時雨の緊急任務 ~リベンジ~   作:雷電Ⅱ

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先日の津波警報には驚きました
海底火山でも津波は発生するのですね


第65話 深海棲艦の意地

翌日

「連絡が途絶えた?」

 

 大淀からの報告を聞いた提督は驚いた

 

「はい、飛行場姫から追われているのを最後に途絶えました。待機していた二航戦が出撃しましたが、現場海域にはいませんでした」

 

 大淀は淡々と答えた。時雨から追われているのを最後に無線が通じなくなったのだ

 

 急いで待機していた飛龍蒼龍が駆けつけた。飛龍蒼龍は呉戦争で、比較的軽傷であったため直ぐに復帰できた。しかし、彼女たちが駆けつけた時には時雨達や飛行場姫はいなかった

 

 ただ、目標である島は見つけた。深海棲艦は既に居なかったが、崩壊した謎の建物があった爆撃されたのか、あちこちで火が上がっていた。そのため、その建物が何なのか分からないとの事だ

 

「飛龍蒼龍たちが探しているのですが……」

 

 大淀が言いにくそうなのは無理もない。連絡が取れないとなると時雨達はどうなったのか

 

 そんな時、夕張から入ってきた。大本営からまた連絡が来たらしい

 

 

 

 無線室

 

『例の島はどうなったのか? 爆撃したか?』

 

「分かりません。偵察隊を出したのですが、連絡が取れません」

 

『偵察隊の事はどうでもいい! 島の施設は破壊したのか、と聞いている!』

 

 相手は国防大臣だったが、スピーカー越しでも苛立っているのが分かる

 

「はい。破壊しました」

 

 提督は簡潔明瞭に答えた。事実だからだ

 

『よろしい。それで艦娘である偵察隊は戦死したのか?』

 

 予想外の問いに大淀も夕張も顔を強ばらせた。連絡が取れないのに、もう戦死扱い? 

 

 大淀が前に出てマイクを奪おうとしたが、提督は手で制して意外な事を言った

 

「恐らく撃沈された可能性はあります。通信が途切れる前に飛行場姫の追撃を受けたと言っていましたから」

 

『そうか。撃沈した艦娘についてはお悔やみ申し上げる。──さて、また指示があれば追って連絡をする』

 

 国防大臣はそう言うと、さっさと通信を切った。通信を切ったと同時に大淀と夕張が物凄い剣幕で迫ってきた

 

「どうして戦死扱いにするのですか! まだ、生きているかも知れないのに!」

 

「分かっている。俺は『撃沈された可能性』と言っただけだ」

 

 大淀の怒りに対して提督は宥めた

 

「だったら、何で──」

 

「なあ、深海棲艦を倒せる超兵器は、まだ稼働しているか?」

 

 提督の予想外の質問に大淀は面食らったが、代わりに夕張が返答した

 

「もう無いはず。私達を助けた『あいづ』と『あこう』はドック入りだし、作戦機も稼働率が下がったと聞いた」

 

 呉戦争で援軍として駆けつけたイージス駆逐艦である『あこう』と『あいづ』は沈まなかったものの大破したため、他の駆逐艦に曳航されていった。曳航中は艦娘数人で護衛したため『あいづ』の艦長から感謝された

 

「全部、あの悪魔が暴れて壊したから大半はマトモに動ける兵器はないはず」

 

「残り半分はあるなら、尚更不味いな」

 

 提督は考えながら言った

 

「あの国防大臣、何か隠しているな。偽札騒動と何か関係あるかも知れない」

 

「深海棲艦と繋がっている、と?」

 

「いや、それは無いだろう。艦娘に頼らずに、ご自慢の超兵器で倒せばいいのだからな。しかし、ご自慢の超兵器も大半はスクラップになれば、軍を動かそうにも動けないし、撃沈した艦娘がいたのを全く思っていないとなると、口封じする手間暇が省けたと内心では喜んでいる。あの大臣、何かを隠したがっている」

 

 提督は慎重に言葉を発した

 

「あの島、何かあったのは確かだな。深海棲艦の情報よりも世論にバレると不味いものが。大臣のやらかし、もしくは捕まった時に情報を聞き出して深海棲艦が悪用されたと見ていいだろう」

 

「やらかしって何なのです?」

 

「分からない。推測に過ぎない。だが、国防大臣は念入りにこちらが出した偵察隊の行方を知りたがっていたの確かだ」

 

 提督は確信したように言った

 

「時雨達が生きている事がバレたら殺される可能性が高い」

 

「「ええ!」」

 

 大淀と夕張は驚愕した。殺される? 

 

「どうしてですか!」

 

「権力者にとって都合が悪い情報というのは闇に葬られるのが定めだよ。カメラを持たせたが、都合が悪いものを撮られたとわかれば、国防大臣は容赦しないだろう。難癖つけて逮捕される可能性もある」

 

 提督の答えに大淀の顔は真っ青になった。最悪の場合、日本軍と交戦する可能性もある

 

 そうなると内戦になり、事態の収拾が追い付かなくなる

 

「だから、徹底的に探し出せ」

 

「で、でも……まだ養生中の艦娘は多いですし、艦隊による出撃は出来ません」

 

 夕張はしどろもどろになりながらも応えた。何しろ、浦田結衣との戦闘のお陰で未だに入院中の艦娘が多いのだ。流石の腕が立つ博士も教授も全員の艦娘を短期間で治療させるのは難しかった。復帰できた艦娘も駆逐艦がほとんどであり、遠征は兎も角、戦力としては乏しい

 

「艤装も修理中ばかりです。時雨達の艤装も共食い整備で何とか稼働出来たもので、しかも無線機は1つしか渡していませんし」

 

「だからだ。恐らく無線機が故障したのだろう。国防大臣に見つかる前に、探し出せ!」

 

 提督は命じたが、夕張は困惑した

 

「出撃出来る艦娘は居ません」

 

「二航戦には悪いが、補給が終わればすぐに捜索させろ。潜水艦娘も使え。それに基地航空隊もいる」

 

「陸攻は全部整備中と工廠妖精が──」

 

「あるだろ。防空戦闘機は出していないからまだあるはずだ。それに明石が一式戦闘機を爆装バージョンに魔改造された奴が。呉戦争の時はエンジントラブルが見つかったため出撃しなかったのは覚えているぞ」

 

「え……あれは……」

 

 提督に指摘されて夕張は狼狽し、大淀は夕張に睨みつけた

 

 明石は基地航空隊の防空戦闘機に何をしたんだ? 

 

 

 

 ある海域

 

 提督の予想通り、時雨達は生きていた。飛行場姫の追撃を見事にかわした。夜間というのを活かして敵を見事に振り切ったのだ

 

 しかし……

 

「無線機が壊れて連絡できない」

 

 村雨は落ち込んでいた。自分たちがいるのは海上である。場所は大まかには分かるものの、鎮守府との距離は離れている。一番近い陸地ならいけるが、それでも数時間はかかる

 

「対空砲火を撃ちまくったから飛行場姫の艦載機は減ったかも」

 

「戦艦レ級がいるから安心は出来ない」

 

 吹雪は座り込みながら言ったが、時雨はきっぱりと言った。飛行場姫の攻撃をかわしたのはいいものの、貴重な無線機は壊れたため今は海難に近い状態だ。がむしゃらに進んだため、燃料も後わずかだ

 

「でも、あの建物は何だったのかしら? 深海棲艦がお札を刷っているのは分かるけど」

 

「何かあるね」

 

 如月と睦月は考えるように言った。確かに深海棲艦が偽札を刷っていたのは初めて聞いた。ブリーフィングで提督は深海棲艦が人類の戦争を学んだらしい、と言っていたが、前例はない

 

「写真は撮ったから何か分かればいいんだけど」

 

 時雨は呟いたが、あの印刷機械が何なのか分からない。提督に持っていけば分かるだろうが

 

「近くの陸地に上がって公衆電話を使って連絡するしか……」

 

「小銭持ってきたの?」

 

 村雨は小銭入れをポケットから取り出してコインを数えていたが、時雨は呆れていた。まさか、持ってきていたとは……

 

「大鷹さん、一番近い陸地は?」

 

「ここから東に行けば陸地です。恐らく、四国かと」

 

 大鷹は指を差しながら言った。艦載機は天山一機しかいないため、偵察用でしか飛ばしていない。それに加えて機上無線も故障しているため、通信は出来ない。しかし、陸地に上がれば連絡手段はあるのだから心配いらない

 

「分かりました。みんな、そこへ行こう」

 

 時雨の指示で皆は動き出した。しかし、他の艦娘は知らない。潜水しながら接近している二つの影がいることに

 

 

 

 某県・警察署

 

 杉田警部は集められた偽札を調べていた。鑑識の結果が書かれた書類に目を通したが、内容は驚くべきものだった

 

「鶴川君、見てください」

 

「杉田さん、何か分かりました?」

 

 杉田警部は鶴川巡査部長に書類を見せた。鶴川巡査部長は書類に目を通したが、読むにつ入れて目を見張るものだった

 

「え? 偽札ですよね?」

 

「ええ。問題は『なぜ深海棲艦はそんな機械を手に入れたか』です」

 

 杉田警部は偽札である紙幣の一枚を手に取り眺めていた。浦田結衣との騒動で余計なものが出てきたらしい

 

「そんな事より杉田さん。四国でテロ組織によるテロ行為が起こっています。革命軍とか名乗っているそうですが」

 

「そのようですね。先の戦争と偽札騒動で治安悪化に加えて暴力団との抗争があちこちで起こっていますからね。革命軍と名乗るテログループも現れる始末です。板倉警部も現場に行っているようですよ」

 

 杉田警部はそう言いながら机に置いてあった新聞に目をやった。新聞の見出しは治安悪化と偽札騒動ばかりである

 

 

 

 四国から数キロの海域

 

「見えてきました! 四国です!」

 

 吹雪ははしゃいでいた。遠いとはいえ陸地に見えたのがうれしかったのだろう

 

「早速、上陸して──」

 

 村雨はそう言ったが、大鷹は制止した

 

「待ってください。銃声が聞こえます」

 

「え?」

 

 村雨は驚きの声を上げていたが、確かに拳銃の発砲音が聞こえる。それに加えて拡声器やサイレンの音が聞こえてきた。建物はそんなに無いものの、パトカーから発する赤いライトらしき光も見える。港町で何かが起こっているのだろうか? 

 

「内戦?」

 

「上陸は止めた方が良くない?」

 

 睦月は青ざめた。日本国内で内戦の情報は入ってきていない。侵攻してきたロシア軍は既に捕虜となっているため、侵攻してきたとは考え難い。なので、これは犯罪現場なのだろう

 

 しかし、艦娘が治安のために出動する要請は無いため介入は出来ない

 

「別の場所に上陸しません?」

 

「呉鎮守府に行った方が良くない?」

 

 如月と吹雪はあれこれ提案したが、決めるのは旗艦の時雨だ。時雨も迷っていた。燃料はまだ余裕はある

 

 そのため時雨は気づかなかった

 

 時雨の背後から蛇のようなものが海面からゆっくりと出現した。頭部である所には目は無く立派な口がついており、首辺りには砲塔がズラリと並んでいる

 

 その蛇はゆっくりと口を開き時雨にかみつこうとした

 

「時雨、後ろ!」

 

 吹雪は時雨の後ろの存在に気づいたのだ。叫ぶと同時に主砲を乱射した。時雨も慌てて移動した。そして、自分の後ろに奇妙な蛇がいる事にようやく気付いた

 

「いつの間に! 撃って!」

 

 時雨も主砲を発射したが、蛇のようなものは直ぐに潜ったため砲弾は捕らえず明後日の方向へ飛んでいくだけだった

 

「敵の潜水艦!?」

 

「爆雷をばら撒いて!」

 

 皆は慌てて爆雷をばら撒いた。ソナーで敵潜を捕える暇なんて無いため、勘で投げている。しかし、爆雷というのはほとんど勘で投下しているものであり、当たればラッキー程度である

 

 まして、深海棲艦なのだから爆雷をやり過ごすだろう

 

「皆、落ち着いて! 潜水艦じゃない!」

 

 時雨はそう言ったが、大鷹の背後から何かが飛び出した。大鷹は驚愕した。尾行している敵の正体が分かったからだ

 

「戦艦レ級!」

 

 大鷹は叫ぶと同時に被弾した。戦艦レ級は笑いながら至近距離から砲撃したためだ。大鷹は大破したが、村雨がスモーク弾で煙幕を張り、戦艦レ級が怯んだ隙に救助した

 

「陸地まで走って!」

 

 時雨達は陸地に全力疾走した。ここで戦っても意味が無い。陸地では犯罪の取締が行われているが、他にどうしようもない

 

 何しろ、敵が後ろから迫ってきている。戦艦レ級が海面から飛び出して砲撃するし、飛行場姫も怨念染みた声を発しながらこちらに来ている

 

 時雨達は警察の邪魔にならないよう離れた場所で上陸したが、運悪くテロ組織である革命軍が拠点をしている所だった

 

「おい、艦娘が何しに来た!」

 

「国家権力の乱用だ!」

 

「いいから逃げて!」

 

 ライフルを構えたテロ組織が吹雪に突きつけた事に時雨は怒鳴ったが、直ぐに二人は凍り付いた。時雨の怒鳴り声だからではなく、海から2つの深海棲艦が現れたからだ。戦艦レ級と飛行場姫が出現したからだ

 

「は?」

 

 男たちは凍り付き身動きが出来なかった。その一瞬が命取りだった。砲撃で叩き込まれたため、吹っ飛んでいった

 

 深海棲艦である飛行場姫と戦艦レ級は辺り一帯を攻撃し始めたため、現場は大混乱した。一番驚いたのは警察と野次馬と取材したマスコミだった

 

 人質立てこもり事件と大企業の爆破事件を取り締まろうとしにらみ合っているところを突然爆撃されたのだからだ

 

 取材していたマスコミは戦争状態です、と言ったが、本当に戦争に巻き込まれていた。そのため、報道陣も野次馬も一目散に逃げだした。自分たちの命が惜しいからである

 

 その間も戦艦レ級と飛行場姫は熾烈に地上攻撃を行った。空爆に加えて砲撃を無差別に攻撃した。住民は避難したが、今度は革命軍と名乗るテロリストと警官が避難する羽目になった。尤も、テロリストは直ぐに逮捕されたが

 

 爆撃されている間、大半の人は物陰に隠れて震えたり、喚き散らしながら逃げたりしていた。たまに反撃する者がいたが、彼らが持っているのは猟銃か拳銃か自前のロケットランチャーであり、当然のように深海棲艦には通用しない。撃ったら砲弾でお返しされた

 

「不味いよ、地上にも攻撃している!」

 

 時雨は焦った。深海棲艦は地上には攻撃することはほとんどない。あったとしても鎮守府襲撃くらいだ。だが、姫級が出向き本格的な攻撃したのは初めてだ。浦田結衣が操った時くらいしかない

 

 吹雪や村雨は反撃したが、彼女が持つ主砲は駆逐艦サイズ。相手は戦艦級であるため、戦艦レ級は痛くも痒くもなかった

 

 時雨は電話を探すため適当な建物に入ると、そこには泣きながら震えている女性数名と何か黒い物を巻き付けて腰を抜かしている男性がいた。アンモニア臭がするが気にせず、女性に聞いた

 

「すみません、電話ありますか?」

 

「で、電話?」

 

「そう! 電話!」

 

「あ、あそこにある」

 

 女性は指を差した。男性の近く妙な機械があるが、今はどうでもいい

 

「浦田製のショルダーホン*1? なんであるの?」

 

 時雨は小声で文句を言いながらも電話をした。この製品は知ってはいるものの効果で手が出せない。ただ自動車電話と同じ機能はあると聞いたことがある

 

 時雨はショルダーホンで電話をしたが、出た相手は電話交換手だった。呉鎮守府の電話番号のはずなのになぜ交換手が出るんだ? 

 

「いいから、呉鎮守府と繋いでよ!」

 

『そう言われまして……そちらの電話は人質交換との交渉用の電話です。お繋ぎするには警察の許可と通話料金が発生します。どうされますか?』

 

「こっちは戦争中だよ! そんな悠長な事を!」

 

 時雨は声を荒げながら答えた。爆音や銃声が聞こえないのか? 

 

「村雨! 電話料金が発生すると言っているけど、どうすればいい!?」

 

「そんなの提督に払わせればいいじゃん!」

 

 村雨も砲撃しながらもイラつきながら答えた。応戦しているが、全然効果がないためイラつくのも無理はない

 

「後払い出来る!?」

 

 時雨は受話器に怒鳴りながら言った。無線機があればすぐに応援を呼べるが、その無線機は故障。上陸した場所も武器を持った訳の分からない人だらけでこちらに銃口を向けてくる始末である

 

 皮肉にも深海棲艦の爆撃で逃げてくれたため邪魔は無くなったが

 

『警察から許可を頂きましたのでお繋げします。ところで料金プラン*2の方ですが、サービスはどうなさいます?Aプランの方は――』

 

「そんなものは要らない! サービスも何も!」

 

 時雨は吠えた。何で料金プランの話が出てくるのは分からなかった

 

 

 

 鎮守府

 

 提督は作戦室へ向かった。なんでも時雨が電話で連絡してきたらしい。無線機が故障されたから電話を使ったと言っているが、内容がとんでもないものだった

 

「提督、愛媛県の〇×市の港町から電話で緊急連絡してきました」

 

「電話って何処からかけた?」

 

「何でもショルダーホンからとか?」

 

「何処から入手したんだ、そんな高価なものを」

 

 提督は呆れながら言った。浦田重工業が全盛期だった頃に発売された持ち運び電話だが、あまりの高さに一部の人が使っている。時雨達はそんなものを手に入れたのか? 

 

 だが、電話での状況はとんでもない事になっていた

 

『戦艦レ級と飛行場姫が追跡して街ごと攻撃している! 至急、応援を!』

 

「地上攻撃? 戦い方を変えたのか?」

 

『早く応援寄越して!』

 

「分かった。……大至急、応援を。捜索している爆撃機と戦闘機は現場に急行させろ。二航戦も向かわせろ」

 

 提督は指示を出した。基地航空隊が捜索のために飛び立ったが、それが役に立った。現場到着までそんなに時間はかからない

 

 

 

 戦艦レ級も飛行場姫も地上攻撃していた。偵察されたからにはこちらも黙っているわけにはいかない。浦田結衣や超兵器の存在とやらのせいで勢力が衰えている

 

 まずは軍事兵器に必要不可欠である経済システムを破壊することにした。ある場所から盗んだとはいえ、偽札で紙幣の信用がガタ落ちにして混乱させる事にしたが、艦娘がまたも邪魔してきた

 

 深海棲艦の縄張りは海域なので陸地には興味ない。しかし、ここまで舐められては黙っているわけにはいかない。艦娘が上陸して逃げても無差別に攻撃した

 

 街に爆弾をばら撒き、砲弾は打ち放題。時々、銃弾やロケット弾、そしてダイナマイトが飛んできたが、艦娘の砲弾は兎も角、銃弾やロケット弾は痛くも痒くもない。投げてきたダイナマイトに関しては飛行場姫の艦載機が空中でキャッチすると投げた相手に丁寧に返してやった。男性が慌てふためく姿は中々の見ものだった

 

「キシシ」

 

 戦艦レ級は奇妙な笑い声をあげていた

 

 

 人類よ、これが深海棲艦だ

 

 

 

 深海棲艦のやりたい放題で港町は壊滅状態である。警官も革命軍と名乗るテロリストも今や避難が精一杯で近寄れない。武器も拳銃と警棒と軽機関銃では役に立たない

 

 それでも艦娘は物陰に隠れながら反撃していた。しかし、戦艦レ級は建物ごと砲撃したため、避難する羽目になった。しかし、弾薬はまだあるため、まだ戦える

 

「提督から応援機が来るって!」

 

「分かった!」

 

 時雨は電話をやり取りしていたが、応援機が来ると分かると参戦した。大鷹が代わりに連絡するからである。艦載機が無いため避難民の誘導が精一杯だからだ

 

「大鷹です! 西側の方から攻撃して下さい! 障害物がないです!」

 

 電話で基地航空隊の誘導を行っていた。無線機が電話替わりになっているため仕方のないことだ

 

「時雨さん、基地航空隊による爆撃が来ます!」

 

「魚雷で足止めして! 当たらなくていいから!」

 

 時雨は矢継ぎ早に命令を下した。戦艦レ級や飛行場姫もバカじゃない。電探ももっているはずだ

 

 そのため、気を逸らすため魚雷を撃つことにした。吹雪たちは海岸に突っ込み海の上に立つと魚雷発射した

 

 そこまではいいのだが、戦艦レ級が放った砲弾を直撃し吹雪は被弾してしまった

 

「吹雪ちゃん!」

 

 如月が叫んだが、それと同時に上空に爆音が聞こえた。見ると70機近くの航空機が接近している

 

 その航空隊こそ、応援機だった。爆装一式戦の隼Ⅲ型改(65戦隊)*3とそれを護衛する零式艦戦22型(251空)が接近していた

 

 戦艦レ級と飛行場姫は何本も撃ってきた魚雷をかわす事に気を取られていたため、反応が遅れてしまった。しかし、慌てることなく艦載機を仕向け航空隊に襲った。空中戦が繰り広げる中、隼Ⅲ型改は爆撃戦闘機であるため急降下爆撃を実施した

 

 爆弾の雨が戦艦レ級と飛行場姫に襲い爆炎に飲み込まれていった

 

 しかし、爆炎や水飛沫が収まるとまだ戦艦レ級も飛行場姫も無事だ

 

「あれだけ攻撃して倒れないなんて……」

 

 時雨は呟いたが、仕方ないことはある。何しろ、ミサイルなどのハイテク兵器は無くいからである

 

 だが、それで落胆するわけにはいかない

 

 基地航空隊の攻撃に続き、二航戦が放った艦載機も来た。友永隊が次々と戦艦レ級と飛行場姫に襲って来た

 

「撤退ダ」

 

「ソウダナ。コレデ人間モ艦娘モイイ気ニナラナイダロウ」

 

 戦艦レ級と飛行場姫はそう言うと海に潜り姿を消した。今までの戦闘が噓のように静まった

 

「やっと撃退した」

 

 吹雪は息を切らしながら言った。敵は撤退したが、被害は甚大だ

 

(そんな事よりどうしよう?)

 

 時雨は辺りを見渡した。港町は今や滅茶苦茶だ。消防や警察が救助活動をしている。軍も到着している

 

「あ……」

 

 時雨はカメラの事を思い出した。そしてポケットから取り出したが、何かにぶつけたらしく、カメラのレンズは割れていた

 

 現像出来ればいいのだが……

 

 後から聞いた話だが、例のショルダーホンは革命軍と名乗るテロ組織が持っていたものらしい。組織の中に大企業の御曹司が参加していたらしく、それを使って交渉していたとの事だ

 

 しかし、警察は電話会社に要請を出し御曹司が持っている電話を使えないようにしたため、あのようにもたついたのである

 

 

 

 鎮守府

 

「直ぐに時雨達を回収させろ。後始末は幾らでも出来る」

 

 提督は指示を出した。二式大艇が向かったため、回収できる。後は報告を聞くまでだ。板倉警部と名乗る刑事から内容は聞いたが、どうも時雨達は運悪くテロ組織による事件の中に突っ込んでしまったらしい

 

 提督は謝罪したが、当の本人は気にしてはいないようだ。ただ、後に厳重注意されるだろうが

 

 ……国防大臣からの横槍で無茶な命令を下す前に

 

 

*1
持ち歩き式の無線電話。携帯電話が普及する前の移動式電話。正史ではショルダーホンは1985年に発売され、携帯電話が生まれたのが1991年である。尚、一部の人しか使われた程度で一般に広まったとは言い難い。浦田重工業が未来情報を基に作り販売した電話らしい

*2
当時のショルダーホンは本体の価格が約20万円。月額で基本使用料が約2万円、通信料金は1分100円と高額である。余談だが、ショルダーホンの重さは約3kgである

*3
一式戦闘機『隼』の爆撃戦闘機。陸上攻撃のみならず対艦攻撃、場合によっては船団護衛や対潜哨戒も行った。そのためか、ゲームでは陸攻扱いになっている




後日
取調室
革命軍の一員「戦争はもう懲り懲りです」
板倉警部「だろうな(解放するために戦うと言っておきながらこれかよ)」


電話会社「請求書です」
提督「はぁ(請求金額に驚きながら)!?」
時雨(ヤバい)

九死に一生を得た時雨達
しかし、後始末は兎も角、肝心のカメラが壊れてしまい……

え?電話料金?何とかなるでしょう
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