時雨の緊急任務 ~リベンジ~   作:雷電Ⅱ

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今回のイベントは難しいです
今はE3攻略中ですが
そういえばイギリス空母『クイーン・エリザベス』が横須賀に来たみたいですね
コロナ禍でなければF-35Bも英空母も見に行けたのに……


第6章 未来をかけた戦い
第48話 連合軍


「ミサイル命中!」

 

 時雨は進化した艤装を使いこなしていた。分かってはいたが、艦対艦ミサイルの命中率は凄まじい。レーダーにロックして発射ボタンを押せば勝手に機械がやってくれるのだから。ただ試射か1発しか発射いない。ミサイルは貴重であるし、資源も食う。対空ミサイルはないが、相手は空母ではないし、防空艦は他の艦娘の仕事だ

 

 しかし、時雨はあまり喜ばなかった。武蔵もだ。大和をしょっちゅう見ていたが、当の本人はアイオワの指導を受けているとはいえ、新武装に夢中で気づいてはいない

 

 武蔵も話に合わせているが、本人はあまり浮かない顔をしていた

 

「武蔵、これで勝てますね」

 

「ああ、そうだ」

 

 武蔵は笑っていたが、内心はそうではないのだろう

 

 時雨は数時間前の出来事を思い浮かべていた

 

 

 

 数時間前・提督室

 

「つまり、映像を見たのか? 負け戦の様子を?」

 

「あれは夢でも何でもない! とても生々しかったし、悪夢の比ではない!」

 

 武蔵はそう主張した。実は大改装終わった直後、提督を連れて提督室に行き、さっき見た映像の事を話した。他の艦娘には話していない。現段階で、これは他の艦娘には言えない事項だ

 

「提督。僕も見たんだ。間違いない」

 

 時雨も訴えたが、提督は手で制した

 

「疑ってはいないさ。時雨がタイムスリップした日から俺の感覚が麻痺して寧ろ驚かなくなったが」

 

 提督も微かに笑っていた事から信じたらしい。尤も、タイムスリップした日では昔の提督は中々の人だったが

 

「で、どう思う? 理系のお二人さん」

 

 提督は近くにいた2人に話を振った。その2人とは提督の父親と柳田教授だ

 

「教授と一緒にしないでくれんか。未来の映像を見たのは確かじゃが、それがそうなるとは限らんと思う。タイムスリップ作戦で歴史を変えたのじゃ。最悪な未来になるような行動を慎まなければならん」

 

「そうならないよう動くしかないが、もしくは……」

 

 博士は考えながら言ったが、柳田の方は違った

 

 皆の目線が柳田教授に集まったため、柳田教授は観念したようだ

 

「君達……というか時雨の戦闘記録を見たが、戦力差が一周目の時に近づきつつある。F-14の空爆を止めたとしても、戦況は変わらない」

 

「何が言いたいの?」

 

 時雨は苛立たしげに聞いた。元に戻りつつあるって? そんなバカな

 

「これは僕の仮説だ。あくまで仮説だ。それは『歴史の揺り戻し現象』が起こっているのだと思う」

 

「歴史の揺り戻し現象?」

 

 武蔵は顔をしかめた

 

「そうだ。僕の友人の愛読書の中に面白い小説があってね。それは日本の戦国時代にタイムスリップしてしまった、とある軍隊が歴史を変えて未来に戻ろうとする物語だ。その軍隊は長尾景虎(ながおかげとら)に、後の上杉謙信の加担して奮闘し、桶狭間で今川義元を破った。そして、川中島で武田信玄を倒した。しかし、それは浦田重工業や僕とは違い、未来からの補給や技術革新は一切ない。武田信玄を破った頃には武器弾薬も底をついてしまった」

 

「その軍隊はどうなった?」

 

 柳田教授の説明を聞いた提督は尋ねた

 

「その軍隊がはたどり着いた荒れ寺で、長尾景虎の謀反により壊滅する。後の歴史にその軍隊は、織田信長の軍勢と記録されてしまう事になった」

 

 柳田教授の説明に時雨は青ざめた。今のは小説と言ったからにはフィクション*1なのだろう。しかし、自分に起こっていることは似たようなものだ

 

「つまり……その『揺り(・・)戻し現象』のお陰でタイムスリップ作戦は無駄で、浦田重工業が天下を取った世界では、僕たちの事は危険分子か何かと記録されるんだね」

 

 時雨は一周目の時の世界を思い出しながら言った。自分達は浦田重工業の……というより浦田社長のせいだが、……弾圧されたのは間違いない。しかも、正当化しているのだ

 

「世界崩壊も避けられないと」

 

「それだけならいいが、奴等も賢くなればやり方も変わる。下手すりゃ、国民が浦田重工業は世界の救世主という認識するかもな」

 

「それは困る!」

 

 柳田教授の説明に武蔵は大声を出した

 

「揺り戻し現象とかが起こるなら、第二次世界大戦とかも発生するんじゃないのか?」

 

 武蔵は問い詰めた。確かに1940年代なら第二次世界大戦が起こってもおかしくないはずだ

 

 しかし、その疑問には博士が言った

 

「本来ならそうじゃ。じゃが、浦田重工業は主要人物だけでなく、裏工作とはいえ歴史までも大きく干渉してしまった。特に第二次世界大戦で活躍するはずだった政治家や軍人などは暗殺された。ご丁寧に戦後に関わるものまで。干渉が余りにも大きすぎたため、歴史の主導権は浦田重工業が握ったのも同然じゃ」

 

「確かに浦田重工業の裏工作や暗殺のお陰でソ連は崩壊したし、ナチスドイツも誕生すらしていなかった。満州事変は起こらなかった処か、軍は大陸や朝鮮半島から追い出された感じだったからな。それが良かったかどうかは分からないが」

 

 提督も困惑しながら言った。良し悪し関係なく、ここまで大胆な事をする組織は見たこともない

 

「502部隊の曹長が言っていたけど、奴等は天狗になって無いって。狂っている所はあるけど、常に強かったって」

 

 時雨も考えながら言った。尤も、その時の違い日本軍は日露戦争で天狗になっていたこともあったが

 

「そんなことより深海棲艦を操って世界を変えるのは兎も角、大和が心変わりする方が衝撃だ」

 

 提督は頭を抱えながら言った。時雨もまさかあんな映像を見せられるとは思わなかった

 

「……僕達が負けなければ、あんな映像のようなことは起きない」

 

 時雨はきっぱりと言った。仲間の死を見て正常になる者はいない

 

「そうであって欲しいが……不安要素が増えたな」

 

 提督はため息をついた。柳田の言う大改装の失敗で死に至る、という問題点は乗り越えたが、別の問題が発生してしまった

 

 時雨と武蔵が見たものは未来の姿なのだろうか? 可能性なのか、それとも……

 

「自分の姉を疑いたくはないが、気を付ける」

 

 武蔵はそれしか言わなかった。これ以上、議論しても仕方なかった

 

 

 

「優子さん、聞きたいことがあるんだ?」

 

「良いわよ」

 

 時雨は提督室から出た後、柳田教授の娘である優子に向かった。彼女はSH-60のヘリをチェックしていた。浦田重工業から鹵獲していたものであるため、塗装がグレーだ。しかし、ターズがペンキを使って海上自衛隊の塗装にしたとのことだ。ペンキは明石が貸してくれたらしい。機体は白く塗り挙げられ日の丸と『海上自衛隊』が掛かれている

 

「僕達、負けるかも知れない」

 

 時雨は話し始めた。あの時に見た映像を話した。優子は聞いてはいたが、特に表情は変わっていなかった

 

「私の父はなんて?」

 

「歴史の揺り戻し現象とか言っていたけど、結局変えられないって」

 

 時雨は答えた。これは嘘ではない

 

「それで私にどうしろって」

 

「優子さんは逃げた方がいいよ。このままだと無関係の人まで死んでしまう」

 

 時雨は咄嗟に口にした。なぜ、こう言ったのかは分からない。ただ別世界から来たとはいえ、戦死する可能性が高い

 

「逃げないわ。それに増援は来ない。別世界への自衛隊の海外派遣は出来ないから期待しない方がいい」

 

「だったら、どうして?」

 

 時雨は信じられなかった。なぜそう言えるのか? 

 

「気を遣ってありがとう。でも逃げるわけにはいかない。私が選んだ道。自衛官として、ではなくて私自身の意志。信念に従っている」

 

「でも……僕が仲間は既に死んだ。このままだと死者は増える」

 

 時雨は弱音を吐いた。姉妹どころか他の艦娘にも言っていない事だ。自分が祭り上げられている感じがしてならないからだ。勿論、他の艦娘が自分の事を持ち上げたりしている事はない。如月や吹雪が沈んだ事で睦月が泣いているのを見たことはあるものの、こちらを非難してはいない

 

「……時雨ちゃん。1ついい? むっちゃんも似たような相談を受けたの。私は心理学者ではないから励ます事は出来ないけど、時雨も時雨の上司である提督もよくやっている。もしかすると未来を変えることは出来るかもしれない」

 

「そうなの? でも、今回は──」

 

「諦めちゃダメ。ここで諦めたら全て終わってしまう」

 

 優子は遮った。しかし、時雨は納得できない

 

「『艦だった頃の世界』の太平洋戦争みたいに負けると分かって戦いに挑むのは無謀だよ」

 

「旧日本軍の幹部と君の提督を一緒にしない方がいい。吉村海将からは、過去とは違うとはいえ1940年代だから価値観は違う。気を付けろ。と言われたけど、そうでもなかった。寧ろ、軍の中に合理的な作戦を立てる人が上司でホッとしたわ」

 

 優子は言ったが、実は旧日本軍は「非合理な軍隊」という印象があるのは事実である。忖度された戦果報告から無謀な作戦を決行したり、弱気な指揮官が参謀に心理的依存してしまったりなどがあった。ただ、これらは他国でも似たり寄ったりの所はある

 

「今の提督でなかったら、あなた達はとっくに海の藻屑よ」

 

「分かっている。でも、時々思うんだ。それって運が良かっただけじゃないかって。狂犬病に罹って奇跡的に治ったけど、何時まで運が続くか分からない」

 

 実は時雨が懸念している事だ。前回も、そして今回も奇跡的に生きながらえているのだろう。狂犬病だって柳田教授曰く、発症したら致死率ほぼ100%だ。明石達も言っているが、一歩間違えれば時雨は死んでいた

 

「時雨、自分の運と仲間を信じるしかない。時雨を含めて6人は現代兵器は持ってきているし、無能な上官ではない。勝つ可能性が低くてもゼロではない。そこだけは勘違いしないで」

 

「勝ち目はあるの?」

 

「そうね。私の父が核爆発に耐えるシステムが分かれば確実に倒せる」

 

 優子はそう言ったが、正直な所、うまく行くかは分からない。精神論に近いが、実は精神論は時と場合には必要ではある。人間は絶望してしまうと死んでしまうからである。根拠ないポジティブも時には大切だからである*2

 

「そうだね……そうだよね」

 

 時雨は頷いた。まだ、こちらに手がないわけではない

 

 

 

「時雨、どうかしました?」

 

「あ、ごめん。何でもない」

 

 突然、声をかけられて時雨は我に返った。大和が心配そうに見ていたが、それもそのはず。時雨が上の空だったからだ

 

 ふとみると、見慣れない姿をした艦載機が大和の艤装の飛行甲板に着陸していた。いや、正確には一周目で見たことがある

 

「これはF35Bという奴です。3機しかないため虎の子なんですけどね」

 

「大和、それは大切にね。何故ならexpensive(高価)だから」

 

 アイオワは念を押したが、実際はそんなものではない。F-35Bがなぜ付いて来たのか不明だが、少なくとも瑞雲よりかは使い勝手がいいので大和は運用するのを考えていた

 

 しかしアイオワにとっては、それは驚愕すべき代物だ。F-35Bは知ってはいたものの、飛んだ姿は見たことない。なので、柳田優子2尉から説明を受けたが、当の本人もビックリするほどの能力だ。F-35BはF-14のような超音速は出せないものの、対地攻撃能力や電子装備の充実度は比較にならず、空戦も問題ない

 

 また、ステルス性能に加えて垂直離着陸機でもあるため、僅かな距離なら離陸することは出来る。ミサイルの搭載する量に制限はあるものの、21世紀の戦争ではないため大丈夫だろう

 

 問題はバックアップが無いことだ。運用に大量の資源を食うのは勿論だが、これを生産する能力はない。そのため、全機撃ち落とされたら二度と手に入らない。しかも、普通の深海棲艦なら兎も角、浦田結衣が相手だとレーザー兵器で撃墜される危険性もある

 

「あのステルス戦闘機は結衣にコッソリと近づいてミサイルを放つしかないね」

 

「HAHAHa! 時雨もジョークが言えるようになったね」

 

 時雨は指摘したが、聞いていたアイオワは笑った。武蔵も大和もぽかんとしていたが、近くにいたイントレピッドは補足説明した

 

stealth(ステルス)の意味は『こっそりする』『忍び寄る』よ。だからアイオワは笑ったの」

 

 イントレピッドは呆れるように言ったが、大和と武蔵は納得し、時雨も唖然とした

 

 要は時雨はジョークを言っていたらしい。これが面白いかどうかは兎も角、いつ敵がくるか怯える中で和む光景は早々ない。時雨もニヤリとした

 

 時雨自身も新たなレーダーやソナーや電子戦の装備があると同時に対艦ミサイルも装着していた当たれば敵に大打撃を与えられるだろう。当たればの話だが

 

 CIWSもあるが、これは一周目の世界ではあったため使いこなすのは問題無かった

 

 

 

 尚、大和武蔵だけでなくアイオワの対艦ミサイルは徹甲仕様で砲弾も全て徹甲弾を積む事になっている。ニューヨーク防衛戦で頑丈というのは分かっているため、貫通仕様にしたのだ。結衣の随伴というか雑魚は他の艦娘の仕事になるらしい。結衣が単艦でここに来ることは無いだろう。狂ってはいるが、バカではない

 

 急ピッチとはいえ、演習は問題ない。後は本番だが、こればかりは仕方ない。ガリバルディは弾道ミサイルを撃ちたかったが、提督が禁止をした。あれは切り札であるため、早々と撃たせなかった

 

 時雨もその場にいた艦娘も演習を終えようとしたその時、館内放送から警報音が鳴り響いた

 

「て、敵?」

 

HARRY UP(急いで)!」

 

 時雨が驚き、大和武蔵やアイオワも動き出した。敵が来たなら叩くだけ

 

 皆が慌てて敵を探していると、港付近で人が集まっている。502部隊もいる

 

「隊長、あきつ丸さん、何が?」

 

「あれよ」

 

 あきつ丸の変わりに神州丸が指を指した。港の近くには深海棲艦の軍団がいた。戦艦ル級改、空母ヲ級flagship、最近になって面倒な重巡ネ級改など厄介なものばかりだが、何故か攻撃はしてこない。戦艦コロラドと戦艦レ級が睨みあっているが、双方とも砲は向けているものの攻撃しない。皆が警戒している中、1人と大きな獣が軍団をかき分けながらこちらにやって来た

 

「戦艦水鬼改だ……」

 

 騒ぎに駆けつけた白露は青くなった。まさかボスがここに来るとは思いもしなかった

 

 戦艦水鬼改は怪物艤装に待ての仕草をさせると、武器を向けられても無視して口を開いた

 

「提督ハドコダ?」

 

「ああ、ここだ」

 

 戦艦水鬼改の返事に答えるよう提督が言った。神通や大淀が止めようとするが、提督は大丈夫と言って近づいた

 

「どうやって来た? ここの近海は対深海棲艦用の機雷を設置したんだが」

 

「アア、アンナノハ障害物競走ト変ワラナイ。普通ノ船ナラ兎モ角、私達ナラスリ抜ケラレル所カ、解体出来ル」

 

 戦艦水鬼改は指を鳴らすと怪物艤装の口から何かを大量に吐き出した。粘液に混じって黒と銀色の塊が混じっていた。よくみると、機雷の残骸だ

 

「食ったのかよ!」

 

「何? 食ッテハイケナイノカ? 機雷トイウノハ、コウイウモノダ」

 

 戦艦水鬼改は何処から持ってきたのか、触手が生えた黒光りの丸いものを付き出した。ウネウネと動いており、度々目撃されている。タコにも似ているため、誤って漁師が釣り上げようとしたら、漁船が木っ端微塵に吹き飛ばしたという被害もある。安全海域で漁をしているにも係わらずである

 

 尚、何故かZ3マックスが悲鳴をあげていたが、あれは仕方ないかもしれない*3

 

「何しに来た、お前!」

 

「殺気立ツナ。ソレニ、ソンナ玩具ハ仕舞エ。新シクナッタカラト言ッテ勝テルト思ッテイルノカ? ココニ来ル途中、変ナ軍艦カラ攻撃ヲ受ケタガ、無視シタ。交渉スルタメダ」

 

 武蔵が46cm主砲を向けたが、戦艦水鬼改は呆れているのかため息をついた。しかし、時雨は今の話を聞いて眉を潜めた。軍艦から攻撃を受けたってどう言うことだ? 

 

 後で聞いた話によると、大本営は応援としてこちらに部隊を送ったらしい。その内、海軍の駆逐艦2隻『あいづ』と『あこう』がこちらに向かっているとのことだ。その駆逐艦は浦田重工業から鹵獲したもので、何とイージス艦らしい。ただ、駆逐艦は呉に向かう途中で航行している戦艦水鬼改を見つけると対艦ミサイルと76mm速射砲で応戦したが、戦艦水鬼改は撃たれながらも無視して航行。潜航したため対潜ミサイルや短魚雷をお見舞いしたが、命中はするも撃沈するどころか傷一つつけられなかったらしい。対深海棲艦の兵器に耐性を持ったのか、または姫級の特有の能力なのか? 全く不明である

 

「落ち着け、武蔵。湾内の警備の甘さを伝えに来たなら忠告ありがとう。今は忙しいから、話が無いなら帰ってくれ」

 

「良イノカ? 敵ヲ倒セル話ヲ持ッテキタノニ?」

 

 帰るよう促した提督に戦艦水鬼改はニヤリとしながら答えた。ざわめく艦娘と502部隊は水を打ったように静かになった

 

「望みは何だ?」

 

「話ガ早クテ助カル。コノ国ニモ交渉シヨウトスル輩ガイテ。取引シナイ?」

 

 戦艦水鬼改はニヤリとした。向こうが持ち出した話だ

 

「良いだろう。中に入れろ」

 

「提督、だめです」

 

 大淀が抗議したが、提督は耳打ちするように小声で言っていた

 

「良いか。妙な真似をしたら殺れ。今は攻撃をするな」

 

 提督の近くにいたため時雨は聞こえた。ただ、戦艦水鬼改は大人しく従っていた

 

 いまのところは大人しくしているらしい。ただ戦艦レ級はコロラドに向かってアカンベし、戦艦コロラドは顔を真っ赤にして砲を動かし今にも攻撃しようとしていた。ビスマルクとリシュリューが必死になって抑えていたが。戦艦レ級は手強い相手であるため、艦娘にとっては厄介な存在であることには変わりない

 

 

 

 会議室

 

「敵を招き入れたのは始めてだな」

 

 提督は頭を悩ませていた。こればかりは始めてかも知れない。深海棲艦は他国の軍隊ではないため、交渉は格段に難しい。実際に深海教と呼ばれる保護団体がいたが、深海棲艦と接触しようとして船を出したが、全て行方不明になっている

 

 当たり前だが、相手はクジラやイルカなどの野生動物ではないのだ。深海棲艦から見れば、自分たちの縄張りに入ってくる侵入者としか見ていないだろう

 

 戦艦水鬼改と一緒にいた駆逐古姫も椅子に座っていた。その周りには艦娘がいた。戦艦や重巡軽巡、駆逐艦娘がいた。時雨もその場にいる。流石にお茶は出さなかった

 

「それで話というのは何だ? アイツは強いし、君達でも戦えないだろ?」

 

 提督は話を切り出した。浦田結衣と戦艦水鬼改がハウニブの邪魔が入るまでは幾度と戦ったらしい

 

「慌テルナ。確カニ奴ハ強イ。変ナ航空機ガ邪魔シナケレバ仕留メラレタ」

 

 戦艦水鬼改がワシントンやアトランタを睨むように言った。変な航空機というのは円盤型戦闘機であるハウニブのことを指しているのだろう。仕留められたかどうかは不明だが

 

「だが失敗した。アメリカは南米と。ロシアと欧州連合と戦争をしている。浦田重工業の仕業だろうが、大半の原因は手を取り合わない人類だ。浦田結衣に勝っていたなら歴史に残る壮大な物語が出来ていたが、勝ったのは浦田結衣と浦田残党だ」

 

「オ前達ノ国ヤ世界ハ興味ナイ。シカシ、奴ハ別ダ。我等ノ領域ヲ土足デ踏ミ込ミ、部下ヲテレパシーデ操ッタ。シカシ、奴ノテレパシーヲ無効ニサセテヤル」

 

 戦艦水鬼改の言葉に皆は顔を見合わせた。テレパシーを無効にする? これが本当なら浦田結衣を随伴する駆逐ナ級などの厄介な壁は取り除ける! 

 

「本当に出来るのか? ハッタリではない証拠は?」

 

「アア。アノ女カラハ強力ナテレパシーヲ感ジタガ、トテモ特徴的ダ。機械ト深海棲艦ノハイブリットノヨウナ物ダ。奴ハアレヲ取リ込ンダ」

 

「奴? 誰のことだ?」

 

「我ヲ作ッタ者ダ。ロボットト呼バレル存在ダ。詳シイ事ハオ前デハ無理ダガ」

 

 戦艦水鬼改は嘲笑うように言った。どうやら、何らかの知っているようだが

 

 だが、提督は何の話か分かっているようだった。というより、艦娘達は分かっていた

 

「リリの事だろ? 知っている」

 

「ン? ドウイウ事ダ? 何故、知ッテイル?」

 

 戦艦水鬼改が不審そうに言ったが、提督は答えなかった。その代わり誰かが入ってきた。入ってきたのは博士と柳田親子だ

 

 柳田教授は右手を挙げて手を軽く振った

 

「やあ、覚えている?」

 

「オ、オマエ! 何故、ココニ!」

 

 戦艦水鬼改は驚きを隠せず、立ち上がって詰めよったが、誰かが割り込んできた

 

「大人しくするんじゃなかったの?」

 

「オ前……ヤッパリ、アノ時ノ小娘カ!」

 

「記憶が回復したのは最近。道理で私が集中砲火を受けるか分かったから!」

 

「言イ訳無用!」

 

 戦艦水鬼改と陸奥が取っ組み合いになりそうな所を長門と駆逐古姫が抑えていた

 

「陸奥、落ち着け!」

 

「昔ノ事ヲ持チ出スナ。オ前ラシク無イゾ」

 

 しかし、こんないがみ合いが発端に会議室は騒がしくなった

 

「話し合いは無理そうだ。優子、落ち着くまで別室に居よう」

 

「そんな事を言っている場合? それに、これがあの時の戦艦棲姫? 大きくなってない?」

 

 優子も知っているらしく拳銃を構えながら困惑していた

 

「テレパシー無効もウソだな!」

 

「待テ! コレハ本当ダ!」

 

「なら、何故使わなかった!?」

 

「人間トオ前達艦娘ニ邪魔サレタカラダ!」

 

 たちまち言い争いになり、既に一発触発状態になった。ただ、軍隊の交渉は、たいてい最後は暴力になるため難しいものである

 

「提督、どうにかしないと」

 

 時雨は呆れたように座っている提督に駆け寄り抑えるよう言った。このままだと会議室どころか、鎮守府が崩壊してしまう

 

「はぁ……予想はしていたが」

 

 提督はやれやれといい、いがみ合っている集団に聞こえるように大声で言った

 

「浦田結衣と浦田残党は嫌いか?」

 

「「「「「嫌いだ!」」」」」

 

 艦娘や502部隊の隊長だけでなく、深海棲艦の戦艦水鬼改も応えた

 

「意見は一致したな。それを『連合軍』と呼ぶ。戦いなら後でも出来るが、今手を結べば全員に利がある」

 

 提督の説明にいがみ合いは収まった

 

「こんな未来は見たか?」

 

「いや、無い」

 

 提督の質問に時雨は答えた。この光景は見ていない。多分……

 

「なら、作戦を伝えるぞ。一旦は休戦だ。殺し合いもダメだ。分かったな」

 

 陸奥と戦艦水鬼改がにらみ合いの間に割り込んだ

 

 両者は睨み合っていたが、双方とも目を反らした

 

「分かったって事でいいな。取り敢えず、浦田結衣を倒すまでは休戦と協力だ。時間が無い。数時間前に哨戒機が複数の航跡を捉え日本に向かっていると知らされた。イージス駆逐艦『あいづ』に接触するかも知らないと連絡があったが、今の話を聞くと戦艦水鬼改で間違いない」

 

 これを聞いて時雨はハッとした

 

 他の航跡は間違いなく浦田結衣の軍団だ! 

 

「何処へ向かっているの?」

 

 時雨はすぐに質問した。何処へ向かっているのか知りたがったが、予想外の答えが帰ってきた

 

「真っ直ぐ東京湾に向かっている。随伴艦を引き連れて。目的がどうあれ、こちらの戦力を分断させる気だ。世界各国の王族と柳田教授の身柄引き渡し要求をしている理由は不明だが、少なくとも良いことではない」

 

 提督の説明に時雨は困惑した

 

 東京湾に向かっている? 

 

*1
これはSF小説「戦国自衛隊」の事を指す

*2
「精神論は意味がない」と言われがちだが、生きるか死ぬかの状態では精神論が重要になる。大怪我や遭難をしている人に「大したことがない!」「すぐに助けてもらえる!」などと声を掛け合うのはそこからきている。ただ精神力依存や過度に重視するのは別問題である

*3
深海忌雷ネタ。駆逐艦Z3は機雷に接触し轟沈した。尚、マックスが忌雷による被害を受けるのは何故か水着姿(中破)である




性能

時雨改二丙
・68式50口径3in連装速射砲
・62口径76mm単装速射砲
・90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)4連装発射筒 × 2基
・Mk.48 Mod4 VLS (短SAM) × 16セル
・Mk.41 Mod6 VLS (SUM) × 16セル
・HOS-302 3連装短魚雷発射管 × 2基
・533mm連装魚雷発射管
戦後改修『IF』の姿。従来の大改装ではないため改二丙としている。恐らく護衛艦『わかば』を習っているだろうと柳田優子はみているが、兵装からして最低でも1990年代のものだろうと推測している
前回と違ってミサイル戦を行うことが出来るだけでなく、電子戦や対潜が飛躍的に向上。排水量も大きいのか艤装も軽巡に近い
対潜ヘリ甲板はあるものの、格納庫はないためか艦載機はない模様
モデルは護衛艦『わかば』とむらさめ型護衛艦を足して2で割った感じ

大和改二丙・武蔵改二丙
・46cm主砲+FCS4 9門
・SPY-6アクティブ・フェーズド・アレイ
・RIM-161スタンダードSM3(但しイージス艦ではないため数は少ない)
・ガスタービンエンジン(COGAG方式)
・BGM-109トマホーク
・90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)
・艦載機(F-35B3機)
・高性能機関砲CIWS
など

概要
大和武蔵の『IF』姿の戦後改修。これも従来の大改装ではないため改二丙としている
簡単に言えば戦後改装したアイオワよりも発展した感じである
モデルは架空戦記『征途』の超大型護衛艦(BB-11)より


兵器概要はこんな感じです
尚、大改装に使った石のパワーは50%であるため、この後の大改修はある……かも……?
『デビル』である不明戦艦の浦田結衣を倒せるかどうかは不明

それではまたお会いしましょう
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