イベントでE4を奮闘している時に揺れて驚きました
それはそうと、今話は最終章に突入します。そのため、予定よりも投稿が遅れてしまいました
現在の所は三話構成を予定としています
第73話 鎮守府祭と訪問者 1
鎮守府祭の当日
鎮守府祭の始まりは静かだった。戦争が終わって数週間しか経っていない事もあるのだろう。艦娘達は祭りの準備をし、提督は異常がないかどうかを見回っていた。数人は用事のため鎮守府から離れたが、どうやら重要人を呼びつけるために行ったようだ
前回では観艦式の時は人が多く集まっていたため、観艦式は前回同様、午後になった
前回の鎮守府祭と演し物についてはグレードアップしたと言っていい
そして鎮守府の外では、珍しいものが建てられていた
「静かだにゃ。許可が取れて嬉しかったにゃ」
「まさか本当に建てるとは」
神主の装束を纏った軽巡の多摩はベンチに座り、巫女装束を着ている姉妹艦の木曾が呆れながらも呟いていた
それもそのはず。鎮守府の離れた所に小さな社が建てられていた。妖精に頼んで造らせた神社だが、その大きさは建物サイズも人一人しか入れないほど小さかった。また、子供でないとくぐれない鳥居の額束には神社の名前が彫ってあった
それは……
「時雨神社を建てて正解だったにゃ」
「時雨に迷惑じゃないか?」
多摩は近くにあるベンチに腰を掛け日向ぼっこをしていたが、木曾は頭を抱えていた
何しろ、神社の名前が『時雨神社』と記していたからだ
「皆が無事なのは時雨のお陰だからだにゃ」
「本人に許可を取ったのか?」
「お昼寝するにゃ」
「誤魔化すな!」
木曾はわざと昼寝をしようとする多摩に文句をつける。どうやら、本人には言っていないようだ
「それに、今日の祭りが終わったら、片付けないといけないんだぞ」
「記念に取っておくにゃ」
「記念にって……」
木曾は呆れながら言った。記念に残すらしいのだが、これは簡単に移動できるものではない。解体しないといけないのだが
「はぁ~」
「あんた達、こんなものを作ったの?」
木曾はため息を付けていたが、後ろから呆れた声が聞こえてきた。声からして陸奥だ
「陸奥さん、これは事情があっ……て……」
木曾は咄嗟に言い訳した。こんな不備で怒られたりしないだろうが、時雨本人に見つかればどう言い訳すればいいかまだ考えていない
だが、木曾は陸奥の後ろにいる人物に固まった
「え? なんで、この人が──」
「彼はVIP扱いだから。時雨のサプライズさせるため連れてきたの。大変だったの。提督に言いつけられて硫黄島まで行ったの。彼の上司も笑っていたけど」
木曾は驚き、多摩も目を丸くしていた。2人は直接会ったことはないが、話と写真で見たことはある
「なあ、この神社は賽銭箱が無いけど、お賽銭は君たちに渡せばいいのか?」
「こ、ここは本物の神社ではないから、さ、賽銭はいらない」
木曾は説明したが、慌てたせいもあって言葉に詰まっていた
「そうか。いや、良い所だ」
彼は財布をしまい、代わりにカメラのようなものを出すと写真を撮っていった。神社だけでなく多摩木曾の二人も写真を撮っていった
「では、行きましょう」
陸奥は案内され、彼も後に続いた
「そういえば、陸奥さんは数日前に内火艇を積んで深夜に遠征へ行っていたにゃ。戦艦だけいくなんておかしいと思っていたけど」
「長門が落ち込んでいたのはそのためだったのか」
木曾は数日前の事を思い出した。新たな海域を調査するため戦艦陸奥と駆逐艦である三日月と有明を派遣した。陸上の姫級を警戒するためと言っていたが……
時雨は提督室に呼び出された。何なのだろう? もう鎮守府祭は開幕しているのに
扉を開けると複数の人がいた。提督と大淀や秘書艦である夕立に加えて陸奥金剛がいた。お茶会用の椅子と机があり、提督室には紅茶の香りが漂っていた
だが、金剛の向こう側に座っている人を見て驚愕した
「え? え?」
時雨は目を丸くした。なんで、この人がここにいるんだ??
思考停止状態になっている時雨だが、彼は立ち上がり寄ってきた
「数十日ぶりだな、時雨」
自衛隊の制服姿の恰好をした田村1等空尉が歩み寄ってきた
「わざわざ呼んだの?」
「親父と陸奥さんで硫黄島に言ったんだ。柳田教授の娘さんを呼ぶ方法と同じで招いた。来賓として連れてきたからさ」
「あくまで別世界の自衛隊による視察だからね。休暇申請と書類作成に手こずったよ」
提督の説明に田村1尉は補足していった。どうやら、田村1尉はVIPとして招いたらしい。表面上では使節の代表として選ばれたという事だ
「海外派遣で何度も言った事はあるが、平行世界の日本へ派遣されたのは初めてだ」
「それでも十分だよ」
時雨は嬉しかった。前回と違って今度は向こうがやってきてくれた
「まだ時間はあるから一緒に見回りでもしたらどうだ?」
「それじゃあ、F-14の件と浦田重工業の件で?」
「そうだ。平行世界の存在を認めた事で幕僚幹部たちは浦田重工業が何をしてきたか、を知る必要があった。そちらでF-4戦闘機や74式戦車が使われたのだから証拠と廃棄したのを確認して来い、と言われた。後は長田元3等陸曹の件だ。陸自の連中が五月蠅くてね」
田村1尉はそう言った。実は硫黄島の件で彼の上層部は、平行世界で浦田重工業が何をしたのか把握していた。ただ、聞いただけで自衛官本本人が確認した訳でもない。また、艦娘達と提督との間で仲介役として活躍するよう言われたのだ
「後で浦田重工業側に付いた長田元3等陸曹がしてきたことも把握しないといけないからね。イラン空軍の関係者に説明するのが大変だった」
田村1尉は最後には独り言のように呟いていた。実は、浦田社長は田村1尉がいた世界ではある宗教団体と繋がっていた。その宗教団体は過激だったことに加えて閉鎖的であるため、何をしているのか分からなかった。しかし、平行世界の件まで加わると事態は一変し、国民に対して秘匿された
これは当然のことで、平行世界について説明してもほとんどの者は理解出来ない。世論は混乱し、しかもその宗教団体は、自衛隊や他国の兵器を奪って送り込んだ、となれば世論は大混乱するからだ
そして、突如小笠原諸島の上空に現れたF-14の撃墜に加えて艦娘達とのコンタクトは、ますます公表しにくくなった
そして問題はマスコミ対策である
例の宗教団体と所属不明のF-14とパイロット、そして自衛隊を巡り、何かとんでもないことが起こっている気配をかぎつけたマスコミは数社ほどいた
宗教団体の特異な現象や神の御業の正体は何なのか、を暴こうとするマスコミも出てきたのである
収拾がつかなくなる前に政府は手を打ったらしい。マスコミ各社の社長を呼び、首相自ら説明をしたのである。兎も角、政府判断で真実を公表しても構わないという時点が来るまで一切、伏せて欲しいと要請した
余りにも途方もない話だったので、マスコミ各社の社長は思考停止状態になったが、最終的に要請は受いれたのである。寧ろ、収拾がつかなかったというのが本当だったのだろう
しかし、その事により裏で情報を流している人も発見され、秘密裏に処分されたが
イラン空軍については田村1尉本人が説明した。平行世界の概念については、向こう側が理解したとは思っていないが、彼らは困惑していた
取り敢えず、F-14の残骸だけは引き渡したため彼らも認めざるを得ないというのが本当なのだろう
(アメリカも知っているだろうが、静観はするだろう。飛行機追跡アプリ*1では時雨達が俺たちの世界に来た時からグローバルホークが関東地方と硫黄島で旋回していたからな。横槍が入らなければいいが)
「どうしたの?」
「問題ない」
田村1尉が考え事をしていたため、時雨が心配そうになって覗き込んだ。田村1尉は笑顔になった
「そういえば、時雨の神社が建てられたらしいな。凄いじゃないか」
「え? 神社?」
時雨は面食らった。神社の話は聞いていない
「ん? ここに来る前に見たぞ。ホラ」
田村1尉はデジタルカメラというものを操作して時雨に見せた。画面が鮮明で映りも綺麗であるため、時雨や青葉が持っているようなフィルムカメラではない
だが、そんな事よりも画像に映っている写真を見て驚愕した
「な、何これ!?」
そこは神社であるが、鳥居に時雨の名前が彫り込んでおり、しかも祠らしき所には時雨の肖像画が建てられている。絵の出来からして、明らかに秋雲が描いたものだ!
「知らなかったのか?」
「そ、そんな!」
時雨は顔を真っ赤にしていた。以前に時雨の名前を付けた神社を作ると提督が言っていたが、本当に実行するなんて!
広場では演し物や店が多かった。喫茶店が多く他の客もいたため賑わっていた。時雨は特に演し物の担当はしていなかったため田村1尉に案内と仲間の紹介をしていた。ただ、田村1尉と一緒に回ったため、挨拶や立ち話が多かった
特に大和ホテルと店を出している大和と武蔵は、突然の訪問に驚いていた
「ラ、ラムネもあります。ローストビーフもありますよ。如何ですか?」
「ありがとう……1本と一切れでいいよ」
大和はラムネが入っている箱1ダースを丸々渡そうとしたため、時雨は慌てて止めに入り、田村1尉は困惑していた
「こ、こんにちは! 白露です!」
「は、春雨です!」
演し物を案内しながら歩いていると白露と春雨と出くわした。2人は慌ててお辞儀をした
「僕の妹だよ」
「そうか。こんにちは」
時雨が紹介したため、二人はニコリとした。まさか、出会うとは思っても見なかったからだ
「姉妹艦だからたくさんいるのか?」
「うん。10人はいるよ」
「にぎやかな姉妹たちだ。喧嘩はするなよ」
元々は軍艦であるため、姉妹が多くいるのは珍しいだろう
だが、田村1尉は遠くで的当てをしている子供たちの集団を見ていた。屋台にある的当てであり、空気銃で当て得点が高ければ豪華賞品を貰える仕組みだ
だが、高得点であろう的はどういう訳か動いていた
よくよく見ると連装砲ちゃんが的を掲げて動いている。島風と天津風のものだ。子供たちは動く連装砲ちゃんを見てはしゃいでいた
島風の連装砲ちゃんの可愛さと天津風の機械のような動きをしている連装砲に歓声を挙げていた
「そういえば、あれはロボットか?」
「うーん。違うと思う」
時雨はどう説明したらいいか分からなかった。島風や天津風などの連装砲ちゃんについては、時雨自身もよく分からない。柳田教授が作り上げたターズのようなロボットではないのは確かである。ただ、怪我をしたら明石が治してくれるため、ロボットの分類になるかどうかわからないというのが本当の所だ
「ビームを撃ったり、合体したり出来ないのか?」
「実弾だけだよ」
時雨は不意に自分や大和が超進化した時にレーザー砲を装備した事を思い出したが、言わないで置いた
もし風や天津風などが超進化したら連装砲ちゃんはどうなるのだろう? 秋月達も時雨と同様にイージス艦かそれに近い存在になるのだろうか?
島風や天津風に挨拶を行った後に展示していた航空機を見せた。柳田教授が宇宙開発に使われている試作機を展示していた
秋水、蝮龍(Ba349)、Me163、Me263が置かれており、体験搭乗まである
だが、田村1尉が見たいのは別のものだ
「ここに居たんだな。……君達を攻撃した機体なのによく展示したな」
「僕たちの敵は浦田重工業の者であって航空機自体に罪はないから」
時雨は立入禁止の札と柵の前に立っていた。その柵の中にはF-14とF-4が並べられていた
どれも浦田重工業に使われ、鹵獲されたものである。ただ、エンジンや電子機器は全て取り除かれており、飛ぶことも出来ない。博物館に飾るだけの航空機である
しかし……
「なあ、塗装した人って米軍関係者?」
「どうして?」
「アメリカ海軍のマークがあるのに、尾翼に旭日が書かれている機体はサンダウナーズという米海軍の飛行隊だ」
田村1尉の指摘に時雨は誰が描いたのか心当たりがあった。第二次世界大戦後に冷戦時代を経験した艦娘でアメリカ出身となればアイオワかイントレピッドのどちらかだ
若しくは両方だろう
F-4もF-14も元々はアメリカのジェット戦闘機だ
「証拠写真は撮るが……見せても信じないだろうなぁ」
「ごめんなさい」
「謝ることは無いよ」
時雨が謝った事で田村1尉は驚いた。まさか謝るとは思っていなかったらしい
そんな時、誰かがやって来た。宗谷だった
「特務艦宗谷です。お逢いできて光栄です」
「この娘は?」
「この人は──」
時雨は簡潔に時雨達が田村1尉の世界に往復した時に、誕生した艦娘という事を説明した
「なるほど……令和から再び昭和時代に行くなんてな。太平洋戦争……いや、大東亜戦争が無いだけマシか」
田村1尉は考えながら言った。誕生した理屈よりもこの世界の事を考えているらしい
この世界に来るとき、広島市の方へ足を運んだ
世界遺産である原爆ドームが無いため、複雑な気持ちだろう
「そんな事ないです。柳田教授の下で働いています。今度は宇宙へ行きます」
「え? 宇宙?」
「はい。何でも月ロケットを作っているとか」
田村1尉は啞然とした。この世界で米露よりも先に宇宙進出するつもりらしい。信じられなかったのか、時雨に聞いてきた
「本気でやるつもり?」
「本気だよ。柳田教授と助手のロボットはもうやる気だよ。聞いた話だとA4ロケット*2とかR7ロケット*3を作っているとか」
「……弾道ミサイルを作っているのか? いや、やり方としてはあながち間違っていないか」
田村1尉は呆れていたが、あまり追及しない事にした。宇宙ロケットと弾道ミサイルは大差ない。というより、R-7のロケットが宇宙開発用ロケットに転用されて多くの派生ロケットを生み出したのは否定出来ない。柳田教授はH2Aのようなロケットでは満足できないのだろう
R7ロケットを開発しているのも宇宙開発を最短で実行するつもりだ。まだ直接会ったことは無いが、科学史に強い
宗谷が目を輝かせているのはそのためだろう。宇宙進出なんて夢物語の世界だと思っている。いや、田村1尉がいる世界でも実現は出来ているが、まだまだ課題は山積みだ。もしかすると、旅客機のように一般人でもお手軽な価格で宇宙旅行ができる日もくるかもしれない
「まだ、深海棲艦との戦争は続いているんだな?」
「うん。まだ停戦協定の真っ最中」
不意に田村1尉が聞いて来た。深海棲艦との戦争は一時的に中断されたと言っていい
「まあ、こういうのもなんだが……」
田村1尉は時雨と宗谷を交互に見つめた
「深海棲艦や浦田重工業の侵略が無ければ、太平洋戦争は遅かれ早かれ起こっていたかもしれない。ここではそうはならなかった。この日本は私が生まれた戦後とは違うものだ。この先、どう転ぶかあんた達次第だな」
田村1尉は秋水のコクピットに乗っている家族を見ていた。プリンツオイゲンの誘導に従って子供が興奮している
(どうなるか、か……)
この後はどうなるかは分からない。赤い石による大改装を受ける際にみた未来ビジョンにこの光景は無かった。もしかすると、最悪な未来は避けたかもしれない
未来を切り開けたのは、僕達と陰で支えた人たちのお陰だ
それは間違ない
番外物語2
田村「カラーテレビもあるのか。時代を先取りしているな」
時雨「浦田重工業の置き土産を有効に使っているからね」
ニュース「次のニュースです。△□刑務所で死刑囚と刑務官を殴り飛ばしたとして〇×容疑者が逮捕されました。調べに対して〇×容疑者は『太平洋戦争はあったんだ!分かってくれ!』などと意味不明な供述をしており――」
田村「あれは大丈夫なのか?なんで太平洋戦争という言葉が出ているんだ?」
時雨「えー……(え?これ続いているの?)」
因みにこの作品では広島大火災ドームなんてものはありませんよ(苦笑)