あらかわい、え?この子たち世界壊せるってマ?   作:うろ底のトースター

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先に謝罪から

リクエスト頂いた『ウィッカーウィッチは生きている』ですが、本編で書くのは断念させて頂きました。申し訳ございません。

ifエンドか、番外編の方に書かせていただきますので何卒御容赦を。


封印を解かれた者と戯れる実験

また、俺は廊下を歩いていた。

 

勿論目的なんて、宛なんてない。

 

しばらく歩いて、木製の扉を見つけた。

 

近未来なこの施設に似つかわしくなかったそれが、また以前のように気になった。

 

耳を澄ますと、バギンっと、鎖の壊れる音が鳴った。

 

会いに行くことになるんだろうなぁ、と、薄れていく意識の中でそう思った。

 

 

 

 

 

「今プロトコルにおける全権限は君に与えられている。つまり、我々のバックアップは全て君の指示で行われることになる。君のしたいように、自由に命令してくれ」

 

目が覚めて、すぐに財団のステルス機に詰め込まれた。なんでも、防ぎようのない世界崩壊がすぐそこまで来ているのだと。

 

SCPー2317 異世界への扉

オブジェクトクラス Keter

 

大元は別世界に通じている木製の扉のSCPで、内部には5本の柱と、それに繋がれた地中のバカでかい球体、そして更にその内部に閉じ込められ、7本の鎖で繋がれて()()人型実体がある。

 

繋がれていた、と過去形なのは、7本の内6本が壊れていたから、

 

そして、今朝、最後の1本も壊れたからだ。

 

放たれたそれは、曰く『世界を貪る者』。

 

Kappa-Erikesと呼ばれる先史文明が遺した文献では、この人型実体は世界を破壊できる。

 

どうやって封じたのか、或いは殺したのかは定かではないが、1つ確実に言えるのは、今の人類では抵抗するだけ無意味である、ということだ。

 

だからこその俺の派遣。

 

「君に、この世界の命運が掛かっている」

 

向かい合って座っている博士が、苦い表情を浮かべた。

 

「また君にこんな大役を任せてしまって、すまない」

 

「大丈夫です」

 

慣れはしない。慣れたら、アベルやに怒られるからなぁ。

 

でも過度な緊張もない。恐怖もない。

 

いつも通りの俺でいいんだ。

 

「朱里君、任せたぞ」

 

「ええ、任されました」

 

 

───────────────────────

 

 

扉の先には、塩田が広がっていた。10mほど先に、5本の柱と先行部隊が見えた。

 

全員が全員、辛気臭いというか、苦い顔をしていた。

 

「・・・今なら、まだ引き返せるぞ」

 

「行きますよ」

 

「・・・そうか」

 

みんな、優しい人ばかりだ。

 

設置されたロープを伝い、下層ヘ、あの球体ヘ向かう。ガラスのような透けた素材の球体は、罅が刻まれ、広がり続けていた。

 

何処から入ろうかと悩んでいると、まるで誘うように一部が崩れた。

 

これまでの経験で鍛えられた直感が、偶然の可能性を否定した。まーた俺の事知ってる相手かい。

 

てか奴さんこの中に封印されてたんだろ?なんで外部の情報知ってるんですかねぇ。しかも超最近。

 

「お邪魔しま〜す・・・」

 

 

 

「ほう、何かと思えば貴様か。なかなかどうして、下等生物共も良い供物を捧げるものだ」

 

艶やかな鈍色の長髪と、宝石のような金の瞳を見た。

 

肌を焼かれるような威圧感、間違いない、人間などとは比べ物にならない完璧な上位種だ。いくら俺でも、久方ぶりの恐怖を感じていただろう。ただし、

 

「あの、下ろしてくださいませんか?」

 

お姫様抱っこされてなきゃね!

 

「断る」

 

「なんでぇ?」(素

 

「貴様は余の物、手放す必要がどこにある?」

 

「あっそっかぁ」(諦め

 

いや、別に嫌な気分ではないんだけど、ちょっと男の子の矜恃が傷ついたというか、なんというか、うん。

 

いやでも、よくよく考えれば超豊満な双丘がちょうど眼前に・・・。

 

こんな美人に抱えられるならそれはそれでアリだな、うん!

 

「あれ待って僕今所有されてる?」

 

「?、当たり前だろう。お前は余に貢がれたのだ」

 

「あ、そっかぁ」

 

みんなに聞かれてたら地獄ができあがってたな。ここが異世界で良かったと心の底から思った瞬間である。

 

「えっと、どこに連れてこうとしてるんですか?」

 

「寝床だ」

 

ん?

 

「・・・えっと、何しに?」

 

「寝床ですることなど1つだろう?」

 

んん??

 

「お前を(性的に)貪る」

 

「(食物的に)貪られる!?」

 

食われるの!?俺食われるの!?

 

は!そうだ、バックアップ!今すぐ博士に助けを

 

「む、なんだこれは?」(インカム)

 

「あ」

 

「邪魔だな」

 

「捨てたーーー!!??」

 

・・・終わったな、俺も、世界も。

 

自惚れじゃなく、俺が死んだらブチ切れたり暴れたりするオブジェクトは絶対いる。ってか半数くらいはそうなると思う。

 

逃げても(世界は)終わり、残っても(俺も世界も)終わり。

 

詰んでる。

 

「こんな詰みゲー初めてだなぁ」

 

前略、両親へ。

 

先に天へ旅立つ不肖の息子をお許しください。

 

「ほら、着いたぞ」

 

口調の横暴さとは裏腹に、丁寧に降ろされた。振り返って改めて全貌をこの目に収める。

 

綺麗な鈍色も、吸い込まれるような金色も十分目立つ。けどそれ以上にデカい。身長も、胸も。190はあるだろこの大きさは。あ、身長のほうな?バストはよく分かんないけどとにかくデカい。

 

この人に今から食われるのかぁ。

 

「脱げ」

 

「やっぱり服は邪魔ですか?」

 

「邪魔だな」

 

歯に絡まるんだろうな。

 

う、うう、喰われる為に自分から服を脱ぐなんてぇ。しかもこんなときに限って脱ぎやすいTシャツ。寝起きすぐに連れて行かれたもん、仕方ないじゃん。

 

いそいそと服を脱ぐ。

 

「ウ゛ェ゛ッ゛」

 

「え?」

 

「ア、イヤ、別に『うわぁ、体引き締まっててエッチだなぁ』とか思ってはいないぞ、うん!」

 

「待って今までの威厳どこ行ったの?」

 

えぇ、何この落差(困惑)。感じてた威圧感は霧散してるし、お目目グルグルしてるし頬真っ赤だし。

 

「そ、(それがし)あれだからな?経験豊富だからな?今まで何人も貪ってきたからな?あ、でも尻軽ってことじゃないぞ。一途だぞ。しっかり尽くすぞ(やつがれ)は」

 

「もうどっからツッコめばいいか分からん」

 

一人称は安定してないし、早口だし、なんか頭から湯気出てるし。てか、経験豊富な一途ってなんだそれ。

 

「つ、突っ込む!?」

 

「うん、落ち着いて?」

 

「奥突いて!!??」

 

「OKもう喋んないでお願い」

 

コレ一応健全な小説なんだわ。

 

・・・と、いうか、もしかして彼女の言う『貪る』って、()()()()()()()()()()

 

え、じゃあ何?自分から誘っておいて、パニクって恥ずかしがってるの?

 

もう一度、ピャーとか言いながらゴロゴロと寝床を荒らす彼女に目をやる。

 

「・・・初心じゃん」

 

「ン゛!!??」

 

さらに大暴れする彼女が落ち着くまで、30分ほどかかった。

 

 

───────────────────────

 

 

「つまり、封印したヤツらが『世界を貪る者』なんて大袈裟な名前付けたから、それにノって大袈裟な物言いをしていたと」

 

「そういうことですはい」

 

彼女には、世界を貪る(壊す)という意思はないらしく、また、俺たち人類とも敵対する気はないどのことだ。

 

彼女も、被害者だったのだ。

 

「なんで俺のこと知ってたの?」

 

「えっと、私、力だけはある、ので」

 

「あ〜、なるほど」

 

「アナ」

 

「言わせねーよ?」

 

出かけてた湯気を語気で抑える。

 

「封印が解けたのは?」

 

「普通に年季ですね。いくら私の同族が使われていても、時間には勝てません」

 

「俺と、その、シようとした理由は?」

 

「あ、ああああああ余りにみ、魅力的だったので、で、出来心、です、はい」

 

はぁ、なんというか、いろいろと覚悟が無駄になったというか、そもそも杞憂だったというか。世界終焉レベルの問題とされていたこれは、俺の貞操程度の問題で終わった。

 

あとは・・・。

 

「あ、名前」

 

「ピッ!?」

 

「え、なんの鳴き声?」

 

「あ、いや、ちょっと嬉しくてイキそ」

 

「はいストーップ」

 

「あ痛っ!」

 

出かけてた湯気を物理的に抑える。

 

「どうしよっかな」

 

異世界への扉、いや、世界を貪る者・・・。

 

「初心ちゃん」

 

「ヤ゛タ゛ッ゛!!」

 

「冗談だよ」

 

しかし、どうしようかな。

 

異世界、Different World、Another World・・・。

 

お、

 

「レン」

 

「え、どこからつけたの?」

 

「ディフェレントから」

 

「あぁ、異世界」

 

「そういうこと」

 

相変わらずのネーミングセンスという苦情は受け付けない。

 

「そんじゃ、これからよろしく」

 

「うん、末永くよろしくお願いいたします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前を独占しようとした女がいるらしいじゃねぇか。なぁ、朱里。そいつが誰か、教えてくれるよな?」

 

「ヒェッ」

 

 




神谷朱里

こいつ多分世界が終わってもこの調子。


レン

セイバーオルタを参考にしてたら急にこのすばに変わってた娘。どうして・・・。



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