するのを」

 

「ああ。何時でも」

 

「見てみたいです。戦艦の進化を」

 

「戦後改修されたアイオワみたいな形になるのか?」

 

 明石の号令と共に時雨だけでなく、大和武蔵も頷いた。戦後も戦艦を運用したのはアメリカの他にイギリスくらいだ。あまり活躍はしなかったが*8

 

 時雨大和武蔵は艤装を装着し、艤装は大型の電算機のケーブルに接続。エネルギーを送り込み兵装を進化させる。皆が固唾を飲んで反応を待ったが、何も起こらない

 

「どうしたの、ターズ?」

 

 明石は何も起こらない事に聞いたが、優子は急いで駆け寄るとターズは止まっている

 

「ターズ、何があったの?」

 

『すみません。私もあの赤い石に関わったため、数千の未来が一瞬で見えました』

 

「それで?」

 

『残念ながら記録はありません。教授に組み込まれたセーフティプログラムにより、私自身の判断では起動出来ません。不安定なんです』

 

 ターズはよく分からないことを言っていたが、何かを検知してロックされているらしい

 

「原因は何? 僕たちの大改装は危険だから?」

 

『いいえ。言葉に表す事が出来ませんが、最悪の形になる可能性があります』

 

「僕たちが深海棲艦になったり、重力によってバラバラにされたり、とか?」

 

『その程度は対策は出来ます。しかし、何かが検知して私の動作が停止しました。誰かによる許可がなければ私は動けません』

 

 ターズの苦言に一同は困ってしまった。この動作は難しく明石では不可能だ

 

「誰の許可が必要だ?」

 

『この大改装を行う責任者であればいいです。教授でなくて大丈夫です』

 

 意外な事にターズはそう簡単に言ったが、この場において責任者は提督だ。柳田がそうプログラムしたのだろう。柳田教授を呼べば何か分かるかも知れないが、柳田は博士と一緒にサウスダコタの治療を行っている

 

「どうする、提督?」

 

「やるしかない。リスクはつきものだ。だが、使う石のパワーは半分にしよう。敵の強さをみて更にパワーアップするよう作ってくれ」

 

『分かりました。出力50%に設定』

 

 提督はそう指示をしターズは頷いたが、ターズの言葉に工廠は異様な雰囲気に包まれた

 

「中止しましょう。恐らくパワーアップが何か関係あるかも」

 

「いや、このまま続ける。時間がないのだ。浦田結衣を倒さないと犠牲者は増え続けるだけだ」

 

 優子は中止するよう言ったが、提督は続行するよう命じた。浦田結衣が何処にいるか分からないが、何時襲われてもおかしくない

 

「パパや貴方の父なら分かるかも」

 

 優子は不安になった。父親の事は信用出来なくてもターズは信用出来る。少なくとも嘘はつかない

 

「時間を取られるだけだ。ターズ、大改装をしてくれ。もう一度聞くが、時雨達の身体がバラバラになって命を落とす、という事にはならないのだな?」

 

『はい。それは確かです』

 

「安心できないんだけど!」

 

 時雨は提督と優子のやり取りを聞いて気が気で無かった。下手をしたら大改装で死ぬことになる

 

「提督、やってくれ。最悪な形だか何だか知らないが、あいつを止めるには大改装は必要だ」

 

「お願いします、提督。あの悪夢を食い止めないといけません」

 

 武蔵と大和は大改装を継続するのを希望していた。もし、中止し原因を探している最中に敵が来たら意味がない

 

 2人の決意をみた優子は頷いた

 

「分かった。そこまでの覚悟があるなら、私は反対しない。ターズ、お願い」

 

『分かりました。エネルギー充填開始。重力の調節開始』

 

 優子が反対しなくなったため、ターズは操作パネルを弄った

 

『艤装大改装するエネルギーを貯めました。艤装にエネルギーを送るだけです』

 

「僕は大丈夫。やって」

 

 時雨は覚悟を決めたが、ターズは動かない。しかし、何かを言っていた

 

『この世界の未来が確立されました』

 

 ターズの言葉に皆は首を傾げたが、次の瞬間、時雨の身体に電流が走ったかのような衝撃を受けた。全身にピリピリとしたような痛さだが、それは一瞬だ

 

 だが、時雨がみたのは信じられない光景だ。何かが視界に映った。テレビドラマがアニメを録画したような映像が流れてくる。それは別にいい。自分も経験済みだ

 

 しかし、時雨は映し出された光景を見て驚いた

 

 鎮守府が燃えており、十字架の墓が無数にある。十字架の前に海軍士官が立っていた。海軍の軍服が破れていたが、紛れもなく提督だ。近くには座り込んで血塗れで包帯を巻いた曹長もいたが、目は死んでいた

 

 次に映し出されたものは、家の路地辺りだ。稲妻が発する光の玉から誰かが出てきた。あれは──僕? 確かタイムスリップした時のものだ。過去の映像かと思ったが、直ぐにそうではないと分かった。何故なら、居ないはずの者が近くに立っていたからだ。戦艦ル級改flagshipが

 

 タイムスリップした時雨は、慌てて逃げようとしたが、戦艦ル級改flagshipの餌食になった。槍を串刺しにしたのだ。戦艦ル級改flagshipは変化し秘書官だった頃の浦田結衣になった。しかし、その顔を笑っていた

 

「うっ……ああ……」

 

 時雨は頭を押さえながら膝をついた。映像は途切れ途切れになり、工廠の様子が目に入った。皆は心配そうにこちらを見ている

 

 しかし、それも一瞬であり次の映像が見えた

 

 戦艦水鬼改が浦田結衣に殺られてる映像だ。反撃しようと飛び掛かろうとしていた南方棲戦姫と北方棲姫を抱えて逃げる港湾棲姫の姿だ。しかし、双方とも赤い光線で撃ち抜かれ赤かった海は更に赤くなった

 

 呆気ない死に方だ。僕たちでも手こずった深海棲艦のボスなのに

 

 そして、次の映像は鳥肌が立つのを感じた。自分の死体がある。そんな死体を大和が泣きながら抱えている。そんな姿に誰かが近づいてきている。浦田結衣だ。ゾッとするような笑みを浮かべながら

 

 攻撃するかと思って身構えていたが、そんな様子はない。それどころか、大和の肩に手を置いた。大和は怯えるように結衣の方へ向き……

 

 そして、場面が変わる。新たな軍団が国会議事堂に集まっていた

 

 浦田重工業の社印を付け武装した人の軍団。浦田結衣に従えている深海棲艦。そして、大和がいた。外見や艤装に変化はないが、大和の目は赤く輝いていた。正気を失っているのか分からないが、明らかに浦田重工業の肩を持っている

 

 国会議事堂の前には浦田社長や警備隊長など死んだはずの人が高々と笑いを上げており……

 

 

 

「おい、大丈夫か?」

 

「時雨、大丈夫?」

 

 時雨はハッとして目を覚ました。後頭部に痛みを感じているため倒れたようだ。提督と夕張が心配そうに声をかけている

 

「武蔵さん! しっかりして!」

 

「武蔵? WAKE UP!」

 

 武蔵も倒れたらしく、明石とアイオワが肩に手を貸して起き上がろうとしていた

 

「いや、大丈夫だ。それより、大和は? 何処だ」

 

 武蔵は明石とアイオワの手を振り払い辺りを見渡した。焦っているようにも見え、真っ青な顔をしている。時雨も大和を探したが、大和は近くにいた

 

 ……何時もの大和さんだ。目は赤くない

 

「武蔵、大丈夫? 大和は心配しました」

 

 艤装は変わっていた。艤装には巨大な砲塔の他にレーダーアンテナやミサイル発射装置がある。結衣のものとは違うが、明らかに進化している

 

「せ、成功した?」

 

「ええ。時雨ちゃんも成功しましたね」

 

 時雨は大和の艤装の変化に驚いていたが、大和の言葉を聞くや否や自分の艤装を確認した

 

 変わったレーダーアンテナや変わった形をした2連装の主砲が備わっている

 

 ソナーや爆雷も違うものだ

 

『大丈夫ですか?』

 

「ターズ、今の見た?」

 

『見たとは何です?』

 

「未来が確定したとか言っていたけど」

 

『残念ですが、私のメモリーにはありません。操作した後は何かしら妨害が入ったので』

 

 時雨はターズに質問したが、逆に質問をされた。嘘をついているか分からないが、提督も優子も慌てていないことからさっきの映像を見ていないことになる。ターズのせいではないだろう

 

「2尉、大和と時雨の艤装の武器は分かるか?」

 

「ええ。大和武蔵のは、ミサイルやレーダーを一新している様に見える。戦後改修したアイオワを真似た感じ。時雨の方は古いタイプね。これは……Mk.33 3インチ連装速射砲ね。護衛艦わかばを参考に作られたみたいね。珍しい」

 

 提督の質問に優子は淡々と説明する。どうやら、成功したらしい

 

「これって何です? アイオワさんが持っているミサイルと同じように見えますけど」

 

「同じよ。それはトマホークよ。ミー使い方を教えてあげる!」

 

 アイオワは大和に教えていた。きっと嬉しいのだろう

 

 大改装は成功した。したはずだ。だけど、素直に喜ぶ気持ちが分からない

 

 あの映像はなんだ? 何なんだ? 幻覚? 

 

 混乱している中、誰かが時雨の肩を叩いた

 

「おい、時雨。お前、あれを見たか?」

 

「武蔵さんも見たの?」

 

 武蔵は大和を心配そうに見ていた。大和は気づかないのか、アイオワと楽しく話している

 

 今はSPYレーダーとSM-3スタンダードミサイルの使い方を教えているが

 

「多分、今の映像をみたのは私と時雨だけ」

 

「どうする? 提督に知らせる?」

 

 時雨は何気なく言った

 

「……いや、あんな映像を話すは御免だ。大和が絶望のあまり寝返るなんて」

 

 武蔵は拳を握り締めながら言った

 

「今の映像……もしかして、これから起こること?」

 

 時雨は焦り始めた。力をつけ敵を倒すはずなのに、こんな映像を見せられるなんて

 

 なぜ、僕と武蔵さんだけなんだ? 

 

 いや、それだけじゃない

 

(浦田結衣はこれを狙って……)

 

 嫌な予感が頭を横切ったが、時雨はその考えを振り払った

 

 あり得ない。浦田結衣にはリリという高性能なAIロボットの能力があるが、大改装案が行われていることなんて知るわけがない

 

 

 

 ??? 

 

「やっと起動させたか」

 

 ある海域に『デビル』である浦田結衣がニヤリとした。微かに観測出来たのだ。重力波が

 

 武田が数週間前の呉鎮守府がエボラウイルスによって感染された際に重力波というものが観測されたらしい、とのことを知らせてきた

 

 それは提督の父親である狂人が言った言葉だが、アイツは変な妄言を言う人ではない

 

 リリの能力を使って検索したところ、どういう現象かを理解し、更にエボラウイルスを治療した男の正体も突き止めた

 

 彼の個人情報はリリも持っており、経歴を調べ尽くした

 

 恐らく協力はするだろう。何かしらのことをするに違いない。そして、彼の研究データを元にG元素を利用した簡易的な正20面体を作った。リリがネットで柳田教授の研究データを奪ったものらしい。つまり、浦田結衣は彼が過去にやったことを実行した。未来予測を

 

 そして、何をすればいいのかを

 

「さあ、全員絶望の淵に落としてやるよ。ハハハハハ!」

 

 浦田結衣は動き出した。堂々と攻撃するとするか!

*1
艦これのゲームや本作品では双方の仲は良い方(?)だが、史実では険悪だった。特にワシントンの一部の乗組員からは戦艦サウスダコタのことを『Big Bastard』や『Shitty Dick』と呼んでいた。戦後も禍根を残したほどである。尚、英語の意味が知りたい方は英和辞書などで調べてみるといい

*2
本来、医療費は高い。特に海外では歯科治療において歯一本の治療につき約千ドル、というのも珍しくない。海外旅行等する際は保険に入るよう薦められるのはこのためである

*3
第一次世界大戦で戦争神経症であるシェルショックにかかり不気味な笑みを浮かべた兵士の写真は実際に存在している

*4
アルコール依存の他に不安や鬱や疲労感、飲食障害、集中力低下、言語障害や現実逃避などの症状もPTSD特徴の1つである

*5
当時ではPTSDという単語はなく、シェルショックや精神の病は臆病者として扱われた。軍法会議にかけられた例も珍しくなかった

*6
後にパットン将軍はその兵士と家族に謝罪を行っている

*7
エセックス級空母は戦後も改装を重ね実際にアングルド・デッキやカタパルトを装備しジェット機運用もされた。改装前と改装後は見た目が違うため同型艦とは思えないほどの改造をされた

*8
これは戦艦ヴァンガードのことを指す。英海軍史上最良の戦艦と呼ばれていたが、この戦艦が就役したのは第二次世界大戦後の1946年……。アイオワ級戦艦のように大規模な改装はされず、1960年には除籍、解体された




ネタ
柳田「義眼を嵌めるしかないな」
提督「なにかあるのか?」
柳田「これだ(千年眼を見せながら)」
時雨「いや、何処から持ってきたの?」
サウスダコタ「よし、あいつに闇のゲームを仕掛けてやる!」
提督「奪われそうになるから止めとけ」

大規模な改装した結果、時雨や大和武蔵がどんな軍艦でどんな兵器を持ってきたかは次の話で
ただBGM-109BトマホークやSM3スタンダードミサイルが確認されているためアイオワみたいに戦後改修した『IF』の模様
時雨もどうやら一新しているらしいが
これで楽勝で……勝てる???
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