時雨の緊急任務 ~リベンジ~   作:雷電Ⅱ

59 / 76
秋イベントの後段作戦が出ましたね
もうサンマ漁は終わっちゃったよ
コロナウイルスも落ち着いたし、私もワクチン接種をしたのでアーケード版を久しぶりにやろうかなと思ったりしています

それはそうと、今回のお話はざっくり言うとこんな感じです

「その時、不思議な事が起こった!」


第59話 時雨大和、大進化

 呉鎮守府よりも離れた場所

 

 502部隊は武田副社長を始めとする武装勢力を取り囲んでいる。しかし、武装勢力は武装解除しているのにも関わらず余裕そうである

 

「いい加減解放してくれないか? ああ、武器も返してくれ。心配するな。攻撃しない限りは手を出さない」

 

「そんな事を許すわけ──」

 

「なら、レーザー砲の餌食にでもなるんだな。ピンポイント攻撃できるから、こちらの被弾はない」

 

 武田副社長は嘲笑うようにいったため、曹長は激昂したが、他の隊員に押さえられた

 

「あなた方は……世界の平和を目指しているのではありませんか! それを自ら戦争を──」

 

「私は理想だけ夢見る人だとでも言いたいのか? それは君達の思い込みだ。時には血を流す必要性もある」

 

 杉田も積め寄ったが、武田は無視した

 

「浦田社長は正しかった。理想だけではダメだと。第二次世界大戦だけでなく、これからの世界大戦や冷戦を止めるためには、必要な行動だ。必要なら核武装だってする」

 

「貴方は──」

 

「警部、こいつに何を言ってもダメだ」

 

 杉田は耳を貸さない事にイラついていたが、神州丸は止めさせた

 

「そのガラクタの言い分は正しいぞ。議論しても何も解決しない。特にお前のような頭の切れる刑事はね」

 

「ムカつきますね」

 

 神州丸はムッとしたが、どうすることも出来ない

 

 海の方角から殺気を感じているからだ。下手な事をすると攻撃される! 

 

 

 

 戦闘海域

 

 戦闘が終わった後も海は赤く染まっていた。それは負傷した艦娘の血なのか、それとも深海棲艦の結界なのか分からないほどだ

 

 深海棲艦は以前よりも操られ、艦娘は大破し戦闘不能になって倒れていた

 

「いや……来ないで……」

 

 足柄は負傷しながら気を失って倒れている羽黒を曳航しようとしたが、浦田結衣は近寄っていた

 

「フン!」

 

 浦田結衣はそのまま殴り飛ばした。逃亡すら許さず、攻撃を仕掛ける

 

「結果論だが、未来予測しなくても勝てたな。もう私を倒す戦力は存在しない。これで……ん?」

 

 結衣は眉を潜めた。何かが浮上してくる。いや、何かが現れようとしている。深海棲艦でも艦娘の潜水艦でもない存在が現れようとしている

 

 

 

 一方、白露を始め睦月や夕立や雪風やジャーヴィスなどの残存艦娘は必死の反撃をしようとしていた

 

 しかし、反撃といっても最早、ヤケクソに近いものだ

 

 数少ない燃料弾薬を積んで突進するだけ。北上は魚雷を沢山積んで体当たりするつもりでおり、ジャーヴィスは衝角装備をして再び体当たりするつもりだ。潜水艦娘はまだ健在だが、時間の問題だ。周りは駆逐ナ級後期型Ⅱがウロウロしているため、逃亡すら出来ない状況だ。そのため、対潜網を突破よりも自爆攻撃する道を自ら選んだのだ。しかも、提督の無許可で勝手に出撃しようとしている。勿論、これはすぐにばれ、大淀は必死に止めようとしたが、彼女達は耳を貸さないどころか強引に出撃しようとしていた

 

「もう、いい。大淀」

 

「ですが!」

 

「分かっているさ。しかし、どうしようもない」

 

 提督は大淀が艦娘達を必死に抑えているのを止めさせ力無く言った。その間、白露達は海に出撃してしまった

 

「受け入れるのが怖いのさ。もう戦える力はない。こちらの策はなく、タイムマシンも作れず、奴に滅ぼされるという現実を受け入れられないからな。……奇跡でも起きない限り勝利なんて無理だろう」

 

 提督もそういった後に地面に腰をかけた。右手には拳銃が握られていた。提督も内心では葛藤していた。自殺すべきか迷っているのだ

 

 拳銃に口をくわえて引き金を引いたら即死だ。しかし、それは死に逃げる事になる。そんなことを許されるものなのか

 

 そう思った矢先、無線が入ってきた

 

「え?」

 

 無線を聞いた大淀は、間抜けな声をあげてしまった

 

 

 

 戦闘海域

 

「はぁ……はぁ……見つけた!」

 

 白露は倒れている艦娘、時雨を見つけた。大改装し近代化した艤装は、今やボロボロだ。右目はレーザー砲が貫かれたのか血がまだ出ている

 

 白露は立ち止まると倒れている時雨に声をかけた

 

「ねぇ、時雨……もう頑張らなくていいから。お姉ちゃんが守る!」

 

 白露はそう言ったが、時雨から返事はない。いや、分かっていた

 

「時雨、サヨウナラっぽい」

 

 夕立はそう言い残すと不明戦艦『デビル』である浦田結衣に向けて突進した。流石に正面から突進しても意味は無いため、遠回りし背後から攻撃しようと模索していた

 

 残ったのは倒れた意識不明の重体である時雨だった。しかし、間もなく息を引き取るだろう。今は救助する余力なんてないのだから

 

 

 

 このままでは、艦娘の大敗北だろう。大改装し近未来装備を装備した時雨を始め武蔵や大和など一部の艦娘を持ってしても止められなかった

 

 しかし、全てを殲滅したと思った浦田結衣は未来予測可能のアイテムである正二十面体を捨てた。一時的に未来予測のヴィジョンが不安定になったのは故障だと判断したのだ

 

 

 

 実はヴィジョンが安定していない理由は、浦田結衣である彼女自身でもあった。もし、柳田教授のように宇宙物理学などに強ければ原因を突き止められただろう。しかし、彼女はそんな人ではない

 

 ヴィジョンが不安定であった理由は、浦田結衣が痺れを切らして呉鎮守府を攻撃しようと決意し踏みとどまったと思ったからである

 

 確かに前回の戦いで学び艦娘を油断させるための演技は良かった。相手側に高性能ロボットや天才科学者を誤魔化せるくらいの仕掛けもやり、牙を抜いた

 

 浦田結衣が忘れていた。艦娘と深海棲艦はコインの表裏という事を

 

 ミサイル攻撃によって撃沈した艦娘の艤装が吹っ飛び海に落ちたのを……

 

 浦田結衣は海中の何かが浮上するのを捕えていた。何か分からないが、何かが出てくる。深海棲艦を支配下にしているから、その線はないはずだ

 

 そう思っていた

 

 だが、現れたのは結衣も予想外のものだった

 

 海面盛り上がり現れたのは1人の人影だった。それは……

 

「な、お前は……レーザーで沈めたはずだ!」

 

 結衣も予想外だったのだろう。現れたのは肌も透き通るくらい白く、深海特有の艤装もある。腕は黒く、彼女自身は雲のような白い深海艤装に腰を掛けている。しかし、問題はそこではない。姫級なのはわかるが、姿形が村雨だからだ

 

「アンタダケハ……絶対ニ通サナインダカラァア!」

 

 村雨……いや、深海雨雲姫というべきか。彼女が、こちらを睨んでいる

 

「バカな……従わない?」

 

 結衣は従うようにテレパシーを飛ばしたが、なぜか支配下に置けない。散々、邪魔だった戦艦水鬼改を支配し意識を抑えたのに、目の前にいる姫級の深海棲艦は従わない

 

 どうしようか迷っていると、海面から二つ、何かが現れた。だが、それは姫級とも鬼級とも分からないものだ。あざのようなものが皮膚を覆っており、額から二本、後頭部に三本の角が生えている。左側の目は赤く、髪はとても白い。モノクロの制服だったため艦娘かと思ったほどだ。しかし、遠くから誰かが叫び声が聞こえた

 

「き、如月ちゃん!」

 

「睦月ちゃん、大声出したらバレるっぽい!」

 

 背後から何かが聞こえたが、結衣は無視した

 

「如月だと?」

 

 結衣が啞然としている中、更にもう一体の人影が海面から姿を現した。真っ白なドレスのようなものを着た女性が現れた。中間棲姫かと思ったが、姿形が違う。特徴なのが、左腕がどす黒い水かきのようなものがある、角も二本生えており、彼女の周りには深海棲艦の2機の艦載機が浮遊していた

 

 そして、顔に見覚えがある

 

「ふ……吹雪ちゃん!?」

 

「だから、顔を出すな!」

 

 後ろからまた声が聞こえるが、結衣はそれどころではない。こいつらを知っている! 

 

「おやおや、生物兵器を撃ち込んだ時に沈めた時の奴等か。未練でもあるのか?」

 

「許サナイ。オ前ヤオ前ニ従エル人間ハ」

 

「そうか……従わないのは深海棲艦になりきっていなかったからか? まあ、どうでもいいが、今度は魂すら消し去ってやるよ!」

 

 吹雪……いや、深海吹雪は睨みながら叫んだが、結衣は既に動いていた。53cm砲主砲が一斉射撃し、間髪入れずにレーザー砲を叩きこんだ

 

「私は艦娘と違って補給は不要なのだよ。リリの能力のお陰でな」

 

 結衣は呆れるように言った。リリは原子を意図的に操作出来るため、物質変換が可能だからだ。だから、材料さえ揃えば補給は要らない。だが、3人は聞いていないのだろう。深海棲艦の能力強化のためか53cm主砲数発は耐えたらしいが、高出力レーザーは流石に防げなかった

 

 身体がレーザーに貫き、53cm主砲弾の直撃で3人とも飛ばされた

 

「そんなところでコソコソと隠れずに挑んで来い。私に傷をつけたら褒めてやるぞ」

 

「誰が降伏すると言いました? ……一矢を報いるために戦います!」

 

 神通は静かに言うと残存部隊に命令をだした

 

 皆が突進する中、3人の深海棲艦はまだ生きていた。生きていたという表現は正しいのか分からない。そもそも、生き返ったと表現していいのか不明である。当の本人も分からないだろう

 

 だが、3人は深海棲艦になっても心のどこかで、まだ意識はあった。当の本人の意識は

 

 深海雨雲姫はよろめきながらも、倒れている時雨に近づいた

 

 そして、時雨を起こし抱き着いた

 

「無理ニ戦ウナンテ……時雨ハオ馬鹿サン」

 

 深海雨雲姫は艤装から注射器を取り出した。それは、大改装するよう渡されたが、夕立によって捨てられた薬物であった

 

「イイトコ見セタイノナラ……村雨ガ頑張るから」

 

 深海雨雲姫は目から涙を流しながら抱きしめたままだった。

 

 その時だった。深海雨雲姫に変化があった。彼女から白い光が発光したのだ。その光はそこまで明るくないが、それは現場海域から離れた呉鎮守府でも観測できた。時雨も光に包まれていた

 

 時雨自身にも変化が起こった。ボロボロになった艤装が金属音を立てながら修復していった。いや、それだけではない。焼かれた右目も元通りになっていく

 

 赤い石で出来た溶液も反応し、白い光は時々、赤く光ることもあった

 

 同様に別の場所でも同じことが起こっていた

 

「如月ちゃん、吹雪ちゃん! どうして?」

 

 睦月は決死隊からコッソリ抜け出し、睦月のところへ行った。沈んだはずの妹や親友が深海棲艦化して蘇ったのだから驚くのも無理はない。しかし、睦月の叫びに対して二人は視線を送るだけだった

 

「無事なら、帰ろう! みんな待っている!」

 

「睦月ちゃん……その前にやることがあるの」

 

 深海如月は悲しそうに言うと睦月の必死の叫びどころか近くで倒れている磯風と浜風を無視して、体の半分が吹っ飛び倒れている大和を抱えると優しく抱きしめた。それと同時に二人の身体は白く輝いた

 

「吹雪ちゃん? 何を──」

 

「コノママ終ワラナイ。大和サン……貴方ハ最強の戦艦でしょ! コンナトコロデ死んだら、許さない!」

 

 深海吹雪は怨念のような声を出していたが、途中から吹雪の声に変わったのだ。深海吹雪の手には大改装に使用する注射器があった。それは瀕死状態の大和に向かう途中、倒れている武蔵から奪ったものだ

 

 なぜ、彼女たちは赤い石の存在や効力を知っているのかは分からない。深海棲艦の元となったG元素で作られたものだったため分かっていたのか。それとも、感覚だったのか

 

 いずれにしても睦月は何が起こっているのか分からないだろう。

 

 欠損した大和の身体はみるみるうちに修復して、そして──

 

 

 

「「時雨ちゃんの仇(っぽい)!」」

 

 夕立と白露は叫びながら突進していた。もはや、なりふり構わず突撃しているだけだ。他の艦娘も続いたが、浦田結衣はこの光景には飽きていた。連合軍も似たような事をしていたからだ

 

「もういい。さっさとくたばれ!」

 

 53cm主砲が一斉射撃し、砲弾が夕立たちに目掛けて飛翔してくる。更にQ-58ステルス無人戦闘機も殺到してくる。敵は自爆攻撃すら許さないらしい。夕立が顔を腕で覆ったが、信じられない事が起こった

 

 敵の砲弾が夕立に命中する直前、爆発した。しかも、全砲弾だ。ステルス無人戦闘機ですらも迎撃した。空中で爆発し、突進していた夕立たちは爆風に煽られたため勢い余ってこけてしまった

 

「な、何?」

 

「さっきロケットのようなものが飛んできた?」

 

 白露も川内も啞然としていた。砲弾の誤爆ではない。明らかに誰かが敵の攻撃を防いだ。飛翔する砲弾を撃墜された?夕立は辺りを見渡したが、ある方向を見て驚愕した

 

「あ、あれ! 時雨が……生きているっぽい!」

 

「「「「え?」」」」

 

 皆は驚き夕立が指を差した方角を見て同様の反応をした。時雨が生きていた! しかも、レーザー砲で潰れていた目は何故か治っている!? 

 

「あ、あれが時雨? 艤装が変わっている?」

 

 神通は驚きを隠せずにいた。大改装した時の時雨の姿は知っている。しかし、今の時雨は違っていた。艤装はスマートな恰好をしており、12.7cm単装速射砲が一門の他に見たことも無い形をした砲塔が一門。それに加えて、艤装にロケット発射装置みたいなものが取り付けてある。アンテナらしきものが多数取り付けてあり、八角形の形をしたものが飾られている。Q-58ステルス無人戦闘機1機を時雨に向かわし空爆をしたが、時雨は単装速射砲で簡単に撃墜した

 

 前みた時と異なった形をしていたのだ

 

「浦田結衣! 僕は許さない! 僕たちの仲間に手を出すなんて!」

 

 時雨は叫んだ。深海棲艦化したと思ったが、そうでもないようだ

 

「砲弾と空爆を撃墜し防いだのはお前だったか。しつこいぞ。今更、高性能なイージス艦となって挑んだ……ところで……」

 

 結衣は時雨を睨んだが、結衣は何かが接近する者を見て、表情を強張らせた

 

「バカな!」

 

「戦艦大和。貴方だけは……貴方だけは許しません!」

 

 大和も現れた。しかも、艤装が大幅に変わっている。手元に持っていた傘はないが、服装は近未来的な恰好のようになっている。艤装も以前よりもスマートになっており、見た目は46cm主砲だが、艦首のようなところからは丸い穴が開いていた

 

What’s happening(何が起こっているの)?」

 

「し、知らない! というより、どうなっているの? 時雨の目が治っている!? 大和は身体が半分吹っ飛んだのに!?」

 

 ジャーヴィスが驚き、矢矧も困惑を隠せずにいた。大和が大改装に失敗して体の半身を失ったのを見たのだ

 

 だが、それ以上に驚いたのは浦田結衣だった。死んだと思っていた艦娘が蘇ったどころかパワーアップして戻ってきた? 

 

 しかも、遠くで護衛棲水姫と軽巡棲姫が倒れているのを見ると瞬殺したのか? 

 

「見かけ倒しは止めろ、標的艦め!」

 

 浦田結衣はレーザー砲を稼働させて再び高出力レーザーを二人に浴びせた。夕立達は逃げるよう叫んだが、光の速度は秒速約30万キロメートル。それを回避するのは不可能だ

 

 高出力レーザーは2人に命中した。命中したが、艤装は破壊する気配が無い。赤いレーザー光線を照射されても、時雨も大和も全く効果ない

 

「はぁ!?」

 

 結衣はレーザー照射を止めた。再度、チャージする必要がある事もあるが、それ以前に二人の姿に驚愕した。全く効果が無い。何らかの形でレーザー光線を防いだようには見えなかった。受け止めたように見えたが、そうでもない

 

 時雨も大和も艤装からパルスのような閃光が見える。明らかにダメージを受けたものではない。リリの能力を使って解析したが、信じられない結果が出た

 

「レーザー光線を吸収? そんなバカな!?」

 

 結衣は驚きを隠せずにいた

 

 

 

 呉鎮守府

 

 呉鎮守府は再び大混乱に陥っていた。無線連絡してきた睦月から状況は聞いたが、泣きながら支離滅裂な事を言っていたため、よく分からなかった。しかも、如月や吹雪や村雨が生き返ったような言い方をしたため、提督は帰投するように言った

 

 精神錯乱かと思っていたが、まさか本当に3人を連れてくるとは思ってもみなかった。3人は眠っていたが。明石と夕張は喜ぶよりも驚愕した。撃沈したのに蘇った? 提督は予想外の事態に博士と柳田教授を呼んだ。2人なら何か知っているだろう

 

「吹雪? 如月? 村雨? 深海棲艦化したが元に戻ったって何だ? どういう事か教えろ!」

 

「わ、分からないのです。時雨と大和に抱き着いたと思ったら、時雨と大和は治って、如月ちゃんも吹雪ちゃんも村雨ちゃんも元に戻ったのです」

 

「時雨と大和は?」

 

 睦月は泣きながら海の方角に指を差した。提督は双眼鏡を取り出し覗いて驚愕した。時雨と大和が生きている? しかも、レーザー攻撃を防いだ? あれほど手こずった攻撃を? 

 

 

 

 戦闘海域

 

 浦田結衣はレーザー攻撃を再び攻撃したが、時雨と大和は全く動じない。それどころか、全く表情一つも変えない。レーザー砲は連続して撃てるものではない。しかし、結衣の高出力レーザーは威力が高いので当てれば敵は無事では済まないため問題なかった。まさか、レーザー砲に耐えるものがいるとは思わなかったからだ

 

 一方、時雨も大和も攻撃準備に入った。時雨は見慣れない砲塔で敵を狙い、大和は艦首を敵に合わせた

 

 夕立達も何が起こったのか分からなかった。時雨の砲塔から何かが勢いよく飛んだ。ミサイルも発射したのだが、そのミサイルもハープーンミサイルと違って目に負えないほどの速さだ

 

 また、大和の攻撃も異質だった。大和は艦首から青い光線を発射したのだ。結衣のように光線の速度は遅いように感じたが、それでも発射音は凄まじく夕立達は耳を抑えたほどだ

 

 時雨の超高速で放った砲弾とミサイル、そして大和の熱線攻撃は、結衣のシールドに当たって止まっただけだ

 

 一瞬、結衣に有利かと思っていたが、そうでもなかった

 

「な、なんだ? これは?」

 

 シールドで防いでいるが、機器に負荷がかかっている。大和の熱線攻撃は何なのか不明だが、物凄くエネルギーだ。しかも、照射時間が長い。また、時雨が放った砲弾もミサイルもシールドに当たっても爆発せず、こちらに突き進まんとばかりに爆発もせず突進しようとしている

 

 核爆発を防ぐシールドなのに二人の攻撃を受け止めきれない。しばらく持っていたシールドも二人の攻撃にヒビが入り、割れた

 

 シールドが破壊された瞬間、大和の熱線と時雨のミサイルと砲弾が結衣に殺到。二人の攻撃が結衣に貫通した

 

「ぐはぁ! バカな!」

 

 結衣は倒れはしなかったものの、膝をついてしまった。自己修復はしているが、艤装から機器類や能力は短時間で修復しない

 

 そのための一時的に深海棲艦を操る能力を損失してしまった。上空を飛んでいたQ-58ステルス無人戦闘機は制御を失い海へ落下していき、独自で作り上げた結界である赤い海はみるみるうちに消えた。結衣の能力で出現させた姫級鬼級の深海棲艦は光となって消えていった。ただ、戦艦水鬼改や戦艦レ級は糸が切れた操り人形のようにそのまま倒れて動かなかったが

 

 この現象は世界中で観測された。赤くなった海が突然、焼失し、それと連動して深海棲艦が消えていった事に困惑した

 

「な、何が起きている?」

 

「誰かが『戦艦デビル』相手に戦っているんだ」

 

「一体誰が? そんな余力は何処も無いぞ?」

 

 続々とくる報告に連合軍の幹部たちは困惑したが、日本に艦娘を送り届けた米海軍少佐だけは違った

 

(まさか……艦娘が戦っているのか?)

 

 確証は無いが、それ以外には考えられない。今はロシアが深海棲艦を一掃しようと無差別の核攻撃という暴挙を必死に食い止めているのが精一杯なのだから

 

 日本の臨時総司令官も大混乱になった。東京湾に侵攻していた深海棲艦が突然、反転して太平洋へ帰って行ったからだ

 

「元帥、何が起こっている?」

 

「わ、分かりません……」

 

 政府の官僚が問い詰めたが、元帥も分からないのが本当だった。しかし、陸軍大将と海軍大将からの報告で驚愕した

 

 援軍として派遣したイージス艦『あいづ』は大破しているものの、戦況を伝えていたからだ

 

 

 

 戦闘海域

 

「おのれ!」

 

「今なら倒せる!」

 

 結衣は吠えたが、時雨は自分の事に集中していた。どうやって生き返ったのか分からない。目が覚め起き上がったら近くに村雨が倒れていたのだ

 

 しかし、時雨は村雨を介抱するよりも敵を倒すだけに専念していた。理解は出来なくても、現状や自分の能力は分かっていた。まるで、昔に教えてくれたかのような感じだった。身体もとても軽く、直ぐにスピードが出た。53cm主砲弾が夕立達に着弾するよりも早く、対空ミサイルで迎撃した。ロックオンから発射まで早く、同時攻撃も可能だ

 

 しかも、強力な攻撃まで備えている。超電磁砲の能力もレーザー光線を吸収し電気エネルギーとして変換する能力も理解出来た

 

「これが大改装の力……。これでみんなを守ってみせる!」

 

 大和も同類のように感じているのだろう。回復するどころかより強力な姿になっている! 

 

「砲撃開始!」

 

「これでいける……てぇー!」

 

 大和と時雨は砲撃を開始。相手も攻撃してきた。空中で砲弾同士が衝突し、双方の間で爆発が生じた。降って来た砲弾は、対空ミサイルで迎撃した。対空ミサイルも短SAMよりも素早く確実に迎撃出来る。相手もこちらの攻撃を迎撃しているため互角だ。レーザー砲は便利らしく、連射している砲弾を防いでいる。レールガンでも対処できるらしい

 

 しかし、そんな余裕はないだろう。大和はまたあれを発射しようとしているのだから

 

 大和は艦首にエネルギーを貯め、発射態勢に入った

 

「「食らえ!」」

 

 大和と時雨は叫ぶと大和は熱線を、時雨は超音速対艦ミサイルを発射した。時間差攻撃である

 

 双方の攻撃は結衣が気づくよりも先に着弾。大爆発を起こし、今度こそ倒れた

 

 

 

呉鎮守府

 

 呉鎮守府では騒然としていた。戦闘海域との距離はそんなに離れていないため、遠くからでも見える。そして大和時雨がパワーアップし、結衣を攻撃している。しかも、あれほど手こずった非対称シールドやレーザー砲を押しのけている

 

「何が起こっている?お前がやったのか?」

 

「いや、僕じゃない。しかし、あれは紛れもなく大改装した結果だ。推測だが、以前沈んだ艦娘が深海棲艦化して蘇り、時雨と大和にパワーアップする手助けをしたとしか」

 

 柳田教授は慎重に言葉を選んだ

 

「そんな事があるのですか?」

 

「ウーム。吹雪の深海化か以前にも見たことがあるため、睦月の証言と一致しておる。しかし、今は深海化していない。信じられないが、柳田教授の推測が正しいわい」

 

 明石は困惑したが、眠っている吹雪を見た博士の説明で納得するしかなかった

 

「しかし……何故、今となって如月や吹雪、村雨が深海棲艦化した?」

 

 提督は首をかしげるが、誰も答えられない。それもそのはず。実は結衣の能力で蘇り深海棲艦化したからである。以前に結衣によって撃沈された村雨、吹雪、如月の艤装は発見され地上に運び作った墓に備えていた。その艤装が深海棲艦特有の赤い海という結界に入ったため、それがトリガーとなって3人は深海棲艦となって蘇ったのだ。結衣の能力は意識のない深海棲艦の姫級鬼級を召喚することも可能だが、逆に望んでもいない深海棲艦まで召喚されてしまった。そして、村雨たちの艤装が海に落下したのも呉鎮守府を攻撃したからである。ミサイルの爆風で飛ばされたからだ。赤色海域も例外はあるものの。本来なら近海で発生するものではない

 

 つまり、結衣自身の能力が仇となってしまったのだ。赤い石も元々はG元素だ。深海棲艦となった彼女たちは理解したかどうかは分からない。彼女は柳田教授のような頭脳は持っていないが、本能で時雨と大和を助けパワーアップさせたのである

 

 3人が力尽きた時には、既に深海棲艦としての能力は失ったため元の姿になった

 

 これが成り行きの真相である。提督たちがこの真相に気づくのは後の事だろう

 

 しかし、今はそれどころではない。時雨と大和の能力に提督だけでなく艦娘達も目を見張った

 

「おい、レーザー攻撃を吸収するどころか大和は青い熱線を吐いたぞ! しかも、時雨に至っては奇妙な砲塔で倒した!」

 

「時雨のあの砲塔はレールガンだ。大和の副砲はレールガンで間違いだろう。しかし、連射しているからエネルギーチャージが短い。エネルギー消費も膨大のはず。永久機関が仮にあったとしても、どうやってエネルギー供給を?」

 

 提督は興奮状態になって言ったが、皆も同じだ。時雨と大和は強力な力を手にして相手を圧倒している! 

 

「そうか。レーザーは光であり、光はエネルギーだ! 敵のレーザーを『受信』してそれを増幅して自分自身の武器にした*1! だから、レールガンでも熱線でも二人のチャージの時間が短い! そうとしか考えられない!」

 

「そんな事が出来るか? 敵のレーザーを吸収してエネルギーを得るなんて」

 

「理論としては可能だ。そうなると、時雨も大和も何年先の未来兵器だ?」

 

 柳田教授の説明に提督は驚愕した。レーザー光線を吸収して自分自身の武器にした? 

 

『大和の熱線攻撃は恐らく、荷電粒子ビーム兵器でしょう』

 

「つまり、SF映画に出てくるようなビーム砲のようなものを大和は持っているのか?」

 

『そうなります。なぜ、磁場や地球の自転の影響を受けず直進で進むのは謎ですが』

 

「僕の世界では医療機器*2がやっとだ。どうやってあんなものを?」

 

 ターズは解析結果を出したが、報告を受けた柳田教授も困惑していた。SF映画で登場する荷電粒子ビームがまさか目の当たりにするとは思わなかったからである

 

 しかし、そんな疑問はどうでもいいのだろう。何しろ、今では歓声があがっているのだから

 

「いいぞ! やっちゃえ!」

 

「これで勝つる!」

 

「流石は幸運艦と世界最強の戦艦ね!」

 

 騒ぎを駆けつけ地上に上がり何が起こっているのかを見た艦娘達は奇跡的に勝っている事に喜んでいた。応援する者までいる

 

(レーガン大統領が見たら発狂するぞ*3?)

 

柳田教授は呆れながらも戦闘の成り行きを見ていた

 

 

 

 戦闘海域

 

 結衣が倒れていていても、時雨も大和も警戒していた。捕虜として捕まえる事は毛頭ない。この大改装も何時まで保てるか分からないからだ。柳田教授も大改装は正規の改装ではないので、永遠に残ることは無い、と言っていた。それに、敵は降伏なんてしないことは知っているからだ

 

「攻撃準備開始!」

 

 大和は艤装を向けてチャージを行った。このまま敵を野放しにするわけにもいかない。艦首のある砲口から青い光が集まっている。再び熱線を発射する気だ

 

「舐めるな!」

 

 結衣も上半身を起き上がせると砲塔を大和に向けた。レーザー兵器は使えないため、砲撃する気だ

 

 だが、そんな抵抗を時雨は見逃すわけがない

 

「やらせない!」

 

 時雨はレールガンを叩きこんだ。それも敵の砲口を狙ったのだ。距離は離れているのにも関わらず、レールガンから放たれた砲弾は、砲口に入り爆発した。53cmの砲塔は爆発して吹っ飛び、近くにあったレーザー砲まで損傷を与えた

 

「大和さん!」

 

「ターゲット捕捉! エネルギー充填100%! 荷電粒子砲発射!」

 

 大和から再び分厚い青い光線を発射していた。時雨も超音速対艦ミサイルを発射してとどめを刺すつもりでいた。また、大破し気を失っていた艦娘達も意識を取り戻し時雨と大和の戦闘力に驚いたものの、彼女たちも援護射撃を開始した

 

「FIRE!」

 

「てぇー!」

 

 アイオワも武蔵も力を振り絞ってハープーンミサイルと主砲を発射した。威力は時雨や大和に劣るが、それでも侮れない。ミサイル、砲弾に加えて荷電粒子ビームが着弾し大爆発が発生。巨大なキノコ雲が立ち上がり、辺りは爆炎で薄暗い雲を照らしていた

 

「倒した?」

 

 近くで見ていた川内は声を漏らした。勝利を喜ぶ様子は見られない。どこか、半信半疑のようだ。5年前で戦力差を見せつけられ、艦娘どころか世界各国に大被害をもたらした敵が倒された事が信じられないかもしれない

 

 その予感は的中した。キノコ雲の中から1人の人影が高速で移動しているのを

 

「クソ! よくもやってくれたな! 絶対に許さんぞ!」

 

「逃がしてはダメ! 発艦!」

 

 装甲空母である翔鶴は力を振り絞って艦載機を発艦させたが、艦攻がたどり着くよりも先に結衣は電磁ワームホールを発生させて逃げてしまった

 

「SHIT! デビルが駆逐艦エルドリッジの力を奪わなければ! 仕留められたのに!」

 

 アイオワは悔しそうに叫び腕を海面に叩きつけたが、無線から怒鳴り声が聞こえた。提督からだ

 

『喜ぶのも嘆くのも後にしろ! おい、イントレピッド! 秋津丸が洋上修理させるから場所を教えろ! 修理が終わったらさっさとE2Cホークアイを上げるんだ! 残りの者は現場海域から動くな!』

 

『アドミラル、人使い荒すぎ』

 

 イントレピッドは不機嫌そうに言ったが、拒否はしなかった。提督が切羽詰まった状態だからである

 

「提督、冗談じゃない。アイツに酷い目にあわされた! Battle starなんて要らない! 命令は聞かな──」

 

「いいえ。動かないでください。敵が撤退したとは考えられません」

 

 サウスダコタは抗議したが、大和は止めさせた。時雨もイージス機能をフルで活動させて上空を監視していた

 

「時雨。提督は何を考えているかわかりマスカ?」

 

「金剛さん、分かる。だけど、話は後にして。提督と教授の読みなら、アイツはあれをやるに決まっている」

 

「提督だけでなくて柳田教授も?」

 

 艤装がボロボロになった金剛は時雨の話に首を捻った

 

 だが、時雨だけでなく、大和も武蔵も分かっていた。敵が何をするのかを。尤も、それは推測の域であるが

 

 最悪の事態にならなければいいのだが……

 

 

*1
レーザー兵器に対しての防御策の一つとしてとして『レーザーによるエネルギーの送受信を利用した方法』がある。レーザーは光であり、光はエネルギーにもなる。その構想は米軍も視野に入れていて、ある研究者の論文でそれに関する記述があった(現在は削除されている)

*2
荷電粒子砲は現在の科学では困難であるが、ガン治療の1つとして重粒子線ガン治療という治療法は存在している

*3
冷戦時代において当時のレーガン大統領は戦略防衛構想(スターウォーズ計画)の時、宇宙兵器システムの一つとして荷電粒子砲の計画が存在していた。結果は失敗




時雨、大和復活&覚醒!!
前話のあとがきの予告?あれに入る文字は「進化(しんか)」です
ただインパクトが無いため大進化に変更しました
遊戯王の『城之内死す』のように「死亡(しぼう)」ではないです
城之内、結果的に死んでいませんでしたし
白露「えー……それって詐欺予こ――」
エラー娘『通信エラーが発生したため、ブラウザの再読み込みをお願いします』



敵は『三十六計逃げるに如かず』のように逃げたが……
まあ、それは次話で

因みに深海雨雲姫は村雨の深海棲艦ですが、深海如月と深海吹雪は劇場版の姿です


グロース・シュトラール(鋼鉄の咆哮2)「え?なんか強くね、アイツら?」
コンゴウ(蒼き鋼のアルペジオ)「……クラインフィールドを簡単に破壊する能力があるなら、もうこちらに優位性は……」
碇シンジ(エヴァンゲリオン)「このビーム兵器を使いやすいように改装して(ポジトロンスナイパーライフルを掲げながら)!」

沖田十三(宇宙戦艦ヤマト)「宇宙空間を航行できるなら文句なしだ」
※本作品の時雨大和は出来ません(というか、空を飛びません)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。