時雨の緊急任務 ~リベンジ~   作:雷電Ⅱ

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秋イベ(今は秋ではないが)の『護衛せよ!船団輸送作戦』は難しいですね
E1~E3は楽でしたが、E4からは難易度が跳ね上がりました
深山改は欲しいため甲攻略は諦めません!


第9話 浦田副社長

 大本営

 

「状況はどうなっている!」

 

 元帥は不満そうに部下達に聞いた。テロ攻撃で数名の政治家や軍人がターゲットにされて数人が死んだ。行方不明になった者までいる

 

「不正な電波の発信源が分かりましたので、通信は復旧します。ただ、テロリストが警察官に紛れて混乱しています」

 

 陸軍大将は不満そうに答えた。国葬でテロを起こすという輩がいるのだから当然だ

 

「警察は何をしているんだ!?」

 

「警察も特殊部隊を投入したので制圧も時間の問題です。……ただ問題がありまして」

 

 陸軍大将は言うか言わないか迷っていた。警察庁は大混乱に陥っていたが、今のところは順調だろう。しかし、もっと重要な問題があった

 

「502部隊の一個小隊と例の海軍中将は行方不明です。……更に厄介な情報が入りまして……」

 

「何だ、それは!」

 

 元帥は驚きを隠せなかった。あいつが行方不明? 何があった!? 

 

 

 

 鎮守府

 

 あの騒動の影で飲酒をしていたポーラと伊14のイヨの処分は無かった。テロリスト10名を無力化させて(泥酔させて)捕まえたという功績があった

 

 要はプラスマイナスでゼロになったである。その代わり提督は2週間は禁酒命令を出したが

 

 提督は禁酒命令で文句を言っているポーラと伊14であるイヨを、ザラと伊13であるヒトミに任せると今回の事件の犯人捜索に当たった

 

「あの無線機が使われている周波数が分かりました」

 

「でも、もう使われていません。何処にいるのか分からない」

 

 通信室では沢山集まっており、その中で明石、夕張がテキパキと答えたが、それはテレビ放送局を通して発信していたらしい。テレビ局は否定していたが、誰かが細工をしていたとの事だ。勿論、警察は捜査しているのだが、期待は出来ないだろう。警察も内部の裏切りの炙り出しに躍起になっているのだから

 

「提督、相手は誰か分かったって本当?」

 

 時雨は質問したが、提督は手で制した

 

「まあ、待ってくれ。──よし、繋がった。聞こえるようにスピーカーに繋げ。お疲れ様です、元帥」

 

『提督、無事だったか! そちらも襲われたという情報が流れて来て心配していたぞ!』

 

 元帥の声を聞いて時雨を初め、皆はビックリした。まさか、大本営に繋ぐとは思わなかった

 

「元帥、今回のテロリストのボスが誰か分かりました。武田 良克(たけだ よしかつ)です」

 

『なっ! 一体、どうやって? やはり、生きていたのか!』

 

「テロリストか持っていた無線機を通じて話しました。やつの声は何度も聞きました。間違いありません」

 

 提督と元帥の話にその場にいた艦娘は首を傾げていたが、長門や武蔵を初めとする数名の艦娘は違った

 

「提督、誰なの? 知っているの?」

 

「時雨も知っているはずです。尤もあんな状態の後なので記憶に無いのも無理はありませんが」

 

 提督よりも早く不知火が答えた。不知火が知っている? 

 

「そうだ。何せソイツは浦田重工業の副社長だった人物だからな」

 

「え?」

 

 提督の思わぬ発言に時雨は言葉を失った。副社長が生きている? 

 

 実は五年前の事件の後に警察などが現場捜査を行った。浦田社長や警備隊長などの主要人物の死体は確認されたが、副社長は見つからなかった。深海棲艦によって沈んだ船は沢山あったため、乗船中に死亡したと思われていた

 

 しかし、彼は生きていた

 

『死体は発見されていなかったから死んだと思っていたが。しかし、疑問が残る。なぜ武田副社長は総攻撃派などと手を組んだ。そんな情報は今まで無かったぞ』

 

「海外に潜伏していたんでしょう。しかし、現れたという事は何かしら行動を起こすはずです」

 

 提督と元帥の無線のやり取りに時雨は不安になった。確かに五年前にテレビで見た事がある。ただし、時雨もそこまで見ていなかった。……嫌な映像も流れていたためもあったが

 

 しかし、浦田社長の側近だ。思想も受け継いでいる

 

『提督、実は悪い情報が2つ入っている。高野海軍大将……いや、もう偽名を使うのはよそう。山本五十六海軍大将の死因は他殺だ。毒殺らしい』

 

 この元帥の報告にその場にいた者は驚いた

 

 この世界の山本五十六も暗殺されたらしい。『艦だった頃の世界』では、ブーゲンビル島上空で日本海軍連合艦隊司令長官山本五十六大将搭乗の一式陸上攻撃機の撃墜されたのだ

 

『もう1つは……お前の父親……中将と護衛していた502部隊が行方不明だ。大佐もあきつ丸もだ』

 

「戦死ではないのですか?」

 

 提督は平然としていたが、内心では動揺している。時雨は見逃さなかった。提督がマイクを握りしめているのを

 

『負傷した部隊の1人を保護した。恐らく、伝えるために1人だけ逃したのだろう』

 

 あれだけ暗殺や殺害などをしている連中が、なぜ中将や502部隊を誘拐したのかは不明だが、まだ生きている事に提督も時雨もホッとした

 

「では、今回の実行犯は?」

 

『その事だが──』

 

 

 

 ??? 

 

 ある港の廃工場では、ある集団がいた。ここは、私有地であり寂れた場所であるため容易に見つかない。しかし、時間の問題だろう

 

 大勢の人がおり、大半は武装している。残りは武器車両の手入れや無線のやり取りをしていた

 

 その集団の中に男が1人いた。嘗ては浦田重工業の副社長と呼ばれた者だった

 

 結果を聞いていたが、予想以上の成果だった。殺し損ねた軍関係者の一掃と政治家の暗殺。ラジオテレビ局の爆破、関東一帯の送電線の破壊工作……

 

 時間も資材も限られていたので、一発勝負に出た。勿論、ばれたら終わりだが、運はこちらに微笑んでいるようである

 

 だが、どんな作戦を練っても不測の事態は起こるものである

 

「武田さん、申し訳御座いません。提督と艦娘の生け捕りに失敗しました。何でも艦娘の1人が突然爆発したため──」

 

「言い訳は結構。しかも、艦娘の生け捕りに向かわせた分隊全員が音信不通になるとかあってはならない。目的達成の前に捕まったら意味がない!」

 

 武田はイラつきながら部下の言い訳を無視して下がらせるようにした。今回のテロはある政党の支援の元で動いている。その政党は総攻撃派、所謂タカ派だった。あらゆる条約や環境の度外視による深海棲艦や艦娘不要論を唱えている政党だ

 

 ただ、その政党も表向きは平和第一を掲げているため強硬には出れない。密かに過激派や市民団体に支援している

 

 武田は海外に身を潜めていたが、ある政党から声がかかったため過激派や市民団体の教育を行うよう言われた

 

それは大学の学生運動や連合軍と名乗る過激派の軍事教育だった

 

「今のままでは日本はダメになる。将来、艦娘は人類の脅威となる。そのためには、レジスタンスを形成するしかない」

 

 党首からはそう聞かされたが、武田はあまり興味なかった。総攻撃派などの主張も艦娘の存在もどうでも良かった

 

従うフリをしていただけだ。9ヶ月前くらいにある人物達から接触があったのだ

 

これを使えば浦田重工業は復活する! 

 

そんな事を考えている中、部下が無線機から連絡があったと報告した。副社長はマイクを奪うように手に取った

 

「私だ……攻撃命令は既に出したはずだ。但し、殺すなよ。艦娘の遠征部隊と深海棲艦の親玉を生け捕りに出来るのはお前だけだ」

 

 手短に言うと受話器を置いた。手に入れた『超人計画』の艦は最強だ。そのためには実績も必要だ。だから、撃沈命令は出さなかった。アピールするためである。後は新たに出来た平和党の党首と『超人計画』を売った相手が来てくれれば完了だ。こちらから連絡来る必要はない。平和党もニュースくらい見ているだろう

 

 

 

 鎮守府

 

翌日、講堂には艦娘が大勢集められていた。海外艦も含めてである。ニュースではテロ行為について報道されているため、艦娘全員は知っている

 

「集まった所済まない。急を要する作戦だ。今回は救出作戦とテロリストの殲滅だ」

 

 艦娘達は顔を見合わせた。国葬で襲撃があったと思ったら、夕方には救出作戦という。時雨も陸奥も夕立も神州丸もいる。

 

「妨害電波の逆探知と警察庁など捜索した結果、東京港の港施設がテロリストの拠点と思われる。しかも、このテロ事件は平和党が絡んでいる」

 

「平和党ってあの政党ですか?」

 

 提督の説明に赤城が口を挟んだ。赤城だけでなく、艦娘の誰もがあまり快く思わない政党であるからだ

 

「ああ、深海棲艦だけでなく、艦娘も全て排除して平和を得ようという政党だ。法改正案や憲法改正案に『艦娘は武装解除、深海棲艦は排除』などという条文を付け加えようとする熱心な国会議員の集まりだ。当然、棄却された。その腹いせか今では、自前の市民団体……いや、自警団まで結成させている。国家転覆を企てているという噂は本当だったわけだ。大本営爆破未遂事件や艦娘暗殺未遂事件を引き起こしたとされる。大本営は俺の親父と香取鹿島が、艦娘暗殺は山城で止まったから良かったが」

 

 提督の説明に山城は嫌な顔をした。暗殺者集団が間抜けだったために命が助かったのだ。その代償として酷い目にあった

 

「だが、今回の山本大将暗殺だけでなく、国防大臣や他の政治家暗殺があったのだから警察も本腰を入れた。国会では今や平和党は袋叩きだ」

 

「当然だ! アタシがその平和党の政治家達を全員ぶん殴ってやりたいぜ!」

 

 摩耶は叫んだ。市街地にテロを起こすことは許されない行為だ

 

「まあ、平和党の処分は警察に任せるとして、こちらはそれよりも重大な事をしないといけない」

 

「平和党やテロリストの処分よりも重大な事ですか?」

 

 加賀は質問したが、提督はキッパリと返事をした

 

「そうだ」

 

 提督の答えに講堂はざわめいていた。冗談かと思ったが、そうではないらしい。表情は深刻だ

 

「元帥からの連絡が来た。実は山本海軍大将は死因は他殺だ。しかも毒殺とのことだ。実行犯は不明だが、田中秦である可能性が高い」

 

 田中秦という名を口にした途端、ざわめいていた講堂は静まり返った。何故なら、聞いたことがあるからだ。警察庁ゼロ課の二人が教えてくれた殺人鬼を。浦田結衣の師匠というべき存在を

 

「そして、テロリストのリーダーだが、どうやら浦田社長の側近であった武田良克だ。副社長であった人物がテロリストの指揮下に入っていた」

 

「「「「ふ、副社長!?」」」」

 

 数名の艦娘が素っ頓狂な声をあげた。今、副社長と言ったのか!? 

 

「どうやって生きていたのかは知らない。ただ、不味い事に平和党が率いているテロ軍団の指揮下入っている事だ」

 

「Why? なぜ、手を組んで?」

 

 金剛は呆気に取られていたが、提督が手で制した

 

「疑問に思うのはそれだ。ただ、なぜかはわからない。教えてくれなかったからな。仕事の邪魔をさせないというか、美味しい所を横取りされるのが嫌というか」

 

 提督は不満そうに呟いていたが、時雨には分かっていた。警察官の中に偽物やシンパがいたからだ。警察にとっては面子の丸つぶれである。汚名返上するために警察だけで事件を解決するつもりだ

 

 だから事件捜査に協力してもいいが、主導権は警察だ! という魂胆が見え隠れしている

 

「そのため、例の二人組。ゼロ課に聞きました。杉田刑事は警察官僚と違って詳細に教えてくれました」

 

 今度は大淀が説明してくれた。中々教えてくれないため大淀が先日訪れた刑事さんなら教えてくれるだろうと意見を出した

 

 提督は名刺に書かれていた電話番号に電話すると杉田刑事が出てきた。まるで、こちらがかけてくるのを待っていたかのような返事をしていたが

 

「杉田警部の話によると平和党は海外のタカ派と組んでいるようです。思想に多少違いはあるようですが、内容はほぼ一緒です。艦娘不要論と主張する一団と組んでいるようです」

 

「それって可笑しくありません? 幾ら思想は似ているとはいえ、海外の人達と交流なんて」

 

 大淀の説明に鳥海は指摘した。なぜ、一派とはいえ海外と組むのか? 相手もそんなにあっさりと組むとは思えないが

 

 大淀に変わって提督が口を開いた

 

「そうだ。本来ならこんなのは共謀罪で捕まる。アメリカもテロと断定して取り締まっている。問題はその一派のボスが元CIAの職員なんだ。その職員は日本からある物を手に入れた」

 

「手に入れたのは何なのですか?」

 

 鳥海は質問しようとしたが、提督が口を開くよりも早くアイオワが言った

 

「超人計画の化学方程式と血清サンプル。崩壊した浦田重工業の残骸から盗んで成功さした」

 

 アイオワの爆弾発言に艦娘全員が驚愕した。アメリカが手に入れた? あの技術を? H44改を誕生させた化け物を? 

 

「どういうこと? なぜ──」

 

「伊勢、誤解しないで。ミーも阻止するよう動いていた」

 

 アイオワは問いただそうとする伊勢を宥めながら慌てて言った。時雨も同様だ。アメリカを含む海外の国が浦田重工業の技術に魅了し隙さえあればスパイを送って技術を盗もうとする。人の欲はそれほど深いらしい

 

 アイオワの話によると二週間前に遂に被験者の内、1人が成功したらしい。人が深海棲艦同様の力を得た能力を身に付けたという

 

「国防総省であるペンタゴンによるとメアリー・イザベラという16歳の少女が浦田結衣ほどではないが、人を超えた能力を手に入れたらしい。成功するや否やCIAの局員と賛同する一派はメアリーを連れてアメリカから姿を消した」

 

「消した? 脱走って事?」

 

「そうだ。しかも、どういう訳か一週間前には既に日本に来てるらしい」

 

 質問した足柄は未だに困惑した。他の艦娘も同じだ。なぜ、日本なんだ? 亡命? いや、それにしてはおかしい

 

 時雨は考えていたが、まさかと思い自分でも驚くくらい大きな声をあげた

 

「もしかして、裏で武田副社長と繋がっている?」

 

「可能性はある。そのCIA局員も過激でアメリカでは指名手配されている。しかも、メアリーイザベラという少女は……」

 

 提督は言おうか言わないか迷っていたらしいが、決意したらしく険しい表情で一気に言った

 

「異常犯罪者だ。10歳で当時、同年代だった男児と女児を絞殺したサイコパス殺人鬼だ」

 

「そんな奴なのか!?」

 

 長門も驚きを隠せなかった。極秘実験だろうが、恐らくそのCIA局員が手引きしたに違いない。そして、こう考えたのだろう。浦田結衣みたいにサイコパスなら成功すると! 

 

「メアリーがどこまで能力があるかは知らない。だが、浦田結衣と同等かそれ以上の能力を手に入れたら世界は危機的状況になる。ましてサイコパスが力を手に入れるとなると……」

 

 提督の重い言葉に講堂は水を打ったように静かになった。深海棲艦は怨念を纏っているという。つまり、憎悪、嫉妬、殺意、憤怒、狂気、絶望などのいずれかの負の感情が増大であれば人は深海棲艦の能力を持つことが可能である。但し、そんな負の感情を持つ人が正常な事をする訳がない

 

「それともう一つ問題がある。天龍と龍田が率いる遠征の艦隊が戻ってこない。ただ『攻撃を受けた!』という連絡があったきり音信不通。捜索を出したが、見つからなかった。襲撃だろうが、それが深海棲艦のものではなく、メアリーなら我々は全力で阻止しないと行けない。とは言え、場所が市街地だ。編成は駆逐艦がメインとなる」

 

「な、何でですか!」

 

 大和は唖然としていたが、武蔵は宥めるように言った

 

「大和、当然だ。市街地で大砲をぶっぱなしたらこちらが批判されてしまう」

 

 幾ら敵が町の中にいるとは言え、高威力の武器を使うわけにはいかない。被害が拡大するのは見え見えだ

 

「とは言え、メアリーが暴れたら対処しないといけない。戦艦は別の場所で待機だ。メアリーが模している戦艦は『モンタナ級』だ。こいつが暴れたら街が火の海になる」

 

「じゃあ、また強敵と戦えるのか。腕がなるな」

 

 武蔵はにやりとした

 

 モンタナ級……それは『艦だった頃の世界』においてアメリカが大和型戦艦に対抗するために建造しようとした戦艦である。しかし、パナマ運河の制約があったためにアメリカ海軍の艦艇はパナマ運河に通行できるサイズにしないといけなかった事もあり、建造は出来なかった

 

「モンタナはミーが知ってる艦ね。計画では16インチのガンを搭載している。but、18インチも積めることが出来るから搭載しているかも知れない。気を付けて*1

 

「アイオワは気にしないの? その……アメリカの戦艦でしょ?」

 

 アイオワの説明に時雨は質問したが、アイオワは首を振った

 

「ノープロブレム。第二の浦田結衣を蘇らさないのが最優先」

 

 普段は陽気なアイオワだが、この時は真剣な表情だった。アイオワもわかっていたのだろう

 

「1000に出発する。準備にかかれ!」

 

 

*1
実は日本だけでなく他国でも18インチ砲の開発は成功してる。アメリカではは、18インチのMark 1が1920年代に計画されたが、ワシントン条約のためにキャンセル。しかし、1941年に48Mark Aが計画され、1942年の1月には試射を実施している。イギリスはMarkⅠ18インチを軽巡フューリアスに搭載している




モンタナ級戦艦
史実では速力を優先したアイオワ級戦艦に対してモンタナ級戦艦は攻防力が優先され、基準排水量約6万t、16インチ(40.6cm)3連装4基12門の主砲を搭載、最高速力28ktなど
46cm主砲も積もうと思えば積める
史実では建造中止になったが……

それはそうと紀伊型戦艦だけでなく、モンタナ級戦艦なども実装するのかな?
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