呉鎮守府
「おい! 柳田教授は変な気を起こしていないだろうな!」
「大丈夫じゃ。気が動転しておるが、心配ないじゃろう」
提督は通信室から出てきた父親である博士に問い詰めたが、彼は問題ないと言っていた。当の本人は黙ったままだ。そうしている内に撤退して逃げる艦娘が増えていた。主に駆逐艦娘や軽巡だが、その中にターズが混じっていた。柳田優子を抱えたまま泳いだらしい
『命に別条は無いが、ヘリは失った』
「ヘリはどうでもいい。無事で良かった」
柳田教授は胸を撫で下ろした。ターズが教授の娘の命を救ってくれたらしい
一方、提督は報告を聞いたが、全て最悪だ
「提督、負傷者が多すぎて収容は困難です。入渠での回復も間に合いません」
「全員、地下へ送れ。兎に角、今は砲弾とミサイルから身を守る事だけを考えてくれ」
「分かりました」
大淀は負傷者数が多いことを報告し提督は指示を出したが、彼の命令はほぼやけくそになっていた。それを聞いた柳田教授は反応した
「ちょっと待て。次の手は何だ?」
「次の手とは?」
柳田教授は質問したが、まさかの質問で返された事に苛立ちを隠せずにいた
「失敗した時用のバックアッププランがあるじゃないのか? それか極秘に開発した超兵器とか」
「いや、もうない。全て出した」
まさかの返事に柳田教授は愕然とした
「ない? 噓だろ?」
「本当だ。タイムマシンも間に合わないし、仮に間に合ったとしても奴の未来予測で破壊されるか、先回りされて時間をさかのぼりタイムスリップした艦娘が殺されるだけだ」
提督はハッキリと答えた。手に負えない事だろう
「敵が何らかの形で核爆発を防ぐ手段を解明出来たら、倒す方法を見つけるつもりだったが、防いだ方法が深海棲艦の能力ではなくエネルギーシールドとかいう代物だ。弱点も分からない以上、どうしようもない」
「確かに予想外だが」
提督の説明に柳田教授は頭を悩ませた。あれの弱点は分からない
「本当にないのか? だって、この世界を見てきたが、あんたたちの軍隊はZ兵器を完成させただろう? 誤魔化さなくていい。登戸研究所が研究している殺人光線の事だ。他にもニセ札や秘密インクや毒ガスも研究している。それだけじゃない。統帥権を盾に独断で指揮を取るのは十八番じゃないのか?」
「浦田重工業は崩壊するまでそのネタと大金で政府や軍の弱みを握って簡単に逆らえないようにしたのじゃ。崩壊し復興が終わった途端、政治家はよく分からない事を制作し、報道もデモ隊も自由を盾に自分勝手に主張するだけじゃ」
柳田教授は学生時代で習った歴史を覚えている限り述べたが、今度は博士が説明をした。かつては中将から大佐に降格された身であったから詳しく知っているからである
「そんな事より浦田結衣を真に受けるなよ。娘さんも泣くぞ?」
「そこまでバカではない。だが、奴は蘇らせると言った。リリの能力と融合している以上……何らかの形で出来るのかもな」
「あんたが毒ガスで自決しても何らかの形で利用される……とでも?」
提督は柳田教授が万が一のために自決するためにVXガスである毒ガスを持っているのを知っていた。明石から聞いたのだ。余ったのをアイオワに渡したからである
「万が一に作っておいた。しかし、僕が死んでも脳だけ取り出して水槽に入れて生かされるだけにする可能性もある」
「何だ、それ?」
「……いや、いい。忘れてくれ」
提督は怪訝そうな顔をしたが、柳田は違った
(『水槽の脳*1』は仮説にすぎないが、奴なら本当にやりかねない)
浦田結衣にとってこちらが生きようが死のうがどっちでもいいらしい。そう思う根拠は、敵の脅迫が余りにも薄いからだ。柳田の力が欲しいのなら、全力で取り込むはず
それをしないとなると、単なる遊びか生死関係なく捕まえるか
後者なら大問題だ
一方、提督は現状を整理していた
(浦田結衣も浦田重工業も平行世界の概念はある。この世界を支配したら、別世界の支配を望み侵略するかもしれない)
提督は最悪の出来事を思い浮かべていた。柳田教授の世界や田村1尉の世界は未来世界だが、それをもってしても倒せないだろう
「結局は倒せなかった。時雨が身を犠牲にしてまでタイムスリップ作戦で敵に勝った。しかし、それは先伸ばされただけ。それもたった五年」
提督は静かに言った。旧史では枢軸国と連合国に分かれ第二次世界大戦が行われていた。しかし、この世界では米露など九か国の国連軍は敗れ、世論により艦娘は排他的気味。それでも準備は備えていたが、結局は止められなかった。柳田教授が用意してくれた赤い石も失敗に終わったという。大和が破裂して意識不明の重体。時雨が持っていたものは夕立が止めさせ捨てさせたらしい。武蔵は打たなかったとか
しかし、提督は彼女たちを非難しなかった。許可したのは自分だから
「未来は変えたが、運命は変えられなかったという訳か」
提督は瑞鶴が包帯に巻かれたまま無理やり出撃しようとして明石に止められたり、睦月が隅で小刻みに震えているのを夕張が慰めたりしている光景を目にした
ここもミサイルで爆撃されるだろう。502部隊は、武田副社長を率いる軍勢を追い詰めるために進軍したが、それすらも計算の内かもしれない
「もうお手上げだよ」
提督は呟いた。これから先は地獄を見る事になるだろう
戦闘海域
時雨と武蔵は敵を睨んだ。浦田結衣が反撃……いや、攻勢を仕掛けてくる。アイオワからモンタナ級戦艦のスペックは聞いたが、今は何の役にも立たない事くらい嫌でも分かる
「悪魔狩りと行こうか!」
武蔵は先制攻撃のため51cm連装砲と46cm主砲+FCS4の砲塔を全て結衣の方へ向けると砲撃した。鼓膜が破れると思うくらいの砲撃音がし、砲弾は物凄くスピードで結衣へ向かった。レーダー射撃であるため、命中率は高い。しかし、『デビル』は無傷だ。砲弾は見えないシールドで阻まれ命中する前に爆発するだけだ
「ハハハ……こちらの番だ!」
浦田結衣は笑うと全ての砲塔を向けた。53cm主砲弾が飛翔し、砲弾は全て武蔵に命中した。が、武蔵の防御力は高く小破で済んだ
「そんな攻撃、蚊に刺されたものだ!」
武蔵は吠えた。実際に武蔵は『艦だった頃の世界』では魚雷20~33本被雷、爆弾17~44発命中、至近弾20発以上と壮絶な攻撃を受けても九時間は浮いていられた
しかし、あの時は空母の艦載機による攻撃。相手は戦艦だ
浦田結衣はレーザー砲を向けると武蔵の砲塔に狙いを定めて照射した。砲塔の装甲は厚いが、融解し中にあった弾薬に引火し爆発した
「なっ! クソ!」
武蔵は驚いた。五年前も砲塔爆発によって戦闘不能にされたことがある。しかし、一門だけだ
「武蔵! Are you okay?」
「大丈夫だ! 一門だけだ!」
アイオワは支援砲撃しながらも武蔵に声をかけたが、武蔵は敵の方へ睨みながら答えた。そうだ。一門だけ潰された
その間も相手は攻撃を仕掛けてきたが、今度は違った事をしだした
「なに、あれ?」
時雨は驚いた。何かを飛ばしている? 結衣の艤装からコンテナらしきものが現れたと思ったら、コンテナが自動的に斜め上に上がり、中から小さな飛行物体を幾つも飛ばしている
その飛行物体は黒いが、形状からして深海棲艦のものではなく航空機の形をしている。それは素早くあっという間に時雨達の頭上に現れたと思うと爆弾とミサイルで攻撃しだした
「危ない!」
ミサイルが接近したため時雨は回避しながらCIWSで迎撃したが、数が多い。前回は
「レーダーに映らない……いや、映りづらい。なんだ、あれ!」
武蔵は驚愕した。敵が放った不明機はSPY-6アクティブ・フェーズド・アレイでも捕らえづらい。他の艦娘のレーダーには映っていない始末だ。対応が遅れ爆撃される始末である
「アイオワさん、あれを知っている!?」
「あれは……ステルス無人機」
時雨は対空ミサイルで迎撃しながらアイオワに聞いたが、アイオワの返事は信じられないものだ
ステルス無人機?
「ミーも聞いたことがある……ステルス無人機を開発している、と。でも、ミーは知らない」
アイオワは支離滅裂な事を言っていたが、それもそのはず。アイオワの知識はある年代で止まっているからだ
ステルス無人機はとても早く空母の艦載機を無視するどころか空母娘へ爆撃し中破大破させる始末だ。重巡も高速戦艦も幾度も爆撃を受けてしまった。先の戦いで痛い目にあったのに、今度は違う手段で攻撃を受けている
『SHIT! ホークアイがやられた!』
イントレピッドが無線で悲鳴を上げた。空中警戒機であるE2Cホークアイまで撃ち落とされたため、データリンクが使えなくなった
「戦艦が簡単に沈んでたまるか!」
長門はミサイルを諸に受けても小破であったため吠えたが、陸奥は違った
「違うわ! ワザと威力の低いミサイルを使っている!」
『何だ、気づいていたのか? 勝手に踊って大変だね』
陸奥の叫びに無線で結衣の声が入ってきた。時雨も皆も驚いた。以前と違って通信妨害すらしない!
「て、てめえ!」
「使ったのは初めてだよ。Q-58Aヴァルキリー*2の爆撃から逃げ惑え!」
結衣は今や無線を使わずに嘲笑っている。ステルス無人機? あんなものまであるのか? しかも、あれは固定翼機のはずだ。コンテナから射出していた。滑走路はいらないものなのか*3?
しかし、やらないといけない! ステルスはレーダーに全く引っかからないはずだ。時雨も武蔵も短SAMを全て使った。イントレピッドが使っているF-14などのジェット機以外は敵だ。赤城さんや加賀さんなどの艦載機は全て撃ち落とされている
艦対空ミサイルは一斉に飛び上がり大半は空振りに終わったものの、残りの半分は全て無人ステルス機に命中した。時雨は対空ミサイルだけでなく単装速射砲も使い無人機を撃墜した。イントレピッドも奮闘しジェット機を繰り出したが、対空戦闘として発艦させたF-8クルセイダーとA-4スカイホークは全機撃墜された。どうやら、対空戦闘も得意のようだ
「全機撃墜!」
「敵が来るっぽい! 艦載機なしでも戦えるっぽい!」
時雨は叫んだが、夕立は敵の動きを見て叫んだ。敵はステルス無人機なんてどうとでも思っている。全機撃墜しても気にもしない
「いいぞ、かかってこい!」
「ステイツの仇を取ってやる!」
「武蔵さん、アイオワさん、ダメ!」
時雨は止めようとしたが、武蔵は既に動いていた。アイオワも続き、16インチ砲を乱射している
互いは接近しそのまま激突した。激突したためか衝撃波が発生し、時雨達は顔を覆う羽目になった
武蔵とアイオワは主砲だけでなく拳を叩きこもうとしたが、敵は鎖で巻き付き動けなくしてしまった
「SHIT!」
「アイオワ……リリの能力で知ったよ。一周目の世界で邪魔したんだったな」
「っ!!」
アイオワは驚愕した。結衣はアイオワの事を知っている!? どうやって!
だが、そんな事を気にする暇もない。敵は53cm主砲を至近距離で発砲し叩き込んだ。本来の艦隊戦において戦艦が超至近距離で撃ちあう事はほとんどない。しかし、至近距離での攻撃はとても威力がある
「ぐぁ! て、てめえ!」
武蔵は悲痛な叫びを上げたが、その間も砲弾が飛んでくる。これだけの至近距離だから命中するのは必須だ。時雨達は何とか救助しようとしたが、近すぎて狙えない。時雨は単装速射砲で狙ったが、バリアで阻まれ、かすり傷すらつかなかった
「どうした? もう手は無いのか?」
「「舐めるな!」」
武蔵とアイオワは叫び砲撃した。こちらも近いので容易く命中させるはずだ。51cm主砲弾と46cm主砲弾が結衣を襲い大爆発が起こった
しかし、砲弾は結衣に命中する前にバリアに阻まれ空しく爆発するだけだ。柳田教授が言っていた通り、こっちの砲弾を通さないシールドだ。敵はニヤリとしている
そんな時、清霜を初め他の艦娘も接近した。武蔵とアイオワを助けるために突進している
「武蔵さんを放せ!」
「ダメだ、来るな!」
武蔵は叫んだが、既に遅かった。結衣は艤装を変形しアーセナルシップ型に変形するとミサイルは大量に発射した
数え切れないほどのハープーンミサイルは一斉に空を舞いあがり、各艦娘に襲った。空母、戦艦、巡洋艦、駆逐艦関係なくミサイルが襲い、海は閃光と爆発音で何が起こっているのか分からなかった
爆炎が収まるとほとんどの者は動けなかった。特に戦艦空母には一人当たり十発もの対艦ミサイルが食らわせたため中破大破がほとんどだった。武蔵、アイオワにも大量の対艦ミサイルが襲ったため大破。対艦ミサイルで戦艦を沈める事は難しいが、大量に襲われたら流石に大破してしまう。2人はそのまま倒れ込んでしまった。イントレピッドも被弾しF-14の補給作業をしていたジェット戦闘機を発艦出来なくなった
「くっ……食らった……」
時雨も被弾した。単装速射砲やCIWSを滅茶苦茶撃ちまくりチャフをばら撒いたが、全て回避するのは無理だった。対艦ミサイルを食らい中破。兵器システムのほとんどはダメになった
しかし、時雨はまだ幸運だろう。他の駆逐艦娘はほとんどが大破。近くにいた夕立も倒れ込んでいた
「ゆ、夕立!」
「仲間の心配をしている場合か!」
時雨が夕立に向かおうとしていると結衣は、鎖付きの銛をこちらに向けていた。時雨は単装速射砲で迎撃しようとしたが、その直前に時雨の前に立ち庇う者がいた
「時雨ちゃんは……やらせない!」
「陸奥さん!」
何と陸奥が立ちはだかったのだ。陸奥は最後の力を振り絞って庇ったのだ。だが、銛は陸奥の肩を貫通してしまい、敵はそのまま強引に引っ張り、あっという間に引き寄せられてしまった。一瞬だったため、時雨は加勢出来なかった。敵はまた戦艦の姿に戻っていた
「くっ! 長門でも馬鹿力は出ないわ!」
「ハハハ……時雨でなくて残念だ。それはそうと、冗談でも言えなくなるぞ、陸奥」
陸奥は捕まりながらも笑っていたが、その笑顔はこわばっていた。敵は遊んでいる。その隙に暗殺すれば勝機はある!
しかし、それは無駄な考えだと悟った。敵は辺りを見渡し、鎮守府から離れた場所にあるものを注視していた
陸奥が目を追っていくと、その先には石油精製所だ
「ダメだ! 止めて!」
時雨は結衣の考えている事に気づき、単装速射砲を放ったが、敵は陸奥どころか怒りに燃えて突進している長門とコロラド、そしてガングートを簡単に捕まえ拘束すると電磁ワームホールに入り何処かへ瞬間移動してしまった
「奴は……何処へ行った?」
武蔵は気が付いたらしく起き上がったが、その直後、石油精製所が盛大に爆発した。巨大な火柱と黒煙が上がっており、距離は離れているにもかかわらず、迫力は凄まじかった
「一体、何が?」
「分かっている事だよ!」
ボロボロになった白露が呆然としていたが、時雨は苛立ちを隠せないでいた
それを見計らうように敵が瞬間移動して現れたが、捕まえた陸奥さん達の姿は無い
「陸奥さんはどうしたんだ!」
「陸奥? ああ、第三砲塔で爆沈したのだろ? だから殺すためには盛大に爆死させようとしたさ。艤装をしているが、重油タンクが引火した状態で生きているかは知らないがね!」
結衣はそういうと、時雨に何かを投げつけた。それは陸奥の主砲だった。41cm連装砲改二……陸奥が改二の時に喜んでいた砲塔だ。その砲塔も無残なものであちこち焼け焦げが出来、砲身は曲がっている
それをみた時雨は涙をこらえながらも結衣を睨んだ。陸奥だけでなく長門やコロラドやガングートを拘束すると連れ去ったが、まさか……
「いい火葬になったな」
「貴様!」
武蔵が激昂し砲撃した。まだ戦える者も続いて攻撃し、時雨も速射砲を撃ち続けていた。敵も砲撃しており、水柱は複数立ち上がった
しかし、敵の命中率は上だ。53cm主砲弾は強力で戦艦娘も命中する度に悲鳴を上げていた
しかも、敵は砲撃しただけだ。まだ、敵は攻撃手段がある。結衣はレーザー砲を向けると最大出力で艦娘に照射した
「ああああぁぁぁ! 目があぁぁぁ!」
時雨は赤い光が見えたと思ったら激痛が襲い、右目を咄嗟に左手で抑え倒れ込んだ。頭が割れそうな痛みが襲い立てなくなったからだ。何が起こったのか分からない。右頭部は刃を貫いたみたいで痛く、左手からは生暖かいものが溢れて腕に伝わっていく
それが何かは分かっていた。問題は右目だ。右目が見えない。悶えながらも時雨は何が起こったかは想像がつく。敵のレーザー砲が時雨の右目を貫いたのだ
(大丈夫だ、まだ生きている!)
幸い、左目は見えるため見渡したが、武蔵やアイオワも同様だ。アイオワも武蔵もレーザー光線が艤装を貫通。弾薬と燃料に引火し爆発した。もう大破で動けないだろう
「そんな……」
時雨はもう艤装すら動かせなかった。夕立が泣き叫んでいたが、応える気力は無い
左目で状況を見ていたが、芳しくない。サウスダコタは叫び砲撃しながら砲撃していたが、結衣の鎖付きの銛で捕まえると一気に引き寄せた
「まだ戦える気力があるとは大した奴だ」
「ふざけるな! 負けるかよ!」
結衣とサウスダコタの口論は聞こえた。しかし、次の瞬間、敵はとんでもない事をした。結衣が指を鳴らすと赤い海から何かがサウスダコタの前に現れた
黒いメッシュの入った白髪の長髪でワンピースを身に着け、手には十字型の細身の杖を持っており、その女性は蟹のような艤装に座っている
「なっ! 一体、何が起こっているんだ!?」
サウスダコタは現れた謎の敵に困惑した。サウスダコタは知っていた。知っている深海棲艦だ。なぜなら南方戦艦新棲姫だから
一方、助けに駆け付けようとしたワシントンにも新たな深海棲艦が現れた。子供のような姿をした姿に蟹のような艤装に乗っている
「戦艦新棲姫? バカな!」
ワシントンとサウスダコタは突然の出来事に対処出来なかった。南方戦艦新棲姫はサウスダコタを砲撃し、戦艦新棲姫はワシントンを攻撃した。大量の砲撃を受けたワシントンもサウスダコタも大破してしまった
「まさか……深海棲艦の鬼級姫級を生み出す能力まであるのか?」
『ご名答』
時雨の呟きに無線から結衣が答えた。敵は隠そうとしない
『私の操り人形だ。このように……鬼級姫級を操るどころか生み出す能力まである』
そう答えると結衣は新たな二人を出現させた。それは、必死に足止めしていた戦艦水鬼改と戦艦レ級だ。意識があるかわからないが、無尽蔵に蘇らせる力も持ったらしい
「……だから教授に人を蘇らせる力があるって」
『そうだ。模索した結果、これが答えだ。深海棲艦の力を正しく使えば出来るのだよ』
「お前は人じゃない」
時雨は悔しさでいっぱいだった。結局は止められなかった
だが、敵は手加減しようとしない。最後まで立っていた艦娘達も現れた深海棲艦による攻撃で一人一人と大破し倒れていった
駆逐水鬼、護衛棲水姫、軽巡棲姫、戦艦仏棲姫……
数々の深海棲艦の姫級が出現したことにより、その場にいる艦娘は倒れていった。緊急改装に失敗して破裂した大和は浜風と磯風が曳航していたが、その二人も敵の魔の手に捕まり倒れてしまった
時雨は見る事しか出来なかった。身体が動かず、とても眠い
「ダメっぽい! 寝てはいけないっぽい!」
夕立は体をゆすって曳航しようとしたが、それも出来ないらしい
「夕立……提督に伝えて……逃げてって」
「そんな!」
「戦略を考えているはずだから……僕はいいから早く」
「う、うん!」
夕立が遠くに行く姿を見送ると時雨は結衣の方へ目を向けた。敵は勝ち誇っている。空を飛んでいるのは、艦娘の艦載機でも基地航空隊でもない。あのステルス無人機だ
結衣が近づき笑いながらこちらを見ていた
「幸運艦にしてはしぶといな。まあ、それもいいさ。もう、お前は幸運艦でも何でもない」
「……」
時雨は何も言い返さなかった。もう何も出来ないのだから
そんな事を他所に浦田結衣は、艤装をアーセナルシップ型に変形するとミサイルを再び大量に発射。辺り一面をミサイル攻撃していた
大量の水柱が立ち、陸地では爆発が所々起こっていた。呉鎮守府にも命中しているのだろう
(提督……この後の事を考えているの? 提督が世のため人のために戦うなら僕も……もっと……強くなるよ)
時雨は艤装が燃えて悲鳴を上げている祥鳳さんを見ながら考えた。大改装しても負けた
でも……
(提督の側に……居たいよ! 一緒に生きられるなら……政治情勢とかそんなのに関わらない生き方をしてみたい)
時雨は泣いた。今はどうすることもできない。仲間は撃沈しておらず、倒れているが、捕まえるためだろう
後で拷問するつもりだ
「村雨……ごめん」
時雨は静かに言った。村雨の他に吹雪と如月が最初の戦死者だ
……また、三途の川で会えるかな?
浦田結衣のミサイル攻撃で呉鎮守府にも着弾した。建物に着弾して崩壊し、防衛陣地も破壊していった。辺りは爆発で耕せ、その無慈悲な攻撃は、村雨たちの墓まで破壊していった
供えていた村雨や吹雪、そして如月の艤装の形見は爆風で飛ばされ海に落ちてしまった
しかし、提督たちは無事だった。地下室に間一髪逃げたため、直撃は免れた。が、敵兵がこちらに来る事もある。艦娘全員負傷している状況で戦える者は居ない
「皆が作ったお墓まで破壊するなんて」
大淀は苦々しく言ったが、提督は何も言わなかった
「この戦争、敵の勝利だ」
提督の言葉に誰も抗議しなかった。あれほど対策し戦力を蓄えていたのに、結局は負けてしまった
「提督の……せいではありません」
大淀は静かに言った
「今となってはどうでもいい。捕虜として捕まるだろう」
提督は既に意気消沈していた。最早、戦況が覆すことは無いだろう
「嫌だ……負けるなんて……アイツらの捕虜になるなんて」
瑞鶴は身を震わせながら呟いたが、誰も咎めなかった。この場にいる艦娘達も不安だ
呉鎮守府から離れた場所
「見ろ! 形勢は逆転したぞ! もう止めることは出来ない!」
「そんな……まさか……嘘だ」
武田副社長は手を叩いて喜び、他の502部隊は動揺していた。浦田結衣がこちらを攻撃してきたら終わりだ。曹長も呆然としており、神州丸もあきつ丸も呉鎮守府が攻撃されているのを見守っているしかなかった
武装勢力を追い詰めたはずなのに、こちらが追い込まれている
「直ぐに止めさせてください!」
「勝手にすれば?」
杉田警部は怒鳴ったが、武田副社長はわざとらしく肩を透かした。浦田重工業が日本を掌握すれば、こっちものだからだ
世界各国で異常事態が観測された。海が突然、赤くなったと思ったら何もない所から深海棲艦の軍団が出現。こちらを無差別攻撃しているという。立ち止まっていた深海棲艦も夢遊病のように上陸している
世界各国は困惑し、ある国では神に祈った
日本の例外ではなかった。停戦協定を結び深海棲艦が帰ったと思ったら、海が赤くなると同時に深海棲艦が反転しこちらに向かっているという
「辞表……いや、遺書が必要だ」
軍人や政治家達が大混乱に陥っている最中、元帥は冷静だった。しかし、内心でははらわたが煮えくり返っているだろう
「ポツダム宣言みたいに穏やかな降伏という訳にはいかないらしい」
元帥は静かに言った
現場海域
時雨は結衣の勝ち誇っている姿と海面に倒れている仲間達を見ていたが、眠気に襲われていた。もう自分の命が尽きる事を悟った。血を流し過ぎた
「提督……元気で……」
時雨は左目を閉じた。もう立てないだろう。息も浅くなっている
(これが……死……まだ……生きた……い……)
時雨は心の中で呟くと意識を手放し、深い暗闇へ落ちて行った
次回予告
白露「ダメだ!このままだと時雨だけでなく、他の艦娘達も死ぬか浦田結衣による拷問を受けてしまう!お願い、死なないで時雨!時雨が今ここで倒れたら、提督も大和さんもはどうなっちゃうの?まだ望みはあるはず!」
白露「次回「時雨、大和『し〇〇』!」」
白露「……え!ちょっと待って!ネタバレなの、この予告!真崎〇子のネタバレ予告みたいになっているのも疑問だけど。『し』の後に続く文字が分からない!平仮名で三文字で、初めに『し』が付く?まさか!うそでしょ!」
時雨「心配しないでよ」
白露「え?何で生きて?」
時雨「……」
白露「ちょっと!ねえ!もうストーリーが絶体絶命なんだけど!」
時雨「次回もお楽しみに(ニッコリ)」
白露「え!?まさか次回が最終回とか言わな――」
エラー娘『通信エラーが発生したため、ブラウザの再読み込みをお願いします』
※注意
上のやり取りはネタだからね(汗)
題名も(仮)ですが、そんなに変わらないと思います