三度目の人生はTS転生で、俺は艦娘! ……待て、なんか髪が白くて狐耳と尻尾があるぞ?! 作:艦これが何時までも続きますように
加賀が二度目、三度目の転生をしたこの世界は一度目の世界に比べて平和だった。
冷戦までは加賀の一度目の人生とかなり似た歴史だったが、その後の歴史では、人類はかなり仲良くしていた。
理由の一つは第二次世界大戦の各国の被害だ。
加賀の一度目の人生の世界以上に、この世界は戦争によるダメージで大きく疲弊していた。
その結果として加賀の一度目の人生の世界では、重要な役割をした人物が大半は何かしらの理由で歴史の表舞台には出てこなかった。
戦後、世界の人々は「「「第3次世界大戦をすれば次は核戦争になる。人類は滅亡する!」」」という、想いから互いに自然と譲歩することになった。
かなりギリギリの綱渡りの外交を各国の外交官達はすることになり、倒れる者が続出したが。今はおいておく。
故に深海棲艦が現れた時、各国の政府は「「「エイリアン!?」」」と衝撃を与えることになった。
深海棲艦が出現して、直ぐにどこかの国が作った兵器ではないか? と自国と敵対的な国へ挑発などが行われないほど、この世界の国は人類同士の争いを自然に避けていた。
砲撃したり、魚雷を撃ってきたり、生物ではあり得ない存在なのに、だ。
更に人型まで、現れて各国は「「「「やっぱりエイリアンだ!!」」」」と、人の言葉を話していることが確認され、国連はまず対話を求めたが、失敗に終わった。
その後、各国は死に物狂いで戦うことになる。
★★★★
『では、今日の座学を終わります』
『『『『『「ありがとうございました!」』』』』』
最初の鎮守府が作られて一ヶ月。
俺と武が再会して三週間ほど、国連が妖精、艦娘、提督の存在を公式に発表。
妖精の情報から、深海棲艦は生物と無機物、霊的な三つの融合体だとも発表した。
第二次世界大戦の戦闘艦が人になって現れたことで、世界中で艦娘の扱いを巡って議論されたが。
提督と関係者(提督の家族や友人)が、艦娘を擁護してくれたお陰か、日本政府は正式に艦娘に人権を付与してくれた。
「お疲れ様、武。はい、お湯」
「……うん、まあ、節約しないといけないからな。ありがとう。お湯」
俺から渡されたお湯の入った湯飲みを受け取り、微妙な表情で武はお湯を啜る。
「そんな顔をするな、俺だってケン○ッキーのレモネードが飲みたいよ。というかたまには外食したい」
政府は提督と艦娘の扱いに苦慮している。
政府からしてみれば、深海棲艦が現れて、国の滅亡が現実的になり始めた矢先、今度は目に見えない妖精さんと艦娘、提督と訳の分からない武装勢力が出来たのだ。
深海棲艦を倒せるのは良いけど、人間サイズなのに、戦艦の主砲やラジコンサイズのガチな艦載機。
しかも、一部の提督(海外勢)が遠回しに、「邪魔したら、国を出ていくし、落とし前をつけに殴り込む」的なことを書き込み、大半の艦娘がその考えに賛同。
日本人の提督は、多少過激な書き込みはあったが、基本的には大人しく政府に従ってくれている。
「だなぁ、妖精さんのお陰でネット繋がるから通販は出来るけど、鎮守府周辺は一般人は立ち入り禁止になって、出前が不可能になったからな。ドローン出前はまだ解禁されないし(通販は許可が出ている)」
「まあ、この不便のお陰で、自衛隊への新兵訓練を免除されたんだから、ラッキーくらいには思うべきだな」
艦娘も提督が深海棲艦を倒して、政府も艦娘と提督の有用性を認めたが、ここで問題が起こった。
それは未成年提督と、ほぼ全ての提督が軍事知識がない素人と言うことだ。
幸い、艦娘達が提督に指揮のやり方などを教えた事と、深海棲艦の数が少なかった事で、勝利する事が出来たが。今後の事を考えれば、絶対に知識が必要だ。
政府は色々と話し合ったのだが。
まず、艦娘を自衛隊で預かって、運用すれば良いのでは? という意見が出たが。
これには、艦娘達が大反発。
妖精さんと提督の報告で、艦娘は提督が力を引き出す存在で、艦娘の精神的にも性能的にも、自身の提督以外の所属にはならない、と言うことが分かった。
政府としては、素人に人間サイズの戦闘艦の指揮をさせるのは不安がある。
なので、政府は提督を自衛隊の特務部隊として設立し、提督達を入隊させた。
当初は順番に提督達を集めて、短期間で必要な知識を学ばせようと意見が出たが。
この時、沿岸部に近い市民を守るために、提督を鎮守府から動かす訳にはいかなかった。
通常の護衛艦では、深海棲艦に勝つのは難しい。
妖精さんのお陰でその原因が、深海棲艦が霊的な存在でもある為に、通常兵器の威力が下がってしまうからだとわかったためだ。
既に艦娘は防衛には必須の戦力となっており、鎮守府に近い町の市民も、鎮守府から提督と艦娘が居なくなることへ反発した。
そうした理由で、日本政府は頭を抱えながらも解決策を考え「なら、リモートで必要な知識を学んでもらおう」となった。
「次の講義はえっと……」
「三時間後だ」
「じゃあ、その間に少しやす」
「はい、書類」
「え?」
「お仕事の時間です。講義三十分前にはお茶を出すから頑張れよ」
「マジかよ……」
あまり多くないが、講義で疲れているタイミングでの書類にげんなりする武。
「マジだ。じゃ、頑張れよ」
俺がお盆を抱えて執務室を出ようとしたところ。
「……すっかり、割烹着が板について」
と、普段の口調ではなく、あからさまに煽るような口調で武はボソリと呟いた。
「…………なにか?」
「いいや、なんでも。あ、でも、秘書なのに仕事手伝わないのかなって」
「既に書類の選別と此方で出来る書類仕事はやってるが?」
「そうか、楽でいいなぁ。燃費が悪いから出撃回数少なくていいなぁ~」
「……わざと言ってるのか貴様?」
何事もなく、お湯を啜る武。
この三週間で、仲間は増えた。遠征というか。資材が手に入るパワースポット的な場所も見つかるようになって、備蓄も増えた。
けど、敵空母と戦闘すると、ボーキサイトが消し飛ぶ。
先日、ようやく零戦二一型が手に入り、多少はボーキサイト節約になるだろう。
「……分かった。手伝おう」
「サンキュー」
少ないが、俺が触ってギリギリ処理して良い書類を武が持つ書類の束から抜き取る。
「少なくない?」
「他は武がやらないと駄目なヤツだ」
そこから、俺は執務室の秘書艦用の机で書類に向かう。
それから、しばらくはお互い無言で、仕事をしていた。
だが、武が会話のない空間に耐えられなかったのか、こちらに話しかけてきた。
「そう言えばさ」
「なんだ?」
「艦の記憶って、あるじゃん」
「ああ……」
「……大丈夫なのか?」
武が書類から顔を上げて、俺を見てくる。
艦の記憶。夜眠ると夢に第二次世界大戦時の、艦だった時の記憶が夢として出てくることだ。
これは、毎日ではないが、轟沈して冷たい海の底へ沈む感覚。乗員の最後の叫びや様々な想いがダイレクトに叩き込まれる。
その記憶に多かれ少なかれ、艦娘は苦しむことになる。
「安心しろ。そこまで酷くない」
「そうか、ならいいんだが」
★★★★★
ーー深夜 艦娘 最初に作られた仮設寮
妖精さん達の馬鹿みたいに高い建築技術で作られた艦娘の寮は現在は三つあり、各々離れて建てられている。
密集していると深海棲艦の奇襲による、全滅するリスクを減らす為だ。
加賀は諸事情で、最初に作られた仮設の小さな寮で寝泊まりしている。
他の艦娘の寮より、質素(良く言えば)な小さなアパート風の寮に、今は加賀一人で寝泊まりしている。
一人で寝泊まりしている理由は、魂が男の加賀にとって艦娘と一緒に暮らすのはハードルが高かった。
後は、まあ、身体が艦娘になっても中身が男の影響か色々溜まるからだ。
そう言うちょっとお年頃な理由で、加賀はこの寮で一人なのだ。
事情を知っている武の配慮でもある。
ーーオゲエェェェェェェェェェエッッッ!!!!
枕元に念のために用意していたごみ箱(ごみ袋付き)に、出すもの出して、一息をつく。
一人で良かったと、加賀は心の底から思った。
妖精さんの高い建築技術で、防音もしっかりしているが、それでも夜は音が周りに自然と響いてしまう。
「きっつ……!」
悪夢の重さは個人差がある。加賀は特に酷いモノだった。
赤城、加賀、蒼龍、飛龍の四隻の空母が沈んだあの戦い。
流れ混んでくる、怒り、悲しみ、大勢の混ざりあった負の感情。
どんどん、沈んでいく船体。全身の感覚が無くなり、なにも見えず、冷たいだけの海の底。
いつの頃からか、加賀は眠る時、部屋の電気を消せなくなった。
「み、水……」
和室の部屋にしかれた布団から這いずるように出て、加賀は何とか立ち上がる。
夢を見た後は酷く喉が渇く。
荒い息を吐きながら、加賀は自室の小さな冷蔵庫から、通販で買った麦茶ポットを取り、コップを使わずそのまま一口水を口に含む。
ーー麦茶が飲みたい。
深海棲艦の出現で、様々なものが値上がりした。
けど、我慢だ。と加賀は自分に言い聞かせた。
悪夢の後は水をかぶ飲みする。流石にそれは勿体無い。
最初の人生の時から麦茶は年中あった。
それから、二度目の人生でも、母に頼んで麦茶は常備してもらっていた。
その、二度目の人生の両親は今も生きている。
そこまで、考えてふと小学生の夏に仕事人間の両親と庭で花火をしたことを想いだす。
花火して、スイカ食べて。口の中が甘くなって母さんから麦茶を貰って口の中をスッキリさせて……。
ーー寝よう。
俺は布団に戻り眠りについた。
会うことはない。忘れよう。死んだ人間が転生する。武は信じてくれたが、提督という特殊な状況で混乱していたから、スルッと受け入れられただけだ。
運が良かったのだ。
そう思いながら、俺の意識は徐々に沈んでいった。
この時、冷蔵庫の影に、俺のことを心配そうに観察している妖精さんがいることに気付かなかった。