三度目の人生はTS転生で、俺は艦娘! ……待て、なんか髪が白くて狐耳と尻尾があるぞ?! 作:艦これが何時までも続きますように
ーー武の執務室
来客用のソファに座り、向かえのソファに座る武を軽く睨む。
「好みの容姿なのは分かるが、いきなりデートに誘うな。艦娘だから、提督の武に対して嫌悪感は抱かないだろうが、度を越えれば嫌われるぞ」
「あ、ああ、そうだな」
駆逐艦の娘達からボディタッチされて、浮かれているところに俺に怒られる。武のやつ、ちょっとしょんぼりしてるなぁ。
「なぁ、気になったんだけど、艦娘だからって、艦娘は提督を好きになりやすいのか?」
武の表情は複雑だった。自分に好意を持ってる娘達が、艦娘だから提督を好きになる。なんて、気分は良くないだろうな。
「うん、艦娘になって分かったが、提督へ好意を持ちやすくなるのは確かだな。RPGで言うところの補正が掛かってる感じだ。まあ、武の場合はイケメンでもあるから、補正が無くても艦娘達は好きになりやすいだろうな」
「イケメン……」
実は武はイケメンと言われることが、あまり好きではない。
武は過去に数回女の子に告白されているのだが。
同級生か年下なので、告白を断ったらその女の子を好きだった男子などに「調子のんな!」と、絡まれたことがあるからだ。
イケメンで「うぇ~い」って感じで、女遊びしている男もいれば、武みたいに女遊びをしていない者もいる。
それに、イケメンと言われるけど、恋愛で上手くいった試しがない。俺が死んだ後も駄目だったようだし。
「俺、個人的には、武が艦娘にいくらでも手を出してもいいけどな」
「ーーえっ?!」
「でも、くれぐれも刺されないように気を付けろ」
「は!?」
俺の発言に驚きを露にする武。
当然だな。リアルハーレムはこの世界の日本でも非難される。
「ま、まってくれ。どういう意味だ?! 刺されるとか 手を出すって!」
「そのままの意味だ。武、多かれ少なかれ艦娘は俺と初雪を除き、武に好意を持ってるぞ。LOVEの意味で」
「え、マジで?」
「ああ、貴方と合体したいと言う意味で」
「ーーぶっ、なに言ってんの!?」
良かったな、武! モテ期だぞ。と言うと、武は複雑そうな表情をする。
「嬉しくないか?」
「いや、嬉しいけどさ。けど、誰か選んだ後が大変そうだなって」
「そうだな。一人だけ選んでも他は諦めないだろうし」
「え……?」
俺の言葉に固まる武。
「だって、艦娘達はお前のことが好きなんだぞ」
「いや、でも、え?」
「武にとっては、沢山いる艦娘の一人でも、艦娘から見ればたった一人の提督だ。武が誰か一人選んだ後に、想いを我慢させていても、何時か爆発するだろうな」
「爆発って……」
「それなら、好きにやらせた方が安全だ。Nice boat.は避けたい」
「Nice boat.?」
「分からないなら良いぞ」
この世界にもあのアニメがあってちょっと驚いたよ。
「まあ、艦娘達を傷つけないように、気を付けろよ」
「それは、分かる」
艦娘になったから分かるが、艦娘は人であり兵器でもある。それ故に提督を護る本能がある。
そして、その護るのは深海棲艦だけではない。
自分達とは違う、生粋の人の女から護ることも含まれている。
俺でさえ再会して、何気なく彼女とかは? と聞いた時に、「合コンとかナンパとかしたけど駄目だったよ」と聞いた時は、コイツ合コン行ったのかよ。と苛つき。駄目だと聞いてニヤリとした。
最初は男として合コンやナンパが羨ましいと思っていたが、俺の場合は仲の良い友達が他の友達と仲良くしているのを面白くない女の子みたいな嫉妬の感情だった。
しばらくして、『肉体に心、魂が引っ張られる』と言うのはこういうことか、納得した。
「ま、駆逐艦の娘達に言い寄られて、満更でもないみたいだし」
「ま、待て、あれは」
「鳳翔が年下が好きなのか、聞いてきたぞ」
「え、……もしかして勘違いされたかな」
「フォローはしたけど、普通の仲良しには見えなかったな。腕を胸で挟まれて喜んでいるように見えたし」
それを聞いて、落ち込む武。見える場所でいちゃつけば見られることくらい分かるだろうに。
周りの目を気にしないくらいには、今は武と駆逐艦の娘達と仲は良い。だから、自然といちゃついたのだろう。
「あれはさ……」
「鳳翔はちょっと引いてたけどな」
「マジで?」
「マジで」
胸って無いように見えて、ちゃんと柔らかいのだ。
入渠ではなく、普通の大浴場で駆逐艦の娘達に裸で抱きつかれた時に知った。
「ど、どうしよう」
「安心しろ、あれ一度でどうにかならないから」
「だ、大丈夫か?」
「ま、色々艦娘の価値観は一般的ではないから気を付けろよ」
俺はそう言って、ソファから立ち上がり、執務室を後にする。
実は夜這いとはいかなくても、添い寝などは俺が事前にやんわりと釘を指していたりする。
ちなみに、添い寝は艦娘が四人以上で、妖精さんの監視がある所なら大丈夫だ。
場所で揉めて決着が着かないので、今のところ武は一度も添い寝を申し込まれたことはない。
「そこに隠れてるのは、五十鈴だな」
「あはは……バレてたか」
執務室から出て、長い廊下を歩き、階段を降りようもして、右側の通路の奥に気配を感じた。
確認すると軽巡洋艦の五十鈴だったので、声をかける。
この時間にここにいる理由は何となく分かるが。
「落ち込んでるから、慰めるなら今だぞ。武、意外とおっぱい星人だからな」
「おっぱい見ながらそんなこと言われると、流石に恥ずかしいからやめて、ね」
「だったら、もう少し胸が目立たない服を着ろ。武が割りと目のやり場に困ってたぞ」
「うーん、この鎮守府には提督しか男は居ないから変えないかな」
「ふっ、好きにしろ」
俺はクスクスと笑い、その場を後にしようとすると、五十鈴から質問をされる。
「ねぇ、ちょっといい?」
「なんだ?」
「加賀さんは提督のこと好き、なんだよね?」
「ああ、親友としてな」
「そう、親友として、ね」
探るような眼差し、俺と五十鈴はしばらく視線を交わしていたが、どちらからとなく別れた。
そして、翌朝。
「こう、じゃない、加賀」
「ん、何だ、武?」
厨房で朝食の準備をしていると、深刻そうな表情の武がやってきて、俺にこう告げた。
「その、順番に皆と近場でデートすることになったから、デートプランやスケジュール作るの手伝ってくれ!」
拝むように頭を下げる武を見ながら、俺は溜め息をついた。
恐らく、五十鈴以外にもあの後、武を訪ねた娘がいたんだな。
結果、五十鈴達にデートをせがまれて、押しきられた。って、ところか。
「提督、それはプライベートのことですので、秘書艦は介入できません」
俺は面倒なので、にっこり微笑みながら、武を突き放す。
「そ、そこをどうにか!」
「それぞれの初デートなんだから、頑張ってやれよ。後、俺は今朝食作りに忙しいから出てけ」
うん、初デートなんだから、考えてやれ。
「か、加賀!」
「忙しい、あっち行け」
「た、頼むよ! デートなんてしたことないだ!」
「お、じゃない、私もだ!」
俺が言い返すと、武は「お前くらいしか相談出来ないんだ!」と言いながら、すがり付いてくるので、鬱陶しい。
「ネットで調べろ!」
「ーーこふぁっ?!」
と言って、俺は手加減しながら、武にボディブローを叩き込み、床に沈める。
「おはようっぽーい。って、提督さん!? 何があったの!?」
「おはよう夕立、いきなりで悪いがコレ端に移動しておいてくれ」
「え? え?え?」
困惑している夕立に武を任せて、俺は朝食の準備を進める。
ま、これが終わったら、この辺りで使えそうなデートスポットをネットで調べてやるかな。
★★★★★
支配海域。それは深海棲艦に支配されて、霊的な力が宿り深海棲艦を産み出す海だ。
普通の船ではその海域に入ると方角を見失い、そこにいるだけで船員が疲弊していく。
海域は大・中・小の三つの規模があり、妖精さんの情報から、この海域を支配するボス的な深海棲艦を倒して、海域を取り返さないと、ゲームで言うところの深海棲艦が無限に沸きでるらしい。
規模によって沸く数や質が変わる。大きければ危険度も高い傾向にある。
そう、小規模の支配海域は比較的、沸く深海棲艦は雑魚なのだ。
霊的な力も弱く。霊的な力を持つ艦娘なら、方角を見失うことは少ない。大規模な支配海域ならまた違ってくるが、小規模の支配する海域はそこまでではない。
そう、普段ならば、なっ!!
ーー鎮守府 食堂の隣にある談話室
「何で小規模な支配海域で、あんなにヲ級とレ級が出てくる……」
「ぽ、ぽーい……」
「いやー、きつかったぜ……」
ソファに座りぐったりする俺、夕立は談話室の絨毯の上でうつ伏せで垂れ夕立に、天龍は三人がけのソファで横になっている。
他の出撃メンバーはそれぞれの自室などに戻った。
数時間前、他の鎮守府と連携して、五日前から近隣にある、四つの深海棲艦の小規模支配海域を攻略が開始された。
個々の鎮守府の艦娘の数がまだまだ足りない為、合同で行っている。
敵の増援などを警戒して、他の鎮守府の艦隊と共に支配海域に突入。
霊的な支配海域の力のおかげで、方角を見失い、入り口に戻される艦隊などがあったが、その都度、合流して無事に小規模の支配海域を攻略していった。
しかし、最後の最後で悪い意味での当たりを引いた。
小規模な支配海域はヌ級などが、支配海域の番人だ。たまにヲ級とかレ級が一隻か二隻程度出てくるが、
今回は本当に酷かった。
「ここまでの敵の数は多いぜ、加賀! 今回は当たりかもな!」
腕が鳴ると、獰猛な笑みを浮かべる天龍に俺は苦笑いだった。
旗艦の俺は皆に気を引きしめるように言って、霧が覆う支配海戦の奥地へと進み。
ーー支配海域の奥で、俺達を待っていたのは、空母ヲ級三隻+レ級四隻+他多数の深海棲艦の艦隊だった。
「「「「「「「………………」」」」」」」( ゚д゚)(←濃い霧が晴れて、目の前に砲撃準備完了のレ級達と他多数の深海棲艦を確認して固まる俺達)
ちなみにこっちは正規空母は俺だけで、軽空母三隻。
戦艦は他の鎮守府の比叡が一隻。
視覚が砲撃の光を、聴覚が遅れて砲撃音を取られ、我に返った数人の「ーー回避っ!!」の叫びに全員がなんとか反応。
戦いは敵からの一斉砲撃から始まった。
「砲撃っ!!」
「艦載機発艦!!」
「全速っ!!」
無線で飛び交う怒号。
制空権確保のために全力を尽くす俺と他の鎮守府の軽空母達。
必死に前衛でレ級達と砲戦を行う他の鎮守府の戦艦の比叡と重巡洋艦達。
全力で撹乱と回避しながら、魚雷をばら蒔く軽巡洋艦と駆逐艦達。
味方の援軍の到着まで粘る。この状態では撤退出来ない。下手に背中を見せればアウトだ。
敵は長期戦になれば、勝てると思っただろう。小規模の支配海域は新造された艦娘の慣らしに使われる。
新人が多いと思ったのだろう。それは事実ではあるが、艦隊は新人だけではない。
敵の誤算は、今回の編成で参加した鎮守府の艦隊の引率者(ベテラン)が今回の編成では多かったこと、チート艦載機を持つ俺が居たことで、制空権を取り損ねたこと。
仮に敵が制空権を取っていれば、こちらは轟沈者が出ていただろう。
F4U(VF-17中隊)と零戦五二型には本当に感謝だ。
制空権の確保を優先した編成で正解だった。
その結果、援軍が到着。俺達の粘り勝ちとなった。
「しっかし、オーラが無い奴で助かった」
「ぽい?」
「ほら、アレだよ、なんつったけ?」
「eliteとflagshipか?」
俺の言葉に天龍は「そう、それだ」と、叫ぶ。
「あのオーラ出してる奴は強ぇじゃん。あの数全部がオーラ持ちだったら、やばかったな」
提督コミュニティや艦娘コミュニティで、身体からオーラを出している深海棲艦の呼び名、最初はオーラ持ちとか色々言われていたが、補正なのか今では赤いオーラ持ちはelite。黄色いオーラ持ちはflagshipと呼称することになった。
「確かに、あれを放置していたら、その内オーラを発するようになっただろうな。海域の規模も中規模、大規模になっていた可能性はある」
「そういう意味では早めに倒せて良かったっぽい?」
「ああ、最近は特に小規模の支配海域もなにが出てくるか油断出来ないし、直ぐに中規模に変わる」
それを考えるなら、結果的に敵を九割を落とせたのは、良かった。
こちらは轟沈者無しではあるが、大破になり際どい娘が多かったし。
ただ、気になるのは、ヲ級とレ級を一隻ずつ取り逃がしていることだ。
手負いの獣。
こういうのは、取り逃がすと後の驚異になる可能性は高い。
出来れば直ぐにでも残党狩りをしたいが、人手が足りないな。
「そういやぁ、新しい艦を作るらしいな」
「ん、ああ、今回の作戦で二つパワースポットで、幸運にも開発資材を見つけたからな」
「ぽいー、今度はどんな人だろう~」
戦艦レシピを回すが、来るといいのだが。
「願わくば、金剛ではなく、長門でお願いします」
武の好み的に!
「ぽい?」
「ぁん? 今なにか言ったか、加賀?」
「いや、何でもない。ーーそれより、何か食べるか?」
「ぽいぃっ!?」
「なにぃっ!?」
俺の言葉にガバッと身体を起こす二人。
ここ最近、連続出撃で食料が質素だったから、二人も思わず反応したのだろう。
「この前萌え系ミリタリー雑誌の取材があっただろ」
「あー、何か聞いたな」
「それで、私と愛宕が対応して、その時に艤装を展開している状態で、あ、もちろん上の許可は取ったぞ。その時のインタビューと写真を見て、俺や愛宕のファンです。と、贈り物が来たんだよ。本部経由や直接送られてきた物の中には比較的保存出来る物が多くてな。やはり、食料不足と料理担当と答えたからか、食料も送られてきてな、ファンのお陰で食料備蓄が増えたよ」
「おいおい……」
ククッ、と笑うと天龍と夕立がちょっとひきつった笑いを浮かべていた。
「ま、そういうわけだから、ちょっと御褒美的に何かつくって食べよう。意外と配給されない。頼んでもなかなか補給に入らないホットケーキミックスとかもあるし」
「おっ、マジか」
「ああ、マジだ」
こうして、俺達は御褒美のおやつタイムと雪崩れ込んだ。
ま、結局は他の娘達からの怨みが怖くて、ドーナツ作るぞ。と皆に声をかけた。
餡ドーナツ、美味しかった。
ーー武の執務室
「提出された報告と他の提督からも話を聞いたけど、とんでもない激戦だったみたいだな。本当に皆無事に戻ってこれて良かったよ」
「ま、鍛練と運が良かった。けど、次も運任せでは不味いな」
暗に人手が足りないと告げる。ま、どこの鎮守府も同じだ。
駆逐艦、巡洋艦、空母。そして、戦艦。
建造されたばかりの艦娘は、運が悪いとあっという間に沈む。
「分かってる。今はボーキサイトは少ない。だから予定通り、手に入れた開発資材は全て戦艦を作るために使う」
「ああ、防衛に一隻、攻勢に一隻。最低でも二隻ほしい」
「二隻出来るといいけどな、戦艦」
「ま、その辺は、お前の運次第だ」
「ははっ、運次第なんだな。……大丈夫かな」
それについては、俺は何も言えない。
引き運が武は良くないからな。
「無心でやれ」
「や、やってみる」
三度目の人生。
「と、ところでさ、このデートプランはどうだろうか?」
「ん、貸してみろ」
いつの間にか、命の遣り取りが日常になった。
「いいんじゃないか? 無難で」
「そ、そうか、良かった」
「うん、デートもとい、保養として鎮守府から少し離れた場所に広場と花壇でも作るか」
「え?」
「遠出出来ないし、本当に近くの街しかデートに行けないし、それだと艦娘達も可哀想だろ」
「ふむ」
「妖精さんに頼んでみても良いか?」
「ああ、そうだな。やってみるか」
「うん」
だから、艦娘達と武との生活が俺にとっては、掛け替えのないものになっていた。