潜水艦娘スキャンプを迎え入れ育て中です
それはそうと今回の話はこんな感じですね
???「キサマは助かっても地球は粉々だー!」
まあ、ベジータが放つギャリック砲みたいに地球が粉々に能力も武器もこの作品にはないですが(苦笑)
決戦数日前
柳田教授に呼ばれ時雨大和だけでなく、提督も提督の父親である博士もいた
「軍は最悪の状況を想定するのが常だ。軍事関連はそんなに得意ではないが、これは僕の予想だ」
柳田教授は深刻そうな表情をしながら淡々と説明し始めた
「アイツは核兵器を持っている可能性がある」
「驚くことでは在りません。長門さんから聞きましたが、5年前に核兵器を保有することを望んでいたが、浦田社長が止めたと聞きました」
大和は頷きながら答えた。5年前の東京湾の戦いで浦田結衣がそう言ったのを長門は聞いていたからだ
「アイオワもW23核砲弾を持っているし、生物化学兵器を使ったのだから別に驚くことはない。そんな不愉快なものを使う前に倒す」
武蔵は答えたが、柳田教授は驚きもしなかった
「そうではない。核兵器といっても種類はある。アイオワの核砲弾よりも強力な核兵器は存在する。それに……奴は核爆弾の中で最恐のものを使うかもしれない」
「さ、最恐? アイオワさんが持っていた核砲弾よりも強い核砲弾はあるの?」
時雨は背筋が凍る思いがした。アイオワが持つ核砲弾よりも恐ろしいものがあるのか?
「……ある。核兵器の中で強力なものが。僕の……というか正史では冷戦時代のソ連が開発した最大級の核兵器、ツァーリ・ボンバがある。コイツは何と50メガトンもある。ピンと来ないのであれば、さっき話した米軍が結衣に攻撃した水爆『ブラボー』の威力の3倍だ。もっと分かりやすくいえば正史で米軍が広島に落とされた原爆の約3300倍。しかも核実験した時は発生した衝撃波は地球を3周し、日本でも観測されたほどだ。核に耐えたと豪語する長門だが、流石にこれをマトモに受けたら消滅するだろう。富士山も吹き飛ばすほどの核爆弾だ」
柳田教授がざっと説明したため、時雨を初めその場にいた人物のほとんどは言葉を失った
「また──」
「え? まだあるの?」
柳田教授が再び口を開けたことで時雨は我に帰って慌てて言った
「そうだ。この話は続きがある。その前に提督はツァーリ・ボンバを知っていたのか?」
「ああ、田村1尉のパソコンと呼ばれるものから兵器や歴史のデータを一通り読んだからだ」
提督は答えた。別世界の自衛官である田村1尉が軍事情報を教えてくれたのだ。そのため、浦田重工業の未来兵器には理解できたのだ
「ツァーリ・ボンバという水爆の情報も読んだ。ソ連があんなものまで──」
「残念ながら提督、それはあくまで歴史教科書に書かれたに過ぎない。この先は核物理学と核兵器についての話だ。正史においてソ連が開発した史上最大の核爆弾。実は威力を抑えられていたのを知らないか?」
「「「「はっ?」」」」
柳田教授の爆弾発言で提督だけでなく、その場にいた皆は耳を疑った
「本来はその2倍の威力にするつもりだった。その威力は理論上で100メガトン*1。流石に製造はしなかったが、もし核実験で使用していたらソ連は実験した地域周辺どころか国が崩壊し悲惨な事になっていただろう」
「ちょ、ちょっと待って! 何で広島に落とされた原爆よりも威力が桁違い大きいのさ! 水爆って簡単に威力を高める事が出来るの!?」
時雨は理解が出来なかった。水爆と原爆は同じものだと思っていたからだ。内容が難しすぎて精々、『放射能を撒き散らす凄い爆弾』としかイメージがつかない
「そうだな。先ほどの説明では皆分かっていなかったから丁寧に教える。また、この先は核物理学にも触れるから一般の人でも分かりやすく説明しよう。正史において広島と長崎に落とされた原子爆弾は、ウラン235やプルトニウムに中性子を当てて核を分裂させ爆発させる爆弾だ。一方、水素爆弾は水素の核をくっつくことで発生したエネルギーを爆弾にしたもの。これを核融合というが、エネルギー効率からして核融合の威力が必然的に大きくなる」
柳田教授は簡潔に説明をした。水素の同位体である重水素やトリチウムを高温、高圧条件下で核融合反応などの説明は省いた。言っても分からないからである
「原爆は核物質の臨界量に限界があるからどんなに頑張っても威力500キロトンが上限だとされている。一方、水爆はコストや材料にもよるが、理論的には上限はない。それに製造した当時は冷戦時代。ソ連は自国の国力を西側諸国に見せつけるために作ったとも言われている。目標から外れてしまっても確実に吹っ飛ばせるようにするため威力を高くしたとも言われているが」
「ソ連はそんな化け物の爆弾を作ったのに実験しか使わなかったのか?」
武蔵は疑問に思った。こんな馬鹿げた核兵器を作る必要性はあるのだろうかと
「まあ、その爆弾の総重量がとてつもなく重く弾道ミサイルにも積めなかったため*2、使い道が自国の自慢くらいしか出来なかった。それに弾道ミサイルの命中率の性能向上で使われなくなった。国際条約で制限された事もあるだろう。わざわざ金を賭けて威力が高い核爆弾作るよりも通常の核弾頭を弾道ミサイルに載せて飛ばす方がコストも効率も整備もいいからね」
「逆にいえば……コストや効率や国際条約を度外視すれば作れるって事か!」
提督は柳田教授の考えが分かったようだ。つまり、やろうと思えば出来る案件だ。浦田結衣にはその能力があるかも知れない。敵は効率よりも敵の戦意を挫くのを優先している。ワザワザ戦艦にして艦隊戦を仕掛けてきているのだ
「ガリバルディのミサイルは確かポラリス弾道ミサイル発射筒! 核は載せていないが──」
「そうだ。敵も出来るだろう。戦闘資料と娘からの助言で見たが、浦田結衣はミサイル母艦であるアーセナルシップにもなるらしいな。あれを変形すれば戦略原潜みたいな発射装置を持つ事は可能だろう。別にアイツは潜る必要なんてない」
提督と柳田教授は意見を出し合っていたが、どれも恐ろしい内容だった
「じゃあ、奴はそんな核爆弾を使うの?」
「ちょっと待ってくれ。ツァーリ・ボンバはとてつもなく重くミサイルで積めないと言ったはずではないかのぉ?」
時雨は掠れた声を上げたが、博士はあることに気付き指摘した。矛盾している
「いや、浦田結衣は通常の核ミサイルとツァーリ・ボンバによる空爆を両方やるだろう」
予想外の答えに時雨とその場にいた艦娘と提督は驚愕した
「あれは僕の予想だ。敵は戦略原潜のような核ミサイルは持っているかも知れない。その時は通常の核ミサイルだろう。通常というのもあれかも知れないが。しかし、僕の見立てではそれとは別の核爆弾、ツァーリ・ボンバも持っていると考えている。恐らく、奴は巨大な輸送機を発艦するだけの空母に変形するだろう。今まで核兵器を使わなかったのは、簡単に倒せてしまうからつまらないと思っただけだろう。もしくは保険か」
「「ほ、保険!?」」
時雨は頭が真っ白になり、大和も愕然としていた
「何らかの拍子で自分よりも強い力を持つ艦娘が現れた時の場合だ。逃げたと見せかけて遠距離から核ミサイルを発射し集中核攻撃するだろう。核で牽制した後に、強力な水爆で止めを刺すかもしれない。そうなったら、正史の広島原爆投下よりも悲惨な結果になるのは間違いない。奴が本気を出す前に倒さないと勝てないかも」
柳田は自分自身の考えを述べた。柳田の仮説を聞いた時雨を初め他の3人は驚愕した
「バカな! アイツがあれを持っていたら躊躇いもなくやってるはずだ! 幾らなんでも!」
武蔵は声を荒げた。それは許されない行為だが、結衣のやり方に矛盾が生じてしまう
現在
時雨は先日にその事を思い出した。確かに浦田結衣は軍人には向かないだろう。しかし、相手の戦意を挫くための戦い方は認めるしかない
そんな時、無線が入ってきた。しかも、暗号無線だ
『僕の声が聞こえるか? ターズから経由して話している。大和以外は誰も聞こえていないはずだ。提督には話したが、奴は核攻撃する可能性が高い』
「それは分かったよ。でも、先日の推測は無頓着過ぎる。過剰攻撃とも言える核攻撃なんて軍事作戦にしてはおかしいよ。それならヨーロッパでもアメリカでも使っていたはず」
『違う。提督には話したが、僕の推測は、君の敵である浦田結衣の様相で判断した』
柳田教授は説明をした
「どういう意味?」
『君はあの女が何者かあまり分かっていないようだ。と言っても、僕は浦田重工業や浦田結衣については資料でしか見たことが無いため偉そうなことは言えない。しかし、浦田結衣については似たような人は知っている。妻が殺された後、僕はある目的で世界中を旅した。そんな時、アメリカである話を聞いた。アメリカのある学校で銃乱射事件が発生した。十五歳の少女がライフルを持って小学校に押し入り、小学生相手にライフルを発射した』
柳田教授の説明に時雨は内心は驚愕したものの、表情には出さなかった。夕立達から不安と思われてしまうからだ
『警察が少女を逮捕し、事情聴取が行われた。しかし、理由は『理由なんて無かった。ただ面白かっただけ』『池でカモ猟をしているみたい』と答えた。人質による金品要求すらも無かった*3』
「どうして小学校にライフルを持ってライフルを発射したの? 目的もなしに行動するなんて」
『それは、その行為だけが文字通り楽しいと思ったからだ。つまり、戦いにおいて敵を合理的に倒す必要性はないということだ。どんなに国際条約にあるからといって守らない人は出てくるだろ? それと同じだ。サイコパス的な思想に基づく殺人者……サイコキラーというが……そのような相手だと手を焼く存在だ。僕の妻を殺した犯人の内に似たような人がいたからね』
柳田教授は最後の言葉は悲しそうに言っていた
「でも、そんな相手なら内部崩壊はしているんじゃない?」
『普通ならね。だが、現実には起こっていない。そうなると、相手は少なくとも知能は低くないだろう。
柳田教授の説明に時雨はある疑いを持った
柳田教授はサイコパス?
「サイコパスってヤバい存在ではないの?」
『それはよく誤解される定義だ。そんな事は無い。しかし、極まれに道を外す者もいるのも事実だ。よく怒鳴り散らすだけで仕事も出来ず部下を八つ当たりする無能な上司がいるが、あんなのは小物に過ぎない。自らをサイコパスと言いふらす人と同じでなりきっているだけの人物だ。本物のサイコパスで、且つサイコキラーの人間の方が残忍で恐ろしいことを考える。例え人として有り得ない事だ、と思ったとしてもな』
柳田教授は説明し終えると、時雨は決意した。超音速対艦ミサイルは迎撃される可能性は低いが、装甲を難なく突き破れるかも知れない
いや、今の自分の能力なら勝てるはずだ!
そんな時、大和が通信してきた
『教授、ライフルを乱射した少女はどうなりました?』
『終身刑になった』
『なら、情けは無用ですね!』
無線にも拘わらず、大和は力強く言った。手加減したら、こちらがやられると認識したようだ
そんな時、イントレピッドから無線連絡があった
『ホークアイが探知圏内のギリギリで『デビル』を捕えた! え? 待って! これは……What?』
イントレピッドは悲鳴じみた声を発生していた
これは通常無線なので、艦娘達の間で動揺が走った。しかし、時雨も大和もデータリンクの情報を受け取り、浦田結衣がいるとされる方向へ睨んでいた
水平線の向こうなので肉眼で見えない。だが、恐れていた事をやっているのは確かだ!
数分前のある海域
日本(正確には呉鎮守府)から500Km離れた所のある海域に突然、電磁ワームホールが出現した。艤装を自己修復させた浦田結衣が現れた
彼女の手には正二十面体のパズルが握られていたが、直ぐに捨ててしまった
「パズルの未来予測に障害? あの深海吹雪……いや、時雨の仕業か?」
直ぐに正二十面体のパズルを作り出したが、未来予測が出来なくなっていた。仕組みに問題ないのだが、なぜかジャミングされたかのように見えなくなった
「フン。新たな能力か? だが、どうでもいい。簡単にくたばる兵器なんぞ面白味が無くて使い道に困っていたが、いいだろう! 分子レベルまで破壊してやるぞ!」
結衣は戦艦からアーセナルシップ型に変形した。だが、通常のアーセナルシップではなく、甲板には巨大な丸い蓋がいくつもある
それは冷戦時代、いや、核保有国が核兵器を誇示するためのシステムだった。ガリバルディよりもたくさんのミサイルサイロがある
そのミサイルサイロがゆっくりと開き、その中には核弾頭搭載されている核ミサイルが積まれていた
「守れるものなら守ってみろ! 貴様が自身の能力で助かっても仲間も鎮守府も消滅だー!」
叫ぶと同時にミサイルサイロからUGM―133A トライデントⅡの24発が一斉に発射された
「ハハハハハ! いいぞ! イージス艦で全弾防げるか見ものだな!」
浦田結衣が高笑いしていた。トライデントⅡで大和の熱線攻撃でも射程圏外だ。あの熱線は厄介だが、ミサイルのようにホーミングなんて持っておらず、対空用でもないはずだ
仮にそうだとしてもマッハで飛ぶ飛翔物体を全弾撃墜出来る訳がない
現場海域
『本当に撃ってきた! 飛翔速度からして弾道ミサイルよ! 数は24発! 核ミサイルよ!』
イントレピッドは早口で喚いたが、既に時雨のレーダーには幾つもの飛行物体が上空に上がっているのを確認していた。水平線の彼方から白い筋のようなものが上空へ飛行している
「核ミサイルって……皆逃げて!」
時雨は咄嗟に言ったが、核の知識を身に着けていた時雨には逃げても無駄という事は分かっていた。運よく生き残っても放射線障害になるのは必須だ
そんな時、無線が入ってきた。提督からだ
『クソ、遠くにいるようでは攻撃出来ない! 誰か核ミサイルを撃ち落とせるか!』
『ネガティブ! 無理よ! あれは弾道ミサイルよ! ハープーンミサイルみたいに簡単に撃ち落とせないわ!』
アイオワは叫び返した。本当は説明するつもりだったらしいが、簡潔明瞭に言い返した。核ミサイルが到着するのは数分後だ。議論する時間すらも惜しい
その間も時雨は自分の能力を再度確認した
(さっきまでは無意識に攻撃していた。見落としていた機能があるはず!)
時雨自身がイージス艦になったのは偶然ではない。何か意味があるはずだ
そして……見つけた
「提督! 核ミサイルを僕が撃ち落とせる!」
『お、おい! 何を言って──』
「説明は後だよ! 僕には弾道ミサイル迎撃ミサイルを積んでいる! これで迎撃出来る!」
時雨は提督の言葉を遮った
『それは本当なのだろうな?』
「本当だよ! だから、浦田結衣の攻撃に専念して!」
時雨は叫ぶと同時にイージスシステムをフル稼働させた。弾道弾迎撃ミサイルは発射態勢を取った
しかし……
(もし、撃ち落とさなかったら……)
時雨は冷や汗をかき、手が震えていた。迎撃出来なかったら、皆が死ぬだろう
そんな時、無線が入ってきた
『時雨ちゃん! 聞こえている!?』
「優子さん、無事だったの?」
まさかの無線相手に時雨は驚いた。ヘリが撃墜されたから、彼女がどうなったか想像はしていたが
『足はあるわ。そんな事より状況はターズから聞いた。今の時雨ちゃんはイージス艦よね!? 私の配属された護衛艦はイージス艦だから機能は分かる! 弾道弾迎撃ミサイルの種類は?』
「SM-7ブロックⅣとある」
『現存の迎撃ミサイルの進化版? なら、イージスシステムも強力なはず! 貴方の能力でターズと接続を開始して!』
「分かった!」
時雨は直ぐに無線を収集しターズの無線をキャッチ。データリンクの接続を開始するとターズの声が聞こえた
『この機能は素晴らしいですね。喜んでください。ミッドコース段階だけでなくターミナル段階でも迎撃可能です』
「え?」
ターズがシステムの中に入ってきたのが分かった。感覚なのか、それとも勘なのか?
内容は分からないが、優子は違っていた
『噓でしょ! しかも……データを見る限り迎撃率高いじゃない! 時雨ちゃん、ターズの言うとおりにして! 私も手伝うから』
「分かった!」
時雨は答えると、システムの画面が数式で埋まった。恐らく、優子2尉とターズが迎撃するための計算をしているのだろう
このやり取りを聞いた艦娘達は逃げもせず絶望に歪んだ顔で空を眺めていた
しかし、逃げる者はいない。無線のやり取りを聞いていたからだ
時雨が核ミサイルを迎撃出来て皆を救えるのか。それとも核の炎でやられるのか
一方、無線では別のやり取りがあった
『大和、お前の熱線を遠くにいる敵に当てることは出来るか!?』
「無理です。水平線の向こうで当たりません」
大和は涙目になりながら答えた。地球は丸いため水平線の向こう側にいれば攻撃出来ない。光線は一直線に飛ぶのだから無理である
「私の荷電粒子砲を核ミサイルの迎撃に使えば」
『それでは何も解決しない! 敵の核ミサイルの数も分からないんだ! 再び撃ってこられたら迎撃出来るかどうかも怪しい! 敵艦を直接叩く必要がある!』
しかし、遠距離攻撃出来る手段は持っていない。こんな事は想定しておらず、これに対処する能力は無い。ジェット戦闘機でも間に合わない。イントレピッドのF-14と武蔵のF-35が向かったが、とても間に合わないし、間に合ったとしてもレーザー砲の餌食になるはずだ
そんな中、無線に割り込んでくる者がいた
『……出来るはずだ』
「え?」
『可能だ! 荷電粒子砲は本来、地磁気の影響で一直線には飛ばない。つまり、水平線の向こうでも熱線を曲げて敵に当てる事は可能なはずだ!』
「それは私でも出来ます?」
『僕も今の大和の未知のテクノロジーには分からない。恐らく、既存の物理学に当てはまらない科学技術が組み込まれているかも知れない。今の君なら出来るはずだ!』
大和は柳田教授に励まされたため、目を瞑り集中させた
艤装が赤くなり、艦首にある荷電粒子砲の周りにパルスを発生させている。そして、大和は無線で一言だけ言った
「やれます!」
そのためには莫大なエネルギーが必要だ。チャンスは一回!
「イントレピッドさん! 敵の位置を割り出して! 正確な場所を知りたい!」
『OK!』
「絶対に許せない……貴方だけは許しません!」
イントレピッドはE2Cホークアイからデータを送った。核攻撃を防ぎ、且つ核を撃っている浦田結衣を葬り去るにはそれしかないからだ
そんな中、武蔵が無線で叫んだ
「教授! 荷電粒子ビームとかを誘導させるため手段は何がある?」
『色々あるが、レーザーなら荷電粒子ビームの通り道になる。高出力でなくてもいい』
「よし、大和! 私のF-35を使え! レーザー照準用がある*4!」
本来は使い方が違うのだが、今はなりふり構ってはいられない。大和は敵の居場所を捕捉すると、エネルギーを艦首に集めていた
一方、時雨の方では既に計算を終えた
『SM-7発射始め!
時雨の艤装であるVLSから24発もの弾道弾迎撃ミサイルが一斉に発射された。自動で探知識別をし、追尾出来るのだが、相手が相手なので慎重に確実に迎撃しなければならない
レーダーで追尾していた24発のミサイルに時雨が放った迎撃ミサイルが迫っていた
「お願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願い」
ミッドコース……大気圏外を飛行しているミサイルを迎撃するのだから祈るしかない
結果がどうなるか息を飲んでいたが、優子から返事が来た
『19発は迎撃成功! しかし、5発は残っている!』
「まだまだ!」
時雨は叫ぶと再び弾道弾迎撃ミサイルを発射した。ミサイルの残弾は把握していないが、今はそんな事で躊躇する訳に行かない
結衣が放ったミサイルは既に大気圏に再突入してターミナル段階に達していた。こうなると、ミサイルの速度は最高速度に達する。レーダーによるとマッハ10に達している
迎撃ミサイルは弾道ミサイルに殺到し、4発は迎撃出来た
残り一発が真っ直ぐ向かっている! 迎撃ミサイルの発射が間に合わない!
「時雨! ミサイルがまだ──」
アイオワが絶叫した時、ターズが早口で言って来た
『ヨウ素化学レーザー砲*5が積んであります! 照射して下さい!』
ターズの説明で時雨は艤装に積んである砲塔を動かした。CIWSや単装速射砲とは違う砲塔。いや、砲塔というよりレンズであり、浦田結衣が持っていたレーザー砲に近かった
いや、浦田結衣とは違うレーザー砲と言っていい。引き金のようなものを引くと赤い光線が照射され、迫ったミサイルは木端微塵に吹き飛んだ。辺りに破片が飛び散り、仲間に被害はあったものの、ほとんどが歓声を挙げていた
「Yes! 迎撃出来た!」
アイオワは喜び、他の艦娘も同じだ。しかし、時雨はそうでもなかった。まだ、敵はいる! 何もしていないはずはない!
「極超音速対艦ミサイル発射!」
E2Cホークアイで敵が何処にいるか分かっている。時雨は対艦ミサイルを数発発射した。対艦ミサイルはハープーンとは違って猛スピードで飛翔していった
「ミサイル程度では結衣に効果は……」
加賀はミサイルが飛んでいった方向に目を向けながら呟いたが、まさかと思い大和に目を向けた
大和はエネルギーの限界一杯まで集めたのだろう。艦首の周りにはリング状の光が囲むように光っている
「エネルギー充填100%、対閃光防御して! 目標、遠方にいる不明戦艦『デビル』。発射5秒前4,3,2,1……発射―っ!」
大和の掛け声とともに眩い赤い光が辺りを照らした
呉鎮守府の離れた場所では奇妙な報告が相次いだ。目にも止まらぬ飛翔体が沖合へ突進しているのを確認したと思った時、厚い雲で覆われて薄暗い空が突然、真昼のような明るさになった。その光は呉鎮守府から放たれたものらしく、呉鎮守府から離れた検問所からも観測された
陸地から真っ赤な光が沖合へ伸びるように……
空が切り裂いたような圧倒的な光景に避難民も警官も身動きすらしていなかった。大破し漂流して負傷者に追われていたイージス艦『あいづ』の乗組員たちは手の動きを止め、圧倒的な光景に凝視していた
異常事態のはずなのに、艦長を初め乗組員たちは不思議と恐怖は感じなかった。皆は何か神の奇跡を見たような気持ちだったらしい
502部隊と武田が率いる浦田残党も例外ではなかった。核攻撃という事実を知らされ、再びにらみ合いは発生していたが、呉鎮守府から突然、真っ赤な虹のような光の出現に心を奪われた。杉田警部も例外ではなかった
「時雨……大和さん……」
ただ神州丸は無意識に口をした。誰の仕業か分からないが、こんな事をやる艦娘は限られている
浦田結衣は核ミサイルを発射した後、空母に変形すると再度攻撃態勢に入った
空母と言っても浦田結衣は赤城加賀などの空母娘のような艦載機をたくさん持っていない。艦戦すら一機もない
その代わり巨大な輸送機を1機持っている。カタパルトで射出し発艦出来る能力はあるため問題はなかった。が、着艦能力はなく不時着させて回収する代物。要は使い捨てである
本来ならこんな事はあり得ない。誰も実行しないだろう
だが、この輸送機には恐ろしいものが搭載されている
「高高度核爆発による電磁パルス攻撃で時雨の電子機器を破壊させた後、世界最大級の水素爆弾を落としてやる。本来の威力で吹き飛ばしてやる」
結衣はニヤリとした。核ミサイルが迎撃されたのは知っている。恐らく、時雨のイージス艦の能力だろう
なら、やる事は1つ
その能力を奪えばいい。そして、世界最大級の水素爆弾を落とす手はずだ
皮肉な事に柳田教授の予測が当たったらしい。明らかにオーバーキル。正史である広島原爆投下よりも悲惨な事を結衣はやるらしい
「5年前に電磁パルス攻撃したお返しをする。輸送機はっ──な!」
その時だ。高速で接近している飛翔物体をレーダーで捕らえた。慌てて防御用のレーザー砲で迎撃したが、一発は迎撃出来ず諸に受けてしまった。しかし、不発だったのか、ミサイルは爆発もせず艤装に刺さったままだ
「フン、悪あがきか。ミサイルごときで沈むわけ──」
結衣は悪態を吐いたが、その時だった。眩い赤い光が突進してくる。しかも、水面に沿って光速にこちらへ向かっている。まるで熱線が意志を持っているかのように正確にこちらに向かっている
「バカな! 光線は直進するから水平線の向こうにいる私を攻撃出来ないはずだ!」
これは確かに正しい。光線は直進するため、水平線の向こう側にいる敵を攻撃するには光を屈折させるか、誘導される何かをしなければならない
しかし、大和が放ったものは荷電粒子ビームである。F-35レーザー程度では流石に大出力の荷電粒子ビームは誘導出来なかった。しかし、誘導出来るものがあった
それは時雨が放った極超音速対艦ミサイルである
荷電粒子ビームを誘導する能力を持っていた。恐らく、個々の能力ではなく、艦隊運用前提での大改装なのだろう
荷電粒子ビームは時雨が発射した対艦ミサイルを目掛けて突進していた
荷電粒子ビームは止まらず、敵を捕まえると、ビームは上空へ向けて屈折した。捕らえた物体も同様に上空へ向けて飛び続けた。大和がまだ荷電粒子ビームを発射しているからである
ビームが捕らえた物体は成層圏をつき向け宇宙へ放逐された
そして……荷電粒子ビームの照射が終わったのか、赤い光が消えた時、核爆発が起こった
深海棲艦の拠点
深海棲艦は浦田結衣の影響で散々な目にあった。一時的に操られたりして悩みの種だったが、洗脳が解除された事により少なくとも艦娘側が勝っているだろう。ラジオを聞いていたが、内容が支離滅裂で分からなかった
向こうは夕方の時刻だろうが、こちらは既に日が暮れて夜に差し掛かっている
なので、偵察を兼ねて援軍を送ろうとした時、空全体が真昼のように明るくなった。姫級も鬼級も空を見上げていた
「オーロラダ!」
「オーロラ? ココハ、北極海デハナイノニ?」
北方棲姫の興奮に港湾棲姫は驚きを隠せずにいた
ここはトラック島だ。なぜ、上空にオーロラが?
呉鎮守府
呉鎮守府でも異常は観測された。薄暗い雲が霧のように消えたと思ったら、空が真昼のように明るかったからである。午後4時にも拘わらず、真昼のように明るかったからだ
「あれは!?」
大淀は空に指を差した。奇妙な光景に負傷した艦娘達も不思議そうに空を見上げていた
「あれはオーロラじゃのう。アラスカで見たオーロラよりも綺麗ではないが」
「オーロラを発生させたのはどっちだ? 浦田結衣か? それとも大和か?」
博士は上空を見ていたが、提督はそれどころではなかった
敵がどうなったか分からないからだ
「あれは人工オーロラだ。宇宙で核爆発した結果、発生したのだろう*6」
「え? 宇宙?」
柳田教授の説明に提督は啞然とした。宇宙で核爆発? なぜ?
「パパ、ターズが突然、動かなくなった! パソコンも!」
「電磁パルスの影響だ。高高度核爆発したからだ。広範囲に電磁パルスが降り注いでいるのだから送電網や通信手段は死んだな。ターズは心配ない。再起動するまで時間がかかるが」
「用意周到ね」
優子は動かなくなったターズを見て知らせたが、核爆発という単語を思い出してハッとした
「つまり、大和の荷電粒子ビームが浦田結衣を宇宙まで吹っ飛ばした?」
「そうとしか考えられないな」
未だに明るい空に提督は答えた。突拍子もない事は慣れたため驚きはしないが……
「それよりも……この光景……絶対に100メガトンの水素爆弾に違いない。僕たちの世界だったら大問題だ」
「この世界も大問題でしょ!」
教授の何気ない言葉に優子は指摘したが、教授の言った通り、21世紀の世界だと宇宙の核爆発は大問題だろう。尤も、地上で核爆発されても困るのだが
「敵を倒したのあれば、英雄を迎えることにしようか」
提督はこちらに向けて航行して来る艦娘達に目をやった
マティアス・トーレス大佐(エースコンバット7)「分からんか!分からんか100万人だぞ!」
浦田結衣は核ミサイルをコッソリと持っていて発射しました
しかもツァーリ・ボンバの本来の威力を落とそうとしていましたね
何をしているのでしょう()
しかし、現実世界よりも高性能なイージス艦になった時雨は迎撃出来ました
危なかったですね
え?もし、呉鎮守府と艦娘がいる海域に核ミサイルが着弾したらどうなっていたかって?
浦田結衣はマティアス・トーレス大佐みたいに狂った笑いをしていたでしょう(レールガンによる核発射を止められかった時の彼の笑い声は正に悪役でした)