敵が現れた。タイミングからして、結衣本人だろう
イントレピッドの早期警戒機E-2Cからリアルタイムで情報が来ているが、レーダーで捉えた情報に驚いた
「敵出現! 数は……6?」
時雨はレーダーで敵を確認したが、数に驚いた。増えている?
レーダーの故障かと思ったが、他の艦娘にも捕らえているのでその線はあり得ない
「戦艦ル級改flagshipです! 6体います!」
雪風は双眼鏡を覗きながら答えていた。となると、電子機器のせいではない
時雨も確認したが、確かに戦艦ル級改flagshipが仲良く並んでこちらに向けて航行している
敵は砲撃をしながら来ているため戦艦水鬼改の傘下ではない。射程圏外であるため、問題はないが威力は侮れない
「何か様子がおかしい」
時雨は戦艦ル級改flagshipの動きに違和感を覚えた。普段から遭遇する確率は高くはないが、それでも敵の砲撃や防御力を忘れることはない。しかも、動きが全く同じだ。身体の動きから砲撃のタイミングまで。こんなことは今までない。操られているにしては可笑しすぎる
「敵が現れたが、戦艦ル級改flagshipが6体いる! しかも、不気味だ。どうする?」
長門が指示を仰いだ。こんな事は今までないからだ。罠であることには間違いないが、敵の目的が分からない
『ハイテク兵器は使わずに距離を取りながら砲撃するんだ。イントレピッド、例の艦載機を使うんだ』
提督の無線指示で艦娘は一斉に動き出した。大和武蔵だけでなく他の戦艦娘は最大射程距離で反撃した。敵は動いているため、命中率は望めないが、牽制にはなる
『アノ戦艦ル級改flagship……マルデ人形ミタイダ。シカシ、作リハ完璧。敵ノ狙イハ不明』
無線で戦艦水鬼改が呟いていたが、誰も気にはしていなかった。敵の目的は不明だが、阻止しないといけない。狙いは呉鎮守府か艦娘である。敵の目的はそれだけだろう
そんな中、イントレピッドはある艦載機を発艦させようとしていた
「アイオワから聞いていたけど、
イントレピッドの合図で矢じり型のジェット戦闘機……F-14Dが飛び立った。4機しかいないが、それでも頼もしい戦闘機である
浦田重工業が並行世界からイランにあったF-14を奪ったが、提督とイントレピッドは戦後改修の際にF-14の残骸から作り上げたのだ
皮肉にもこの世界ではF-14が米艦娘……正確には戦後改修であるイントレピッドだが……の艦載機として戻ってきたのだ。アメリカ海軍のマークに加えて2機1組で独特の塗装を施したものだ。1組には真っ黒に塗装した垂直尾翼にドクロと二本の骨がクロスしたイラストをした機体*1。もう1組には垂直尾翼に旭日旗を塗装した機体だ*2
ジョリーロジャースとサンダウナーズをモデルにしたらしくイントレピッドと搭乗妖精は丸1日かけて丁寧に塗装したらしい
イントレピッドから飛び立った4機のF-14はアフターバーナーを吹かして高度を上げた。周りにいた2,3人の艦娘は轟音とショックウェーブで悲鳴を上げたが、ほとんどは歓声を上げていた
現代兵器が味方のものになったのだ。敵にダメージを与えるかもしれない
F-14は急上昇して高度をとると現場に急行。6体の戦艦ル級改flagshipの上空に到達するとJDAMを投下した。誘導爆弾であるため6体全て命中した。爆発が起こったが、爆炎が収まると6体の戦艦ル級改flagshipはダメージを負っているものの平然と航行していた
『もう一度! 隠れていないで出て来なさい!』
イントレピッドは再度攻撃するようF-14に命じた。4機のF-14は反転して再びJDAMを多数投下。爆風が時雨達に襲い、皆は手で覆ったりして身を守っていたが、大和達の戦艦娘は平然としている
爆風なんてどうって事は無いのだろう
その時だ。爆煙から4つの赤い光線が空に向かって発射しているのが見えた。明らかにF-14を狙っているが、照準が甘いのか、それとも高速で飛行するF-14を捉えられていないのか分からないが、F-14は辛うじて避ける事に成功した
『敵が1つになった!』
イントレピッドの報告に皆は攻撃準備をした。目標はキルゾーンまで誘導する事だ。そこは呉鎮守府の近海で53cm主砲の射程圏内だが、敵に怪しまれずに誘導するのは至難の技だ
爆煙が収まると『デビル』となった結衣が現れた。モンタナ級をモデルにしているが、相変わらず艤装は大きく、色も黒い
「他の戦艦ル級改flagshipは?」
時雨は疑問に思った。残り5体は撃沈したのか? それにしては呆気ないが、今は気にしている場合ではないし、他の艦娘も疑問なんて微塵も感じていないだろう
「よし、射て!」
長門達はキルゾーンに向かいながら撃ち込んでいたが、結衣は攻撃を受けてもびくともしない。時雨は艦対艦ミサイルであるSSM-1を撃ち込んだが、着弾しても効果がないように見えた
徹甲仕様でもないとはいえ、無傷それほど頑丈なのか? F-14が高速で飛行しながらミサイルを発射したが、効果はかわりない
しかし、敵はこちらには向かず呉鎮守府の方向に向けている
「不味い! 鎮守府を狙っている!」
時雨は叫んだ。敵の53cm主砲の射程は不明だが、届かない距離のはずだ。ミサイルを発射するのはアーセナルシップ型に変形してから発射するはずだ。とするならアイツがやる事はレーザー兵器による遠距離攻撃だ。レーザー光線は銃弾や砲弾と違って重力や風による影響は受けない*3。大気減衰や気象条件さえクリアすれば照射でき、こちらには防ぐ手段が無い
「結衣が呉鎮守府を狙っている! レーザー兵器で攻撃するつもりだ!」
時雨は単装速射砲を撃ちながら、無線で警告をした。時雨の艤装は近未来に装備しているため、コンピューターのお陰で比較的楽に攻撃は出来る。普通の深海棲艦なら楽に倒せるだろう
しかし、相手はそれで倒せるものではない。近代化した兵器では悪魔を倒せない。主砲弾は兎も角、魚雷やミサイルが全弾命中してもケロリとしている。もし、敵の防御法見破られなければこちらは終わりだ
そうしている内に敵はレーザー光線を遠くの呉鎮守府に向けて発射していった
赤い光線が呉鎮守府に向かったが、その光線は呉鎮守府直前で何かに阻むかのようにレーザー光線は止まっていた
「チッ!」
結衣が大きく舌打ちしたのを見て、攻撃は失敗したと判断したらしい。敵は遠距離攻撃は無駄だと悟ったらしく、ミサイル攻撃もせず真っ直ぐ呉鎮守府に向かっていた。速度はそんなに速くないが、皆は呉鎮守府侵攻に止めようと必死に、そして確実に誘導しながら攻撃していった
「こっちだ! こっちに来い!」
時雨は対艦ミサイルを2発だけ残して対艦ミサイルを撃ち尽くすと後は魚雷と速射砲を射ちながら結衣に挑発していった
大和武蔵も時雨と同じく主砲を撃ち、他の艦娘も同様だった。結衣の残忍さは既に知られているので、距離を取りつつ砲撃に徹していた。空もF-14だけでなく、天山や流星改などの艦載機も狂ったかのように飛行して攻撃していく。F4UもA-1スカイレーダーも爆弾やロケット弾を撃ち込みながら結衣に向けて攻撃していく
しかし、敵に効果はない。爆炎で結衣が見えなくなるほどの飽和攻撃で仕掛けたのに、爆炎が収まると小破すらしていない敵の姿だった。戦艦大和武蔵ならとっくに沈んでいるだろう攻撃なのに、敵は何ともない。逆に敵は丁寧にレーザー兵器で確実に仕留めていく。敵は53cm主砲よりもレーザー兵器で攻撃しているらしい
敵はレーザー兵器を発射する直前に狙われている艦娘は、慌てて逃げているのを見てレーザー警報装置は正常に作動しているのだろう
しかし、光の早さは回避する方法はない。諸にレーザー光線を受け艤装に格納していた弾薬や油に引火して大破する艦娘もいる。稀に照準用のレーザーが艦娘の目に入り目の不調を訴えるものもいた
わざと狙ったかもしれないが……
扶桑山城は高出力レーザーで呆気なく大破されて数人の重巡軽巡は大破されていた
「全然効果ないっぽい!」
「諦めちゃダメ! 攻撃を緩まないで!」
魚雷を撃ち尽くした夕立は見えない恐怖で叫んだが、時雨は落ち着かせようとして夕立を止めた。本当は恐怖で逃げ出したいのだろう
既に数人は敵の動きを止めようと接近したが、逆に殴り飛ばされ海上で身動きが取れなくなった艦娘もいる
ガングートはソ連崩壊の報復だ! と叫んで殴り込んだが、敵は鼻で笑いながら拳を簡単に受け止めると、そのまま殴り飛ばされ大破してしまった
『もう艦載機が無い! 二航戦は離脱します!』
飛龍は悲痛な叫びを挙げた。レーザー兵器で艦戦も含めて全機撃ち落とされたらしい。いや、既に上空では大半はレーザー兵器によって撃墜されていた。超音速で飛び回るF-14は兎も角、レシプロ機では歯が立たなかった。そのF-14もミサイル爆弾を使い果たしても20mmバルカン砲で攻撃する始末だ。このままだとニューヨーク防衛戦の二の舞だ
不意にレーザー警報装置がけたたましく鳴り響いた
結衣が時雨を狙っている! 時雨は直ぐに煙幕を撒いて逃げたが、次の瞬間、強烈な衝撃が時雨を襲った。敵は接近すると時雨を殴り飛ばしたのだ
「あああぁぁぁ!」
何が起こったのか理解するのに数秒要したが、宙を舞った時雨は痛みよりも地面との衝突を恐れた。戦艦コロラドを遠くへ殴り飛ばしたのは本当だった
しかし、飛ばされた時雨に誰かが時雨の手を取り空中で受け止めた者がいた
右腕がもぎ取られるかと思ったが、空中で停止した
見上げるとSH-60ヘリと時雨の手を掴んでいるターズが視界に映った
『ご無事でした?』
「あ、ありがとう」
どうやら、優子2尉が操縦しているSH-60に拾われたようだ。ターズが身を乗り出して殴り飛ばし宙に舞った時雨をキャッチしたらしい
『大丈夫? 殴り飛ばされるなんて』
「平気だよ! それよりも下ろして!」
時雨は叫ぶとSH-60は降下していった。ヘリの爆音は時雨は気にもしなかった。一周目で何回も聞いた音だからだ
呉鎮守府で待機していた艦娘や提督は安堵した。レーザー兵器を防ぐ装置があるからである
「本当に防げるとは」
「それでも強力だ。時雨の警告が無かったら建物半分は熱線でやられていた。……まさか長谷川の知識が役に立つ日が来るとは」
提督は安堵したが、柳田教授はそうは思っていない。それは自然界で生じる光の屈折現象の一種となる大気光学現象をレーザーを使って人工的に誘発して、大気の乱れを生じさせることで大気中内でのレーザーが進むことを乱す手段を使ってレーザー兵器を防御したからである
柳田教授がいた空間から持ち込んだものはガラクタだが、元は高度な機械技術であるため作れたのだ
しかし、これで本当に防げるとは本人も思っていなかったらしい*4
「なぜ、レーザー防御手段を知っておるのに自信がないんじゃ?」
「いや……これは……ウーン」
博士から指摘されたが、柳田教授は迷っていた。というのも、このレーザー防御手段はオカルトやSFにはまっている友人の長谷川からヒントを得て作ったものだ。元は海外の軍事ものの動画かららしい
(レーザーバリアなんてあいつらしい考えだ)
柳田教授は心の中で呟きながらも、ポケットにある容器に手を触っていた
それは自殺用である。何かあったら柳田教授は飲むつもりだ。毒もただの毒ではなく、VXガスである
デザイナーベイビーで生まれた本人だからこそ作ったものだからだ。奇遇にもアイオワに頼まれたが、余ったものは渡した。流石に悪用はしないだろう。尤も、G元素とリリの力で極限まで進化してしまった結衣に効くとは思えないが
一方、呉鎮守府の周りでは不穏な動きがあった
「敵のお出ましだ」
曹長は双眼鏡を覗きながら呟いた。神州丸も見た。町のあちこちから武装した集団が現れこちらに向かっているのを
神州丸もあきつ丸も銃を構えた。敵が何をしているか分かる。陸と海からの攻撃だ
何処までやれるか不明だが、陸からの攻撃を防がなくてはならない
武蔵「戦艦になるためには弾を当てる必要がある。砲弾は銃弾と違って貴重で量産するのは難しい。そのため計算してから撃つ必要がある。敵との距離は勿論、移動速度、温度、湿度、地球の自転まで計算して更に――」
清霜「え?何言ってるの、この人(目眩)?」
大和「流石に無理があるのでは?」
清霜「時雨は分かるの?」
時雨「え?う、うん……今は」←コンピュータ制御による射撃管制実装中
レーザー兵器が実用化し発展したらチートになるのは必須ですね……